アリスの狂気的な愛情

アリスの狂気的な愛情

前へ   1/3   次へ

#東方Projectシリーズ

 

 

「〜♪」
幻想郷、魔法の森。
ここ最近、ここで珍しいモノが見れるという噂が幻想郷に広まっていた。
「〜♪」
まだ霧がかかっている早朝の森に、機嫌のよさそうな少女の鼻歌が響く。
アリス・マーガトロイド。
幻想郷でも屈指の人形遣いであり、魔法使いでもある彼女は、ここ最近とても機嫌が良かった。
霊夢やパチュリーが声をかけても上の空。
チルノが悪戯をしたり、妖精がからかったりしても満面の笑みで返す、と、
別人なのではないかと思われる程に。
一時は霊夢が「異変だ! 異変に違いない!」とアリスを問い詰めた時期もあった程だ。
…結局それも何一つ証拠も出ず、何よりもアリスが何かをする訳でもないので
逆に霊夢が周りから怒られる始末だったのだが。
「ただいま〜♪」
幸せそうな声色で、アリスは自宅のドアを開けた。
中からは彼女が作った半自立型の人形が出迎えて、アリス自身も人形を操り、

カバンなどを片付けていく。
そして、身軽になった彼女は踊るかのような足取りで部屋の前に立つと、軽やかに扉をノックした。
「ただいま、魔理沙♪ 元気にしてたかしら?」
「…う… ま、待て、アリス!」
返事を待たずに扉をあけるアリス。

 

―――そう。
実は霊夢の勘は、まるで間違っては居なかったのだ。
そして異変は確実に、それも最早手遅れの段階まで進んでしまっていた。
部屋の中には、窓に手をかけ、必死に開けようとしている魔理沙の姿があった。
普段のアリスならばこの時点で多少機嫌を悪くしていただろうが、今はそれすらない。
何故なら、魔理沙が『窓から逃げられない』という事をアリスは熟知していたから。
別に窓に何か特別な細工をしている訳ではない。
扉には鍵をかけたが、窓にはカギすらかけていない。
ただ普通よりも若干枠のサイズが小さいというだけで、
『普段の』魔理沙なら簡単に出られてしまう程度の物なのだ。

 

…が。
『今の』魔理沙では、それも叶わないだろう。
「ふふ、また窓から出ようとしてたの? もう忘れちゃったのかしら、魔理沙…
 3日前もそこに引っかかっちゃって、引っ張りだすのが大変だったのに…♪」
「う… う、うるさい! そもそもアリスが私をこんな身体にしたから…!!」
可笑しそうに笑うアリスに、魔理沙は恥ずかしそうに… 若干、普段よりも太い声色で叫んだ。

 

そう、今の魔理沙ではもうこの部屋から出る事はかなわないのだ。
大きく膨らんだ、服を破らんばかりの胸。
アリスの二倍以上はあるであろう尻。
…その胸が鎮座している、服に収まりきらずにはみ出した腹肉。
丸々と膨らんだ頬に、二つ目の顎。
袖のボタンが止められずに、むっちりと服に食い込んだ腕。
そしてその身体を支える、胴程はある二本の足。

 

霊夢が見れば絶句し、紫が見れば爆笑しそうな、その姿。
それが、今の魔理沙の姿だった。

 

「だって、そうでもしないと窓から逃げちゃうでしょう? それに大丈夫よ、魔理沙…
 私は今の貴女も大好きだから…♪」
「あ、アリス… に、逃げないからもう元の身体に戻してくれ… こんな身体、私は嫌なんだぜ…」
愛おしそうに魔理沙に歩み寄り、そしてぎゅっと抱きしめるアリス。
それを嬉しそうにしながらも、魔理沙は半分涙目になりながら、そう懇願した。
…魔理沙も乙女なのだから、当然の反応だといえよう。
「ふふっ、ダーメ♪ 第一、今元に戻っても…この食欲は元には戻らないわよ?」
クスクスと笑みを零しながら、扉の向こうから人形がケーキを1ホール分運んできた。
途端に、魔理沙の顔色が変わる。
青ざめる訳でもなく、寧ろ… まるで、餌を目の前にした犬のような表情に。
「あ… あ、あぁあ…っ! だ、ダメだ… 食べちゃダメ… ダメ、なんだ…っ!!
 アリス… アリス、お願いだから私にそれを見せないでくれぇ…っ!!」
「我慢しないで良いのよ、魔理沙… それに今日のケーキは特別製なのよ?
 ちゃんと食べてくれなきゃ勿体ないじゃない♪」
そう言いながら、アリスはケーキの一部をスプーンで掬うと、魔理沙の目の前に近づけていった。
魔理沙の視線は無意識の内にスプーンにのったケーキに行ってしまう。

