364氏による強制肥満化SS

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『喰いしん王の憂鬱』

 

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「シロウ、おかわりです!」
とある日曜の昼下がり。

 

今日も衛宮家の居間には伝説のハラペコ王…こと、セイバーの元気な声が響く。

 

魔術師の儀式である7日間の聖杯戦争を勝ち抜くために召還されたサーヴァントである彼女。
その正体は伝説の円卓の騎士・アーサー王その人である。
多くの騎士達をまとめるため、シンボルとしての王が必要とされたその時代で、少女ながらに男として振る舞い、その責務を果たし続けた華麗なる英雄だ。

 

そんな彼女も、聖杯戦争が終わった今となっては既に役目を終え…――

 

今はただの居候として、主人である少年・衛宮士郎の家で、平和な日本の生活を満喫していた。

 

「はいはい… ったく、今日何杯目だよ…」
軽くボヤキながらも、可愛らしいライオンのプリントのついた器に、てんこ盛りのごはんをよそってあげる士郎。

 

サーヴァントとしても英雄としても一級品であるセイバーの日々の楽しみは、なんといっても3度の食事だ。
戦いの日々を終えてからも、その食欲は全く衰えることを知らない。

 

「んん、おいしいでふ、シロウ♪」

 

炊飯器からよそったばかりの炊き立てごはんをハフハフと頬張る少女に、士郎の頬も自然と緩む。

 

「んくっ、シロウの炊いたご飯はツヤが違う。おかずもどれも美味しくて、いくら食べても飽きがきません。」

 

「ははっ、そんなにかっ込んで、味なんかちゃんと分かってるのか〜?」
「むぐ!? もひろんでふ!!」

 

次の一口めを盛大に頬張ったままのパンパンの頬で、大真面目に語るセイバー。

 

「あははっ、セイバーちゃんはホント食いしん坊よね〜」
「本当に何でも美味しそうに食べてくれるから、作る方も嬉しいです。」

 

相槌を打つのは、年上の幼馴染で担任教師である藤ねえ、こと藤村大河と、弓道部の後輩で、魔術師同士でもある間桐桜。
毎日朝夕、桜は衛宮家の炊事の手伝いに、逆に藤ねえは食事をたかりにやってきては、一緒に食卓を囲んでいる。
国王とはいえ、食べ物が豊かではなかった中世の王城での食事は決して宮廷料理のような華やかなものではない。
それに比べ、ここは何でも美味いものがすぐに手に入る時代に、料理上手が2人。
実に充実した食事事情が彼女を取り囲み、ますます食の虜にさせていた。

 

ぱくぱく、もごもご、ごくごく、あむあむ。

 

むぐむぐ、あぐあぐ、かふかふ、っくん!

 

顔いっぱいに幸せを浮かべて、大皿のおかずと共に大盛りごはんを全て平らげると、

 

「――――――――――――――――……けふッ。」

 

少々お行儀が悪いが、可愛らしいゲップで締めくくる。

 

「おっと… 失礼。ご馳走様でした、シロウ。」

 

心行くまで美味しい昼食を堪能したセイバーは、可愛らしいライオンマークのついた食器を改めて士郎に手渡した。

 

 

 

「おう。」

 

――――士郎の手に渡った巨大なドンブリがズシリといい感じの重さと手ごたえを与える。

 

白磁の器の特大ボディには、小さなワンポイントのような黄色いライオンがちょこん、と印刷されていた。

 

「やっぱ前の茶碗じゃお代わりが追いつかなかったからな。買い換えて正解だったよ。」
「ふう〜… ありがとうございます。私もとても気に入っています。」

 

どんぶり飯で何杯もお代わりしたせいですっかり満腹なのだろう。
彼女に関しては、「腹八分目」などという古い言葉などどこ吹く風のようだ。
セイバーはしばらく満足げに腹をさすっていたが、畳の上をのっそりと移動すると、ベッド代わりの座椅子に寄りかかりながら、以前からの習慣でウトウトとし始めた。

 

聖杯戦争中、半人前のシロウのせいで、消費する魔力を食事と睡眠で自己回復するしかなかった彼女は、食後は部屋の布団で体を横たえて休息することで、戦闘のたびに激しく消耗する魔力を回復してきたのだ。
すっかり平和になった今でも、有事に力を発揮するため、食後のひと時は必ずこうして体を休めるのがセイバーの日課。

 

「んんぅ…」

 

浅い眠りに落ちかけたセイバーの体が、寝息と同じリズムでゆっくりと上下する。

 

玄関から、桜や大河の帰りの挨拶の声が聞こえる。
セイバーも心の中で返事をすると、1人居間の陽だまりに包まれ、うららかな午後のぬくもりを感じていた。
心も体も満たされて、とろけそうな幸福感。

 

------正に平和、そのもの。

 

座椅子の背もたれに寄りかかっていた上半身がずるずるとずり落ちて、そのまま意識を手放そうかという瞬間…

 

ぶち、ぷちんっ!

