再と初 更なる試練と肥初め
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とあるレストランの屋外席でリーファとライディは満開の桜を見ながら、
紅茶を飲んでいた。
「2月、3月もあっという間に過ぎてもう4月かぁ」
「新入生のシーズンだね」
「僕や君とは関係無いものだけどね」
「ははは、そこを言われちゃきっついなぁ〜」
全く気にしてない軽い返事をしながら、リーファは茶菓子を食べる。
「リーファちゃん、ライディ・・・」
光樹が何か言いたげな様子で二人の席に近づいてきた。
「光樹さんもお茶しない?」リーファが光樹を誘う。
「いや、3か月前の末年家の事件は・・・」
「あぁ、あの事件・・・」ライディが少し間を置いてから事件の『顛末』を話す。
『去年のクリスマスとこの元旦に末年家に試練を与えた男・・・
試練の神は神としては本物の存在だったが、その心は下劣なものだった』
『あの男は太った女性そのものを毛嫌いしていて、
末年家に試練を与えていた女神を封じ、自分が理不尽な試練を与えることで
災いにより末年家を滅ぼそうとしていた』
『橘さんが関わったあの重さの神の事件からその存在を推測した僕は
試練の神に近づき下僕になる振りをして、
試練で通る道に罠をしかけるという試練の神としての罪の証拠を収めた』
『そして、全てを知った光樹ちゃんとリーファちゃん、
末年の師月ちゃんと陸美さんが作った隙を付いて封じの札を張り、あの男は封印された』
『それにより女神は解放され、師月ちゃんと睦美さんは元の体型に戻れた』
・・・って結末だったあの事件」
「いや、粗筋があるならその詳細を・・・」「打ち切り」
「え?」 「・・・誰かさんがまとめられなくなったんだよ」
「粗筋からして長ったらしいしね」 「・・・それを言われたらきっついなぁ〜」
リーファの指摘に結構気にした様な口調で返事するライディだった。
「まぁ、過ぎたことを気にする必要無いですよ、光樹さん」と、リーファ。
「う、うん、そうだね」
( どう過ぎたか読者にわからないのが問題なんだけど・・・)
「じゃあ私は『朱の女』、のアフターフォローに行ってきます」
そう言ってリーファは席を立った。
「過ぎたことは気にする必要は無くても、気にしたいものはあるってか?」
「じゃあ僕はまた悪い奴を騙しに・・・っても騙すべき相手が見つかってないし
リーファちゃんのアシストに行ってきます」
「そっちの方が好きな仕事だしね」
「まぁね、でも好き嫌いはともかく騙す方も必要な仕事だから」
(みんなの幸せを守るためにはね・・・)
ライディも席を立った。
「行ってらっしゃい」
二人を見送った光樹は席に付き、メニューを開く。
元々軽食を取ろうとしたところで、あの二人を見かけたから声をかけたのだ。
(しかしリーファちゃんは今年度は何人の人間を太らせることになるんだろうか・・・)
(・・・肥化治療はまだ認められたわけじゃないから哲ちゃんの時の様に
事件に巻き込まれるかもしれない・・・)
(それに作乃が封じた重さの神と先の事件で封じた試練の神、あの2人、
もとい2柱の様な悪しき神がまた出てこないとも限らない・・・ってのは考えすぎなか?)
(けど例えどんな事が起こっても、リーファちゃんとライディは負けたりしない)
(いや誰にだって理不尽な力に立ち向かう力はある)
(師月ちゃんと睦美さん、哲ちゃんに作乃、それに私が何とかできた様に・・・
って、全員デブってるじゃん!・・・どういう運の巡り合わせなんだか・・・)
そう光樹が一人考えこんでたところに、
テーブルに注文したハンバーグセットが来た。
(・・・デブらしく食べ物が来たら気持ちを切り替えるとしようか)
「・・・頂きます」
と、自嘲的な考えから「これまでとこれからのこと」についての思考を終わらせることにした光樹。
最初にライスの一口を頬張ると共に一種の結論を出すのであった。
(太った女達の物語は・・・『肥勇伝』は終わらない。
リーファちゃんやライディのようなヒーローがいて、
彼女たちが――私達が格好悪く太っても一生懸命生きようとしている限り
絶対にバッドエンドでは終わらない―――)
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*シリーズの時系列
・「美と健 肥化治療と演じる女」
・「偽と正 偽る男達と女の真心」
・「罪と罰 GMと朱水晶の少女」
・「責と功 GM少女の後日談とメイド少女の前日談」
・「肥らせの迷宮」
・「荷と駆 試練の聖夜と走る乙女」
・「再と初 更なる試練と肥初め」
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