500氏その8
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#サモンナイト,サモナイ,SN,Summon Night
1.孤高の狙撃手と海賊の狙撃手
アム(以後アのみ)「…こんなところかな?」
両手に食料や日用品を抱えた少女、アムが呟いた。
彼女が暮らすこの繭世界ではいろんなモノが落ちて来る、無機物・有機物問わずでガラクタから役立つモノまで何でもである。
アムはそんな落ちて来たモノを生活の糧として相棒のキルトと共に変わらぬ日々を送っていた、そして今日も変わらぬ日々が続く筈だったのだが…。
キルト「ミャグ!ミャグミャグ!!」
ア「何、キルト? そんなに慌てて………んっ?」
突然騒ぎ出したキルトにアムは怪訝そうな顔でキルトの視線の先に目をやると1つの光が落下していくのが見えた。
ア「近いわね、いつも通りの落下物ならいいんだけど…けど、キルトがこんなに慌てるって事はなかったし…」
アムは少し思案する。
ここは何でも落ちて来る…それは危険なモノも例外ではない、護身用の銃を確認するとアムは面倒そうにしながらも光が落ちていった場所へ向かった。
ア「この辺りの筈ね、面倒事じゃなければいいんだけどなぁ…」
光が落ちた場所へ来たアムはキルトに静かにするよう指示を出して周囲を見渡した、すると1人の少女を発見する。
見たところ人間のようで気絶しているように感じる、影法師…言葉が通じぬ化け物ではなさそうだ。
ア「人間、よね? 私以外に初めて見たわ…大丈夫かしら、無害そうだけど…」
アムは警戒しつつも近付き銃でつついてみると頬がぷにぷにと動いた、それと同時に身動ぎをする。
アムは近くで見て人間である、気絶しているだけなのを確認した後、少女を起こそうとはたき始めた。
ア「えい、えい…!」
ソノラ(以後ソのみ)「ん、んん〜…い、痛、痛い…痛いって………痛いってば!」
ア「…起きた?」
ソ「もう先生!痛いってば!ごめんって、さっきは揉み過ぎたから………んっ?」
寝ぼけ眼を擦りながら視界がはっきりしてくると自分がさっきまでいた船室ではない事に気付いたソノラは慌てて飛び上がる。
周囲を見ても海のうの字もなければ船のふの字もない、加えて言えば愛しのアティ先生の姿もない。
船室でクノンから伝授された肥育方法でますます豊満な身体つきになったアティ先生を愛でていた筈なのに…。
ソ「え…先生?先生はどこ!?」
ア「ちょ、ちょっと落ち着いてよ」
騒ぎ出したソノラにアムも狼狽えながらも声をかける、ソノラもアムにようやく気付いたのかアムに視線を向けた。
ソ「あ、あんた誰?」
ア「…そっちこそって言いたいけど、私はアム。貴女は?」
ソ「あ…私はソノラ、えっと…」
そこからは定番のやり取りだった、ここは何処か?何故こんな状況に?等と言ったモノから簡単な自己紹介やこの世界についてまで…。
それらが終わるとソノラはアムの手を掴むと、
ソ「お願い!一緒に先生を探して!一緒の船室にいたからきっとこの世界に来てる筈なの!」
ア「えぇ?…成り行きでここまで来ただけで、そこまでする義理は…」
ソ「お願い!この通り!」
ア「銃を突き付けながら言うんじゃないわよっ!?」
結局、ここで見捨てたら見殺しも同然と折れたアムはソノラを保護・協力をしていく事になった。
これが変わらぬ日々の終わり、そして新たな日々の始まりだった。
2.嗜好伝染
アムとソノラが一緒に過ごすようになってから早くも数日が過ぎた。
最初はリインバウムと繭世界との違いに戸惑っていたがそこは海賊、各地を冒険した経験から適応するにはそんなに時間はかからなく、アムと食料調達等も行える程度にはなっている。
そしてその調達した食料をソノラとアムは一緒に調理していた。
ア「海賊弁当ね…少し量が足りないんじゃない?」
ソ「こ、これでも足りないの? 先生ほどじゃないけど、これ…女性1人分の量じゃないよ?」
ソノラが料理している海賊弁当の量に「足りない」と言ったアムだが、海賊弁当の量は凄まじい。
少なくとも3人前は軽く超えており、ソノラが言う通りアティ先生に用意する量ほどではないにしろ大量なのだ。
アムはけっこうな大食いだった。
ソ「アムって大食いね、それでその身体かぁ…いまだに痩せないとって言いつつ食べちゃってる先生が見たら嘆きそうだなぁ…」
ア「その先生、アティだっけ? キルトが気配を感じた場所や、行った事のない場所を探したりしてるけど見つからないのよね」
ソ「うん、先生の事だから大丈夫とは思うけどさ。はぁ…ここが普通に人がいる街でもあれば先生なんてすぐ目撃されて見つかりそうなんだけど」
ア「かなり太ってるのよね、確か…けどそんなに目立つ程の肥満体なの?」
この数日でアティ先生の外見や特徴を教えてもらっているアムだったが、ソノラが言う程の肥満体など想像がつかないらしく怪訝そうにしているとソノラは目をキラキラさせながらアティ先生に関して熱弁する。
ソ「目立つ目立つ!あれだけ太ってる人なんてそうはいないよ、けど肥満だからって嫌悪感なんて抱く必要ないくらい魅力的なんだから! あのずっしり重い胸もお腹も、揉むと凄い気持ちよくて抱き付けば全身を包んでくれる、とにかく最高なんだから!」
ア「そ、そう?」
若干引きつつソノラの話を聞くアム、アム自身は別に肥満体に関して特別嫌悪感を持っている訳ではないが好印象を持っているという訳でもない。
だが話を聞いていると魅力があるように感じるし、肥満というのもあくまで知識でしか知らない…。
ア「(そんなに良いモノなのかしら?…アティ、ちょっと興味が出て来たかも知れないわね)」
アムは無意識の内に肥満というものに興味を持ち始めていたのだった。
そして調理を終えて食事を済ませた頃にキルトが騒ぎ出す…どうやら何かの気配を感じ取ったらしい、しかも禍々しい魔力も感じているようだ。
キルトが気配を感じた場所を確認したアムは禍々しい魔力の件も考えて難しい顔をする。
ア「場所は…流砂の谷か、砂が川のように流れてる危険な場所ね、しかも禍々しい魔力と来た… どんな面倒事があるか分からないし放置した方がいいかも知れないわ」
ソ「ま、待って。もしかしたら先生かも知れないし、私は調べに行きたい。今は少しの手掛かりでも欲しいよっ」
ア「けど、場所も危険なのに加えて禍々しい魔力…闇雲に動いたらかえって取り返しのつかない事になるかも知れないわ!」
ソ「それは分かってる、だけど先生だとしたら1人で大変な目に合ってるかもしれない…私だけでも行くからっ!」
ア「……あぁもう!分かったわよ、準備するから待ってなさい!」
押し問答になったが最後はアムが折れる形で流砂の谷に向かう事になった2人は、そこでお目当ての1人と2人…3人の人物に会うのだった。
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