呪われた体重計

呪われた体重計

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それから更に一週間が経った。
「(これを食べたらまた太っちゃうけど……いいよね♪)」
私は今、また明日からダイエットを実行……していない。
こんなに食べていたら太ると解ってはいるのだが、湧き上がる食欲には勝てないのだ。
「ちょっとちょっと弥朱、それ食べるのやめた方がいいって、あんた本当にやばいよ!」
「ん〜、解ってはいるんだけどねぇ。お腹がすいて仕方がないんだよねー。」
「いーや解ってない、はっきり言ってあげるけど、いまの弥朱はぽっちゃりを通り越してデブよデブ!」
そういって私の制服をめくる明美。
「ほら、この立派な段々腹!制服のスカートももうホックが閉められないんじゃないの!」
制服の下には、明美の言う通りの段々腹と、ファスナー全開の上に、安全ピンを使って無理やり止めているスカートが有った。
「こ、これは一昨日にスカートのホックが壊れt」
「それが太ってる証拠なんじゃない!」
「とにかく、今すぐダイエットをしないと本当に取り返しが付かなくなるよ!だからこのお菓子は没収!」
「アッー!明美の鬼ー!」
「鬼で結構!それ以上太るとその体操服も入らなくなるよ!」
そういって、明美は私の体中の贅肉をぷよぷよと揉んで来たのです。

「ほら、おっぱいもお尻もぱつんぱつんになってるじゃない、触ってる分には気持ちいいけどね。」
「ひゃ、やめて、ふぁ、くすぐったいよう明美!」
「それ、それそれ!」
「や、らめ……ひゃん!」
「弥朱ぁ、気持ちいい?もしかして感じちゃってたりしてる?」
「ひぁ、そんな、下品なこと……ふぁ……」
明美は、元々レズビアンの気が有ったのか、はたまたただ調子に乗っただけなのか、
私の胸やお尻を執拗に揉んで来ている。
「そのブラを付けてると窮屈でしょう?外してあげるわ。」
え?と反応する暇も無く、明美は私のブラのホックを外してしまった。
そして、体操服越しでもはっきりと解る程に、拘束から開放された胸が激しく揺れる。
「どう、すっきりしたでしょう?」
そういうと、明美は前よりも激しく胸を鷲掴みにし、激しく揉みしだいた。
「ひゃ……あけみ……やめて……」
「だーめ、これからがいい所なんじゃない。」
そういって、明美の手は私のパンティーの中に伸び……

「ちょっと弥朱!明美!二人とも何やってるの?遅れちゃうわよ!」
「うん、今行く今行く!」
私は、神の助けに乗って急いで校庭に向かったのだった。
パンティーが少し濡れているのは、びっくりしてちびっちゃったから……としておこう。

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ、も、もう、ダメ……」
「こらー!林、何度も歩くな!ちゃんと走れ!」
「はぁ、はぁ……は、はい!はぁ、はぁ……」
先週もかなりきつかった校庭二周だったが、今週はその比ではない。
全速力で走っている訳でもないのに、100mもしない内に息が切れて走れなくなる。
先生に怒鳴られて、仕方なくまた走り出すが、体が自分の物じゃないみたいに重い。
そして、胸も、お腹も、お尻も、腕も、足も、そして体中の肉と言う肉がぶるぶるぶよぶよと震えて私を邪魔してくる。
結局、みんなが走り終わってしばらくしてから、死にそうになりながら校庭を走りきったのでした……。

 

その日の夜、家に帰ると、きつくて堪らないブラを外し、半裸になって姿見の前に立って見た。
「うわ……予想以上ね……」
元々丸かった頬が更に丸くなり、顎も完全に二重になっている顔。
大きいには大きいが、かなり垂れてしまっている胸。
もはやくびれは全く見当たらず、段々が出来てしまったウエスト。
言うまでも無く、ブルマ(サイズの合うパンティーが無い)の上にはたっぷりと脂肪が乗っている。
もはやサイズの合うパンティーは一つも無く、圧倒的な存在感を持って突き出しているお尻はもはや女ではない生物と化した「オバサン」を思い起こさせる。
総合的に言うと、もはや紛れもないデブであると認めざるを得ない。

