偽と正 偽る男達と女の真心

偽と正 偽る男達と女の真心

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今から遡ること4年、
病院のベッドの上に一人の女性が横たわっていた。
整った顔立ちをしているが、その体のか細さは病的な程だ。
実際、ある病気で長らく入院している。

 

彼女の病室のドアを開けて、一人の少女が入ってきた。
歳は11、女性を幼く、小さくした
程よく細い健康的な体型の少女だ。

 

女性の名は外田喜美子、
少女はその娘である外田哲だ。

 

 

「哲、元気にしてた?」
「わ、私は元気だよ!・・・お母さんは・・・大丈夫?」
「私は・・・元気じゃあないけど、まだまだ生きていけるはずよ  
あなたが大人になるまでは」
「・・・・・それじゃあ、また明日」
哲は、落ち込みが足取りに乗った、重くて遅い足取りで病室から出た。
その後ろに玄一がいた。
「・・・美しい」 
夫はそう呟き、痩せこけた妻をじっと見つめている。

 

 

 

「先生、お母さんにお菓子を持って行ってもいいでしょうか?」
「 色々と栄養制限があるけど、それを守れていると私たちが判断できれば構わない」

 

 

 

それから数か月程の時間が流れた。
哲の努力の成果である菓子は、医師の診査を突破し喜美子の口に届いた。

 

「ありがとう、こんな美味しいものが食べられるなら、
もっと生きてたくなったわ」
「お母さん」「本当に頑張ったんだね」
「――次はダイエットを頑張らないとね」 「・・・うん」
哲の努力は――有名店の菓子の味を舌で覚えることを主とした努力は
彼女自身の体に脂肪という結果を残した。

 

 

以前の哲は、その健脚で徒競走では必ず上位に入っていたが、
今の、脂肪で競輪選手の様に太くなり、
走るたびに振動しながら擦れる様になった脚ではビリ確定だ。
年相応の、膨らみかけだった胸は、大人並みの巨乳となって、
お腹に乗っかっている。
これも重しとなって哲の身動きを遅くしている。
一番大きくなった腹は、それなりに鍛えられてた腹筋も支えきれず、
変形し三段腹が形成されてる。
これに至っては屈んだりする度につっかえる等して
哲の動きを直接妨げている。
顔も、以前の可愛さを残しながら真ん丸く膨れ、
二重あごが出来ている。
外田哲(11) 142cm 34kg 71・49・63
→59kg 86・94・84

 

 

「それじゃあ、お母さん 今度はもう少し美味しいお菓子を持ってくるから
・・・出来るだけお大事にね」
哲は、気持ちはやや軽くなったがそれより遥かに重くなった体重が足に乗った、
重くて遅い足取りで病室から出た。
その後ろに玄一が立っていた。
「・・・醜い」 娘を見て、父はそう呟き背を向けた。
その時に彼は確かな責任感と強い意思をもって決心した。

 

父として、人の上に立つ者として、死にも等しい罰をもって教えなければならない。
醜く生きるくらいなら、美しいまま死ななければならないことを、
その真実を教えなければならない。
・・・そう決心していた。

 

その決心が、
『・・・そ、外田、無理はしなくていいがもう少し早く走れないのか』
(すみません)
『うわぁ、無駄にデッケー胸しやがって』
(・・・ごめん)
『 色々手伝ってくれるのは有難いがまずその腹を引っ込める努力をして欲しい』
(・・・うぅ・・)
『あっちいけ、このデブス!』
(・・・やめてよぉ・・・・)
哲を苦しみの中へと放り込んだ。

 

 

 

ここで時は現在に戻り、そこから更に1月ほど進む。
『 外田玄一 逮捕』
病院の待合室、ライディはその大文字が一面を飾る新聞を読んでいた。

 

(外田玄一・・・ある意味責任感と意思は強かった)
(だけどそれは自分の考えを押し付け、他人を傷つけるだけのものだった)
(本当に責任感がある人は、自分を含めた皆を傷つけない道を選ぼうとするはず)
「リーファちゃんのようにね」
ライディの脇からにゅっと顔を出したのは光樹だ。
「み、光樹ちゃん!そ、そうだね」
顔を赤らめながら、ライディは窓の方に目を向ける。
中庭には、リーファと、丸々と太った二人の女性がいる。

 