呼吸は自然と荒くなり、もし後1cmでも近づければ食らいつくような、
そんな雰囲気さえ見せ始めた。

 

元来、魔理沙はそこまで食い意地が張るような少女ではない。
ケーキが嫌いな訳でもないが、1ホールも用意されてしまったら辟易する程度の、
普通の食欲の持ち主「だった」。
…しかし、今はすっかり変わってしまった。
つい1週間前にアリスの家に遊びに来た際に飲んだ紅茶によって、
魔理沙の体質は大きく変えられてしまったのだ。
物を食べればすぐに吸収され、必要な分以外はすべて脂肪に変わり。
魔法を使おうとすれば、魔力がすべて脂肪に還元されてしまい魔法は不発。
しかも食べ物を目の前にすれば、自然と食欲が膨れ上がり、食べずにはいられない。

 

要するに、今の魔理沙はただの食いしん坊な少女になっていたのだ。

 

「う、ぁ… ぁ… 我慢、できな… い… ん、ぁむ…」
「どう、美味しい? 今日のケーキはね、特別なやり方でつくった特別なケーキなの♪」
耐えきれずに、ついにケーキを口にした魔理沙に微笑みながら、
またケーキを掬って食べさせるアリス。
此処1週間、アリスの家ではずっと同じ光景が繰り返されてきた。
過剰に用意された食事(またはお菓子)をアリスが魔理沙に食べさせる、と言う光景が。
しかし、今日は何時もとは違うのか、アリスはいつも以上に上機嫌で。
それが、魔理沙をますます不安にさせた。

 

「ん、ぐ… はむぅ、ん… と、特別な、材料…?」
「そうよ、作るの大変だったんだから。 …まあ材料はいつもと同じなんだけど、量が違うのよ」
「…え… だって、いつもこんな量じゃ…?」
魔理沙がそう疑問を口にした瞬間、ピリ… と、服の袖が悲鳴を上げ始める。
「ふふっ、やっぱり10倍ケーキは効果抜群ね…♪」
「じゅっ、10倍ケーキ!?」
バツンッ!と、袖が破れ、たぷんたぷんと二の腕が膨らみを増しながら波打った。
「ええ、10個分の材料でいつもと同じ大きさのケーキを作ってみたの。
 圧縮しても堅くならないようにするの、凄く大変だったんだから…♪」
「そ、そんなの…っ、待て、頼む、やめ…ん、あむ…っ!」
止めろ、と懇願しながらも、目の前にケーキを差し出されると、自然と口にしてしまう魔理沙。
この1週間続けてきた習慣が、すっかりと根付いてしまった証拠だった。
一口食べる毎に、魔理沙の身体は加速度的に膨らんでいく。
まだ顎が残っていた顔も徐々に膨らみ始め、顎の下に肉が溜まり始めていく。

 

「んぁっ、ふ… や、やめぇ…っ、アリ、ス… ん、ぐぅ…!」
「ほら、今度は大きめに取るわよ… 喉に詰まらせないようにね?」
「やめっ、や…っ、あむぅ… ん、んぐ…」

 

大きめに、と言われて差し出されたものをみて、魔理沙は背筋を凍りつかせた。
目の前に差し出されたのは、1ピース分のケーキだったのだ。
嫌だ、と叫びそうになりながらも、それでも身体は自然とケーキを求めて…
そして、食いついてしまう。
アリスも手伝うかのように、ケーキを魔理沙の口に押し込んで。
周りに付いたクリームも、魔理沙に食べさせていって。

 

「んむっ、ん、うぅ…っ!! んうぅぅぅぅ…っ!?」

 