 

「なんでこんなに太ったんだろう……」
私は先週と全く同じ台詞を言った。
だが、その意味は同じではない。
太った理由は明白だ。突然、以前の五倍も十倍も食べていれば太らない方がおかしい。
しかし、何故急にそんなにも食べるようになったのだろうか。
その意味を考えているのだ。
食欲の秋と言うには少し時期がずれているし、そもそもこんなにも食欲が増える事は無い。
過食するようなストレスにも、誰かに恨まれる覚えも無い。
もちろん、太らせようとする彼氏もいない。
変わったことと言ったら、体重計が使えなくなったこと位……
「そうよ!体重計よ!それしか考えられないじゃない!」
何でこんなに事に気が付かなかったんだろう、ここ最近の出来事は全てアレがきっかけだったじゃ無い!
そうと解れば善は急げと、手近にある服を着て、スカートを……穿けなかった。
制服のスカートの代えなのだが、ファスナーを全く締めていないにも関わらず、ピチピチで今にも破けそうだ。
「ウソ!これってワンサイズ大きいはずなのに!」
とりあえず、無理やりホックを止めようとしたが、贅肉が邪魔をして全く届かない。

仕方ないので、とりあえず安全ピンをホックの代わりにして無理やりスカートを穿いて更衣室に向かった。

 

「やっぱり、こいつしか考えられないわよね……」
私は、いつものように100kgを指している体重計を見て呟いた。
「しかし、今の本当の体重ってどれくらいなんだろう、まだ、100kgって訳じゃないよね……」
「弥朱ー体重を計りたいからどいてくれない?」
「え、あ、うん……」
お母さんに呼び止められ、私はとりあえず体重計から降りた
お母さんは、少しでも見せかけの体重を減らすために服を脱ぎ、下着姿となった。
典型的な中年太りの体型であるお母さんだが、肌の張りを除けば、今の私と大差ない様に見える。
「やったわ!前に計ったときより1kg減ってる!」
「やったねお母さん!で、今何kgなの?」
「72kgよ、それがどうかしたの?」
つまり、今の私の体重は70kg位って事になるのかな?
本当にもう立派なデブなのね……。
「それよりも、あなた最近太ってきたんじゃない?ちょっと食べるのを控えないと私みたいになっちゃうわよ?」
「う、うん。明日から気を付けるね。」
まさか「もうそうなっているのよー、あははー」、とも言えずに、私は生返事を返した。

しかし、明日から気を付けると言うのは嘘ではない。考えはある。
この体重計が唐突に100kgを指してからこの異常な食欲は始まったのだ。
なら、この体重計を壊してしまえば通常の食欲に戻るはず。
そうなれば、時間はかかるにしてもちゃんとダイエットをして、元の体型に戻していける。
と言うわけで、私は近くのマンションの最上階に登り、人がいないのを確認してから体重計を地面に落としたのだった。
「これで、やっと元の体型に戻れるわね。」
体重計の残骸を見ながら呟いた言葉は、当然の様に叶うことは無かった……

 

