人間兵器・番外編
前へ 1/2 次へ
「はぁはぁはぁ・・」
薫は息を切らしていた。
よいしょと自分の重々しい身体を持ち上げるとお腹の肉の下には田淵の姿があった。
全身複雑骨折をしたようで仰向けになったまま泡を吹いて倒れていた。
若干ピクピクしていたので多分まだ生きているのだろう。
「っち(舌打ち)、まだ息があるか・・・・・ でもいい気味だわ・・・ 女の子抱いて失神するなんて・・ 半分失礼しちゃうけど」
(注:田淵が抱いたのは薫の腹の肉)
「で・・ どうしよう。あっ入り口があいてる。とにかくここをでようかな」
そういうと薫はのっそのっそドアに近づく。
「よいっしょ・・・・ んん!!」
薫は必死で部屋から出ようとした。
しかしながらお腹の肉が横にひっかかって出れそうもない。
薫は身体の向きを変えたり、お腹を引っ込めて通ろうとしたがむぎゅうむぎゅうとこすれる音がするだけで結局あきらめて引くことにした。
「はぁはぁ・・ ぅぅ・・ 出れない・・ どうしよう・・・ 独りになっちゃったよぉ・・・」
薫はぼやきながら部屋の中央付近に戻った。
「・・・・ん?」
田淵の横ほどに小さな小瓶が転がっていることに薫は気が付いた。
「なんだろ・・・・・ よいしょ・・・ んん・ん〜〜〜!!!」
薫は小瓶を拾おうと身体を前に傾けたがお腹の脂肪が邪魔をして前にかがむことができない。
「っく・・・ くそぉ・・」
お腹の肉には逆らえないと悟った薫はしかたがなくごろんと横になって拾うことにした。
「よいしょ・・・ やっと取れた・・・・ あれ・・・ これってあの・・・」
・・2日後・・
〜新人間兵器生産プラント〜
「・・・・ぅ・・ ここは・・?」
真帆は目を覚ました。
この二週間と少し真帆は強制的に研究所に送還され、そこで強力な麻酔を打たれ眠っていた。
当然本人は女の子を2日前に出産したことは知らない。
「・・・だれか? ・・もしもし・・」
恐る恐る真っ白なベットから起き上がる。
久しぶりに歩くので一瞬ふらっとしたがすぐにもとの感覚を取り戻し部屋の中をうろうろしてみた
「・・だれか・・・ あっ」
真帆は厚いガラス越しにいる赤ん坊を発見した。
赤ん坊はすやすや四角い透明な容器の中で寝かされていた。
いたって元気そうだ。真帆は自分は産婦人科にいるのかなとおもった。
「かわいい・・・ 誰の赤ちゃんかな・・・」
真帆はじーっと赤ちゃんを眺める
「・・・うわぁ・・・ 食べたらきっとやわらかくておいしそ・・・ って!!!! うわー!!! 何を言ってるんだ私!!! うあああああああ!!! 私の鬼ぃぃぃ!!!! 鬼畜!」
真帆は自己嫌悪に陥った。
「はぁ・・ はぁ・・ どうかしてるんだ私・・ 落ち着けぇ〜・・ そうだここから出よう」
真帆は部屋の片隅にドアらしいものを発見する。
「よし、いこう!」
真帆は勢いよく部屋を出て行った。
〜人間兵器育成実験室〜
「もちゃもちゃ・・・ ふぅふぅ・・」
薫はお昼ご飯としてマカロニグラタン10個を貪っていた
〜廊下〜
「はぁはぁ・・ この産婦人科広いなぁ・・ 人もなんでいないのかなぁ」
ぶつくさ言いつつも真帆は人を探した。
「どこだろぉ・・ だれかぁ・・・ ん?」
廊下を走っていると香ばしい香りがした。
「くんくん・・・ わぁ・・ おいしそうなにおい・・ なんだろグラタンかな? そうか近くに食堂があるんだな。それに食堂ならきっと人がいる。ああ・・・ そういえばなんかすごく私お腹すいたなぁ・・ さっきからふらふらしてるからなあ・・・ そこで何かおいしいものでも食べよう」
そういって真帆は嗅覚をフルに使って食堂を探した。
「くん・・ くん・・ あ! この部屋からにおいが流れてるな!! わーい。やっとご飯が食べれるよぉー。」
真帆は満面の笑みを浮かべにおいが流れていると思われる部屋に入った。
「すみませーん。あのごはんくださ・・・・・・ きゃあぁっぁっぁぁぁぁぁぁああああ!!!!」
「ん?」
薫はマカロニをお腹の上にぼとんとおとしながら振り返った。
「・・・・わ・・ わあああ・・・ あああ・・ あ」
真帆が思わず腰を抜かして床にぺとんと座りこんでビクビクしている。
「・・・・真帆。真帆じゃない!! 真帆ぉ!!!!!」