 

大きい方の女性、そう喜美子は、ドスドスと庭を歩き回っている。
息を切らし、汗だくになっていて、それでも立ち止まってはいない。
大き目のワンピースタイプの服をパツパツに押し上げ、
その丸々とした体のラインが主張している。

 

彼女の体で特に大きいのはお腹だ。
臨月の妊婦の様な丸さと大きさを持って、ドドンっ、とせり出している。
そのお腹に比べるとやや小さいながらも、胸も立派な爆乳だ。
これまた母乳を蓄えた妊婦の様に、肉を蓄えみっちりと張り出している。
妊婦云々とは関係無いが、お尻も胸や腹と同等の巨大さである。
そこから伸びる脚は丸太の様に太く、どっしりとした安定感を出している。
(実際の動きはかなりぎごちないのだが)
顔にもかなり肉が付いてるが、
元の端正さは残っており、二重顎や一重瞼にはなってない。
外田喜美子(37) 164cm 91kg 111・126・110

 

 

喜美子は『朱の女』による肥化治療を受けて、体に満遍なく広がっていた病巣を取り除かれ
退院することが出来た。
その結果とても健康的な、言い換えれば肉感的な肥満体になった。

 

小さい方の女性、いや少女こと哲は喜美子に比べると痩せてはいる、
それでも一般的な基準からすれば、肥満体と言える体型だ。
何よりその仕草。満面の笑顔で母を応援しながら、
大量の菓子をばくつく姿はデブ以外の何者でもない。
(なおその横には、喜美子とリーファの分と思われる大量の菓子を置いている)

 

喜美子に比べると余裕が有る服の着こなしをしてるが、
丸いボディラインは隠しきれてない。
哲の体で一番巨大なのは胸、体重の差のある喜美子に並ぶサイズを有している。
まだ15歳なので、成長によっても大きくなる可能性を考えると、
末恐ろしく(?)すらなる巨大さだ。
その下のお腹は、括れをかすかに残しながらもぽっこりとしている。
しかし哲の食べっぷりを見ていると、「ぽっこり」から「でっぷり」、
もしくは「太鼓腹」になる日も時間の問題に思えてくる。
長椅子に乗っかっている尻は桃の様な巨大さで、
体重によって柔く変形し、尻肉が横に広がっている。
菓子入りのバスケットを乗せた脚は、これまた競輪選手の様に
(言うまでもないが、脂肪で)太くなって、
脚と脚が隙間なく密着し、バスケットを乗せることを可能にしている。
顔は少し丸くなった程度で、まだ、二重あごにはなってない。
外田哲(15)156cm 49kg 76・53・69
→76kg 109・84・104

 

 

哲は、身体的には時間をかけて真っ当にダイエットした。
だが心は、苦しみと悲しみの中に囚われたままだった。
リーファとライディ、そして喜美子の頑張りで、
ようやく開放されて4年前の幸せだった頃に戻ろうとしている。
・・・で、体型が心よりも一足先に4年前の体型に戻ったのだ。

 

「言うなれば、心のリバウンドってわけ」
光樹がそうまとめる。
「これも幸せ太りって言うのかなぁ」 とライディ。

 

リーファは喜美子の横を付いて走り、励まし助言をしている。
「今日は後もう少しです! この調子で頑張りましょう、喜美子さん!」
リーファの表向きの仕事は、こうして肥化治療の「被害」を受けた人の
フォローをすることだ。
「上から救えることも確かにある」
「でもリーファちゃんは手を汚してでも、人と向き合うことで救う」
「自分にも、他人にも優しい人だからね」
ライディと光樹は下で頑張っている「親友」を賞賛するのだった。

 

その直後、哲と菓子を交換し一緒に食べだしたリーファを見て、
ライディは別段気に止めなかったが、光樹は苦笑いしながら付け加えた。
「・・・他人には甘い人、とも言えるかもね」

 

「それで、光樹ちゃんはどうして来てくれたの?」
「明日、牛坂家のみんなと一緒に束井麻さんってパティシエの所に行くから、
お土産にどんなお菓子が欲しいか聞きに来たの」
「! 光樹ちゃんがくれるものならなんでもいい!」
「・・・はは、思った通りの返事、それじゃまた今度」

 

そして光樹は行った。肥らせの迷宮へ・・・

 

 

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