710氏その8

710氏その8

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#読者参加型

 

これは、探せばきっと何処にでもあるのであろう、有触れたお話。

 

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「―――――ぁ」

 

少女の、か細い声が崩れ落ちた広間に響く。
荘厳な装飾が為されていた広間は見る影もなく砕け、荒れ果てていて。
その中央に、二つの人影が有った。

 

一つは、青白い肌をした、まだ年端もいかない少女。
もう一つは、その少女の胸を剣で貫いた、全身を銀の鎧に身を包んだ女性だった。

 

「…終わりだ、魔王」

 

女性が口を開く。
魔王と呼ばれた少女はぽかん、とした様子で串刺しにされた胸を見て… そして、口元を歪めて。
コフ、と紫色の体液を吐きだせば、その細い指先で女性の頬を撫でた。

 

「…ふむ、人の身で良くそこまで練り上げた。見事だ、コーデリア・アーデル…
 私の敗北を認めよう」
「減らず口を…!」

 

事此処に至っても、魔王は余裕を崩す事はなかった。
間もなく絶命するだろうに、少女の顔から笑みは消える事が無く…
それが、どうしようもなくコーデリアを苛立たせる。
コーデリアが剣を捩り込めば、魔王は更に吐血し… しかし、それでも尚、表情は崩さず。

 

「…私を、絶命させるお前に… 一つ、褒美をくれてやろう…」
「…っ!? 何を… ん…っ!!」

 

そして、口の端から血を垂らしながらも、魔王は両手をコーデリアの頬に添えると…
深く、口づけを交わし。
唐突な出来事に、コーデリアは目を白黒させながら… 一瞬、頭を真っ白に染めて。
その瞬間、魔王の身体からドス黒い靄が溢れだすと… 一気に、コーデリアを包みこんだ。
コーデリアは思わず身を捩るも、靄から逃れる事も、口付けから離れる事も敵わず。
靄は瞬く間にコーデリアの身体に吸いこまれ…それと同時に、魔王は唇を離した。

 

「…ぁっ、貴様、私に何をした!?」
「…さあ… 足掻くが良い、コーデリア・アーデル。貴様に与えたのは、我が魂の呪い… ふふ…っ、
 愉しませて、貰う… ぞ…」

 

動揺するコーデリアを尻目に魔王はそう呟くと… そのまま、サラサラと崩れ…
そして、灰になった。
その灰さえも跡形もなく散ってしまえば、後に残ったのはコーデリアただ一人。

 

「く… 手足は… 動く、身体に異常も… 無い …一体何をされた…?」

 

確認するように身体を動かすコーデリア。
しかし身体には何一つ異常もなく… 魔王からのダメージ自体は残っている物の、それだけで。
ひとまず身体を治癒しようとした瞬間、漸く自分の異変に気がついた。

 

「…魔術が… 使えないか。ただの魔封じでは無いだろうな、くそ…」

 

そう言いながら、コーデリアは毒づく。
魔術が使えないという事は転移も出来ないという事だ。
近隣の村まで行けば、転移用のアイテムも買えるだろうが、相当な距離が有る。
魔王からのダメージを回復しようにも魔術が使えない以上、それも出来ず…
大きく、ため息を吐く。

 

「仕方がない、歩くか… 魔王を倒したのには変わり無いんだ、特に問題は無い…」

 

魔王から受けた呪いへの不安を隠すようにそう呟くと、コーデリアは歩き始めた。
後に残ったのは、崩れ去った玉座と広間のみ。
それが、一つの戦いの終わりを告げていた。

 

 

「…空が、晴れたか」

 

魔王の城の中から魔王が現れて以来、瘴気に覆われていた空を見れば、
そこには澄み渡る青空が広がっていた。
コーデリアの胸に、何とも言えない達成感と、安堵が満ちていく。
部下達の死は、決して無駄ではなかったのだ、と。
一人だけ生き残ったコーデリアは、胸に満ちた感情をかみしめるようにしながら、
魔王の城の中を歩いていた。
あれだけ大量に居た魔物の姿は影も形もなく、本当に全てが終わったのだと、彼女に実感させる。
重かった足どりも軽くなり、自然と速足になっていく。

 

その足取りに、異変を感じたのは階段を下りはじめたころだろうか。

 

「…ん…?」

 

ズキ、と今まで何とも無かったはずの膝が痛み始めたのだ。
鎧が重いから、と言うのはない。今まで散々この鎧でコーデリアは戦ってきたのだから。
魔王から受けた傷のせいだというのなら、先程まで普通に歩けた事がおかしい。
ならば、何故?

 

「膝でも痛めたか… いや、そう言う訳でも…」

 

脚を浮かせれば、特に痛みは無い。
しかし階段を下りれば、その度にみしり、みしりと痛み出す。
それを数回繰り返して… 漸く、コーデリアは自分の異変に気がついた。

 

―――鎧が、身体に食い込んでいるのだ。

 

本来なら有り得ない。
何しろオーダーメイドで完全に彼女に合わせられた鎧なのだ。
身体に食い込む事はおろか、動きを邪魔する事も無かった筈、なのに。

 

「…つ…っ!? か、身体が挟まって…」

 

鎧の隙間に身体の一部が挟まり、締め付けられる度に痛みが走る。
そしてコーデリアはとうとう耐えきれずに、鎧を外した。
その瞬間、コーデリアの意識が止まる。

 

…たぷん、と波打つ二の腕。
弛み、段差を作っている腹。
普段よりも一回りは膨れ上がっている乳房。
鍛え上げられた身体はそこには無く、不摂生の塊がコーデリアの視界に入り込んでいた。

 

「な… ば、馬鹿な!?」

 

慌てたように、下半身の鎧も外す。
そこには上半身と同様… 否、それ以上に弛んだ下半身が有った。
外した瞬間、たぷんと柔らかく揺れる、丸太のような脚。
コーデリア自身でも判ってしまうほどの、丸々とした、大きな桃のような尻。
鎧の下に着ていた衣類を破らんばかりに膨らみ、弛んだ身体がそこにはあった。

 

「まさか… これが、呪いだと言うのか…? 私から、魔力と戦闘力を奪うつもりで…」

 

内心ではかなり動揺していた物の、コーデリアは直ぐに冷静さを取り戻し、思考を巡らせる。
先程までは痛みを感じていなかった事も考えれば、
魔王にかけられた呪いは今も尚進行しているのだろう。
つまり、早く呪いを解かなければ取り返しのつかない事になる可能性が高い。
魔王を倒し、目的は達したが… 出来る事なら、自分も生きて帰りたいというのが、
コーデリアの本音だ。
故に、コーデリアはいつもよりも重い身体で、速足で階段を駆け下り始めていた。
その度にコーデリアの弛んだ身体はたぷんたぷんと波打ち、弾んで。
それが、コーデリアには溜まらなく屈辱だった。

 

 

名前:コーデリア・アーデル
性別:女性
年齢:25歳
身長・3サイズ:165cm 101・83・114
容姿:背中まで伸びた、黒く艶やかなポニーテールと、ややキツめの美貌。若干顔もふくよかに。
   鎧を外し、今はサイズの合わない衣類を身に纏っている。
装備:聖剣/普段着/女神の髪飾り
備考:とある国の騎士団隊長。
   容姿通りのきつい性格。
   魔王の呪いが進行中…

 

 

ルート選択
A:淫魔の間(衣類関係中心の変化)
B:邪神の間(精神状態中心の変化)
C:妖精の間(容姿中心の変化)

 

 

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