78◆ZUNa78GuQc氏による強制肥満化SS

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『サンタクロースのアルバイト』

 

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12月24日 昼

 

「うーんと、ここで合ってる……よね?」
訝しげに彼女……『栗栖 真澄(くりす ますみ)』がぽつりと呟く。
遡ること数日前、真澄はネットの求人情報を当たっていた。
どうせ独り身のクリスマス、それならば一稼ぎしようと考えたからである。
そして、見つけたのが『サンタクロース募集』という求人だ。
しかも、女性のみという募集であったため、真澄はこれだ!と面接を申しんだのである。
この時は、ぼんやりとサンタのコスプレでした売り子の仕事をするんだろうと思っていた。
これは大きな間違いであったのだが……

 

今、彼女の目の前には少々大きめのレンガ造りの建物が建っている。
童話に出て来るようなかわいいらしい印象の建物だ。
携帯の地図で間違っていないことを確認した彼女はこれまた少々大きめの扉に手をかける。
と、ほぼ同時に扉が開き、恰幅のいい男が姿を表した。
彼女はかなり驚いたが、男は全く動じない。
「もしかしてサンタクロース希望ですか?ホッホー、お待ちしておりましたよ!さあさ、こちらへ」

 

扉の先は一つの広い部屋だった。玄関もなく、土足でいいようだ。
部屋の真ん中には大きなテーブル、テーブルを挟んで向かい合う2つの大きなソファがあった。
そして向かって右手には扉があり、少なくとも、もう一つ部屋があるようだ。
彼女は着ていたコートを壁のハンガーにかけさせて貰い、ソファに腰をおろした。
「では、早速面接を始めさせていただきますかな」

 

面接が始まった。
面接官の風貌は恰幅の良さは元より、小さな眼鏡に白い髭も揃っている。
スーツを着ているが、赤い服さえあればサンタクロースのようである。
対する真澄はというと、長袖のブラウスにカーディガンを羽織り、下はジーンズという非常にラフな格好をしている。これは、電話先で普段着でいいと言われたからだ。

 

「なぜ、サンタクロースを希望なされたのかな?」
「あ、それなんですけど……サンタクロースのアルバイトって主に何をするんですか?」
このアルバイトを魅力的だと思ったのは確かであるが、求人情報には仕事内容が詳しく書かれていなかったのだ。
「そのままじゃよ?サンタクロースになるんじゃよ」
「いや、それがよく分からないんですけど……」
「サンタクロースは、プレゼントを配るんじゃよ。知っておるじゃろう?」

 

そういうことではなく、このアルバイトでのサンタクロースとはどういう仕事なのかを彼女は聞きたかったのだが、この微妙なズレは埋まらない事を察し次に進む事にした。
(まあ、アルバイト始まってからも説明はあるだろうしね)
「な、なんとなくは分かりました」
「そうかそうか、ならばもう合格じゃよ」
「ふぇっ!?」
即答する面接官に驚き、思わず変な声が出る。
「本当にここ数年人手が足りないからのう……後はひと準備、じゃな。そこで待っていなされ」
面接官はのそりと立ち上がり、もう一つの部屋へと去る。
「こんなに簡単でいいの……?」
ひと準備とはなんなのか、そもそも志望理由は言っていないなど、色々と頭の中を巡っているが、
やはり嬉しいことは嬉しかった。
ツッコミ所は置いておき、クリスマスで稼いだお金を何に使おうなどと思案しながら、真澄は面接官が帰って来るのを待った。

 

「遅いなあ……」
待てども、待てども、待てども面接官は来ない。携帯の時計を確認するともう30分は経っている。
これが外食チェーンの時間待ちならば別の店に行くところだが、仕事に関わるとなるとそうはいかない。
さらに、

 

(ぐ〜っ)
「お腹空いたなあ……」
面接から帰って昼ご飯にしようと思っていたのだが、甘かったようだ。
これなら、面接前に食べておけば良かった……と思っていたその時である。
ガチャリ、と奥にある扉が開く。音を聞いた瞬間、彼女は面接官がようやく帰って来たのかと思った。
しかし実際は違った。
なんと、スラリとした長身の女性が大量の料理を乗せた台車を押しながら入って来たのである。
そしてその料理を真澄の前に置いて行く。
鶏肉のトマト煮、生ハムが乗った野菜たっぷりのサラダ、カルボナーラ、鯛のカルパッチョ、ローストビーフ……
どれも、食欲をそそるとても美味しそうな料理ばかりだ。

 

「た、食べて……いいのかしら?」
普通ならば、いくら空腹といえど、我慢出来るはず。
はずだったのであるが、先程感じていた空腹感がとてつもなく増大していた。
“まるで魔法にかかったかのように。”
「ダメッ……もう、我慢出来ない!」
彼女はついに料理に手を付けてしまった。がつがつと、料理を口に運んで行く。
あれよあれよという間に大量の料理は胃袋に姿を消す。
しかし、間髪を入れずに、新しい料理がどんどんと運ばれてくる。
彼女もそれと同じく、間髪を入れずに料理を胃袋に収める。
そして、料理をかっ食らう真澄の身体に変化が起きていた。
普通では考えられない速度で太っていたのである。
顔、腕、背、腹、脚、体全体に肉がついていく。
ブラウスも、ジーンズもパツパツになり今にも断末魔の声がが聞こえそうである。