そして、その瞬間。
まるで風船のように、魔理沙の体が一気に膨らみ始めた。
服はビリビリと破けながら肉を溢れさせて、胸は突き出した腹に合わせるかのように膨らみ。
尻は巨大な桃のように、太腿もみるみる内に肉付きが良くなって、まるで大樹のように。
顔も肉がつき始めて、首は肉に埋まり、顎もだぷんと波打って。
そして、ついに身体を支えきれなくなったのか、魔理沙は尻もちをつきながら、
その身体を波打たせた。

 

「う、ぁ… あ、あぁぁぁ…」
「あは、魔理沙ったらまるで風船みたいね♪」
「…ぁ… う、うぅ… な、なんで、こんな、事ぉ…っ!
 これじゃあ、もう… 霊夢達に、会えないじゃ、ない、かぁ…っ!!」

 

魔理沙は肉に邪魔されて開きにくくなった目から、ポロポロと涙を流しながら泣き始める。
流石にアリスもこれには胸が痛んだのか、辛そうな表情をして… しかし、すぐに笑みを浮かべた。

 

「…大丈夫よ、魔理沙。だって今の魔理沙はとっても素敵だし…
 何より、霊夢だって『笑えないわ』」
「…アリ、スぅ…っ、だ、だって… 私… 私、こんなぁ… 豚、みたいにぃ…っ」
「どんなになっても魔理沙は魔理沙だもの… ええ、私だけの魔理沙。
 …心配しないでも、霊夢もパチュリーも、河童も… ううん、幻想郷の誰もが、そう思ってるわ」

 

そう言いながら、優しく魔理沙の膨らんだ頬を撫で、アリスは口付けた。
普通なら吐き気を催す程に甘く、濃厚なケーキの味がする魔理沙の口内を、
アリスは余すことなく舐め… そして、飲み込む。
それだけでアリスの頬は仄かにふくよかになり、そして浮かべた笑みは魔理沙にとっては
まるで女神のように感じる程の優しさを讃えていた。
そして、目の前のアリスが原因にも関わらず、魔理沙は今の自分にさえ親愛を寄せてくれるアリスに半ば感動すら覚えていた。
感動は親愛に、そして依存へと移り変わり…
それがアリスの思惑なのだとも気付かずに、魔理沙はアリスに身を委ねてしまう。

 

「ん、ちゅ… んむぅ、ぅ… アリ、スぅ…っ」
「ちゅ、ん… 魔理沙… 愛してるわ…♪」

 

キスを交わす度に、アリスの体には少しずつ肉がつき、丸みを帯びていった。
味も行為も濃厚なキスを交わしながら、アリスはにこりと微笑んで。
それが、トドメだった。
魔理沙は、完全にアリスに籠絡されてしまったのだ。

 

「…私もね、魔理沙にあげた薬の半分を飲んだの。ほら… 何となく、判るでしょ?」
「あ、ああ… 顔が、少し丸くなって… でも、アリスはアリス、だから…」
「ふふっ、有難う♪ もう半分は用事がすんでから飲むから…
 そうしたら、ずっと一緒に暮らしましょうね、魔理沙♪」

 

満面の、幸せそうな笑みを浮かべながら、アリスは少しふくよかになった体を、魔理沙から離した。
ケーキは何時の間にか人形に運び出されていて、あった痕跡すらなくなっている。

 

「ん… もう、半分…?」
「ええ、ちょっと外に用事があるから… それが済んだら、また続きを… ね?」

 

そう言いながらアリスは魔理沙の頭を優しく撫でて。
そして、魔理沙はそれに心地よさそうに笑みを零した。

 

部屋を出るまで、魔理沙と別れるのを名残惜しそうにしながらも、
アリスはこれからする事の為に外へ出る。
片手には何かが入ったバスケット。
顔には先程とは打って変わって凶悪な笑み。
そして、背中には憎悪を。

 

「…ええ、もうすぐよ、魔理沙。貴女につく悪い虫を全部、豚に変えたら…
 そうしたら、永遠に…♪」

 

 

前へ   1/3   次へ


トップページ 肥満化SS Gallery(個別なし) Gallery(個別あり) Database