豚は豚へ 〜ある魔女裁判の記録〜

豚は豚へ 〜ある魔女裁判の記録〜

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ムリリ… ムリムリムリ…

 

「あぁ… ああぁ…」

 

杖で押さえられたメリッサの腹が、少しづつ膨らんでいく。
呼吸で上下しているのではない。
膨らんだ腹は、凹むことなく、さらに大きく膨らんでいく。

 

「アレハンドロ様… これは…」

 

部下が驚いている内に、メリッサの胴からはくびれが消え去り、寸胴なものに変わっていた。
ふと下半身に眼を移せば、いつの間にやら両ふとももにムチムチと肉がつきボリュームが増しているではないか。

 

「いやぁ! やめてぇ! 封印を解かないでぇ!」
「封印? アレハンドロ様…」
「ピエトロ、よく覚えておきなさい。私が新しく開発した魔女の尋問方法です。魔法使いの魔法の源は… 全てではありませんが… 肉体の持つ生命力です。」
「はい… 存じ上げております…」
「肉体… 骨や血といった実在が容器となり魔力が宿るのです… 肉体の中で一番増やしやすいものは脂肪です。魔女は脂肪を蓄え、魔力の容量を増やすのです。」
「え… でも彼女は…」
「そう、儀式を行えるほどの魔力を持つのならば、本来ならもっと肥え太っているはずですが、魔女は魔力の一部を封印に使い、魔力を圧縮しています。」
「それでその封印を!」
「そう、少量の脂肪に高密度に圧縮された魔力を解凍しようというわけです。」

 

ぶくぶくぶく…

 

「うわああぁぁぁぁ!!!!」

 

メリッサはみるみる太っていき、元の身体は見る影もない肥満体となっていた。
腹は妊婦のように膨れ、尻は横に横に広がっていく。
乳房もムクムクと膨らみ、重みで楕円状に変形し始めていた。
腹、腿、尻、胸の肉の膨らみは、麻のワンピースをグニュグニュと押し上げ、
突き破ってしまいそうだ。ツヤのある頬肉が隆起して顔を丸くさせ、
頸と顎の周りにもたぷたぷと柔らかい肉がまとわりついていく。

 

「彼女は儀式処理で魔法を発動することができない。解凍された魔力は行き場を失い、肉体に留まるしかない。そこで、行き場を失った魔力は脂肪へと還元されるのです。」

 

ブクブクブク… ムリムリ…

 

「ああぅ… ああぁ……」

 

ワンピースの生地が限界まで伸びて、ぱっつんぱっつんとなる。
締め付けられる圧迫感が苦しいが、脂肪の膨張は止まらない。
大きく膨れた腹は既に胴の脇や背中まで包み込む巨大な肉塊となっている。
自分自身の腹が重くメリッサにのしかかる。
ワンピースが引き伸ばされたせいで、裾は股の近くまでずり上がっており、
白い太ももの大部分が露出していた。
太ももはさながら白い丸太のようだった。
しかも、脚につく脂肪が増えるにつれて、脚を合わせるのが難しくなり開脚せざるを得なくなる。

 

ずり… ずり…

 

身体でもっとも幅の広い部分、尻肉の増大により、裾がめくれ、白いパンツが露出する。
しかしそのパンツも豊満な尻肉に食い込み、その面積を狭めつつあった。

 

「はぁー… はぁー… はぁー… っう! ううぅううぅぅぅぅ!!!!」

 

ずもももももも…!!

 

ブチッ! ビッ!  ビビッ!

 

膨張が急速になり、遂にワンピースが裂けはじめた。
裂け口からは、白く柔らかい肉がはみ出した。

 

プルンッ!  ぶにぶに…

 

布の緊縛がないと、より一層、贅肉はブクブクだらしなく膨らみだす。
それはつまり、メリッサのプロポーションそのものがだらしなく変貌することを意味する。
ぶよぶよとした肉の塊に変わっていくメリッサ。

 

ビリリッ!
       ぼるんっ!!
大きな肉塊が腹部の布を裂いて顔を出す。

 

ぶちぶち…
        ぽろんっ! ぷるんっ!
二つの歪な肉塊が胸から飛び出す。

 

「ひっ… いっ……」
わが身に起こった恐怖に打ちひしがれ、涙に濡れるその顔も、みるみる内に脂肪に埋もれていく。

 

「うぅ… うぅ… (ダメ… 落ち着くのよ…)」

 

涙をすすりながら、必死にかすかな魔力を集中させ、精神を保つメリッサ。

 

「おい、こっちを見ろ。」
「…う゛あ?」

 

いつのまにか、アレハンドロは大きな鏡を部下たちに持ってこさせていた。
メリッサの全身が映る大きな鏡だった。
そう、だらしなく肥満し、今もなお醜い姿へと変わっていく自分自身の姿だった。

 

