D・プログレス
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間に「トラブる」を挟みながらもD・プログレスは果たされ、
即席のリフトが伸ばされ、リーファ、
それにドリル・ハルバードから出されたディーア、デイーウ、ディーオの
デザイアンの3人が地上に戻ってきた
どういうことか、ディーウだけ目をグルグルと回して倒れ伏している、
しかし口元で笑みを浮かべている。
「ふへへ・・・ぶつかるたびに・・ブルブル、ボヨボヨって・・・」
ケースに少し余裕があったために、回転のさいに思いっきり揺さぶられてしまったのだ。
・・・本人はその際の感触を楽しんでたようだが。
「私が突っ走ったばかりに、ゴメンね、ディーウ・・・」
「ディーア、こういうことを起こさないためにもちゃんと指示に従いなさいね」
リーファは何も言わずに微笑んで3人を見ていた。
・・・いやその目は笑ってなかった。
「 それじゃあ皆さん、後はよろしくお願いします!」
「 D・プログレスの時になったらまた呼んでください」
リーファはその微妙な笑顔のまま言い切り、
3人のデザイアンを引き連れて(そのために実際の足取りは遅めだが)
慌ただしく去っていった。
後始末を押し付けられることになったサポート班は
リーファの行動に呆気に取られていた。
特にあの若い隊員は少し怒ってすらいた。
「・・・」
(自分たちの代わりに後始末をやっていけとまでは言わんが、
いくら何でも丸投げは無いだろう)
そう思っていた所に隊長がボツリと言った。
「・・・あの3人がキューブで太った分は12時間経過すれば、消滅する」
「だったら、尚更 !」 隊員は思い出した、
「D・プログレス」の前の三人の有様を、感情の感じられないあの姿を
「もしかして、感情も一緒に消えてしまうですか・・・?」
「そうらしい、リーファ氏が言っていた」
「・・・仕事の時だけ、太ってる時だけ感情があるってどうなんでしょうか・・・」
「私には分からん・・・しかしこれは言える」
「そのことで一番悩んでるのは、リーファ氏だろう」
それから、ディーア達はD・プログレス達成の
小さなパーティーでの飲み食いを楽しんで
深夜にリーファの自宅である一軒家に帰った。
D・プログレスとパーティーで疲れたデザイアンの3人は特大のトリプルベッドに
その巨体を沈ませていた。
最も目を覚ます朝には余分な脂肪のない、
『余分な感情』も無いデザイアンとしての本来の姿に戻っている・・・
リーファは自分の机に力なく座り込んでいた。
「今日のディーアのミスは痛かったな・・・私の指示も悪かったけど」
不器用ながらも仲間を気遣う心も、
「ディーウも姿見を頼むなんて、筋金入りのデブ専ね・・・」
好きな自分になろうとする心も、
「その点ディーオはD・プログレスに専念してて・・・」
自分の仕事を成し遂げようとする心も、みんな消えてしまう。
「私間違ってたのかな」その一言を呟いたリーファは
机に突っ伏し、疲れからそのまま眠りに落ちた。
その閉じた目から一筋の涙が流れ落ちた。
そのまま時間は流れ、
窓から差し込んだ朝日がリーファの目を覚ました。
目覚めた彼女は真っ先に見たのは、
自分を待っていたであろうデザイアンの3人。
寝ぼけ眼でも分かった。
3人の体は、本来の年相応と言うにはやや幼い肢体に戻ってることが、
そしてその瞳には三者三様の感情が見えることが。
「あれ、体は戻ってるのにどうして・・・」
「それが・・・元に戻りきってなかったりして・・・」
良く見てみると、確かに本来の肢体には戻りきってなかった。
ディーアの胸はパジャマのボタンを弾き飛ばすほどに盛り上がっていた。
「リーファさんは私たちを、体に脂肪が付いてると自我を持つようにしたんでしたよね」
「それは昨日のパーティーで食べた分で付いた脂肪でも良かったってわけ」
「まあ流石にここまで太りやすいとは知らなかったけど」
デイーウはぽっこりと出っ張っているお腹を撫でている。
「どうやら、キューブ以外の食物を口にすることを想定しなかったようですね、
・・・私達が自分の意思で食べるようになることもね」
リーファからは見えないが、デイーオのお尻はパジャマのズボンをパンパンに押し上げている。
「しかしこの条件、私は大歓迎だけど、太るのが嫌なディーアにはキツイんじゃないかな?」
「実を言うと・・・バランス良くならもう少し太ってもいいかな?って思ってるんだ」
「ははは、言ってくれるじゃん」
「 私は現状維持を試みるわ、まあそう言ってる人ほど太ってしまうけどね」
「ディーオ、それ自分で言うことじゃないでしょ」
「フフフ、ごもっともね」
三人のデザイアンの談笑、それを聞き届けたリーファが呟いた。
「・・・感情があるってことは、苦しいとか辛いって思うことにもなるけど
それでもいいの?」
「確かに今日みたいな目に会うのは嫌だけど、そんなことも思えなくなる様になるのは
もっと嫌ですよ」
「それでも太ることが好きな自分に嘘はつけないんだな、これが」
「D・プログレスのために造られた私達だけど、それだけのために生きる道理は無いはずです」
「だから」「そのためにも」「ですから」
「「「リーファさん、これからもよろしくお願いします」」」
三人のデザイアンの言葉に
リーファは大粒の涙を零しながらも満面の笑顔を返した。
「うん! それじゃあやろうか3人とも!」
「「「はい!」」」
「「「「デブ・プログレス!!!」」」」
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