710氏その9
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とある場所の、とある秘密基地。
「…ぐぬぬ」
その最奥部。
仰々しい、髑髏をあしらった玉座の上で、若干露出度の高い…ボンテージ、と言うのだろうか。
そんな衣装を着た幼い少女が、忌々しげに小さく唸っていた。
彼女の名は、魔将ロリエラ。
薄く蒼い肌に、暗闇の中でも見える金色の瞳を輝かせた彼女は、幼い顔に皺をよせながら、
額を抑えていた。
「…忌々しいエンジェルズめ!
またなけなしの怪人を情け容赦なく倒しおってからに…!!」
誰に言う訳でもなく、ロリエラは叫ぶと…玉座の膝掛けに拳を叩きつけた。
…どうやら痛かったらしく、涙目になりながら彼女は拳を抑える。
エンジェルズとは、彼女の組織…所謂悪の組織の敵であり、名実ともに実力のある正義の味方。
ロリエラは此処最近…と言うより、3か月程(エンジェルズが出現して以来)負け続けていた。
理由はとても単純である。
「大体なんであんな小娘達が強いのじゃ!!
私は齢1000を超える魔将軍ロリエラじゃぞ!?高々十数年しか生きておらん小娘が…!!」
…そう、ロリエラ達は弱かったのだ。
無論、自衛隊や軍隊やらよりは強いが、エンジェルズと相対すればその差は歴然。
毎度の如く、最早流れ作業の如く倒されていくのが、日曜の朝の定例行事となっていた。
だが、当然の如く、怪人たちも無限に居る訳ではない。
4天王的なモノも居たが、1カ月前に4人ともやられてしまった。
そして、ロリエラの手元には怪人の種が一つだけ。
まさしく、絶体絶命の危機であった。
「…あんな小娘が、どうしてあんなにスタイルが良いのじゃ!!
ふざけおって、毎度毎度子供扱いしおってからに…!!!」
…そんな状況でも、そんな考え方が出来るロリエラは、ある意味大器なのかもしれない。
だが、愚痴を言っていても返す者は戦闘員の「イー!」と言う言葉のみ。
意思疎通こそ出来る物の、ロリエラは盛大に溜息を吐き…そして、ぶっきらぼうに呟いた。
「―――もう、駄目かもしれんな」
ロリエラの言葉に、戦闘員達は慰めるように「イー!イー!」と叫び…そして、
不意に戦闘員の一人がロリエラの前に歩み出た。
「なんじゃ、10293号か…何?私に良い考えがある?」
戦闘員はロリエラの問いに大きく頷けば、胸を叩いて見せた。
ロリエラは期待半分、冗談半分で戦闘員の言葉に耳を傾ける。
…傍から見れば、戦闘員に説教されているようにも見える光景である。
「…ほう、ほほう…成程、搦め手と言う訳じゃな?」
「イー!」
「なんと!ふふふ、主も悪よのう…そうじゃな、認めねばなるまい」
そうして暫し話しこんだ後、ロリエラは立ちあがると怪人の種を両手で包みこんだ。
「…認めようではないか、エンジェルズ!
お主らは強い、確かに強い!と言うか反則なみに強い!」
怪人の種に、ロリエラの魔力が集中していく。
それと同時に、種はまるで心臓のように脈打ち始め…
「じゃから、もう真正面から戦うのは止めじゃ!!
徹底的に嫌がらせをして、嫌がらせをして、二度と戦えんようにぐったりさせてやろう!!
ほれ、お主らも力を込めるのじゃ!!」
「イ…イー!?」
「良いのじゃ、今回は共同作業じゃ!
お主らの欲望や負の感情、たんと込めるが良い!!」
「…イー!!」
そして、戦闘員達が両手を上げれば、怪人の種は大きく脈打ち―――
―――そして、爆ぜた。
周囲に煙が立ち込め、そこに立っていたのは…ずんぐりとした、一体の怪人。
「…ふ。ふふふ。待っておれよ、エンジェルズ…!!!」
それを見て、満足そうにうなずいたロリエラは、何時ものように高笑いをしながら…
戦闘員の担いだ神輿に乗って、出陣したのであった。
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