脂肪遊戯

脂肪遊戯

前へ   1/2   次へ

 

 

 

番組の収録を控えた楽屋、二人の女性が待ち時間を持て余していた。
「ねぇねぇ、先輩、ゲーム… しません?」
「え… いいけど…」
今思えば、これが間違いの元だった。私の名前は黒崎ナナミ。
すらりとした長身とロングヘアが売りのグラビアアイドル。
最近ではドラマにも出て注目されてる、自分でいうのもなんだけど結構な売れっ子。
所属事務所のナンバー1… まぁ、あんまり大きい事務所じゃないけど。
「アハッ、ゲーム成立ですね」
こっちは事務所の後輩の白井早苗。通称さなたん。
ロリキャラで一部の層から抜群の人気を持つナンバー2。
私とは「同じ事務所の黒白コンビ」という事で最近よく一緒に仕事をする。
この子、少女のような幼い外見とは逆にとんでもなく性格が悪い。
ロリキャラも猫かぶってるだけだし、マネージャーは何人も辞めさせているし、後輩いびりも酷い。
ファンの前じゃニコニコしてるけど裏ではボロクソにけなしている。
確かにこの子のファンは外見的にあんまり… とは思うが人間としてどうかと思う。
男遊びも激しく、それなのに上手くバレないように立ち回る。まさに小悪魔だ。

私は一応先輩だから今のところ被害は無いけど…
私はといえば、きつそうな外見だと我ながら思うが性格はいい方だと思う。
後輩にも慕われてるし、マネージャーさんや事務所の人にも気配りは忘れないわ。
ファンの人は怖がってあんまり近づいて来ないけど、サインや握手くらい、気軽に応じるのに。
そんな訳で、黒と白、外見も中身も綺麗に正反対の私と早苗。
当然の事ながら相性はよろしくない。
いつもは早苗も自分より上の私が気に食わないのか楽屋では殆ど無視しているのに、今日はずいぶん機嫌が良い。珍しいこともあるものだ。
「ルールはやりながら説明します。先輩が先攻でどうぞ〜 じゃ、まずこっちの山から一枚カードを引いてください」
「…クラブの10ね」
「そうしたら、こっちの山からもう一枚どうぞ」
「…何これ、漢数字の十? それとも+(プラス)かしら」
「それをこのセンサーから出てる光にかざしたら先輩のターン終了ですぅ」
言われるままに、センサーの光にカードを通す。
こんなののどこが面白いの? と早苗に尋ねようとした時、違和感に気付いた。
ムクムクと全身が震え、膨らんでいくような… いや、確実に膨らんでいる!?
少し余裕のあったワンピースはパンパンに膨らみ、下着が身体を締め付ける感触。

元々スリムなナナミだったが、今はどちらかといえば肉感的な身体になっている。
「これ、不思議なカードゲームなんです。さすが先輩、10kg太っても、まだ綺麗だなんて」
「な… どういう事? だ、誰か!」
しかし、周囲は奇妙に静まり返り、不思議な事に部屋から出る事もできない。
「駄目ですよぉ。ゲームが終わるまでは他の誰も気づきませんし、ゲームを降りる行動もできないんですぅ。じゃ、次は私ですね。3… アハッ、マイナスですぅ。これ以上痩せると胸が無くなっちゃうかな?」
カードをセンサーに通すと、早苗のぷっくりとした頬がすっと小さくなり、シャープな顔つきになった。
「ちょっと、これどういう事なの!? 説明してよ早苗!」
「だから言ったでしょう?このカード、人を太らせるゲームができるんですよ〜。家の押入れにあったんです。ご丁寧に説明書も付いてましたw そうそう、早く次を引かないと、ペナルティで体重がまた増えますよ〜? もちろん、その光に記号札を通さなくてもペナルティですから。放っておくとどんどんデブになりますよ〜」
「何よそれ? …わ、私を嵌めたのね!」
「嵌めたなんて人聞きが悪いですねぇ。私清純派で売ってるんですから。次は先輩のターンですよ〜 私はゲームの親ですからいつでも辞められますけど、先輩はゲームを終えないと一生ここから出られないですよ?」
まさかそんな事はないと思いたいが、起こっている事から考えるに、ここはひとまず早苗に従うべきだ。
そう判断しナナミは何とか気分を落ち着かせながら、再度カードを引く。
…スペードのキング。ぶくぶくに太った悪趣味なキングだ。
そうして、隣の山からもう一枚…
現れたのは+の記号。そしてその札を光に通す。
とたんに、ミチミチとまた身体が膨張し、着ていたワンピースがビリ、と裂けた。