「っひゃ・・ だ・・ 誰よあんた・・ なんで私の名前を知ってるの?」
「私だよ! 薫! 薫だよ!! お姉ちゃんよ!!」
「嘘・・ お姉ちゃんはもっとすらっとしていて・・・ あなたみたいに大きい・・・ ひ・・ 人ぉ? (人だよねぇ・・ 多分) 人じゃないもん」
「確かに2週間前にはあなたのような体型だったわ。でもそこに倒れてるアホ研究員のせいでこんな・・ ぶくぶくになって・・ 信じて! 私よ!! 真帆!!」
「嘘だぁ嘘だぁ!! おねえちゃん・・ ぐすん・・ どこ・・・・ っは! もしかしてあんたお姉ちゃんを食べちゃったの? そうなの? だから私のことも知ってて・・・ わぁ〜ん・・・・ おねえちゃ〜ん・・・・ おねぇ〜ちゃんが・・・ へんなデブな人に食べられちゃったよぉ・・・ わぁぁあああぁああぁぁあぁん!!!!」
「だれがへんなデブな人だこらぁぁ!!」
「・・・っひ」
真帆はビクンとして泣き止んだ。
「そうねぇ・・・ じゃあ二人しか知らないこといってあげる」
「・・えっぐ・・・・・ え?」
「真帆ぉ。あんたの胸さぁ」
「む・・ 胸がなによ・・」
細い眉がピクンと動く
「友達の前ではCに近いBとか言ってるけど実際はAってことも知ってるよ〜 毎日頑張ってパット仕込んでたわねぇ〜」
「・・・いや。な・なにいってんの! 嘘ばっかり・・」
真帆の目はかなり泳いでいた。おもいっきり動揺している。
「毎日お風呂上がると鏡で自分の胸みてため息ついてたよね〜。私がオナニーすれば胸大きくなるよって教えたらその夜ハァハァしてオナって・・」
「わぁぁぁああああ!!!!!!!!!!!!! ストップ!! ストップ!!!」
真帆は顔を真っ赤にして顔を手で覆った。
「信じてくれた?」
「・・ぅぅ」
「まあ赤裸々な話もここまでにしてさあこっちおいでよ。心配したんだよ」
薫はやさしく笑って手招きをしている。全身の脂肪がぶるぶる震えている。
正直気持ちが悪い。それでも一歩一歩真帆は薫に近づいていった。
「ぁのぉ、最初に言っておきますけど、私食べても・・ あの・・ 硬くてまずいですからね」
「何がいいたいのかなぁ?」
「ごめんなさい・・・・・」
真帆は目線を軽く逸らして一歩また一歩と歩き、薫の垂れ下がった腹の肉の前まできて止まった。
「真帆ぉ・・ 心配したよ・・・ 無事でよかった。もし真帆に何かあったらって考えたらね・・ もうね・・」
そういいながら薫は体を少し前方に傾けそっと手を差し出した。
その目にはうっすら涙が浮かんでいた。
「・・・・本当にお姉ちゃんなんだ。ご・・ ごめんねさっきあんなこと言っちゃって・・・」
「いいのよ、気にしないで真帆。私は真帆が無事だった。それだけでもう胸がいっぱいなの」
「お・・ お姉ちゃん」
真帆も涙をぽろっとこぼし、薫に近づこうとお腹をよじ登っていった。
「真帆・・ 信じてくれてうれしい・・・ 私たちやっぱり双子の姉妹だからね・・」
「そうよね・・ いつも一緒だもんね。・・・お姉ちゃんってあったかくてやわらかい・・」
真帆は思わず薫のなまあたたかい腹の肉に頬ずりした。
もっちりとした肌は前とは変わらずその弾力はトランポリンを連想させる。
このまま寝てしまいたくなうほど気持ちいい薫の贅肉はやさしく真帆の体を包み込む。
真帆はゆっくりと瞳を閉じた。
「・・・・・・」
薫は自分のお腹の上で眼をつむって少し身体を丸めて寝転んでいる真帆に目をおとす。
「・・・・・・」
薫はじっと真帆を無言で見つめる。
薫は二週間前の自分と真帆のシルエットを重ねた。
一卵性ということもあって真帆は薫にそっくりだった。
薫は急に自分の体の上に自分が寝転んでいるような錯覚に襲われた。
「(違うこれは私じゃない。じゃあ私の上に乗ってるのは誰? 誰なの? この子は違う・・ この子は・・・・ 私はここにいる・・・ 私が私なの・・・)」
薫の精神は急に不安定になった
「(私が私・・・ これは違う・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 壊そう)」
薫はそっと傍らにおいていた小瓶をあけて中身をすべて取り出しさっと左手で握った。
前へ 1/2 次へ