 

唐突に、セイバーの着ているブラウスの腹から、真っ白なボタンが二つ、弾け飛んだ。
その衝撃とスースーした腹部の急な違和感に、思わず目を覚ましたセイバー。

 

「ああっ! 服のボタンが…」

 

慌てて目線を落とすと、ボタンの取れたブラウスの下からは…

 

真っ白な肌の、ぶよん、と贅肉の乗った大きな腹が飛び出していた。

 

「し、シロウ〜〜 ブラウスのボタンが取れてしまいました!」

 

はだけたままの腹をだらしなくさらしたまま、マスターを呼んで助けを求める。

 

「またか? ったく、調子に乗って食べ過ぎるからだぞ」

 

確かに、満腹のセイバーの胃袋は膨張し、腹は小さな山を描いて膨らんでいた。
だがそのシルエットは、ぽっこりというより、だぷっ、と前に出ているといった感じ。
でんと主張する中央部の周りにはたっぷりと脂肪がついてウエストのくびれを覆い隠し、軽く起こした上体の脇腹にぼよんぼよんと大きな段を作っている。
よく見ると、以前に比べると貧相だった胸もかなり大きくなり、腹部から続く段の一部のように重たそうに乗っかっていた。

 

「取れたボタン持って来いよ、つけてやるから。」

 

キッチンで洗い物をしていた士郎が顔を出す。

 

「はい、お願いします…!」

 

手を伸ばして飛んでいったボタンを拾い集め、立ち上がろうとした瞬間。

 

ビリリッ…!!!

 

「うっ………!!? ス、スカートが…!」
屈んだ時に力が入ったのか、ファスナーの下の部分の縫い目が大きく裂ける。
上品な色合いの青いスカートの裂け目からは、限界まで引き伸ばされた黒タイツに包まれたどっしりとした大きな腰周りと、丸太のような太ももが覗いていた。
スカートはやや伸びる素材で出来てはいたものの、元からサイズに無理があったのか、
Aラインのボックスプリーツがタイトスカートのようにぴっちりと太ももの肉に張り付いている。

 

「す、すみませんシロウ…」
「あーあー… いいよいいよ、どうせそれ、近頃はファスナー半分も上がんなかったんだろ。」

 

聖杯戦争の終結から約半年。
平和な現代日本の生活に浸りきったセイバーは、剣を取る必要もない日々による運動不足と、衰え知らず… どころか、美食の楽しみに目覚めますます増して行く食欲とで、騎士生活の中で長年磨き上げてきた無駄のない体を、すっかり別のものへと変貌させていた。

 

髪型や服装などの出で立ちはほとんど以前と変わらないものの、その小柄な体の重量はほぼ倍になっており、見た目にはそれ以上に肥えて見える。

 

顔を見れば、整った目鼻立ちはそのままに、柔肉でぽっちゃりとまん丸く膨らんだ頬、完全に角の取れたあご。
栄養状態はすこぶるいいのか、ふくふくとしたもち肌で、バラ色の頬はつやつやとしている。

 

キュッと引き締まっていた臍周りは立派な段腹に姿を変え、脇腹から背中には段になった肉が盛り上がっていた。
丸い肩はボンレスハムのようにところどころで衣服が二の腕に食い込んで、こちらもかなりきつそうだ。

 

下半身は、股ズレを起こすほどにぼってりと成長した太ももに反し、足首まで至ると元来の骨格の華奢さを反映してか、以前よりかなり体重の増えた体を支えるにはやや頼りなく見える。
手首までむっちりと肉に覆われた腕に比べると小さなままの手のひらは、手指の一本一本もぷくぷくとしてまるで幼児の手のようであった。

 

そして、これだけは変わりようのない金糸のような美しい髪と深いエメラルドグリーンの瞳。
紛れもなく、騎士王・アルトリア… セイバー本人だ。

 

「うーん… この服ももう限界だよなぁ… 困ったな」

 

破れた服と弾けたボタンを前に腕を組む士郎に、セイバーはギクッとする。

 

「うっ… でも… ま、また同じブランドで新しいものを買えば…」

 

