394氏その1
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#東方Projectシリーズ
「えぇい、行ったらぁぁぁっ!」
美鈴が涙目でフランドールへ突っ込んで行った。
高らかに鈴の音を響かせて七色の細かい弾を盛大にバラ撒く。
フランドールが弾の中に消えた。
「頼みましたよ、お二人ともーっ!!!!」
ひたすら弾を撃ち続けながら美鈴が叫ぶ。
七色の壁に阻まれてお互いの姿は確認できないが、
パチュリーも魔理沙もほとんど同時に頷いていた。
魔理沙は懐から取り出したスペルカードに、パチュリーは魔導書の一頁に記された魔法陣に、
それぞれ魔力を注ぎながら高らかに宣言する!
「「ノンディレクショナルレーザー!!!!!」」
二人の発動宣言とほぼ同時にフランドールが七色の壁を破って飛び出す。
まずは美鈴にターゲットを絞ったようだが、その行く手を低空・上空から伸びるレーザー群が遮る。
パチュリーの読み通りレーザーは通常よりも太く、激しく火花を散らして周囲を焼き尽くし始めた。
そこには肥満弾が群がるようにまとわりついており、非常に不気味な造形を成している。
「きゃははははは! こんなもの、効かないよぉっ!」
しかしフランドールは怯まない。
左右から迫るレーザーを交わし、美鈴のバラ撒き弾を翼の一振りでなぎ払う。
ノンディレクショナルレーザーの軌道は覚えてさえいれば至極単純である。
フランドールには完全に読まれていたのだ。
だからこそ美鈴にサポートを頼んだわけだが、それも通用しないのでは意味がない。
やはり悪魔の妹には敵わないのか。パチュリーが強く唇を噛んだ、その時だった。
「うおぉぉぉぉぉっ!!!」
未だ火花を散らし続けるレーザーの中に美鈴が突っ込んで行く!
肥満弾にはダメージがないことを誰かから聞かされているのだろう。
彼女はレーザーだけを避けてフランドールとの距離を詰める。
捨て身の気迫に押されたか、フランドールが右に少し避けた。
「…あ!?」
フランドールとパチュリーが同時に驚愕の声を上げる。
ノンディレクショナルレーザーはまだ消えていない!
いつもなら既に威力を失って消えているタイミングだが、
魔理沙との同時発動でそれがズレたらしい。
その上、通常より当たり判定が大きいレーザーだ。フランドールの下半身に熱が走る。
「あっ、ひ、ああああぁぁぁっ!!!」
あぁ、追い打ちをかけなければ。だがパチュリーは動けない。
吸血鬼の狂喜の叫びに射すくめられ、エクスタシーの弾みで吹き出す発狂弾幕を
呆然と眺めることしか出来ない。
それでも美鈴は止まらなかった。いつの間にかフランドールのバックを取っている。
ミチミチと肉に被われていく腕を、フランドールの太い体に回して拘束すると、
上空の魔理沙に向かって声を上げた。
「はぁ… はぁ…… くぅっ、…外したりしたらっ、ただじゃおかないわよーっ!!」
…何? この子たちは何をする気でいるの?
「そっちこそ、ビビって手を放すなよ!!」
混乱するパチュリーの脳裏に先ほど交わした会話が蘇ってくる。
“こいつ、パワーで押し切ることしか考えてなくって…”
「まさか…っ!?」
魔理沙の肉体に魔力が収束していく。魔力とともに肥満弾も吸い寄せるが魔理沙は構わない。
フランドールがその気になれば美鈴など振り払えただろう。
だが、彼女は魔理沙を凝視したまま動かなかった。
「これが私のラストワードだ!! ブレイジングスタァァァァァァッ!!」
図書館の空気が激しく振動する。
目も眩むような白光を身に纏った魔理沙が真っ直ぐにフランドールに突っ込んでいく。
さながら、願いをかけられた彗星のように。
―…フランドールが声もなく笑った。
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