624氏その2

624氏その2

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俺には幼馴染がいる。名は市原 さとみ。
オツムは弱いがが本当に優しくていいやつだ。
ボケすぎていらつくこともあるにはあるが・・・。
小学校も高学年になると恋愛にも興味を持ち始め、口にはださないがお互いがお互いを好いていた。
朝はいつも一緒に登校していたし、遊ぶときだっていつも一緒だった。
こいつはいっつもポケポケしていたから俺が一生守ってやらなきゃって、そう思った。

 

だが、中学にはいってからその関係は歪んだ。
俺は明るいやつだったから中学に入ってもそのキャラを崩そうとはしなかった。
だが、目立つ人間は疎まれる。
何より俺は別に不良連中と絡む気もなかったのでそれがやつらの癇に障ったのだろう。
俺はイジメを受けることとなっってしまった。
だが、たいしたことはないと思っていた。
俺には仲間が、大事な人がいる。
俺はさとみに笑顔ではなしかけ手を伸ばす。

 

パチン!

 

はじかれた・・。

 

「ご、ごめん。」
さとみは苦笑いを浮かべながら俺から離れていく。
「お、おい!」
振り向きもしない。
悲しかった。
でも、あいつは弱い、仕方ないとも思った。
あいつは本当に悲しそうな顔をしていた。だからしょうがないんだ。
それからの日々は、ただ苦痛でしかなかった。
でも、そんな生活でさえ慣れ、さとみの事も初めからそんなに仲良かったわけでもないように思えてきた。

 

中学を卒業すればイジメも自然消滅。
イジメの中心にいた奴らはみんな別の学校へいったからだ。
同じ高校にはさとみもきていた。
だが、そんなことはどうでもいいし、俺には関係の無いことだ。
だが、入学して間もない頃、俺は放課後突然さとみに呼び出された。

 

「あ、あのね、ゆうくん! わ、私と、付き合ってほしいの!」

 

さとみは美人だ、クラスでもアイドル的存在でモテモテな奴だ。
顔はぽんやりしていて童顔だが綺麗に整っていて美しい、というよりかわいいか。
背は低めだが脚も腕もスラリとしていて細く美しい。
だが、告白されたことはうれしくはなかった。ただ唖然とした。
「や、やっぱりダメかな?わ、私みたいなこじゃ、ダメかな?」
「今更何言ってるんだよ。お前・・・」
「あ、あ、ごごめんね。だよね。わ、私、何もしてあげられなかったもんね・・・。」
そうだ。別に恨んではいない。
ただどの面下げて告白なんかしているんだ。って思うだけ。
「私、助けたかったけど、こ、怖くて・・・ごめんね! みっちゃんやゆかちゃんにやめたほうがいいって・・・、な、何も出来なくって・・・ でも私は、ゆうくんと一緒がよくて、だから同じ高校まで受験したんだよ・・・ ってずるいね。私が悪いよね。今更都合よすぎるよね。き、きにしないでいいんだよ!あはは・・・。」
そういって去ろうとするさとみ。
「待って!」
何で呼び止めたのかよく分からない。
多分・・・戻りたかったのかもしれない。
何も知らなかった、あの頃に。
「ゆう・・・くん?」

「いいよ。別に。」
「え?な、何がかな?」
「だから・・・付き合ってもいいってこと・・・だよ。」
「ほ、ほほほほんとにいいの!? ゆうくん!わ、私、ひどいことしたのに!?」
「ああ、いい。ただもし気に入らなければすぐに別れるからそのつもりで。」
「うん!私、気に入られるように精一杯がんばるよ!!」

 

それからのさとみは、俺にベッタリになった。
「ゆうくん! 一緒に登校しよ!」
「ゆうくん! あの歌手の歌聴いた? すごくいいんだよ!」
「ゆうくん! お弁当作ってきたんだ! 一緒に食べよ! 食べよ!」

 

以前のように俺の名前を呼ぶさとみ。だが・・・

 

