俺と陽奈乃と彼女の生きる道 最終章

俺と陽菜乃と彼女の生きる道 最終章

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最終章:彼女の生きる道

 

 

陽菜乃が引きこもっている間、俺は必死に彼女の為に何が出来るかを考えた。
考え抜いた結果、俺はようやくその答えに辿りついた。
『陽菜乃の太った身体が逆に褒められる環境を見つけてあげる事』――それが俺の答えだった。

 

急いで俺は条件を満たす店を調べた。しかし調べても出てくるのは水商売ばかりで、未成年の陽菜乃にそれを勧める事は出来なかった。諦めかけたその時、俺は意外な所から、彼女にぴったりのお店を見つける事が出来たのだ。
そしてトントン拍子で物事は進み、前向きな回答をその店の店長さんから貰う事が出来たのである。

 

あとは陽菜乃次第であった。
俺はすぐさま陽菜乃の部屋へと向かい、扉越しで陽菜乃にこうお願いしたのだ。

 

『君と別れる前に、最後に一度だけデートさせて下さい』と。

 

その言葉を聞いて、陽菜乃は初めて「いいよ」と口にした。
こうして文字通り重たい腰を上げて、陽菜乃は数日ぶりに家の外へと出る事になったのである。

 

*****

 

その翌日。

 

「今日はわざわざ、ありがとうな。」
「うん……少しだけなら。」

 

数日ぶりに俺は陽菜乃と対面したが、相変わらず彼女の表情は暗かった。

 

陽菜乃2

 

「じゃあごめん、早速なんだけど……外にタクシーが来てるから一緒に行こっか。」
「タクシーを使うの? あのぅ、あんまり人目につかない所がいいなぁ……。」
「おう! その点は大丈夫。ただちょっと、行きたいお店があるんだ。」
「お店ぇ……? 別にいいけどぉ……。」

 

こうして、俺たち2人はタクシーに乗り、俺が事前にアポイントを取っている店に向かった。

 

*****

 

「着いたよ。俺も直接来るのは初めてなんだけど……気に入ってくれると嬉しいな。」
「えっ……ここってその、服屋さんだよねぇ……? あれっ、でももしかしてコレってぇ……」

 

タクシーを降りた陽菜乃が真っ先にある事に気付く。
ショーウインドウに飾られた服の大きさを一目見て、そして店の看板を見て、彼女は自分の推測が間違っていないことに気付いた。

 

「『ぽちゃかわファッション専門店』って……要するに太ってる人用の服屋さんってことぉ?」
「あぁそうなんだ……。これなら、陽菜乃も楽しんでもらえるかなって……。さ、入ろうか。」

 

流石の陽菜乃もやや驚いている様子で、俺は内心ホッとする。
そして、真新しい外観のその店の扉を開けた。

 

カランコロンッ……

 

「いらっしゃいませ〜、ぽちゃかわファッション専門店クロミハーツでございま〜す。」
扉の音を聞きつけ、すぐさま店の奥から店員さんが現れる。
その姿を見て、陽菜乃は再び驚いた。

 

この店では取り扱う商品だけでなく、店員さんも丸々と太っていたのだ。
勿論、体重で言うと陽菜乃の半分しかないだろう、いや……半分もあると言うべきだろうか。少なくとも体重3ケタは超えているであろう丸々と太った身体を揺らし、彼女はこちらへとやってきた。

 

「えぇっと、平さまと橘さまでよろしかったでしょうか? 店長からお話は聞いておりましたが、なんというかその……素敵な身体をお持ちですね、お客様。」
「それって遠回しに陽菜乃のこと、ディスってます?」
「いえ、そんな……私も世間的には完全にデブですから。でも、ご安心ください。店長は橘さまのこと、きっと気に入って下さるはずです。いや、気に入り過ぎて……困っちゃうかもしれませんねぇ……。」

 

「ちょっと均ちゃん……店長さんってぇ何のことぉ?」

 