それからさらに一週間が経った。
「これを食べたらまた太っちゃうのに……我慢できない!」
目の前にはケーキが4個にシュークリームが6個、そしてアイスが一箱。
全部私が買った物だ。
私の食欲は、体重計を壊したあの日から、収まるどころかますます加速してしまっている。
「(1個だけ、1個だけだからね!私!)」
そうやって私はシュークリームを1個口に運んだ。
麻薬の様に甘いその味は、私に快楽と、とある指示を与えてくる。
すなわち、「もっと食べたい」と言う命令である。
「もう取り返しが付かない位太っちゃってるし、これ位食べてももう変わらないよね?」
誰が聞いている訳でもないのに私は確認を取ってみる。
事実、もう取り返しが付かない程太ってしまっているのだが。
顎についた肉がそろそろ首と一体化してきたまん丸な顔
野放図に膨らんだ胸は、それでも垂れきってはいないが、ただ腹肉に乗っかっているだけである。
そのお腹の肉は、段を通り越して胸に負けない程に膨らんでしまっている。
お尻の肉も、膨らみすぎて少々垂れてきており、もはや間違っても色気が有るとは言えない。

当然、今までの服がまともに着れるはずも無く、家では買ってきたXLのジャージを、
学校へは昔から似たような体型だった母の制服を来ているが、正直どちらもピチピチになってしまっている。
特に母の制服のスカートは、既に安全ピンも届かなくなりそうだ。
さらに、学校に歩いていくときも、息切れで何度か休憩を取らないといけなくなってしまった。
言うまでも無く、休憩時にはお菓子やジュースをお腹一杯食べている。
流石にここまで太ると何も言えなくなるのか、明美も何も言ってこなくなった。
ちなみに、体育の授業は体調不良と言うことで休ませて貰った。
今の状況で校庭を2周も走らされたら間違いなく私は死んでしまうだろう。
とこんな風に自分を言い聞かせて、私は2個目、3個目とシュークリームを食べていった。
「弥朱ー!お風呂沸いたわよー!」
「はーい!今から入るー!」
そういうと、私は文字通りに重い腰を上げて、更衣室に向かったのだった。
……アイスの箱を持って。

 

「あ、体重計新しいの買ったんだ。」
更衣室には、前に壊した体重計と殆ど同じ型の体重計が有った。
私は、自分がどれくらい太ってしまったか見るために、恐る恐る体重計に乗ってみる。
「体重……100kg!いや、これだけ太っちゃったんだもの、本当に100kgになっているのかも……」
とは言え、たまたま計った時に、g単位のずれも無く、正確に100kgと言う事が有るのだろうか?
いや、そんなはずは無い、あの体重計は確かにわたしが壊した。
その疑いを晴らすために、私は体重計の上で足踏みをしてみた。
体重計の上で動けば、当然体重計の針は動くはずである。
しかし、体重計の針は、まるでそこに固定されているかの様に、100kgを指したまま動かなかった。
あの体重計が原因じゃなかったのだろうか?
体重計を壊しても無駄だったのだろうか?
それとも、一つの体重計だけが原因では無く、全ての体重計が原因とでも言うのだろうか。
いずれにせよ、私の体重が100kgになるのは止められないのは確かなのだろう。
しかも、それで体重計が私を放してくれる保証は無いのだ。
もしかして、120kg、150kg、200kgと体重計の値が増え続け、そこまで太らされるのかも知れないのだ。
「なんでこんなに太ったんだろう……」

そこまで考えて、体重計に呪われたとでも言うべき私は、呆然とこう呟いたのだった……

 

 

さらに一週間が経った。
「体重……118kg、まだまこれからね♪」
私は、ちゃんとした値を示す体重計を見ながら、嬉しそうに呟いた。
実を言うと、数日前に体重を計った所、体重は100kgを超えており、そのせいかちゃんとした体重を示すようになったのだった。
しかし、異常に増えた食欲は止まらず……いや、自分自身の意思で止めなかった。
なぜなら、太る事による新しい目標が出来たからだ。
「ねぇ、滅多に使われない値が出て嬉しい?嬉しいよね?私をこんな風に呪うくらいにそれを指したかったんだからね。」
「だから、私はあなたの望みをもっと叶えてあげるわ、いつか、私の体重であなたを潰してあげるからね。ふふふ……」
多分、狂気の色を秘めたであろう瞳で体重計を見つめ、私はそう呟いたのだった……。

 

END

 

おまけ

 

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