FGI氏その6 双六編
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遺跡内双六の間の一部に『スタート』と床に書かれた部屋がある。
誰も居ないはずの部屋に突如一人の女性浮いた状態で現れた。
普通の女性と比べ横に大きい女性、由香はドスンと音を立てて落ちた。
「あう・・・ いたた・・・ こけちゃった・・・ アレ?」
こけそうな時に目を瞑った為転送された事が分からない由香は改めて回りを見渡し、ここが通学路では無い事を知った。
「・・・ココドコー・・・ あれ、服が・・・」
そして、先程まで学生服だった自分の服が変わっている事にも気が付いた。
埃や土で汚い床に落ちたにも関わらず汚れの一切無い、純白のワンピース。
由香の服では無いが、サイズは自分にピッタリである。
「綺麗だし可愛いけど、私の趣味じゃないなぁ・・・ でもお肉が見えないし、いっか!」
由香が自分が着ているワンピースを見ていると、突然目の前にパッと人が現れ、綺麗に着地した。
白いドレスに青い髪と目、日本人の由香にとっては外人に見える姿である。
「は、ハロー?」
「(ああ、すんなり立てる。動きやすいわ・・・ この体、出来る限り失いたく無いわね・・・)」
「(あれ? 日本語で良いのかな?) こ、こんにちは!」
「ああ、すみませんわ。気が付きませんでした・・・ 始めまして。えーっと・・・ ぽっちゃりさん?」
「え・・・ あの、(自分で聞くのもなんだけど) ぽっちゃりに見えますか?」
「え? 見た感じ100キロくらいでしょ? 普通にぽっちゃりじゃないかしら? ワンピースも似合ってるわよ。貴方」
その三倍はあったヘレンの感覚は既に普通の人の感覚とは違う物だった。
「え、あ、(私のじゃないけど) ありがとうございます」
「思った事を言ったまでよ。ところで、お名前は何かしら?」
「あ、由香です・・・」
「由香さん、ね・・・ 私の名前はヘレン。カサレリア国の王女ですわ」
「王じょ・・・!? ・・・カサ・・・ レリア? 何処ですか、そこ?」
「あら? カサレリアを知らない? ・・・貴方もしや」
ヘレンが何かを聞こうとした時、二人の横に突如魔法陣が出現した。
魔法陣が分からない由香が驚き、分かるヘレンは身構える。
「・・・転移の魔法陣でしたか。迂濶でしたね、ケイト、身体の状態は大丈夫ですか?」
「ああ・・・ だが、少なくとも体は無事なようだな。魔法も使えるし、体型変化も維持出来ている・・・ コニーの方は大丈夫か?」
「ええ・・・ 羽も大丈夫ですし、私も魔法も使えるようです、場所の特定は不可ですが・・・」
「わー! ・・・綺麗な羽が出てるー!」
「「?」」
既に消えた魔法陣から出た二人が後ろを向くと二人の女性がいた。
一人は腕を組んでこちらを疑惑の眼差しで見ているドレスを着た細い女性。
もう一人はコニーの羽を見て子供のように喜んでいるワンピースを着た太い女性。どちらも純白の服である。
「・・・凸凹コンビ・・・ か? はたまた似てない姉妹・・・ か?」
「あの、ケイトさん、何か間違った反応な気が・・・」
「いえ、あの、私達は」
「私達は今知り合ったばかりよ。それより貴方達も『転移させられた』のかしら?」
一人話を進めるヘレン。分からない由香は完全に置いて行かれ、再びコニーの羽を見ている。
「・・・もしや・・・ そっちのコンビも、か?」
「ええ。後、私達はコンビでも姉妹でもありません。彼女が由香、私はヘレン。カサレリア国王女ですわ」
「カサレリア? でも確かあの国の王女は事件以来ずっと外に出ていない筈では?」
「国民にも誰にも話せない理由があったのです! そこは聞かない!」
「・・・ならば、我々は転移仲間か・・・」
「あまり聞かない組み合わせの仲間ですね・・・ でも、敵でないのも確かみたいですね。改めて自己紹介させて頂きます。私はコニーと申します。ラゲーンの国の首都ウーイッグでシュラク自警団に所属しています」
「・・・私はケイト。同じく自警団に所属している。今は魔法で身長(他)を変えているが、巨人族だ・・・ 小柄だがな」
「羽がある人に、魔法に、ワープに・・・ ゲームみたい・・・」
「(小声で) ・・・ケイトさん、あの由香さんと言う女性、私達とはどこか違う気がしませんか?」
「・・・どこか? (由香を見て) ・・・・・・・・・体のしまりか?」
「え゙」
「確かに・・・あれでは戦う事どころか走る事も出来ないでしょうし、私なら翔びにくいでしょうし、あんな大きなサイズのワンピース見た事が、って違いますよ!」
「(・・・やっぱり、他の女性から見ても激デブに見えるんだな・・・ 私)」
「(そんなに由香は肥っているのかしら・・・? 確かに普通の人よりは多少肥ってるとは思うけど、ちょっとぽっちゃりしてるだけよねぇ?)」
「・・・まあつまり、雰囲気が、と言う事だな」
「そうです。何か私達とは違う感じがします・・・ うまく説明はできませんが」
「ん〜、ニュータイプ的直感って奴? はたまた何かの能力ですかな〜?」
「「「「!?」」」」
突然背後から声が聞こえ振り向くと、黒髪で髪の毛が一部ピンと立った小柄で太めの女性(由香除く3人は女の子と思った)が居た。
「(ケイト、気付いてましたか?)」
「(・・・不覚にも、気配も感じ無かった)」
