624氏その2
<さとみ’s side>
私やっぱりひどいことしてたんだ。
どこかで思ってた。
イジメを助けることは怖くて出来なかったけど、イジメが終われば、きっとまた仲良くできる。
助けてあげられなくても私はずっとゆうくんを助けたいと思ってたしずっと愛してた。
けど、ゆうくんにとっては関係ないよね。
結局、何もしなかったんだから、何も出来なかったんだから、心でどんなに思ってても見てみぬふりをしたんだから・・・
それは、何もしなかった他の人と一緒。
ううん! 過去を振り返ってもどうしようもないよ!
私は今できることをするんだもん!
もう2度とゆうくんにあんな思いさせちゃだめだよね。
でも1ヶ月で20kgって・・・どのくらいなんだろう?
どのくらい食べればいいのかな。
私は人より太りやすいから最近はダイエットを・・・
いえ、この体! ゆうくんのためなら惜しくはないよ!
今の私の体重はどのくらいなのかなぁ。
私の身長は158cm、体重は・・・47kgかぁ〜。
ということは目標体重67kg・・・これって1.5倍ちかくなるんじゃ・・・
いえ、やるといったらやるのよ私! 67kgなんてたいしたことないよ!
男の子はそのぐらいだって聞くし別に太ってないもんね。
でも1ヶ月で20kgは難しいよね・・・。
よーしチェックチェック!・・・すぐに太るには、っと
えーと、おすもうさんの食事を参考にして・・・
え、えーー!! あ、ありえないよ!
こ、こんなに食べるの・・・
いや、これは愛のため! そう愛のためだよ!
それから私の太るための生活が始まった。
朝は早起きして運動! お腹へっても頑張るの!
「さ、さとみ?まだ食べるの?」
「う、うん!あ、あと私、お肉が好きだからそういうのも朝食べたいな。」
「そ、それじゃあ太っちゃうわよ? ダイエットしてたんじゃないの?」
「今までが痩せすぎだったの! お、おかわり!」
「ごはん次で3杯目よ・・・。」
「大丈夫! いけるいける! ・・・げぷぅ・・・」
「ホントなの? ・・・ところで、祐一君のお弁当しか今日は作ってないみたいだけど?」
「ゆ、ゆうくんと同じ弁当で一緒に食べようと思ってるの! もぉーお母さんは口出さないでよ。」
「ゆうくん! お昼! 一緒に食べよ!」
「・・・1ヶ月。」
「で、でもそれまではお友達ということで・・・。」
1ヶ月ゆうくんと会えないなんて嫌。
一生懸命な気持ちをこめて上目遣いでみあげる。
「・・・・分かったよ。いいよ。」
「はい! ゆうくんの分のお弁当!」
「・・・あれ?お前のは?」
「私は食べないんだよ、お昼は食べないで夜いっぱい食べるほうが太れるんだって。朝食は遅い方がいいらしいからギリギリまで食べて1時間目もこっそり食べてたんだよ!」
「・・・へ〜(・・・こいつマジか?)」
「じゃあお前、飯の間何するんだよ?」
「ゆうくんとお話したいな〜。」
「それじゃ俺が飯を食えん。」
「じゃ、じゃあ、ゆうくんが食べるの見とくね! 気にしないでいいよ!」
「・・・・・。」
じーーーーーーー
パチン!
びっくりした。前もそうだったけどまた突然頬を叩かれた。
「あはは、い、いいよ。私でよかったら何度でも叩いてくれなのだ〜。」
「そう、分かった。」
そういってまたゆうくんはもぐもぐと食べ始めた。
い、いったいどうしたんだろう・・・。
「ぐーーーっ・・・。」
「こら! さとみさん! 起きなさい!」
「ふぇ・・・、もう食べられませんよぉ・・・。」
「・・・コラ!」
「は、はい!」
うう、でも太るにはお昼はいっぱいお昼ねしろって書いてあったんだよね。
今度はもっと、ばれないようにうまく寝なくっちゃ!
このままじゃダメなんだ。
気に入られるために、がんばらなきゃ!
夜もたくさん食べなきゃダメなんだけど、さすがに朝怪しまれまくったもんな〜
私はコンビニによってから揚げやポテチ、プリンやケーキなどを買い漁る。
うん、晩御飯のあとこっそりこれ食べちゃえば万事OKだよね!
晩御飯のあとでも食べ物はいくらでもはいる。
「はぁ〜やっぱりポテチはおいしいなぁ〜。ケーキもおいしい! 甘いものは別腹って本当だよね!」
考えてみればお昼たべてないんだから当たり前かな。
でもいくらでも入りそう。
晩御飯の2倍以上食べてるかも〜。
そしてとうとう2週間がたったころ。
「あれ?さとみってば最近太ってきてる?」
「え?みっちゃん、私そんなに太った?」
「別にそんなにではないと思うけど〜。」
「でも、お腹のお肉プニプニしてますね。プニプニです。」
「や、ゆかちゃんまでー!やめてやめて〜。」
「前はつかめなかったもんね〜、プニプニ〜。」
「あ、もう、ほんと、や、やめて〜。あっ!」
「さとみちゃん、かわいいです。でも授業中寝るのはよくないのです。」
「あ、あれは、ちょっと朝運動してるんだよ。あっ!ちょっ、ほんとに・・・。」
「じゃあ何で太ってるの〜。」
確かに少し太ってきた、でもまだ8kgしか太ってないんだ・・・。
でも最近前よりたくさん食べれるようになったんだ。
朝も5杯はご飯食べてるしおかずは脂っこいものになった。
それなのにお腹いっぱいにならず学校でもお菓子をたくさん食べるようになった。
正直周りの目が気になってきた。
お肉をつかまれるのもすごく恥ずかしかった。
恥ずかしい上にくすぐったいやら気持ちいいやらわけが分からなかった。
まるで、自分じゃない何かが私の中にいるようで怖かった。
でも、私がどんなに太ってもその先にはゆうくんがいてくれるんだ。
だから頑張れるんだ。
「・・・ほんとに太ってきたな。すぐ根をあげると思ってた。」
「私、もうゆうくんを裏切らないって決めたんだもん! えへへ。偉いかな? 見直してくれたかな?」
「何kgくらい太ったんだ?」
「・・・まだ、8kgなんだ・・・。」
「何だ、まだ12kgもあるじゃん。大丈夫なのか? やめてもいいんだぞ?」
「ま、任せてよ! 私、頑張っちゃうからね!」
「・・・・・。」
それから残りの時間は本当に頑張った。
できるだけ鏡や体重計にも乗らないようにした。
途中経過を気にするとなかなか集中できないから。
ご飯の量はもっと増やしたし、脂っこいもの中心になっていった。
そのうち我慢できなくなり昼も自分の分を吉野家の豚丼を5つほど買って食べるようになった。
こうやって食べてると不思議なことに、以前まで食べていた量よりずっと多く食べることができている、いや、もっと食べたいと思う自分がいる。
胃が大きくなっちゃったのかな。
今じゃ学校でも余裕があればお菓子をパクパクと食べる。
まるで豚のように、一心不乱に食べ続けた。
朝の運動もほとんどしなくなった。した方が太るには効率がいいらしいが
それよりももっと頑張って食べればいいじゃんという結論に達したからだ。
っていうかまぁ、運動がつらくなってきたんだよね。
何か、出かけるのもめんどくさいよ。