俺と陽菜乃と彼女の生きる道
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<登場人物>
主人公:平 均太(たいら きんた) 17歳
ヒロイン:橘 陽菜乃(たちばな ひなの) 17歳
悪魔:サーラ XX歳
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第一章:悪魔サーラとの出会い
俺には好きな子がいる。
陽菜乃って名前の幼馴染なんだけど、すっごい可愛くて、スポーツ万能で、コミュ力も高いし、勉強も出来て――とにかく非の打ちどころのない程完璧な子なんだ。
一方の俺は平々凡々たる普通の高校生。どう考えたって勝ち目のない恋心なのは分かっている。でもそう簡単に諦められるはずもなく、この数年間、俺は絶賛彼女に片思い中である。
そんな俺の恋心は、ある日突然崩れ去ることになった――。
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「はぁ〜い、そこの坊や……?ちょっとお姉さんに付きあって貰えないかしら?」
突然目の前に現れたのは、一見するとセクシーなコスプレ衣装を着た普通の女にも見えた。しかし背中の黒い翼はあまりに精巧に動いており、何より彼女の放つ妖艶たる雰囲気から、俺はその女が普通ではない事を瞬時に理解した。
「お、お前は一体何者なんだ……!?」
「私の名前はサーラ、人の世界では『悪魔』と呼ばれている存在よ?」
「悪魔……だと? 悪魔が俺に一体何の用だ!」
「あらあら……そんなに身構え無くてもいいのよ?お姉さんは、貴方の夢を叶えてあげたいだけなんだから。そう……貴方の心に秘めたその一途な恋心、私が叶えてあげるわ?」
「……!?!?」
悩みを一発で見抜かれたことに驚いた俺は、気がつくとその悪魔の言葉に耳を傾けていた――。
「サーラ、といったか。その話は本当なのか? 悪魔が人助けだなんてにわかに信じがたいが……。」
「別に人助けだなんて思っていないわ……。ただ私は自分の発明した新しい魔法を試したいだけよ。」
「後で俺の命を奪ったりなんて、しないよな?」
「あらあら……悪魔である私の事が怖いのかしら。でも大丈夫、私は決して貴方には何もしないわ?」
俺はその言葉の微妙なニュアンスの真意など知る由もなく、彼女の言葉を信じ切っていた。
「分かった……まぁ、期待はしていないけどな。」
「ふふっ、物わかりのいい子はお姉さん好きよ?それじゃあ早速、準備に移るから私の指示に従って頂戴ね。えっとまずは――」
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そして数分後。
「は〜い、これで終了ね?きっと陽菜乃ちゃんも、これで貴方の事が大好きになってるはずよ。」
「ほ、本当にたったこれだけで、大丈夫なのか?」
「ふふっ、悪魔の力を舐めないで欲しいわね。もし何かあれば私の事を呼んで頂戴。それじゃあまた会う日まで……さようなら?」
そう言うと彼女は、バサバサとその羽根を羽ばたかせてどこかへと旅立っていった。
残された俺はと言うと、たった今起こった非現実な出会いに茫然とするばかり。だが「もしかしたら本当に何かが変わるかもしれない」というささやかな期待を胸に抱いていたのは今でも覚えている。
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