710氏その7

710氏その7

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/冤罪執行 一月目

 

「…ふぅ… 取り合えず、本当に薬は入ってなかったらしいな」

 

ジャンクフードを食べさせられてから30分。
私の身体は、特に不調を訴える事もなく… 部屋から出られない事以外は
何一つ制約を受ける事なく、行動を許されていた。
テレビをつければ、外と変わらない番組が流れ。
本棚を見れば、純文学からラノベに至るまで網羅された、大量の書物があり。
そして、風呂場からトイレまで完備されていて… 私は思わず、小さくため息をついた。

 

「…これではまるで、人形遊びの人形、だな」

 

そう言いながら、立派な風呂場を閉じて… そして、椅子に腰かける。
当然と言えば当然なのだが、やはり外へとつながっている扉は入ってきた扉以外には無いらしい。
窓もないから、此処が地下なのか、それとも地上数十メートルの場所なのかさえ分からないし…
万が一、あの扉から脱出出来たとしても、私は此処から脱出する術を知らない。
…なるほど、用意周到だ。どうあっても、奴は私を此処から出すつもりはないらしい。
だとすれば… 唯一のチャンスは、奴がこの部屋に来た時くらいか?
コレの首謀者が奴なら、奴さえ人質にしてしまえば… あるいは、状況を改善できるかもしれない。

 

そんな事を考えている内に、テーブルの中央が再び開き… そして、先ほどと似たようで、
多少食材が違ったジャンクフードが現れた。
量は先ほどと同じく、丁度一食分と言ったところか。
…正直、お腹はまるで空いていないが… 先程の奴の言葉を考えるに、食べない訳にもいくまい。

 

「ん… 相変わらず、味だけはいいな…」

 

一口齧れば、場所が場所なら笑顔が零れたであろう程に美味な味が口の中に広がっていく。
だが、それも今の自分にとっては、まるで嘲笑われているような気分にしかならず。
もう満腹を訴えている胃袋を抑え込むように、無理やりジャンクフードを詰め込んだ。
心なしか、少し胃が腫れたように感じる。
…当然か、これだけのジャンクフードを一度に食べるなんて、私自身やった事が無いのだから。
お腹が少し膨れているのが解ると、苦しさを紛らわす様に、
ジャンクフードと一緒に現れたオレンジジュースを飲んで。
喉奥に流し込まれていく感覚に、少しだけ苦しさが抑えられると… 私は、小さく息を吐いた。

 

「…次、奴が来たら… 顔面に、一発ブチ込んで… あのニヤケ面でも、歪ませてやるか」

 

そう言いながら、私は苦しさを紛らわす様に、ベッドに横になり。
…そして、奴が… 八雲が言っていた、『刑罰』と言う意味を、
本当の意味で知る事になったのである。

 

横になって苦しさを紛らわしていると、1時間程した頃だろうか… 再び、テーブルの中央が開き、ジャンクフードが姿を現したのだ。
毎回毎回メニューは違う物の、どれも脂っこく、どう考えても普通の食事の量では無い。

 

「…く、そ… 刑罰と言うのは… こういう事か…」

 

奴の言った言葉を、今更ながらに理解した。
…要するに、逆の意味での『兵糧攻め』だ。
普通ならば食料を断つことで相手を飢餓に追い込む事を言うが、この場合は…
無理やり相手に食べさせる事で、苦痛を与えるのだろう。
まだ最初の食事から2時間しか経っていないというのに、
テーブルに現れたモノの総量は既に3人前。
…確かに、これは刑罰だ。
苦々しく、良くこんな事を思いつく物だ、と思いながら…
再び、私はテーブルについて、ジャンクフードを口にし始める。
一口食べる毎に、額に脂汗が滲み… そして、胃が苦しくなる程に張っていくのが解る。
明らかに、許容量を超えている。
だが、食べなければ… 食べなければ、奴は本当に何をするか解らない。
唯興味があると言うだけで、これだけの事をしでかしたのだ…
人を殺す事くらい、何とも思っていないのかも、しれない。
コーラで、無理やりジャンクフードを喉の奥まで流し込むと…
私は、荒く息を吐きながら、テーブルに突っ伏した。

 

