78◆ZUNa78GuQc氏による強制肥満化SS
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「思っていたよりも楽ねー(モグモグ」
真澄は順調にプレゼントを配り回っていた。
今食べているのは、子供たちがサンタにお供えとして置くクッキーである。
数百軒は回っているので、かなりの量を食べている。
「それにしてもなんか、服がきついわね……」
彼女はまた、太り始めていた。サンタの太る魔法がまだすこし残っていたのだ。
その影響で、出発する時よりも一回り、二回りは大きくなっている。
「……誰も見ていないでしょ。んしょっ……」
だぶんっ!
彼女はベルトをはずし、なんとか服に収まっていた巨大な段腹を外に出した。
こうなるとソリの揺れで、腹肉も大きく波打つのが良くわかる。
「楽になったし、そろそろラストスパートね。ペース上げていくわよ!」
(あんたが余計に重なってるのにペースなんか上がるかいな)
(いつもやったら、プレゼントの分軽くなるから楽になってくるんやけどな……)
トナカイも中々の苦労者だ。
「ふう……ようやく最後の家ね」
時刻は早朝4時前、夜明けまでにはかなり余裕があった。
壁抜け君2号を使って家に侵入する。何度も使っているので小慣れたものだ。
(おじゃましまーす……)
ギィッ……ギギィーッ……ミシ、ミシ……
廊下を一歩進むたびに床が悲鳴を上げる。体型が体型なのでこればかりはどうしようもない。
こんなだから、誰にも気付かれないように子供部屋に行く、というのは至難の技だ。
もし、見つかったら超デブ女が不法侵入と地方欄に載りかねない。
今まで成功してるからと言えど、一切の気は抜けないのだった。
さらに、太り過ぎた事によりかなり歩くのは辛くなっており、冬だというのに汗が吹き出ている。
「ふう……はふぅ……(これが、最後なんだから、早く……終わらせないとね」
息も絶え絶えになんとか子供部屋に辿り着いたものの、ここでアクシデントが起こる
「もしかして、サンタさん!?」
なんと、早朝に差し掛かるというのに子供がまだ、起きていたのである!
小さな灯りをつけ、ずっとゲームをしていたようだ。
とにかく親が気付かないうちに、何とかしなくてはならない。
「し、静かにして。お母さんが起きちゃうでしょ……プレゼント、持って来たから」
冷静に、声を押し殺して話しかける。
しかし、子供はそんな事で言うことを聞けば苦労しない。
「サンタさんだ!うわあーほんとーにサンタさん!!ゲームちょうだいゲームゲームゲーム!!!」
「ちょっ!ちょっと….…」
うるさい。
本当にぎゃあぎゃあとうるさい。
とにかく、黙らせないとと思った時には身体が動いていた。
「んもう、静かに……しなさいよ!」
ドスドスドスと子供に駆け寄り、腹肉を顔に押し当てたのだ!
「サンtぐむむっ!?(モガモガ)」
汗ばむ腹肉に軽く圧迫され、喋ることが出来なくなる。
何がともあれ、これでようやく静かになった。
「はあ……はあ……プレゼント、ふう……ゲーム、欲しかったんでしょ……
サンタさんが……持って来たわ」
今の動きで大きく息が切れ中々言葉にならない。
「来年も……はあ、はふぅ……いい子に…………してるのよ……」
子供にプレゼントを渡し、さっさと立ち去ろうとする。
しかし、それを子供が引き止める。
「サンタさん、まって!」
「な……なに?プレゼントは……もう、渡したでしょ」
子供はもじもじと、言う。
「おなか……さわらせて、くれる?」
小さな灯りで見える子供の顔は、真っ赤だった。
彼女にどっと疲れが一気に押し寄せた。
あれから子供は中々、真澄を帰してくれなかった。
お腹だけでなく、彼女の太りきった身体のありとあらゆる場所を触っていったのだった。
流石に、胸は断ったのだが……
どうやら、お腹を押し当てた時に何かに目覚めてしまったらしい。
「ホッホー。お疲れ様じゃのう、にしても本当に大きくなったもんじゃなあ」
「何を呑気に言ってるのよ!あんたのせいでまた太ったんじゃないの!!さっさと戻しなさい!」
そう、プレゼントを配り終えたので、この肥満体ともようやくおさらば出来るのである。
「ワシは、今の方が魅力的だと思うんじゃがなあ……ま、約束は約束じゃな。ホイッ!」
サンタが新たに魔法をかける。
効果はすぐに表れた。真澄の脂肪がするすると無くなっていき、どんどん身体が小さくなる。
ものの1分しないうちに、慣れ親しんだ自分の身体を取り戻したのだった。
「やった!!私の身体が……」
パサッ
忘れていた。今、着ていた服は、肥満体に合わせた物だ。
痩せた、ということは当然サイズが合わない。引っかかる場所を失った服は……地面に落ちた。
そして当然、彼女の姿は……
「きゃああーっ!もう、最ッッッ低!!!!」
野太さもない、よく通る声で大きく叫んだ。
12月25日 朝
「うーん……私、寝てたの?」
真澄は、いつの間にか自分の家のベッドで寝ていた。
元の身体に戻った辺りまでは覚えているが、その先の記憶が曖昧だ。
(とりあえず、起きないとね……)
もう、あの違和感はない。
歯を磨くため、洗面所に向かう。
「あれ、この服……」
彼女が着ていた服は、あの日着ていた物と全く同じだった。
長袖のブラウスにカーディガンにジーンズ。
太った時にボロボロになった筈なのに。
「これも……魔法なのかしらね」
歯を磨き終え、朝食を食べようとキッチンに向かうと食卓に手紙が置いてあった。
『ホッホー!メリークリスマス。本当にお疲れ様じゃったな!
多分、これを読む頃には気づいているだろうが、服は元に戻しておいたぞ。
お金はちゃーんとそれなりに、振り込んでおいたからな。
お前さんがよければ、来年もお願いしていいかの?
良い返事を待っておるぞ。
サンタクロースより』
「……二度と行くかっ!」
朝食を食べた真澄はさっそく、お金を下ろしに出かけた。
身体が軽い。思わずスキップしてしまう。
自分の身体をこんなにありがたいと思ったのは初めてだった。
通りがかった空き地で、子供たちがクリスマスに貰ったプレゼントを見せ合っていた。
(あれ私が配ったって言っても、みんな信じないだろうな……ふふ)
「ほんとうだって!おれ、サンタさんにあったんだよ、おんなのひとの!」
「うっそだー!サンタさんはおじいちゃんでしょー?」
『サンタクロースのアルバイト』
おしまい
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