俺と店員さんで話が進んでいるが、事情を飲み込めない陽菜乃は困惑した様子。
そこで俺が事情を説明しようとした瞬間、会話を聞きつけた当の本人がタイミング良く現れた。

 

「可代子ちゃ〜ん? レジにいないってことはもしかして、陽菜乃ちゃんが来たの? って、まぁ!? まぁまぁ……。うふふっ、アナタが陽菜乃ちゃんねぇ? はぁん……なんて、なんて可愛いのかしらっ?!」
「え……?」

 

この日一番驚いてる陽菜乃に対し、間髪いれずその店長はなんと、陽菜乃の巨大なお腹に抱きついたのだ。

 

「あぁん、なんて柔らかいお腹なのかしらっ……? 体重200キロを超えてるとは聞いていたけど、それよりも20キロ、いえ30キロ近く大きいはず。これは凄いわ、こっちの世界にこんな素敵な体型の娘がいるだなんて……。あぁぁ〜興奮するっ?! す〜はぁ〜っ、石鹸の臭いに交じって微かにおデブちゃんの匂いがするわ〜? なんで今日朝シャンしちゃったの? お姉さんはもっと汗臭くても大丈……ぶほぉっ!」
「店長、それ以上はセクハラですよっ!」

 

陽菜乃に抱きつき目を血走らせて興奮する店長に、先程の店員さんの平手打ちが炸裂する。

 

「あぁ、ごめんなさい。つい取り乱してしまったわ……。陽菜乃ちゃん、是非ウチで働いて頂戴! こんな可愛い子、即採用です!」
「え……えぇぇっ!? い、一体ぃなんの話ですかぁっ?」
「すみません、あの店長さん。まだ陽菜乃に事情を話してないので、俺から説明します。」

 

俺はようやく、今日の為に準備してきた計画を陽菜乃に伝えた。

 

「なぁ、陽菜乃……ここで働いてみないか? 少なくともここには、お前を歓迎してくれる人がいるんだ。1時間ごとに、いや30分ごとでも食事の為に休憩しても良いとも言ってくれたんだ……。それならお前だって、皆と同じように働けるだろう? 陽菜乃がどんなに太っていても、別に働いたっていいんだ、生きたっていいんだ。だからもう、死んだ方が良いなんて言うなよっ……。」
「均ちゃん……。均ちゃんって本当にぃ……うぅぅ……優しいんだからぁ……ぐすんっ。なんか、泣いちゃうねぇ……ははっ……。うん、私この店で働いてみるぅっ。店長さん……ご迷惑をおかけするかもしれませんが、よろしくお願いしますぅっ!」
「うん、大丈夫よ……ウチは可代子ちゃんしかいないしね。儲けは少ないけど、陽菜乃ちゃんを雇わないなんて有り得ないわ……。別に店番じゃなくて、私のプライベートでお手伝いしてくれるだけでも……」
「店長!」
「っていうのは冗談で……宜しくね、陽菜乃ちゃん。」

 

陽菜乃の新しい未来を、その場にいた全員が笑顔で祝福した。

 

その瞬間陽菜乃が、俺の太陽が……久しぶりにとびきり眩しい笑顔を見せたのを俺は一生忘れないだろう――。

 

*****

 

その日の帰り道。

 

「今日はありがとうぅ、均ちゃん。いや、今日だけじゃないよねぇ……今までこんな私を支えてくれて、本当にありがとうぅっ。」

 

陽菜乃の言葉に俺の胸が熱くなる。
だが本当に伝えなければいけない事があるのは、俺の方だった。

 

「俺にはそんな事を言われる資格なんてないよ。」
「どうしてぇ……? もしかしてソレって、前に言ってた……」
「あぁ。あの時陽菜乃は信じてくれなかったけどさ、全部悪魔がやったことなんだ。俺の馬鹿な願いを叶える代わりに、その代償に陽菜乃が病気になって、一気に太り始めて、そしてこんなにお前を苦しめた。全部あいつが仕組んだ事、そして全部俺のせいなんだ……。だって変だろ、食欲が暴走して1年で200キロ近く太る病気なんて……。だから信じられないと思うけど、悪魔のせいで陽菜乃は……」