「ダメだって。この服、もとは遠坂のお古を譲り受けたものだろ?お前が気に入ったって言うから、ブランドを聞いて着替えを買い足してたけどさあ。だんだんサイズが合わなくなって少しずつ大きいサイズに変えたけど… 今着てるのがLLサイズで、これ以上大きいやつはないみたいだから。」

 

本来はSSサイズでも問題ない小柄なセイバーにとって、LLサイズなら普通の体格で言う3L程度のゆとりは持つはずだが、そんなレベルはとうに超えていたようだ。

 

「とりあえず… そ、その格好じゃなんだから… 俺、代わりになる適当な服買ってくるな!」

 

シロウは、あられもない姿のセイバーをチラッと見ると、慌てて顔を背けて部屋を出ていった。
取り残されたセイバーはといえば、

 

「ああ… そんな… この服が着れなくなるだなんて…」

 

お気に入りの洋服が台無しになり、満腹による満足感もどこへやら。
さすがにがっかりしたセイバーは、名残惜しそうにボタンのはちきれたブラウスに包まれた太い胴回りをさすっていたが、ふと、自分の立派な腹に手を伸ばした。

 

何気なく掴んでみると、かなりの厚みである。
戦いを離れてから、自分の体が前と少し変わってきたのはなんとなく気づいていたが、
以前に、少しずつづつ出てきた腹をつまんでみた時よりもかなりボリュームが増している気がする。
触ってみるともにゅもにゅとマシュマロのように柔らかくもしっかりとした弾力があり、手を離すと、ぼよん、と弾んで元に戻った。

 

セイバーの額を、嫌な汗がつうっと流れ落ちる。

 

元からスタイルなどを気にする方でもなかったし、そもそも、セイバーのいた時代にダイエットという概念などない。
それにセイバー自身、いくら食べても太らないのが自分だと思っていたので、徐々に肉が付きはじめても、ほんの少しのことだと思い、特に気にも留めてこなかった。
そんなことより、美味しいものをもっともっとたらふく食べたいという欲求の方が、ずっと重要だったからだ。

 

根っからの食いしん坊だった彼女がこの時代で食道楽にハマるというのも必然である。

 

もう一つ幸運だったことに、士郎は料理上手な上に、セイバーには随分と甘く、命がけの戦いである聖杯戦争中はそのことに苛立ちを覚えた頃もあったが、平時にはこれ以上ないパートナーだった。
セイバーが食欲の赴くままにいくら食べても、呆れることはあれど叱ることはない。
むしろ世話好きで料理好きの彼は、その見事な食べっぷりを喜んでいたくらいだ。
やがてだんだんと太り始めたセイバーにも、せっせと新しい服を買い与えたり、昼寝が出来る座椅子を買ってくれたのも士郎である。

 

―――そして聖杯戦争中は燃費の悪さで苦戦したセイバーだが、元から生身の体が存在する以上、魔力をエネルギーとする超人的な能力などを使う事さえなければ、実体を保ちつづけることはさほど難しくない。
士郎の友人であり、優秀な魔術師でもある少女・遠坂凛曰く、霊地である冬木市にいる限りは安泰のようだ。

 

無理に力を使うのは危険なため、あの聖杯戦争が終わって以来はすっかり剣も置いている。
もちろん一度もかの聖剣・エクスカリバーやカリバーンを振るったことはない。
体力だって温存している。夜はもちろん、昼寝も欠かさずに睡眠をたっぷり取り、することといえば、時折士郎の稽古に付き合うくらいの穏やかな生活。

 

もっとも、最近はなんだか体が重く感じてきて、面倒になって口で指導するばかりで自分が動くことは少なくなったような…

 

いや、稀代の英雄であるセイバーと士郎とでは実力は雲泥の差であり、士郎のレベルに合わせて相手をしてやるよりも大河と打ち合っているところに指導をするほうがやりやすいと気づいたから…
だった気がする。そのはずだ。

 

「そうそう、士郎がなかなか上達しないのがいけないというか…!」

 

そういえば、最近、最後に竹刀を振るったのはいつだったか…と一瞬焦ったもののウンウンと自分で自分の言い訳に納得しながらふと窓ガラスに映った自分の姿を見てフリーズするセイバー。

 

半年くらいの間にすっかり緩みきった体は、しまりのない雪だるまのようなシルエットを映している。
そこには、飽食と惰眠に明け暮れて、でっぷりと肉付きの良い立派なメタボ体型に成長した騎士王が映っていた。

 

―――――――ことここに至って、彼女はようやく現実を認識したのであった。

 

 

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