「プラス13kgですね〜。うわ、さすがに立派になってきましたね〜」
もはや一般的に見ても太り過ぎといえるレベルに、僅かな時間で変貌したナナミを、優越感たっぷりの視線で早苗が見下す。
(くっ、私の体重が52kgだったから、…75kgになったという事? 信じられないけど、どうやら本当のようね…)
生まれて初めて付いたお腹周りの立派な脂肪。
これでは信じない訳にはいかない。
ナナミはパニックになる事無く… 驚くほど冷静に状況を受け止めた。
まずは早苗からなるべく情報を引き出さなければいけない。
第一線で活躍する芸能人だけあり、頭の回転と切り替えは抜群に早い。
「…どうしてこんな事を?」
ドスの効いた声で早苗を問い詰めるナナミ。
しかし早苗は屈託無く言葉を返す。
「先輩が居なくなれば私が事務所のナンバー1になれますから。路線が違うので、先輩にはどうやっても勝てそうにないじゃないですか? なら、先輩がいなくなればいいでしょう?早苗頭いい〜」
よく当人を前にいけしゃあしゃあと言うものだ、とナナミはなかば呆れる。
思わず飛びかかりたくなったが、下手な手は打てないのでここは抑えた。
もしこの子の機嫌を損ねてここから逃げられると、私はこの空間に閉じ込められてしまう。
でまかせかも知れないが、リスクが大きすぎる。

成る程、私が太って苦しむ様を楽しみつつ、邪魔な私を蹴落とそうという訳ね。
あの子らしいわ。

 

ゲームが半分程進み、カードを引くたびにナナミの体重は数字の大小はあるものの確実に増えていき、着ていた洋服や下着は破けてすぐに使い物にならなくなった。
今は胸と股間を破けた洋服の布で何とか隠している、芸能人とは思えない惨めな格好のデブだ。
既に体重は100kgを超えている。
元々美しいだけに、見苦しいほどのデブではないものの、「デブにしては綺麗」「痩せれば美人なのに」というレベル。一般的な男性の好みからは大きく外れているだろう。
一方の早苗は、+と−が交互に出る事で効果は相殺され、相変わらず目立った変化は無く涼しい顔をしている。
「恥ずかしがらないでいいですよ先輩。女同士ですし。それに、フフ、裸よりそのたるんだお肉のほうがよっぽど恥ずかしいですから」
「じょ、冗談じゃないわ! さっきから私ばかり太るのに、アンタは殆ど変化が無い。明らかにイカサマよ! せめて、もう一度カードをシャッフル…」
そう言って記号のカードの山を奪おうとするナナミ。
しかしカードの山は微動だにしない。
「な、何でよっ…」
それを見ながら、愉快な見世物だ。といわんばかりにニヤニヤと笑う早苗。
(フフ、無駄よ。一旦ゲームが始まったら、数字札も記号札ももうシャッフルはできない。アンタは+100kgで、私は−1kgで終わることはカードの順番をいじってもう決定済みなんだから。まぁ、勝った方は体重は元通りになるから関係ないけど。一瞬でもあんな醜い姿になりたくないもの)
「ありがたく思ってくださいね?本当は×や÷のカードもあったんですから。体重が10分の1になったり10倍になったりしたら、流石に死んじゃうかも知れないのであらかじめ抜いておきました。早苗優しいでしょう?」
それじゃあ、最大でいきなり体重が13倍になったり13分の1になる事もあるって事?
何てタチの悪いゲームだ。思わずナナミは背筋が冷たくなった。
「アハッ、先輩これで120kg突破〜! うわ、凄いお腹〜。気持ち悪いですね〜?」