 

俺は既に何度も陽菜乃に語った真実を、もう一度伝えた。
今までは嘘に決まってると相手にされなかったが、この日ばかりは彼女に信じて貰いたかったのだ。
陽菜乃は決して悪くないと、悪いのは全て俺なんだと、どうしても真実を伝えたかったのだ。

 

だが陽菜乃は突然その言葉を遮り、なんと今まで秘密にしていた事を話し始めたのだ。

 

「もういいんだぁ、均ちゃん……。私ねぇ、実はこん睡状態の時に、もの凄く太った悪魔と夢の中で会ったのぉ。そして『貴方を私の娘にしてあげる』って言われたんだぁ。」
「ほ、本当かっ!?」
「うん……黙っててごめんねぇ。ただの夢だと思ってたけどぉ……やっぱり均ちゃんの反応を見てると、あれって本当だったのなぁ……。」
「そう、そうなんだ! だから陽菜乃……俺の事が憎いんだったら、今日を最後に俺たちやっぱり別れないかっ……。これからはお前一人でも立派に生きていけるだろうし、これ以上俺なんかと……」

 

陽菜乃は再び俺の言葉を遮り、笑いながら更に驚くべき事を俺に伝えたのだ。

 

「もうっ、何言ってるのぉ……均ちゃん? 私は嫌だなぁ、別れるなんて……。折角均ちゃんと付き合えたのにぃ、『子供のころから唯一好きになった男の人』と別れるなんて、私は嫌だよぉっ……。」
「え……えぇぇっ!? な、何言ってるんだ……冗談はよせよ。」
「ううんっ……嘘じゃないってばぁ。均ちゃんの事が私、ずっと好きだったよぉ……。悪魔には痩せてた頃の身体は奪われちゃったけどぉ……私の恋心まで奪われたくないなぁ。ねぇ……均ちゃんは、どうなのぉ? こんな太ってる私の事ぉ……今でも好きですか?」

 

(ははっ……なんだよ。悪魔なんて、アイツなんていなくても、陽菜乃は俺の事を……そっか、あ〜あ……つくづく俺って馬鹿だな。)

 

「ありがとな、陽菜乃……。どんな姿になっても、俺はお前の事が好きだ! 愛してるっ……!」

 

陽菜乃の大きすぎるお腹でつっかえそうになるが、そんな事はお構いなしに、俺は陽菜乃の身体を抱き寄せた。そして自分の気持ちを証明するかのように、彼女の肉厚で柔らかい唇にキスをした。

 

チュッ……

 

流石に陽菜乃も驚いた様子であったが、暫くすると俺の抱擁に身を任せてくれた。

 

(陽菜乃の身体、やっぱり柔らかくて大っきいよな……暑苦しいくらいだけど……陽菜乃と密着してるって感じがして、すっごいドキドキする……)

 

俺がそんな事を考えていると、突然、陽菜乃はゆっくりと唇を離してキスを中断する。俺は困惑して陽菜乃の表情を見ると、その顔は急に恥ずかしそうに顔を赤らめていた。

 

「どうした……? やっぱり急にキスだなんて、嫌だったか……?」
「ち、違うのぉ……均ちゃん。そのぉ……均ちゃんってもしかしてぇ……私に『興奮』してくれたのぉ?」
「えっ……? あっ……あぁぁっ!?」

 

俺はようやく、自分のソレに気付いた。
どうやら無意識のうちに、陽菜乃とキスしている途中に、自分の息子が反応してしまったらしい。

 

