突撃魔法少女ユキ&フウ
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さて、私が肥満化に興味を持ったのは何時からだろうか?
やっぱりあの時だろう。
そう、忘れもしないあの作戦からだ・・・
私は悪の組織『デモア』の幹部「フォル」だ。
デモアは異世界ガイアの魔族たちが、魔女『リーア』の元に集って生まれた組織である。
その目的は主に人間の生み出す負のマナを集めること。
リーア様はその負のマナを使って何かをしたいみたいなのだが、詳細は一切不明。
何でそんな目的不明の組織に入ったかと言うと、日常に飽きて来たからだ。
毎日繰り返すだけの日々に普通に過ごしてきた俺。
たまに、ハーフエルフの女の子と楽器を演奏したり、ウルフェリアの人たちと狩を楽しむ位しか楽しみが無かったからなのかもしれない。
そんなこんなで、暇な魔族が居る・・・ なんて垂れ込みが有ったのか、はたまた虱潰しなのかは分からないが、俺のところまでスカウトがやって来た。
勿論返事はイエス。即答だ。
そこそこ魔力レベルが上位に位置していたのと、リーア様に気に入られたからで幹部の座に就いてしまった俺。
同じく幹部になった魔法使いの『シャル』とも仲良くなりはじめた頃には、組織は纏まって機能するようになっていた。
そんなある日、リーア様が私たち二人にある指令を出したのだ。
それは『裏世界スフィアに進入し、そこの人間達から負のマナを収集する事』だそうだ。
ガイアでの活動は、他の魔族との勢力争いも多々有り、中々うまく集まらない模様。
そこで、リーア様は裏世界であるスフィアに目をつけた。
あの世界はガイアとは正反対で、魔力ではなく科学力が発達した世界である。
つまり、魔力に対して有効な魔力が存在しないため、そちらの世界でひと暴れすれば負のマナが集まって行く・・・ っと言うわけだ。
早速俺とシャルの二人はクロスゲートを潜り抜け、裏世界スフィア・・・ 地球にやって来た。
さて、こちらの世界に来て最初の内は計画は順調に進んではいたのである。
魔動生物を作り上げ、人間を襲わせる・・・ とは言っても、他人の少し嫌な事をするだけである。
例を挙げれば、トイレの中のトイレットペーパーを全て無くしたり、いたずら電話をひたすら掛けたりする程度のいたずらである。
だが、それくらいで良いのだ。
無理に大きな事をしない方が、負のマナは集まりやすい。
そんな経験ありませんか?
しか〜し、ある日お約束の事態が発生した。
そう、悪が存在すれば正義あり。やっぱり出てきました。ええ。
自称『魔法少女』と名乗る彼女達(多分○学生か中○生ぐらい)はフリルがヒラヒラついたゴシックドレスを身にまとい、魔法の杖なんて生易しい物は持たず、ある時はドス。
ある時はチェーンソーで武装してきて、おいおいお前ら魔法少女じゃないのかよと突っ込みも多々ありました。
シャルいわく「いまどきの魔法少女はあんな感じ」だそうです。
もしかしたら、シャルもそうかもしれません。一様魔法少女だし・・・
そんな感じで、俺達の計画は何回も何回も妨害をされていきます。
あぁ、楽な計画だったのにな・・・
はい。あらすじ終了。
「むふ〜」
シャルが可愛らしい溜息? をつきながら机にのぺっとしている。
「ねえ、フォル。次の作戦はどんなのが良い・・・」
珍しく元気が無い。
いつもの彼女なら「良い作戦が思いついたわよ!! フォル!! 作戦開始!!」なんて言ってるシャルの台詞とは到底思えない。
「どうしたんだ、いつもはお前がひらめく係りだろ?」
「うるさい・・・ 私がいつも作戦を考えてあげてるんだから、偶にはアンタが考えなさいよ・・・」
「はいはい・・・」
これは相当参ってるな・・・ 覇気が感じられない。
大方、いつも考えている作戦が悉くあの魔法少女『ユキ』と『フウ』の二人に邪魔されて失敗しているからだろう。
「本当に良いのか? 俺、えげつないよ?」
「良いわよ・・・ まっ、私の作戦の足元にも及ばないと思うけど頑張りなさいよ・・・ はぁ・・・」
「了解、了解」
さて、準備に取り掛かりますかね。
「よし。これで完成」
人気の無い港の船着場に独りでしていた作業がやっと終了したところだ。
正直寒い・・・
「後は、ここに魔法物質を置いておけば・・・」
手のひらに乗る大きさの魔法粘土を地面に置く。
「魔法少女ホイホイの完成かな?」
とは言っても、ただ魔法粘土を置いただけである。
何を今まで準備していたかだって?
それは足元に広がる、この魔法陣だ。
半径3メートルほどの円に複雑な術式を書き込んだ。
これは『結界呪法』と呼ばれる、ガイアでは良くあるマジックトラップだ。
用途は地雷と一緒。
相手が結界の中に入り、ある特定の事をすれば発動可能になる制限魔法だ。
「さてと、俺は隠れてますか」
不可視魔法ほ展開させ姿を隠し、じっと待つ。
5分ぐらい経過したときに、彼女達は来た・・・
「魔力はこの辺りから探知されたはず・・・」
「あっ、フウちゃん! アレじゃないかな?」
テクテクとフリルのゴシックドレスに身を包んだ二人の魔法少女がこちらに近づいてきた。
「あれ・・・ かな?」
「そうじゃないかな? 他にソレらしいのは無いし」
腰まで届く長い金髪を白いシルクのリボンで包みツインテールで決め、黒を基調にしたドレス姿がとても可愛らしい少女は、『フウ』と呼ばれる魔法少女。
同じく、髪の毛が腰まで届くほど長いが此方は黒髪をスラリと落とし、ピンクの可愛らしいリボンをちょんと付けている。
服装もピンクを基調とした、どちらかと言えばお姫様な感じのデザインのドレスを纏った少女は『ユキ』と呼ばれる魔法少女。
二人とも見た目は可憐だが、いざ戦闘になるととても似つかわしくない凶器を手に戦う魔法少女達なのです!!!!(怯えてます)
この目で何体もの魔動生物を殺るのを見てきた俺が保障する。
な〜んて思っていたら、魔法少女達は魔方陣の中にスタスタと足を進めているではないですか!?
チャンスです。
あと少しです。
俺の仕掛けた罠が発動するまでね。
「なんだろう、これ?」
「・・・粘土? コレが魔力反応を・・・ それにこの魔方陣・・・」
ユキがその粘土に手を伸ばそうとする。
「まって・・・ 一応確認してみる・・・」
フウの手のひらからホワッと青白い光が集まり始め、ソレを魔法粘土に翳す。
「・・・うん。平気。触っても大丈夫だよ」
「ありがとう、フウちゃん!」
どうやら、魔法粘土自体に何か有ると見たフウだったが、認識が甘かったようだな。
魔法粘土自体には何も細工が施されてはいない。
あれはトリガーの一部であり、持ち上げたら発動する信管だ。
さあ、ゆっくりと味わうが良い。魔法少女たち・・・
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