アメリカ留学(エンドB)
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じっと私を覗き込むロジャーさんの目。
しかし、頭に浮かんできたのは大沼君の優しげな笑顔だった。
やっぱり、大沼君を裏切ることはできない。
私は意を決してロジャーさんに告げた。
「ごめんなさい、私、日本にいる恋人のことが忘れられません。
ロジャーさんにはこちらで色々していただいて感謝していますが、
これからも良き友人でいませんか?」
彼はは俯いたまま何も言わない。どんな表情をしているのだろう。
しばらくの沈黙の後、嗚咽をかみ殺すようなとぎれとぎれの声が聞こえた。
「ロジャーさん?泣いているんですか?」
心配になり、彼の顔を覗き込むと。
ロジャーさんは笑っていた。
「なるほどね、お前は俺をバカにするのか?」
彼は不気味な笑みを浮かべながら私に近づいてきた。
「ロジャー…さん?」
「今まで俺が優しくしてやった女も全部そうだった。
ちょっと親切にしてやったら俺を頼るくせに、俺が告白すると断りやがる恩知らずだ。」
「そ…そんなつもりじゃ…」
「いいや、お前も同じだ。」
「違います!私は本当にあなたに感謝してるの!」
「言い訳はたくさんだ。俺のプロポーズを断った罰として…」
ロジャーは上着のポケットからハンカチを取り出し。
「今までの女と同じ末路をたどらせてやる。」
慣れた手つきで私の口にそれをかぶせた。
「ロ…ジャー…さ…ん…」
甘い芳香と目まいを感じた後、私の意識は暗闇の中を落ちていき、途絶えた。
8
綾香は目覚めた。
廃ビルの一室。
コンクリートの壁はボロボロに崩れ、ところどころ鉄筋がむき出しになっている。
長い間使われていないようで床は埃まみれだ。
天井から切れかかった蛍光灯がぶらさがっており、辺りを猥雑に照らしている。
かなり広い部屋である。100人は優に収容できそうだ。
綾香は支柱の一本に後ろ手で腕を結びつけられていた。
彼女に向き合うように口元を歪ませたロジャーが立っており、
その後ろには錆びた机にノートパソコンが何台も並べられている。
全てのノートパソコンのディスプレイには、人が写っていた。
ただし、胸から目の下までしか写っておらず、どんな顔をしているのか分からない。
さらに後方には金属製の複雑怪奇な機械や原色の液体が入ったフラスコ等が雑然と置かれていた。
部屋の隅、綾香から一番離れた壁に錆色の扉があった。それ以外に出入り口はない。
その状況に、本能的に綾香は得体のしれない不気味さを感じ取った。
「ロジャー、さん?…ここはどこ!何をするつもりなの!」
彼女の問いかけにロジャーは目を見開いた。
驚いているのではない、興奮しているのだ。
「何を、って…俺の告白を裏切ったお前にお仕置きをするのさ」
「お仕置…き?」
「そう。お前からも見えると思うが、あそこに並んでいるパソコンに写っている人たちは
S●ypeでこの部屋の様子が分かるようになっている。
今から、お仕置きの内容をあの人たちが多数決で決めるのさ。」
パソコンに写った口元がつり上がった。それはとてもサディスティックな表情だった。
「それじゃあ、早速行ってみようか」
ロジャーは大勢のパソコンに向き合った。
***
A操作盤がついた巨大シリンダーに入れる(体重変化+体形変化)
Bホースで特殊な流動食注入(体重変化大)
C青色の薬を注射(体重変化小+精神変化大)
D緑色の薬を注射(体重変化大+精神変化小)
E紫色の薬を注射(容姿変化)
F部屋から解放(???)