「華鈴ちゃん!?」
「お〜う、由香ちん、おいす〜。ま〜た肥ったんじゃないの〜?」
「ゔ、いや、でも、華鈴ちゃんも体型変わって無い」
「私は維持出来ているからGJなの。ほら、またこ〜んなに肉が付いてさぁ〜?痩せないとマズいよ〜?」
ニヤニヤしながら華鈴は由香の肉に触れ抱きつく。
心底楽しそうな華鈴にちょっと嫌そうな由香。
「・・・肥りすぎだな」
「肥りすぎですね」
思わず突っ込みがハモるコニーとケイト。
「(二人とも、ぽっちゃりしてるわね・・・) ところで、そちらの・・・ 髪がピンと立った方、自己紹介をお願いしたいのですが?」
考えが何処かずれてるヘレンがとりあえず自己紹介を促す。
「おっと失礼! 私は華麗の『華』に『鈴』と書いて華鈴! なんか親は『鈴の音の様に華麗な音を〜』って付けたらしいけど、体型は真逆です! 日本出身、コンゴトモヨロシク!」
ヨロシクで右手親指をビシッと立てグッドのポーズでウインクも決める華鈴。
ウインクが似合ってないとかよりもまず出た言葉はケイトの
「・・・日本? 聞いた事が無いな・・・」
だった。驚く由香と「ま〜ね〜」と頷く華鈴。
「なんか私達日本組にとってここって異世界らしいし、知らなくても仕方ないよね〜」
「へ!? 華鈴ちゃん、異世界って何!? どういうこと!?」
「ちょっと待って、なんで貴方がそんな事を知っているのかしら?」
「ん? ・・・え〜と、魔王って人が教えてくれたんだよ?」
本当は芦屋だが『言ったのは魔王って事にしといてくれ。由香にバレると楽しくない』と口止されている。
(ヘレンと華鈴以外)「「「魔王!?」」」
『呼んだ?』
突然どこからか声がした。華鈴以外は回りを見渡すが誰も居ない。
『勝手に呼んで悪いけど、今回は声だけにさせて貰うよ。君達に姿を見せるのはゴールしてから、ね?』
「魔王! 早く姿を見せなさい!」
『まあ姫君、少しお待ち頂きたい・・・ 他の皆様は始めまして。アーガイルと申します。肩書きは魔王、どうぞよろしく・・・』
「・・・挨拶などいらない・・・ なぜ我々を呼んだ? いくら魔王とは言え、異世界の人間まで呼ぶとは・・・」
『おお、巨人族の魔法戦士様は素晴らしいね、私の心配をしてくれるとは・・・ ちょっとくらい大丈夫さ、伊達に魔王じゃない訳だからね』
「魔王アーガイル、返答が欲しいのはそこでは無く『何故私達を呼んだか』です、質問に答えなさい!」
『フム。団長様の質問に答えよう・・・ なに、簡単だよ、私は君達麗しき姫君と遊びたくなっただけさ』
「「麗しき・・・?」」
チラッと由香と華鈴を見るコニーとケイト。
『ルールは簡単。今君達が立っている場所は『スタート』。君達は賽を振り私がいる『ゴール』にたどり着けば良い・・・ 簡単だろう?』
「えっと、人生ゲームって事ですか?」
「・・・この場合は『双六』だな・・・」
「否定権は?」
『この場所は人里を離れている。更に君達の元居た場所から遠すぎる。そしてなにより、今君達が居る場所には階段も扉も無い。分かるね?』
「元々否定するつもりなんてありませんわ! 早く始めなさい!」
『やれやれ、気の早い姫君だ。では、姫君が最初にサイコロを振りたまえ』
ヘレンの頭上から20cmくらいの6面サイコロが落ちてきた。
ヘレンはそのままキャッチし振る、いや、投げる。
カァンと何も無い場所で弾かれ、床に落ちた賽は6と出ていた。
『では、前に出てくる魔法陣に』
「言われなくても!」
現れた魔法陣に入るヘレン。魔法陣から光が溢れ、光が収まった時にはヘレンが消えていた。
「・・・軽率な・・・」
『フフフ・・・ 姫君は私に国を一度半壊させられてるからね』
「では、あなたがヘレン王女が外に出れなくなった理由と言う訳ですね」
『素晴らしい察しだね、まさしくその通り・・・ さて、君達はコンビで行きますかな?』
「そう出来るのであれば、そうして頂きたいですね」
『よろしい。では、どちらか賽を振りたまえ』
再び賽がコニーの頭上から現れ、床に落ちる。
ケイトが持ち上げてゆっくりと床に落とす。賽は2と出た。
現れた魔法陣に二人で入るコニーとケイト。
「あまり話せませんでしたが、由香さん、華鈴さん、お気を付けて。出来ればお二人で行動をしt」
そこで切れ、魔法陣の光が消えた時にはやはり二人とも居なかった。
「じゃあ、私達も2人コンビで、ヨロシクぅ (ビシッ)!」
『やれやれ、元気なお嬢さん方だ』
由香の上から落ちてくる賽。だが今までとは違い、床に落ちる前に出っ張った由香の腹に引っ掛かり、そのまま腹で2度転がり床に落ちる。
出た目は1。そして魔法陣が現れた。
「じゃあこれって事だね!」
「えっ!? 私賽転がして無いよ!?」
「由香が腹出してるからだよ。だからお腹に引っ掛かって体に触れたからか何かのスイッチが入って転がした扱いされたんだよ。痩せてない自分を恨むんだね〜」
「ううぅ・・・」
『(言葉責めか、良いもんだね・・・ サラ君で試してみるかな?)』
「さあ! 魔法陣に入った入った!」
「華鈴ちゃん、なんでそんなにノリノリなの・・・?」
二人が魔法陣に入り、光が消えたスタート地点には静けさが戻った。
先程までの賑やかさが戻る時はおそらく無いだろう・・・。
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