人間兵器・番外編

人間兵器・番外編

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「・・・気持ちいい?」
「うん。気持ちいいよ」
「私たちっていつも一緒だよね。真帆」
「うん。そうだよ」
「これからもずっと一緒だよね」
「もちろんだよ。お姉ちゃん・・・」
「そう・・・ うれしいわ・・」
真帆はすっかり安心してお腹の上で虚ろになっていた。
その隙に薫は握っていた左手を開く。
手のひらには赤色に色づけられたカプセルが5錠コロコロを転がっていた。
「真帆は私と一緒・・」
薫は不気味に微笑んだ。
「真帆、疲れてるのね。疲労に効くお薬あげるよ。手を出して」
「うん・・ ありがとう。私なんだかねむくなってきちゃった・・」
そういいながら重いまぶたを持ち上げて手を広げカプセルを受け取った。
「それを全部飲んでね。そうすれば元気が出るよ」

「うん。ありがとう」
ゴクン・・・ 真帆はすべてのカプセルを疑いなしに飲み込んだ。
その瞬間薫は悪魔のように口を横に広げにんまり笑った。
「・・・・どうしたの? おね・・・・ っぅ!」
「・・・・真帆は私と一緒」
薫は全身の脂肪を揺らしながら笑った。
「・・・・おねぇ・・・ うわあああああああああああああ!!!!!!!!!」
真帆は薫のお腹から転がりおちじたばたもがいていた。
真帆は燃えるような熱さと空腹感に襲われた。
「・・・・なんだぁ? おお!!! 真帆ちゃん!! なんで君がここに・・ それに・・・ 何だ!! 何が起こっている!!」
ずっと気絶していた田淵が覚醒した。
よろよろと立ち上がりながら苦しんでいる真帆に接近する。
「田淵ぃ。ずっとそこで寝てればよかったのに、今真帆には私が以前飲んだカプセルを5錠飲んでもらったの」
「な・・ 5錠!!」
田淵は白衣の裏ポケットに手をやる。あるはずの薬がない。
きっと気絶していたときに薫が奪ったのだろう。

「ば・・ 馬鹿ぁ!! 馬鹿デブ!! お前が飲んだのは1錠! いっきに5錠も飲ませたらお前!」
「真帆は私と一緒なの。真帆にも太ってもらうわ」
「はあああ??? ふざけんなー!! 真帆ちゃんの実験が終わったら俺は彼女に告白するんだよぉ!!! だから真帆ちゃんには下手な薬は・・・」
「へぇ〜・・・ だってさ真帆、あそこの男の子ねぇあんたのこと好きだって」
真帆は苦しみから解放されふらふらをよろめきながら立っていた。
目は数週間獲物にありつけていないメスライオンのような鋭く上ずった目をしていて、頬は若干こけていた。
そして常時う〜う〜とうなり声を上げて田淵をじっと見つめていた。
「真帆ちゃん・・・」
田淵が愕然とした。
「・・・す・・ 好き? ・・・食べていいの?・・・」
真帆の口からはだらだらとよだれがこぼれ、ぽた・・ぽた・・周期的に床に落ちた。
「そ・・ 食べちゃっていいの」
「貴様ぁぁぁあああ!!!!!!」
田淵は薫に向かって叫んだ。
「・・・・いただき・・・ ます」
「!!! 真帆ちゃん・・」

真帆はうっすら笑みを浮かべ全速力田淵めがけて走り、途中でジャンプをして田淵にのしかかった。
その様はまるでエヴァンゲ●オン初号機だった。
田淵はのしかかれた拍子に仰向けに倒れ、真帆に胸もとをつかまれた。
真帆は妙な達成感のためかケラケラ笑っていた。
「真帆ちゃん・・・ よしてくれ・」
田淵は数日前の薫によるのしかかりの全身骨折のため抵抗ができなかった。
「・・・・・あはぁ♪」
よだれが田淵の顔にぽとぽと落ちた。
ブスッ!!!!
「うがあああああああああああぁぁあぁぁぁあ!!!」
田淵の左腕に激痛が奔った。
真帆は田淵の二の腕に噛み付き始めたのだ。
真帆の犬歯は皮膚を破り、腕の肉に食い込んでいて、そこから大量の血が流れる。
「あふぅ♪ あふぅ♪」
腕に噛み付いている真帆の目は笑っていた。
「うわああ!!! うわああああああああぁあぁあぁああ!!!!」

激痛に朦朧とする。
田淵は自分の腕が万力でじわじわ締め付けられているのかと思った。
ブチッ・・
鈍い音が聞こえる。腕がない。持って行かれた。
「〜♪」
真帆は上腕骨が付け根がうっすら顔をのぞかせた腕をくわえてキャッキャはしゃいでいる。
地獄のような光景が田淵の目の前に広がった。
「・・・・」
田淵はもはや声も出ないほどの痛みに襲われていた。
「・・・あひゃ♪」
千切れた腕をぽとりと落とし、口の周りを赤く染めた真帆はもう一度田淵を見つめた。
「(もうだめだ・・・・・)」
田淵は死を覚悟した。
真帆は変わった。いま自分の目の前にいる真帆は自分が愛した真帆ではない。
でもその愛らしい顔を見るとどうしてもその現実を受け止めることができなかった。
皮肉なものだ、自分の薬で自分の愛しい人を変えてしまうなんて。

「・・・・・最後に言わせてくれ」
「・・・むぅ?」
二人の動きが止まった。
「・・・・・僕は・・・・・・ 僕は君が・・・・・・・・・・・ 好きだ!!・・」
「・・・・・・・・・・・」
二人の視線が重なり合う。そのまま数十秒二人は固まった。
その状態が継続することを心から田淵は願った。
「あむぅ〜・・・・・・・・・ ひゃひゃ♪」
ドッ!!!!!!!!!!!!!!!!
真っ白空間に赤い・・真っ赤な水滴が散らばった。
すべてを赤く染めるかのごとく・・

 

 

〜1週間後〜
部屋は落ち着きを取り戻していた。
部屋の中央付近には肉を完全にえぐられ、バラバラにされた田淵の亡骸と赤く染まった白衣が寂しそうに放置されていた。
真帆は文字通り肉塊となっていた。
薫に負けないほどの脂肪を蓄えまるまる太り、二人の頭の中は人間の二大欲求である性欲と食欲に他の欲求が占領されていた。
「もちゃもちゃ・・ おいしいね真帆」
「うん・・ もちゃもちゃ・・ 甘くておいしい」
薫と真帆は2リットルのアイスカップを片手にしてアイスを貪っていた。
「真帆のお腹かわいい〜」
「やめてよぉ〜 お姉ちゃんの太もももたぷたぷしててかわいぃ〜」
「やだぁ・・ もっと食べてお肉を増やそうね」
「うん。お姉ちゃん。私もっとも〜っとお肉を増やそうね」
そう言いつつ真帆は自分の垂れ下がった胸をもんだ。
「あ・・・ んん・・ き・・ 気持ちいい」
「真帆ぉ、イクのは食べてからだぞぅ」
「ごめんごめん・・」

「ははは・・・・」
こうして他愛のない会話を弾ませながら二人は仲良く生きていった。
ただ太るそれだけの目的のために。

 

 

〜THE END〜

 

 

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