「最近でたキャルの新作、すごくいいんだ!」
「ねぇねぇ、口紅って私、似合うと思うかな?」
「このまえみっちゃん達とライブ行ったの! 次はゆうくんも一緒にいこうよ!」

 

そこには確実に、3年が生み出した俺の知らないさとみがいた。

 

今日も休み時間のたびにさとみが俺の机の前にやってくる。
「えへへへへ。」
「な、何だよ。お前、たまえには他のやつと遊んだりしないわけ?第一お前、別のクラスだろ。」
「ゆうくんと一緒が楽しいよ!」
「そう、でも俺、話す気分じゃないからさ。」
「そう?じゃああたしゆうくんのこと見てるだけにするよ! えへへへ。」
「おいおい・・・・・・。」
時折見せる知らないさとみ、うざいくらいに付きまとってくるさとみ。
なぜだか分からない、なんとなくいらついてきて、顔をはたいてみる。
パチン。
「あ、あれ、ど、どうしたのかな?」
「なんとなく・・・。」
「あ、あぁぁぁぁ、そっかぁ!うんうん!全然いいよ!あはは!」
・・・何だこいつ。

 

1ヶ月もしないうちに、さとみを屋上に呼び出し俺は別れをきりだすことにした。
「・・・別れよう。」
「え?え? ど、どどどどうしてなのかな? わ、私、直すよ!ゆうくんが嫌だと思うところがあるならちゃんと直す! だから、そ、そんなこといわないで・・・、お、お願い。」
本当に弱弱しく、だが必死に懇願するさとみ。
「気に入らなければいつでも別れるっていったろ。」
「そ、そうだけど・・でも、あの、ど、どこが気に入らなかったのかな? お願い! 頑張るから! 私!」
面倒になってきた。
これって泥沼ってやつか。
まぁいいや。なんか適当な理由つけて別れよう。
「俺さぁ、最近気づいたんだがけっこう太ってる方が好みなんだよね。でも、嫌だろ? デブになるなんてさ。」
まぁ、これなら無理だろうな。こいつは自分のかわいさを少なからず自慢に思っていたはずだ。
だから・・・・
「そ、それは、む、無理・・・だよ。」
・・・分かってた、当然この答えが返ってくると、思っていた。
思い通りの展開だ。
だが、なぜか沸々と腹が立ってくる。

こいつはまた、俺よりも・・・
「あぁ、そっかぁ。やっぱりお前、俺よりもみんなが大事なんだ?」
「え? ど、どういうことなのかな? わ、わかんないよ。」
「お前は俺一人によく見られるより、周りのやつらによく見られたいんだよな。だからあの時だって俺よりみんなを選んだんだよな。」
「ゆ、ゆうくん?」
「また今回も、か。所詮お前にとって俺はそれだけのやつだったんだよな。」
そういって踵を返す。
「じゃあな。さよなら。」

 

「ゆうくん!」
さとみは後ろから俺を抱きとめてきた。
「何だよ?離せよ。」
「ゆうくん! 私、で、デブになるよ! 一生懸命太る! だからさよならなんていわないで! 私迷わない! ゆうくんが1番大事なの! だから、だからお願い!!」

 

・・・おいおい、こっちに来たときどうするか考えてないぞ俺は。
くっそ、余計なこといわなきゃ終えることができたのに。
こうなったら無理な条件を提示して・・・
「・・・わ、分かった。じゃあさ、とりあえず1ヶ月待ってやるよ。それまでに20kg太って来い。そしたらまた付き合ってやる。」
「20kg・・・。じょ、冗談だよね?そ、そんなに?」
「迷わないんだろ?」
「あ! うん! わ、分かったよ! デブになる! 頑張るから、だから1ヶ月の間も、彼女じゃなくていいから友達でいてね! お、お願いだからね!」
そうしてさとみとはそのまま別れた。
やれやれ、妙な事になったな。
口からでまかせとはいえ、妙な事をいっちまったな。
まぁ、いいや。あいつだってすぐ根を上げるだろ。

 

 

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