857氏その2

857氏その2

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六月の教室
去年までの私ならばなんともおもわなかった

 

だがいまの肉体では醜く蓄えた肉体の所為でかなり暑い

 

この体にも大分慣れてきたが
どうもこの暑さだけは耐えられない
まだ、初夏なのにこのざまだ
本格的に夏場にはいったらこの教室は間違いなく地獄になるだろう
それ以前に私は
学校までたどりつけるのだろうか?

 

「絵里!おはよう」
私に声をかけた彼女は
あの日一緒に帰れなかった友人だ

 

彼女は私がこんなに醜い姿に変わってしまってからも
唯一距離が変わらない人物だ

 

私が不登校にならずに
学校にこれているのも彼女の存在が大きい

 

単純で影響されやすいが
それは純粋と言い換えることもできるだろう

 

「おはよう!」

 

「きいてよー絵里彼氏がねーキャッキャウフフ」

 

彼女は以前のままだ
私に対する対応も
可愛らしい外見も
みんな、以前のままだ

 

だが私が彼女に抱く感情は、以前のままではなかった

 

私が新しく抱いたのは

 

激しい憎しみ

 

ただ彼女は以前と変わらずに青春を謳歌している
ただそれだけ

 

年相応にお洒落して
年相応に恋愛をする

 

以前ならばなにも思わなかったことに
強い劣等感を感じた

 

それは私の心の奥底で歪み
憎しみへと姿を変えた

 

唯一心を許せる人物
その人物に抱く憎しみ
以前から持っていた彼女に対する友愛のこころ
それらが私のなかでみにくくまざりあっていた

 

科学実験室
私の姿だけではなくその後を惨めなものに変えたあの場所

 

そこにあの女の形跡は無かった
まるでそんな人物などいなかったかのように

 

 

だが、悪魔を呼び出す手がかりは残っていた

 

私は必死にそれらを集め

 

再び彼に合うことに成功した

 

ーほう、いつかの娘かその身体には慣れたか?ー

 

頭に響く不気味な声
あの時のあいつだ
私は、彼に私を元に戻すよう願った
だがそれはできなかった

 

ー悪魔の能力で叶えられたことは
もう、二度と書き換えることができないー

 

衝撃的だった

 

いつかはまた
元の姿に戻れるとこころのどこかで思っていた
それが私の支えにもなっていた

 

そしていまその支えがくずれる

 

いままで我慢してきた沢山の感情が
津波となって訪れる

 

悪魔の前で泣き叫ぶ私

 

なぜ、私だけがこんな目に

 

なんで、わたしだけ

 

ひどすぎる

 

そうだ

 

わたしだけがこんなものを背負う必要はない

 

わたしのなかで芽生えつつあった黒い感情

 

それをいま一つの願いにする

 

7月の教室
案の定そこは地獄だった
汗で制服が張り付いて気持ち悪い

 

「ふぅふぅ 絵里!おはよう」
私に声をかける彼女は
以前までの彼女ではない
わたしと同じ醜く滑稽な姿へと変えられた姿

 

まるでコートを三重にきたかのようなシルエット

 

ぶくっ突き出した腹は制服をぱっつんぱっつんにする一つの要因となっている

 

わたしよりも一回り大きい胸
大きいだけで
垂れていて醜い

 

それが、いまの彼女

 

わたしのあの時ねがったこと
それは
彼女に私と同じ苦しみを背負わせる事だった

 

彼女は以前の私と全く同じ様に変えてもらった

 

その結果彼女は美貌と彼氏
他にも沢山のものを失った

 

これで、彼女はわたしと同じ

 

私のこころに罪悪感など微塵もない
あるのはゆがんだ幸福のみ

 

わたしと同じ思いをしてくれる人物がいるということ

 

もしかしたら私は、壊れてしまっているのかもしれない

 

だが、いまはそんなことどうだっていい
わたしはいまとても満足なのだから

 

 

END

 

 

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