 

食べ始めてから20分。
ミチ……ミチ……と悲鳴を上げ、ついにジーンズのボタンが弾け飛んだ。
チャックも壊れ、ばるん、と脂肪と食べ物で大きくなったお腹が顔を出す。
ちなみにブラウスは一足先にボタンが弾け、事切れていた。

 

たったの20分で真澄は、デブと言っても差し支えないレベルに太ってしまった。
あごも二の腕も腹も太ももも、少しの動きだけでふるふるとかわいらしく揺れる。
ただし、一心不乱にがっつく今の彼女の姿はお世辞にもかわいらしいとは言えないのだが……

 

こんな変化が起きているというのに、真澄は料理を食べる事に夢中で気づかない。
しかも、食べるペースが上がり、益々肥満化に拍車をかけている。
「もっと!もっと持って来て!!お腹が空いて仕方ないのおおお!!」
彼女の叫びが部屋を震わせた。

 

 

一時間後。真澄は一糸纏わぬ姿になるまで太りきっていた。
喋るだけでたぷたぷ揺れるであろう立派な二重あご。
七面鳥の丸焼きに匹敵する太さの腕。
サンタのプレゼント袋に負けないであろう大きさのお腹。もちろん、しっかりと段を形成している。
大きなモミの木の幹のように太くなった太もも。
今やサンタクロース顔負けの肥満体である。

 

しかしこんな姿になっても食べる手は止まらない。今の彼女の頭には食欲しかないのである。
テーブルが再び空になり、料理が運ばれて来る。
「これが、最後の料理です」
給仕係が告げたその料理とは、とてつもなく、とてつもなく大きなホールケーキだ。
イチゴ、クランベリー、ブルーベリー、キウイなど様々なフルーツが乗っている。
このケーキにも彼女は脇目も振らずがっついた。
あまりにも大雑把な食べ方なので体がクリームで汚れるな、そんな事も気にしない。
彼女は10分かけて、巨大ケーキを平らげた。
食べ終えたとほぼ同時に無限の食欲も突如として消え失せた。
「ふう……ふう……ああ、お腹一杯だわ(げっふぅ)あれ、何だか眠く……」
はしたなく、身体に見合ってるとも言える大きなゲップをした後、彼女はソファにもたれかかり、そのまま眠ってしまった。

 

 

ケーキを食べ終えた事を給仕係から聞いた男は、真澄の元に向かった。
「少し、太らせすぎたかのう……しかし、これで誰が見ても立派なサンタクロースじゃろう!
さて、後は服を着せれば……」
大仕事が始まろうとしていた。

 

12月 24日 夜

 

「うーん……私、寝てたの?」
ワケが分からなかったので、真澄は状況を整理した。
面接に来て、合格して、待たされて、お腹が空いて……思い出せない。
(とりあえず、起きないと……)
そう思い、身体を動かそうとした瞬間に違和感が襲う。

 

重い。重い。重い!?
そして、自分の姿が目に入り驚愕する。
「ちょっと……!なんなのよこれえっ!!?」
夢だ、こんなことありえない。そう思いたかったが、自分にかかる肉の重さが、間違いなくこれは現実であると彼女に告げている。
そして、もう一つ。彼女はいつの間にやら、サンタの服を着ていた。
今の肥満体に比べると少々窮屈な感じのする衣装だ。
だが、そんな事はブクブクに太ってしまった事に比べると些細な事だった。
部屋にあった姿見で自分の姿を改めて確認する。
上から下まで肉、肉、肉。脂肪の塊になった自分。
彼女を絶望感が蝕み、目に涙が浮かぶ。

 

そこにあの男がやって来た。今度はサンタクロースの格好をして。
恰幅が良いのは相変わらずであるが、今の彼女と比べると小さく感じる。
「ホッホー、気がついたかのう?それでは今から仕事の説明を……」
「仕事!?ふざけんな!!これはどういうことなのか説明してよ!!!」
痩せていた頃より、野太く、篭ったような絶叫する。
「いや、サンタクロースに見合った体型にじゃなあ」
「は??説明になってないし!!」
「ううむ……説明不足だったかもしれんな。すまぬが一度落ち着いて、聞いてくれ。
納得はさせよう」
二人は再びテーブルを挟み、向かい合ってソファに座る
「今から話す事は紛れもない真実じゃ、改めて言うが落ち着いて聞いてくれな」
一呼吸置き、告げる。
「ワシはサンタクロースなんじゃ」
「信じられるかっ!!」
勢い良く反応を返す。しかし、サンタは気にせずに話を続ける。
「お前さんがブクブクに太ってしまったのも、ワシが魔法を使っ……これ、落ち着け!