***
「さて、投票結果が出たようだな。
Fを選んだ心優しい紳士淑女も何人かいたが…大半はお前の肥満化をお望みのようだ。」
「嫌ぁ!」
「投票は絶対だからね、止めるわけにはいかないのよ。作者のメタ的な都合でね。」
そう言うと、ロジャーはフラスコに入っていた青色の薬と紫色の薬を混ぜて注射器にいれた。
「この薬を手に入れるのに苦労したんだぜ。リリスっていう変な女に頼みこんでな。」
ロジャーは注射器を綾香の首筋に刺した。
「痛っ!」
「痛みは我慢してね。すぐに効果が現れるから。」
ロジャーがなだめるように言った後、綾香の体が膨らみだした。
「ひゃあ!?」
あっというまに体中に柔らかい肉が付いていった。
特に胸と臀部の肥大化が激しく、乳房は衣服のボタンを弾け飛ばせ、
ハリを保ちつつも重力に従って垂れさがってしまった。
お尻は3周り以上大きくなり、細めの胴体とはアンバランスな大きさだ。
そのため、スカートがパツンパツンに張りつめ、生地にところどころ裂け目ができた。
全体的にバストとヒップだけ肉が盛られたために、漫画などでデフォルメされた
「ボン・キュッ・ボン」のグラマーキャラそのままの容姿になってしまった。
「何よ、これ!あなたなにしたにょ?にょ!?」
「HAHAHA!薬の効果は覿面だな。さっき注射した青と紫の薬、
二つ混ぜると「アホな大食いデブキャラ」にする薬になるんだぜ。」
「な…なん、ですか、そのバカげたおくすり!?」
「つまり、この注射を打ったことでお前は「デブ」「バカ」「食いしん坊」
の三重苦になっちまったってわけだ。現に肉がついて語尾もバカらしくなっただろ?」
「わたし、ばかじゃないもん!」
「ハハハ可愛くなったじゃないか。さて、そろそろ「食いしん坊」の効果も表れるはずだが…」
その時、綾香のお腹が盛大に鳴った。
「うっ…」
「きたきた。お腹減ってきたろ?」
「わたし、へってない。がまんできるもん!うう〜」
「我慢しなくていいんだぜ。ほら、ここにフォアグラをつくるための給餌チューブもあるし。」
ロジャーは綾香の前でゴムでできたチューブを振った。
それは10Lのタンクに繋がっており、そのタンクの中にはアメリカが誇る激甘お菓子…
アイスクリームやケーキ、ゼリービーンズなどがミキサーにかけられて
液状になった白いスープが入っている。
1dlあたり1000キロカロリーもある。
「わ、わたしをどうぶつかなにかとかんちがいしてるにょぉ〜!?」
「さあ、自分の欲望に忠実になって。綾香はこれを飲みたいんだろ?」
「う、うん」
綾香はこくりとうなずいた。
「よしよしいい子だ。」
そう言ってロジャーは綾香の口にチューブをガボッと押し込んだ。
「んぐっ!?」
最初は戸惑っていた綾香だが、しだいにスープをするすると飲み干し始めた。
その様子はまるで乳のみ児のようだったが、その速さは牛が水を飲むようで、
口の端から白い筋が零れている。
「んぐっ、んぐっ」
彼女が液体を吸収すると同時に、彼女の体もどんどん大きくなっていった。主に横にである。
ハリを保っていた巨大な乳房はさらにさらに肥大化し、肉布団のように垂れ下がり。
それを支えるように腹に脂肪がついていって、あっというまに3段腹から4段腹になっていく。
それは水太りのようにぶよぶよとしてひとつの生き物のように膨らんで、
ついに局部を隠すほどに床についてしまった。
お尻も肥大化の例外ではなく、巨大ながらも形を保っていた尻は横に横に肉が付いていき、
ピンク色のソファのように床に広がり。腕や太ももは肉肉しいサンドバッグのよう。
着ていた服は肉圧によってビリビリに破け、わずかに残った繊維がボンレスハムのように
あふれ出す肉を縛り。
さらに、体温の上昇による異常発汗が肉汁のように皮膚表面を流れ、滝を形成し。
綾香がタンクの中のスープを全て飲み終える頃には、
彼女は部屋の3分の1を埋め尽くす肉塊と成り果てていた。
「おいしかったぁ、もうないの?」
きょとんとした顔でロジャーに尋ねた彼女は、パソコンからゲラゲラと笑い声が聞こえるのに
気付き、正気に戻った。
「あ…こ、これは違います!見ないでください…笑わないでぇ!」
必死に顔を赤らめ、体を隠そうとするも隠れる場所もあるはずなく。
ただ観衆の前に太った超肥満体をさらすことしかできない綾香だった。
それから数カ月後の日本。
綾香の高校のクラスメート達がパソコンを見ながら話している。
彼女達は動画投稿サイトに投稿されたある動画を見ているのだ。
「ねぇ…これって綾香じゃない?」
画面に写っているのは部屋を占領する巨大な肉の塊とそのうえにわずかに見える人の顔。
「うわ、これ人間!?」
「すごいデブね。これが綾香だって?」
「だってこの顔、膨れてて分かりにくいけど綾香じゃない?」
「まさか!確かに日本に帰ってきてないから消息が心配だけど、アメリカでデブになっているわけないじゃない」
「そうよ、あの頭の良い綾香が。」
「そ…そうよね」
彼女達は半ば納得し、動画の再生停止ボタンを押した。
止められる直前に動画から聞こえてきた声には誰も気づかなかった。
「た…すけ、て…」
(完)
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