「はぁ、はぁ…っ、ん、ぐ…っ、と、トイレ…に…」

 

…そして、私はトイレに行くと… その場で、吐いた。
勿論全てを吐きだせる訳もなく、胃も、お腹も… まるで妊婦のように、ポッコリと膨らんでいて。
苦しさに、お腹を抱えながら、少しでも気を紛らわせようと本を読み、テレビを付けて。
そして、ベッドに横たわっていると… 再び、ジャンクフードがテーブルに現れる。

 

「…っ、クソ… 悪趣味、過ぎる、ぞ…」

 

その度に、私はベッドから起き上がり、無理やりジャンクフードを流し込んで…
吐いて、横になってを繰り返して。
そうして、何度それを繰り返しただろうか。
私のお腹は、まるで臨月の妊婦のように、丸々と… そして、パンパンに膨らんで。
最早身動きもとるのが辛い程で、再びテーブルから何かが出た音を聞くと…
見たくない、と叫ぶ自分の心を抑えつける様に、テーブルに視線を向けた。
しかしそこにあったのは、錠剤と、コップに入った水で。
メモを手に取ってみると、そこには… 『胃腸薬だよ。苦しかったら飲んでね』と、書かれていて。
メモを破り捨てると、私は… 奴の思い通りにしてしまうのを癪に感じながらも、
この苦痛から少しでも解放されたいと、錠剤を口に放りこみ、そして水を飲み干した。

 

「…う、ぷ…っ、く、薬が、効くまでは… 我慢、を…」

 

湧き上がる吐き気を抑え込みながら、私は横になって。
そして、少しずつ苦痛が和らいでいくのを感じながら、息を吐いた。
どうやら、今日の分はこれで終わりらしく、1時間、2時間経ってもテーブルからは何も現れない。
その事に少しだけ安堵を覚えながら… 私は、そのまま瞳を閉じた。

 

それからの日々は、ただ、それの繰り返しだった。
朝起きたらトイレに行き、出された食事を食べ、苦しくなったら吐き、そして終わったら眠る。
まるで家畜小屋の動物だな、と自傷してみても、何も変わらない。
私は唯、奴が再びこの部屋に顔を出す日を待った。
…そうして、半月が過ぎたのだろうか。
いつの間にか、トイレで吐く回数が減ってきたのが、自分でも解る。
…慣れとは恐ろしい物で、大量に食べ物を詰め込む事が、苦ではなくなってきていた。
しかしそれでも、私のお腹はポッコリと、まるで妊婦のように張り出したままで…
苦しさも、未だに消えてはいない。
それだけでは無く、最近は… 自分の体型の崩れが目に見えてきていた。
二の腕は服に食い込み、ブラは数日前からサイズが合わなくなってしまっていて。
ショーツも、尻肉にきつく食い込み… 太腿も、此処に来る以前と比べて、
明らかに太くなってしまっている。

 

「…くそ…っ」

 

…曲がりなりにも女性である以上、それだけでも辛いというのに…
鏡に映る、自分の変化はそれだけでは無かった。
顔は、ぷくぷくと… まるで浮腫んだように丸くなっていて… 心なしか、
肌も油っぽくなっていたのである。
恐らくは、体重は… 考えたくない程に、増えているのだろう。
毎日あれだけの食事を強要されれば当然なのだが… それでも、心がズキズキと痛んだ。
だが… 奴が現れるまでは、我慢しなければ。
奴を人質にさえ取れれば… まだ、希望はあるのだから。

 

そうして、最初の一月が終わる頃。
私の身体は、更に… 無様に、太くなってしまっていた。
二の腕は、腕を軽く振るだけでタプタプと波打ち。
ブラはサイズが完全に合わなくなって、とうとう付けることさえできなくなり。
ショーツも、痛いほどに食い込み… 最早、尻を隠す事も出来なくなっていて。
太腿も、尻も… ピッチリと贅肉を纏い、歩く度に揺れるのが解って。
気付けば、顎も… 認めたくはないが、二重になっていて。
そして何よりも、認めたくないのは… 今まではただ張り詰めていただけのお腹が、
柔らかくなり始めていたのだ。つまりは… それだけ、肉が付いてしまったという事に他ならず。
私は、鏡から目を背けると… それと同時に、久しく開いていなかった入口が開いた。
そこから顔を出したのは… 他ならぬ、奴。

