666氏その1

666氏その1

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第1話

 

 

僕の名前は平助。どこにでもいるようなぱっとしない高校1年生。
成績は中の下、運動も得意と言うほどではなく、もちろん顔がいいということもない。
そんな僕にも彼女がいた。
いや、彼女だと思っていた女の子がいた。
河野美咲。肩まで伸びた栗色の髪、くりっとした眼、すっと通った鼻筋、どれもこれも素晴らしく可愛い。
おまけにスタイルもよく、スレンダーな体つきなのに胸は大きく張り出している。
触ったことはないけどDカップはあるんじゃないだろうか。
こんな美咲がもてないわけがなく、クラスでも狙っている奴はたくさんいた。
僕もだめもとで告白したんだけど、まさかまさかのOK宣言。
その日の夜は嬉しくて眠れないくらいだった。

 

しかし…

 

「美咲ってば、まだ平助君と付き合ってんの?」
掃除当番で焼却炉にゴミ捨てに行く途中、校舎裏から女生徒達の声が聞こえてきた。
「うーん、なかなか切り出せなくってさあ」
美咲の声? 一体何を話しているのだろう。
僕はそっと物陰から様子を窺った。
「結構優しくしてくれるんでしょ? 平助君、なんかちょっと気の毒よねー」
「美咲が修一君の気を引くために付き合ってるなんて知ったら自殺しちゃうかもねー」
…え? 何いってるんだ? 修一?
「私も正直疲れてきたのよね〜。好きでもない男の機嫌とってさ、おまけに修一君全然やきもちやいてくれないし。私のこと眼中に無いのかなあ」
「やっぱさー、もっとはっきり攻めなくちゃ駄目じゃん? 修一君鈍感だし」
「そーねー、作戦変更するかなあ」
…もうそれ以上聞いていられなかった。僕はその場からそっと離れた。

 

修一は僕の親友だ。
ルックスがよく、ちょっと天然ボケのところがあるけど、そこが逆にみんなから好かれる要因にもなっていた。
僕が告白した時、きっと美咲は修一に近づくチャンスだと思ったのだろう。
今思えば、美咲は何かにつけて修一の事を聞きだそうとしていたし、デートの時は「ダブルデートにしようよ」なんて言ってちょくちょく修一を連れ出していた。
そんな美咲の思惑に気付かず、僕は間抜けなピエロを演じていたというわけだ。

 

そんなことを知った後では授業を受ける気にもならず、僕は学校を早退した。
頭は美咲への怒りや修一への妬み、そして何も悪くない親友を妬んでいる自分への嫌悪感でいっぱいだった。
そんな状態で部屋に閉じこもり、なんとなくネットサーフィンをしていると、ひとつの広告が目に入ってきた。

 

「あなたの彼女を理想の体型に・身体改造プログラム…だって?」
エステかなんかの広告だろうか。
妙な文面に興味を引かれて広告をクリックしてみると、製品の概要が現れた。
「要するに、入力した数値どおりの体型になるってことか?」
どうやらこの身体改造プログラムというのは、ある人間のデータを入力したり書き換えたりすることによって、その人間の体型を変化させることができるらしい。
なんともインチキくさい代物だ。
「今なら1週間無料でお試しできます、か… ちょっとやってみるか」
正直、ちょっとでも気分がまぎれるなら何でも良かった。
僕はそのプログラムをダウンロードし、さっそく起動してみた。

 

「さて、誰で試してみようかな… 」
部屋の窓から外を見ると、隣の若奥さんが家の前を掃除しているのが見えた。
「よし、あの人で試してみるか」
奥さんの名前を入力する。
すると、奥さんの身体の細部にわたるデータが画面に表示された。
「何だこれ…なんで名前だけでこんな詳しいことがわかるんだ?」
これって個人情報の漏洩って奴か、と思いながらデータに目を通す。
「スリーサイズは上から82.4/65.2/87.8か。じゃあキリよく90/60/90にしてみよっと」
データを書き換え、決定する。
外を見ると、奥さんの様子に変わったところは無い。
「やっぱりね、そんなことできるわけ―」
その時、奥さんの身体が突然変化した。
胸とお尻が張り出すように大きくなっている。
「え?」
僕が驚いている間にも変化は続き、服がはちきれそうになっている。
「な、なに? なんで服が急にキツく…」

一番驚いているのは当の奥さんで、眼を白黒させてパニクっていた。
そうこうしているうちにも胸はどんどん大きくなり、ついには胸のボタンが弾け飛び、形のいい乳房がぷるん、と飛び出してきた。
「きゃっ! いやっ、誰か、誰か来てえっ!」
「や、やべ、もっと見たいけどすぐ戻さなきゃ」
慌てて元の数値に戻す。
すると、まもなく奥さんの身体も元に戻った。
「あ、あれ…? 一体何だったの…?」
奥さんは何か合点のいかない顔をしている。それはそうだろう、悪いことをした。
おわびにウエストをちょっぴり減らしてあげた。

 

「しかし…驚いたなあ」
まさか本当にこんなことができるとは思わず、僕は額に浮かんだ汗を拭った。
「でも、よく考えてみれば今のところ使い道ないよなあ。『理想の体型に』といったって、もう彼女もいないし…」
美咲の顔が浮かぶ。また怒りがわいてきた。
「…待てよ」
自由に体型を変えられる。
理想の体型にも。
その逆にも。
「そうだ…いい使い道があるじゃないか」
このプラグラムを使えば、美咲の自慢のボディをどのようにでも変えられる。
きゅっとくびれた腰回りにぶよぶよの脂肪をつけてやることも、大きく膨らんだ乳を真っ平らな洗濯板に変えてやることも。
そして絶望したところに、僕から別れ話を持ち出してやるのだ。
当て馬に思っていた僕に振られる屈辱はいかほどのものだろうか。
「ククッ、待ってろよ、美咲… お前を男を選ぶ権利なんか持つことのできない、醜い豚に変えてやるよ…」

 

 

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