「あ… ああぁ……」

 

腹から飛び出し、段々に積み重なりながら、ひとつひとつの段はなおも分厚く、
丸く膨らもうとしている腹肉。
乳輪が引き伸ばされてしまうほど、急激に大きく膨らみ、
球形を保てずに分厚い肉の層となって左右に垂れ下がる乳房。
脚がどう曲がっているのか、どこからが尻なのかさえ分からないほど、
ぶよぶよと膨らみ床に横たわる下半身の贅肉。
振袖のように垂れ下がった二の腕の肉、トドのようにぶら下がる顎の肉、
ぷっくりと膨れ顔を押しつぶす頬の肉。
肉、肉、肉ひたすら肉の集合体。16歳の少女の姿は消えうせて、
膨らみゆく脂肪の塊が、自分の姿だった。
その姿を確認した時、メリッサはパニックに陥り、我慢などというものは吹き飛んでしまった。
そう、愛すべき家族や、守るべき魔法使い仲間のことも―

 

「いやあああ!! 言い゛ますっ! 魔女のアジトの゛場所教え゛ますう゛ぅぅ!!」
「ほう、何処だ?」
「ああ゛ぁぁ!! ア、アラリト山麓の古い遺跡と、メジト旧市街の地下水道… あと、アリケーの渓谷にも隠し里があり゛ますっ!」
「それで全部か?」
「わだ、私の知ってるのはこれで全部です! だから、だからもお゛やめでぇ!!」
「自分のために仲間を売ったか… 所詮魔女などこんなものだ…」
「ハァー… ハァー… ハヒィー…」
「よし、これで尋問は終わりだ…」
「ふぅ… ふぅ… は、はやく術を解いてぇ… 元に… 戻れなぐ… なっぢゃうう゛…」
「いやぁ、尋問は終わりだが… まだ君は『罰』を受けていないだろう?」
「ふぅあ…?」
「今までの罪を償い、二度と外法を使えないようにする罰だよ…」
「…え? …えぁ?」

 

ズギュウウウゥゥウゥッゥゥウゥゥゥンッッ!!

 

「っんっはああぁぁあっ!!??」

 

かつてないほどの強い魔力が、既に限界に達しているメリッサの肉体に注がれる。

 

「魔力を全て解凍して脂肪に還元し、二度と魔法が使えないよう処置を施す… 神の施しです、受け入れなさい。」
「あ゛… ああっ… ダメぇ… あっ… あぉぉ…」

 

既に封印用の魔力は底をつき、精神力だけで魔力の強制開放を押さえていたメリッサだったが、
この絶望的な魔力を前に、遂に精神が折れた。
心が折れたとき、魔力は解き放たれ、全身の脂肪細胞を肥大・増殖させた…

 

ブボボボボボッ! むにににっ! ずぼぼぼぼぼおおっ!

 

一ヵ月後…

 

「豚は元気か?」
「こちらからご覧ください。」

 

アレハンドロが独房の小窓から中を伺う。

 

「ふひぃ… ふひぃー… はぁはぁ…」

 

荒い息遣いと、野太い唸り声が独房に響く。
汗にまみれた巨大な肉体が、大人一人分くらいありそうな贅肉をぶら下げた腕を使って、
食物を貪り食っていた。
大きさは象よりも大きいだろうか?
肉を積み重ねたピラミッドのような物体… メリッサの成れの果てである。

 

「また太ったな… 『餓鬼』は順調に働いているようだな…」

 

「餓鬼」とは、魔術で造られた人工生命体であり、寄生虫のような姿をしている。
メリッサはあの後、餓鬼の幼生を体内に植えつけられた。
餓鬼は尽きることのない空腹を宿主にもたらすが、
餓鬼自身が消化できる養分はほんの僅かでしかない。
餓鬼に寄生されると、四六時中食欲が収まらないが、
膨大な食事のほぼ全ては餓鬼ではなく宿主に吸収される。
そのためメリッサは一日中手を休まず食べ続け、太り続けている。
しかも、精神が食欲に常に支配されているため、魔法を発動できず、
魔力を再び圧縮することは適わないでいた。

 

「これが魔女の罰だ。必要以上に食べ、『大食』の罪を犯しながら、自然の摂理に背き偽りの肉体で過ごす罪… この罰は魔女を本来の姿に戻し、自身の欲の報いを受ける罰なのだ…」
「アレハンドロ上席審問官!」
「何だ?」
「メジト旧市街において、メリッサ・クレソンの妹と2人の姉、そして母親を拘束したとの連絡が入りました。」
「…そうか、メリッサ嬢が白状してくれたお陰だな。それでは、クレソン一家揃って罪を償ってもらうことにするか…」

 

ぐちゅぐちゃ… くっちゃくっちゃ…

 

「んはー… ふぅ… おいし… んはぁ…」

 

〜完〜

 

 

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