 

「…やあ、久しぶりだね、桐生さ」

 

脊髄反射、ともいって良かった。
人の良い笑みで挨拶をしようとした八雲に、私は駆け寄ると…
一切加減する事なく、思い切り殴りつけたのだ。
…感情が昂ぶってるからか、右手が熱くなっている気がするが、痛みは感じない。
心臓が早鐘を打ち、息が切れて… 額からは汗がにじむ。
八雲の顔は無様にへこみ… そして、床に崩れ落ちたのを見ると、
私はそのまま八雲の腕を捻り上げ、そして耳元で囁いた。

 

「…久しぶりだな、八雲… ああ、会いたかったよ。さあ… 腕をへし折られたくなかったら、
 今すぐ此処から出して貰おうか?」
「ぐ、ぶ… ふふっ、ふふふふふ…っ、あはははは!!!」

 

私の囁きに、八雲は口の端から血を垂らしながら… さも楽しそうに、狂ったように笑いだす。
耳障りな笑い声に私は顔を顰めながら、腕を更に捻りあげた。

 

「貴様… 何が可笑しい」
「いだだ…っ!? はは、あはは…っ、いや、済まない済まない…
 まさか、こういった手段を取るほどの余力があるなんて思わなくてね… ああ、実に嬉しいよ。
 予想を裏切られるのは何時だって楽しい物だ!!」
「黙れ!! 今すぐ此処から出して貰うぞ… そして、元の生活に…っ!?
 い、があぁぁぁっ!!!!」

 

バチィッ、という聞きなれない音と共に、私の身体は…
自分の意思とは関係なく跳ねて、そして地面に横たわった。
身体が勝手に痙攣して、息も出来ない程の苦痛に、勝手に眼尻から涙が溢れだす。
視線を八雲の方に向ければ… 奴の手には、黒く光り、チチチチ、と耳障りな音を立てている、
何かがあった。

 

「だが、惜しかったね… 腕をへし折っていれば、君の思うとおりに行ったかも知れないのに。
 私は決して喧嘩が強い訳では無いからねぇ… こうして、自衛は怠らないのさ」
「…ひ… ひゃ、ま…」
「ああ、無理に喋らない方がいい… 改造スタンガンなんだ、暫くはまともに動けないさ。ふふ…
 でも楽しかったよ、桐生さん… やっぱり、君に目を付けたのは間違いでは無かったみたいだ」

 

そう言いながら、奴は私に背を向けると、軽く手を振ってみせる。
それと同時に、扉から何人もの男が入ってきて… そして、私の首筋に、針を刺して。
そこで、私の意識は完全に、闇に落ちた。

 

「…ん…」

 

薄く、目を開ける。
意識が次第にはっきりとして来て… それと同時に、私がベッドから、跳ねる様に起き上がった。
…目の前に広がるのは、同じ部屋。
奴の姿はすでになく… 自分以外には、誰もおらず。
手を見れば、男たちが処置したのか、包帯が巻かれていて。
そして… 違和感に身体をまさぐってみれば。

 

「…く…っ、ふ、ふざけた真似を…っ!!」

 

服の中を見ると… 膨らんだ乳房を覆うように、
見覚えの無いブラがすっぽりと乳房を包み込んでいて。
それだけでは無く、ショーツも食い込んではおらず…
奴に、着替えさせられたのだろうという事を、容易に想像させた。
それが堪らなく、恥ずかしく、屈辱で…
私は何度もベッドに拳を叩きつけながら、ボロボロと涙を零した。

 

 

 

/一月目 結果

 

名前:桐生 楓
年齢:20
性別:女性
身長:168cm
体重:78kg(食事分含む)
3サイズ:95・82・99(ウエストは食事分含む)
備考:
一月の間に二の腕は弛み、全体的に肉付きが良くなってしまった。
歩く度に各所の贅肉が揺れてしまうのを感じるほどで、美麗だった顔も薄く二重顎になっている。
服は既にパツンパツンになっており、後少し太れば着れなくなってしまうだろう。

 

 

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