テーブルをひっくり返そうとするんじゃあない!!」
興奮し、敵意むき出しの真澄を諌める。
「……これは、先に言った方が良かったな。ワシの魔法で太ったのだから、
もちろんワシの手で綺麗さっぱり元に戻せる」
「それを早く言いなさいよ!!!!」
彼女は興奮のあまり勢い良く立ち上がった。
ぶるるん!と身体についた肉が揺れる。少し顔を赤らめつつ、再びソファに腰を下ろす。

 

「……それで、何で私をこんなにしたのよ?」
「太っていない者はサンタにあらず。幸せを運ぶ者、ふくよかであれ。という古くからのサンタクロースの決まりじゃ。恐らく、率直に太れと言われてお前さんは太らなかったじゃろう?」
「まあ、そうだけども……なんか腑に落ちないわね……
 それで、何で私がサンタなのよ?希望したからとかそういうのではなくて」
真澄がそう言うと、サンタは深刻そうな顔になった。
「それが、一番大事な部分じゃな。出来るだけ簡潔に話そう。
 サンタクロースは、少々めんどくさい奴らに目をつけられているのじゃ」
「えんふぉふはいやふらあ?(めんどくさい奴らあ?)」
いつの間にか居た給仕の女が持ってきたポテトチップスを頬張りながら彼女は聞き返す。
「そう、奴らは『苦しみます解放同盟』といってな……
 毎年クリスマスをめちゃくちゃにしようと我らサンタクロースを襲撃しに来るのじゃ……
 しかもどうやら今年は人数を増やしているらしい」
「本当にめんどくさい奴らねえ(ボリボリ)でも、それにしたって何で女の子を募集したのよ?」
話を聞きながら、彼女は他のポテトチップスの袋も開け様々な味を楽しみ始めた。

 

「奴らはサンタクロースをジジイしか居ないと思い混んどる、そこを突くんじゃよ」
「はふほどー。これ結構美味し……(バリバリ)私は襲われるしんふぁいははいの?
 モグモグ……給仕さん、コーラとかない?」
「お前さん、ちゃんと話を聞いておるか……?ワシが招いた事であるから強くは言わんが……」
ポテトチップスを次々頬張り、コーラ(1.5リットル)で流し込む。
体型だけでなく、行動もデブそのものになりつつあった。
元に戻れると聞いて、完全に開き直ったのだろう。
「と、とにかくお前さんは大丈夫じゃ。
ワシ含め他のサンタクロースがそいつらを食い止めるからな。
プレゼントを配ることに専念して欲しい」
「(ゴクゴク)プレゼントってどの範囲に配ればいいのよ?(げっふ)」
「少しは恥じらいは無いのか……ここはあくまで支部の一つじゃからな、
この街一帯に配ってくれれば十分じゃ。ソリはもう外に準備してある」

 

サンタと共に外に出ると、それは立派で巨大なソリが外に止まっていた。
大きなプレゼント袋も既に置いてあるが、サンタをを超える巨体の真澄もなんとか乗れそうなサイズである。
そしてそれを引くのは二頭のトナカイである。
(……なあ、今年のサンタデカすぎやないか?死ぬで)
(サンタのじいさん、魔法の効き目強し過ぎたな……やめて欲しいわホンマ)
そんな事をトナカイ二頭は話していたが、もちろんサンタや真澄には伝わらない。
トナカイだからね。

 

「行くのはいいんだけど私、サンタの事なんて何も分からないんだけど……やったことないし」
真澄は尤もな事をサンタに言った。サンタは彼女に仕事について何も説明してないのである。
「大丈夫じゃ、その辺はサンタも効率化しておってな。ソリは自動的に子供たちの所に向かうし、
その袋は子供が欲しいものを勝手に取り出してくれるんじゃ」
「なんか、ちょっと夢が壊れるわね……」
「そうじゃ、忘れるとこじゃった、これを」
そう言ってサンタは真澄に変な機械を渡した。
四角い金属の塊に大きなボタンが付いただけのシロモノだ。
「……なにこれ?」
「こいつはすごいぞお!これは『壁抜け君2号』じゃ!子供たちの家に入る時に使うんじゃよ」
「煙突も通らないんだ……まあ、日本に煙突のある家は殆ど無いけどね……」

 

「ふう……ふう……ふんっ!よっこい……しょっと!」
あまりに太り過ぎていたので、巨大なソリでも少々狭かったようだが、何とか身体は収まったようだ。
今は狭いが、ある程度プレゼントが減れば楽になるだろう……恐らく。
「じゃあ、行ってくるね!」
「無事を祈っておるぞ!」

 

ピシャッと手綱を引くとトナカイが走り出す。
(重っ!重すぎるやろこんなん)
(サンタのじいさんぜったいにゆるさん)
もちろん、真澄には聞こえない。
「さーてと。さっさと配って元に戻らないと!」
夜の街を女サンタがソリと共に駆け出した。

 

 

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