ナナミにもたまに−の札も出るが、早苗の反応でナナミはすぐに気付いた。
私が一喜一憂する様を見て彼女は楽しみたいんだろう。
猫が鼠をじわじわといたぶるように。
その証拠に、決まって−の出る時は少ない数字、+が出る時は絵札…
もちろん、体重は着実に増え、以前の体重の軽く倍以上。
日常ではまずお目にかかれないレベルだ。
快適だったエアコンの効いた室内は今は座っているだけで猛烈に暑い。
全身から汗と脂が入り混じったものが滲み出し、もはやお腹の脂肪は段を作る事も無くデンと異様に膨れ上がり、股間を完全に隠してしまい手で隠す必要すら無い。
「ふぅ、はぁ、急にこんなに太ったら、皆、おかしいと思うわよ…」
「そこは大丈夫ですよ。このゲームが終わったら、勝者の記憶しか残りませんから」
「…そんな都合のいい話ある訳無いわ。はぁ、洗いざらい、喋ってやるから」
「負けてデブになった方は、元々デブだったって事になるんです。本人も周りも皆、黒崎ナナミは前からデブでしたー。って事になるんですよ。その後はどうなるかは分かりませんけどね。実は、事務所の売れそうな後輩も何人かこのゲームで潰してるんですよ〜。若い芽は早めに潰しておかないと。先輩も全然気付かなかったでしょう?」
この女ッ…! 想像以上のとんでもない腹黒だ。
「楽しみですね〜。これが終わったら、先輩がどんな事になってるか。こんなデブじゃ、女としても、いえ、人間としても見て貰えないでしょうし… 綺麗だった先輩は早苗の胸にそっと閉まっておきますね。永遠に」
まずい、それが本当なら私はもう終わりじゃない。
このままでは全てあの子の思う壺だ。

デブになるのは勿論御免だが、それ以上にあの性悪女にいいようにされるのは我慢ならない。
考えろ… 考えろナナミ… 必死に頭をフル稼働させる。

 

そうしているうちにもどんどん体重は増えていき、残りの記号カードは僅かになった。
あらかじめ×と÷のカードが抜かれているため、多少数字札は余っているが、決着はもうすぐだ。
このままではもちろんナナミに全く勝機は無い。
楽屋に置いてある鏡を見ると、醜く変わり果てた自分の姿が映っている。
外見より中身とよく言うが、女性にとって100kg以上の体重がどれだけ絶望的か、今改めて思い知ったような気がする。
ナナミの美しかった顔には脂肪がみっちりとこびり付き、別人のような顔になっていた。
息も荒く、お腹周りやお尻はもちろん、首や背中、二の腕など至る所に贅肉の段差が付いている。
まだ22歳だというのに、胸は中年女性以上にだらしなく垂れ下がり、本来の位置よりはるか下に位置している。
誰もが振り返る美人は、ほんの十数分で誰もが振り返り、指さす肥満体になったのだ。
一方は可愛らしいファッションに身を包んだ少女といってもおかしくない童顔の女性。
もう一人は全裸で汗をかきながら座る超が付くほどの大柄な肥満女性… 同じ生物とも思えない。
何という奇妙なコントラストだろうか。
発狂しそうになる感情を無理矢理抑えつけ、ついにカードは残り2枚になった。
(…一つ、思いついたわ… でも、普通に考えたらまず無理… いや、やってみるしかない。
でも、その為にはあの子が…)

 

 

前へ   1/2   次へ


トップページ 肥満化SS Gallery(個別なし) Gallery(個別あり) Database