「いや、これはっ……その……」
「ふふっ……まぁ、本当に私の事が好きだって事は分かったけどさぁ。均ちゃんってぇ、こんなおデブさんな今の私にでも興奮するのぉ?」
「ち、違うんだって! 陽菜乃が太るのは分かってたらからさ……1年前から少しずつ、ソッチ系のAVを見るように努力してたんだよ! そしたらその……本当にドキドキするようになって……。お前みたいに太ってる日本人が全然いなくて、洋物にも手を出さなきゃいけなくなるし、こっちは色々と大変だったんだからな……って何を言わせてるんだよっ!」
「もう、自分から勝手に言ったんじゃないぃ……ふふっ。でもそっかぁ、均ちゃんてば変態さんになっちゃんたんだねぇ……。でもそれならぁ、私も均ちゃんに隠してた秘密を話さないとねぇ……。」

 

そして陽菜乃は俺の耳元に向かって、小さな声でこう言った。

 

「私も実は悪魔と出会ってからねぇ……食べる事だけじゃなくて……エ、エッチな気持ちになる事が多くなっちゃったのぉっ。ねぇ均ちゃん、私も今、とっても興奮してるのぉ……? だからねぇ、良かったら今ココでしないぃ??」
「……!?!?」
「私も初めてをこんな所でするのは嫌なんだけどぉっ……均ちゃんのおちん○んが大っきくなってるのを見たらね、我慢できなくなっちゃったのぉ? ねぇ、お願いぃぃっ?」

 

陽菜乃の衝撃的な告白に、俺は目を丸くして驚く。
だが彼女が言うように、吐息を荒げて頬を紅潮させるその姿は、とても色っぽくてエロくて……そういう経験のない俺でさえ彼女が欲情しているのが一目で分かった。

 

「おい陽菜乃、一旦落ち着くんだ。俺もそうしたい気持ちは山々だが、その、こんな外となると警察沙汰になっちまうぞ……。」
「駄目ぇ、もう我慢できないよぉぉ……? また発作が起こっちゃうぅぅっ? じゃあ、そこの茂みでちょっと触ってくれるだけでいいからぁ、ねっ??」

 

(せ、性欲まで悪魔級ってことですかっ〜〜!?!?)

 

(で、でも……これはこれで……)

 

(悪くないっ……ゴクリ)

 

「ま、まったく陽菜乃ってば……そんな事言われたら、俺だって興奮するじゃないかっ!」
「きゃっ……? どうしたのぉ均ちゃん、急にノリノリじゃないぃ?」
「折角ならこの人生、楽しめるだけ楽しまないとなっ。なんなら悪魔のサーラが後悔する位、俺は今の太った陽菜乃を愛してみせるからっ!」
「もうっ……均ちゃんったらぁ? ふふっ……ありがとうぅ?」

 

そうだ。もう悪魔なんかに、俺たち2人の幸せを奪われてたまるもんか!
お前なんかに負けてたまるかっての。今もどっかで見てるなら、指加えて見てろよ……クソ悪魔っ!

 

**********

 

……パリンッ!

 

「はっは〜ん……。なかなか不愉快なモンを見せつけてくれるじゃないっ、あの坊や!」
悪魔サーラは、手に持っている水晶を思わず砕いた。
そこに映るのは、茂みに隠れて互いに愛し合う均太と陽菜乃の姿であった。
「はぁ〜あ……全く若い子たちはお盛んですこと。あの糞ガキが、まさかデブ好きになるなんて想定外だわ。それにロティが連れてきたあの女まで、陽菜乃ちゃんの味方してるじゃない……全くアイツ、どんだけ私の足を引っ張るつもりよっ……。」
「まぁでも、1年分の絶望感は頂いたし、そもそも陽菜乃ちゃんの命を頂いた時点で、トータルでは私の勝ちなのは変わらないんだけど……でもやっぱりこうなると後味が悪いわねぇ! あ〜あ……次からはもっとクズ野郎を騙さないとねぇ……?」

 

次の獲物に胸を膨らませて、悪魔サーラは不敵に笑った――。

 

〜最終結果?〜
橘 陽菜乃:160 cm / 47 kg ⇒ 160cm / 38 kg ⇒ 160cm / 228 kg

 

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