710氏その3

710氏その3

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/room 2nd ティラミス

 

「…ふぅ」

 

変わり果てたナツメグさんの姿に、私(わたくし)は思わずため息を付いた。
これは一体、どういう事なのかしら?
偶々ナツメグさんが入った部屋がそういう効果だったと言う事?
それとも、この部屋… というより、これ自体の趣向がそういうものだとでもいうのかしら。
だとしたら、先ほど聞こえてきた声の主は相当悪辣ね… 正直、関わり合いにはなりたくない程に。
でも、ギブアップという逃げ道を用意してるあたり一応良心はあるのかしら…

 

「うー… くるしー…」
「…大丈夫、ナツメグさん?」

 

ナミさんの手の上で、ナツメグさんは苦しそうにうめいていた。
…恐らくは、急速に肥った事で息苦しさを感じているのでしょうね。
ともかく、これでナツメグさんやナミさん、それにエヴァンジェさんに行かせるわけには
行かなくなってしまいましたわ。
ランジェさんならまだ自力でどうにか出来そうですけれど、その3人は正直危ないもの。

 

「…ランジェさん、3人を見ていて下さいません事? 私は次の部屋を覗いてきますわ」
「待て、私が行った方が…」
「貴女にはエヴァンジェさんがいらっしゃるでしょう?
…万が一という事も有り得ますわ、私が行った方がいいでしょう」
「…む」

 

私の言葉に、ランジェさんは小さく唸ると… 申し訳なさそうに、小さく頷いて。
私はそれを見ながら、小さく苦笑すると… 部屋の中にあった、二つのドアを見て息をつきました。
目の前にあるには、赤い扉と青い扉。
恐らくは見わけをつけやすいようにする為にそうしたのでしょうけど…
返って迷ってしまいますわ。
折角だから赤い扉を… と言って、酷い目に遭うのは御免ですし… かといって裏を読まれるのも…

 

「…ダメですわね、ああ言ったのだから此処は思い切って選びませんと」

 

部屋にいた人達の事を思い浮かべる。
種族こそバラバラではあるが、彼女達は軒並み良い人ばかりだ。
『私の居た場所』に居た人間とは違う。
だから… そう、彼女達は、私が守らなければ。
そう思いながら、私は赤い扉に手をかけて… そして、迷いを振り払うかのように開け放ちました。
眼の前に広がるのは、ひたすらに赤い壁、赤い床、赤い照明。
そして、背後のバタン、と言う音に振り返ると…
そこにははじめから壁しかなかったというかのように、扉が影も形もなくなっていましたの。

 

「やはり彼女達に行かせないで正解でしたわね…」

 

ナツメグさんの例もあったおかげか、私はなんとか冷静さを保っていられました。
しかし、いつどこから来るとも解らない罠に、気を張り詰めさせて…
パタパタと、翼をはためかせながら、浮き上がり。
部屋の全景を見渡す様に、慎重に、とても慎重に空を飛びましたわ。
部屋には何一つ物は置いておらず、ただ部屋の奥に目を凝らすと、
そこには細長い通路と黒い扉が有るだけ。
あからさまな罠に、私は思わず身構えた物の… それ以外の出口は見当たらず。
私は深く息を吸い込むと、慎重に、慎重に… ゆっくりと通路に足を踏み入れましたの。

 

「…何も、起りませんわね…?」

 

訝しげにそう呟きながら、一歩一歩足を踏み入れた物の… 何かが作動する訳でもなく。
私は拍子抜けしたような気分になりながらも、奥の黒い扉へと歩き始めましたわ。

 

歩いてみると、予想以上に通路は長く…
黒い扉も相当奥にあるようでしたけれど、歩いて行けない程の距離ではないですわね。
何か罠が無いかと慎重になりながら歩いて行けば、問題なくクリアできそう…
…そう、少なくともその時の私は、そう思っていましたの。
既に、この部屋の罠に引っ掛かっていたとは思いもせずに。

 

「しかし… 随分と長い通路ですわね…」

 

かれこれ数分歩いたものの、まだ通路は長く続いていて…
私は思わず、辟易したかのように声を漏らし。
いっそ飛んで行こうかと思ったものの、罠の事を考えるとそれも出来ず…
少し休憩しようと、壁にもたれ掛った時… ようやく、私は自分の身体の異変に気が付きましたの。
…ぶに、と… 背中の何かが、歪むような感覚。
翼とはまったく違い、背中に広く広がっているその感覚に、私は思わず声を漏らし…
そして、自分の身体を見下ろすと…悲鳴を、上げそうになってしまいましたわ。
腕にはふっくらと肉が付き… お腹は、緩やかに服を押し上げて…
私の自慢の胸は、さらに膨れ上がり。
そして、お尻が大きくなっているからか… 足は…
私の足は、まるで大根のように太く、なっていましたの。

 

「…な…っ、こ、これは…っ!?」

 

通路を振り返ると… そこには、何時の間にか赤い壁が広がっていて。
最早、扉を目指す以外の選択肢が無いのだ、と言う事を私に示していましたの。
一歩、前に歩くたびに… 一度自覚してしまったからか、私の身体が揺れるのを感じて…
私は早く出たい一心で、扉を目指して歩いて行きましたわ。
しかし、何故だか扉はゆっくりとしか近づいて来ずに…
そして、私はいつの間にか息を切らせ始めていて。

 

「…っ、はぁ、はぁ…っ、なん、ですの… 何なんですの、この部屋…っ!?」

 

膝に手を付くと… すっかり前に張り出したお腹と、
そして肉塗れになった太い腕、そして足が触れて…
ひっ、と… 思わず私は悲鳴を上げてしまいましたわ。
自慢の胸も、お腹に乗る様になってしまっていて… それどころか、なぜか…
壁の高さは変わっていないのに、私の足も、腕も… 短くなって、いたんですもの。

 

「い、急が、ないと…っ」

 

ドス、ドス、と足音を立てながら小走りに、私は扉を目指しましたわ。
そして… 走るたびに、まるで身体がつぶされるような感覚を覚えながらも…
ようやく、扉に手をかけて。
扉を開くと――― そこには、先ほど… 私が入る前に居た部屋… つまり、彼女達が、いましたの。
しかし、何故だか… 私には、彼女達も、その部屋も…
先程とは、まるで別物に、見えていましたわ。

 

 

/room 1st ティラミス

 

「…え… え、え…?」
「てぃ、ティラミスか…?」

 

心配そうに話し掛けてきたランジェさんの言葉に、思わず私は頷きましたが…
しかし、そんな事よりも… 何故、皆が『こんなにも背が高いのか』と言う事に、
頭が真っ白になっていましたの。
何しろ、私よりも背が小さかったエヴァンジェさんでさえ、見上げなければならず…
丁度腰辺りまでの身長しか、無かったのですもの。
エヴァンジェさんも、ランジェさんも… ナミさんも、私に心配そうに駆け寄ってくるものの…
そのどれもが、今の私には、巨人に感じられてしまって。
下半身に、暖かい物が流れるのを感じながら、私は… 気絶、してしまいましたの。

 

 

/ステータス変化
・シュー=ティラミス
 種族:天使
 年齢:外見年齢8歳
 身長:105cm
 体重:45kg
 3サイズ:80・58・76
 備考:低年齢+体重・サイズ維持の為、かなりの肥満児に。
    知識や理性はそのままだが、飛行は当然行える筈もなく、
    歩くのさえ数メートルで息が切れてしまう。

 

 

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