710氏その7

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/冤罪執行 二月目

 

あれから、また少し時間が経って。
私は… 喜ぶべきか、悲しむべきか… いつの間にか、食事を苦に感じなくなってきていた。
すっかり吐く事もなくなり、苦しんで脂汗をかく事も大分少なくなってきたと思う。
だが、その代償… と言うよりは、結果と言うべきか。
私は、重大な問題に直面していた。

 

「…ん、く…っ、う…っ!!」

 

うめき声を上げながら、必死に今まで着てきた服に袖を通そうとするも、
既に限界ギリギリだった服を着る事が出来なくなっていたのである。
それだけでは無く… 奴等に着せられた、忌々しい下着も、段々ときつくなってきていた。
そして…最近は、もう鏡を見る事もなくなったが…それでも、目に入る腹が、
自分の身体の変化を見せつける。
お腹は既に、パンパンには張ってはおらず… 3つの段に割れていて。
指で押せば、指は柔らかく沈みこんでしまい… それが、堪らなく悲しかった。
少なからず、自分の容姿には気を使っていた私にとって… 今の状況は、地獄でしかない。

 

それはさておき… 結局服は着る事が出来ず。
私は下着姿のまま、小さく唸った。
…いかに此処が牢獄とは言えど、下着姿のままなど私のプライドが許さない。
となると、どこかで服を調達しなければいけないのだが…
…と、そこまで考えて。
今まであまり手を付けていなかった棚の事を思い出した。
確か、以前調べた時は服があるのを確認しただけで閉じたのだが… もしかしたら、
何かしら着れる物があるかも知れない。
そんな淡い期待を抱きながら、私は棚を開けて… そして、一着一着漁り始めた。
ドレスから制服、私の好みに合う服など、まるで店に来ているような感覚に陥りながら… しかし、今の自分では着れない事を少しだけ歯痒く思い、私はため息をついて。
そうして、暫く棚を漁った後… 一着の、服が目に入った。
それは、翠色の大きなジャージだった。
前の私ながら見る事もなくスルーしていたそれを、手に取ると… そっと、
自分の身体に合わせてみる。
…悲しい事に、ピッタリだった。
実際に着てみると、今の身体でも若干の余裕があり、着心地も良く。

デザイン以外に関しては、何とか満足のいく物で… 私はそれを着ると、再びテーブルに座った。

 

…それから数日が経った頃、私はある事に気が付いた。
本当ならば、もっと前に気付くべきだったのだろうが…
次第に、食事の量が増えている気がするのだ。
回数は変わっていないのだが、一度の食事の量が、以前は1人前だったのが、
今は1.5人前になっている… 気がする。
食べても、体に異常はなかったので気付くのには遅れていたのだが…
これは、危険なんじゃないだろうか。
このまま食べる量を増やされていったら、私は…

 

「…っ、そうなる前に、何とかしなければ…」

 

ふと頭をよぎった想像に、私は頭を振って、頭に浮かんだ物を振り払った。
しかし… 頭を振ると、顔に付いた肉がプルプルと揺れて… どうしても、後から後から、
悪い想像がわき上がってくる。
それが堪らなく恐ろしくて…しかし、食事をしない訳にも行かず、
私は目の前の物を食べきると、横になった。
最近、体を動かすのも辛くなってきている。
狭い部屋に閉じ込められているのもあるが… 少しだけでも、体を動かさなければ…

 

 

 

そして、暫く過ぎた後。
私の身体は… さらに、変わり果ててしまっていた。
ジャージの前を、自分のお腹が押し上げていて… 少し動くと、
お腹が見えてしまいそうになっていて。
あれほど余裕があったブラは、付けることさえできなくなり…
ショーツは、ヒモのように食い込んで。
腕も、足も… ジャージをパツンパツンに張り詰めさせていて。
そして、何よりも恐ろしいのは… 少し頭を後ろに下げると、
首の方にさえ肉の段が出来る様になっていて…
背中にも、肉の段が出来始めていたのである。
歩く度に全身が揺れて、嫌でも今の自分を自覚させて… それが、怖くて怖くて、堪らなかった。
テレビや本を読んでも、それを紛らわす事が出来ず…
結局私は、目の前の食事を食べる事でしか、恐怖を忘れる事が出来なかった。
そうして、10食食べ終わり… 何時もの如く、眠ろうと横になろうとした瞬間、入口が開いて。
そこから、また… 奴が、姿を現した。

 

「…やあ、気分はどうだい、桐生さん?」
「…貴様…っ、このっ!!」

 

ニヤケ顔を隠す事もなく、目の前に現れた八雲に、私は… 怒りにまかせて、飛びかかった。
…だが… 身体が、異常に、重い。
勢いよく、力任せに振った腕を、八雲は軽々とかわして見せて… そして、その様子を、
観察するような眼で見つめていて。
ゾクリ、と背筋を震わせると、私は何度も腕を振るい… 八雲を殴ろうとした。
だが、その全ては悉く空を斬り… たった10回ほど殴った程度で、私の腕は上がらなくなってくる。
肩で息をする程に息は切れて… その場に、私は崩れ落ちた。

 

「10回か、うん… 予想だと5回くらいでダメになると思ってたけど、結構頑張ったね。
 ふふ、しかし… もう、桐生さんは私の事をデブとかなんて、言えないねぇ…?」
「う、ぐ…っ」

 

そう言いながら、八雲は私を顔を掴み… そして、むぎゅう、と顔が歪む感覚に…
私は、嫌でも今の自分を自覚せざるを得なかった。
八雲が小太りだとすれば… 今の私は、間違いなく…

 

「…ああ、でも… それでも折れない辺り… 愛してしまいそうだよ、桐生さん。
 いや、もう恋い焦がれてるのかもしれないな… 君が壊れて、私の物になる瞬間を」
「ふ…っ、ざ、ける、なぁ…っ!!」

 

渾身の力を振り絞って、腕を振るうが… 鈍重な一撃は、やすやすと受け止められて。
そして、八雲は嬉しそうに笑みを浮かべると… 私の口に、深く… 口付けていた。

 

一瞬、頭が真っ白になり… そして、口が離れてから、ようやく我に帰る。

 

「…っ、き、貴様…っ!!」
「ふふ、御馳走様… それじゃあ、後は宜しく頼むぞ」

 

私の言葉と反応に、八雲は気を良くしたように笑うと… 再び、男たちを呼び。
抑えつけられ、注射をされると… また、意識が闇へと堕ちていく。
だが、その落ちていく視界の端で… 八雲が、小さく口を開いたのを、私は見た。

 

『愛してるよ』

 

何故だか、そんな言葉を… 呟いていたような、気がした。

 

 

 

…目を開けて起き上がる。
最早、何も驚かなくなってきたような気がするが… やはり、私の下着は着替えさせられていた。
ブラもショーツも特注なのか… 私の羞恥を煽る様に、大きさに似合わない、
動物のマークが描かれた幼稚な物で。
しかし、脱ぐ訳にも行かず… 私は、気だるさに、再び意識を手放した。

 

 

/二月目 結果

 

名前:桐生 楓
年齢:20
性別:女性
身長:168cm
体重:115kg(食事分含む)
3サイズ:112・115・129(ウエストは食事分含む)
備考:
すっかり全身に肉がつき、元の服には袖を通すことさえ出来なくなってしまった。
歩く度に全身が揺れ、少しの運動で直ぐに息が切れてしまう。
丸々と太ったその身体をジャージに包んだその姿は、美麗とは言えず。
本人は気が付いていないが、万人が『デブ』と呼ぶそれになってしまっている。

 

 

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