364氏による強制肥満化SS

364氏による強制肥満化SS

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「たのもう!!!!!」
店に飛び込んできたセイバーの大声に、ラーメン屋の店員と客が全員振り返る。
その丸々と太った外人少女は鼻息荒くドスドスと店内に乗り込むと、

 

「これ、お願いします。」

 

壁に貼ってあるメニューから、例の懸賞金突きジャンボラーメンを指差した。

 

「これか〜… これ、まだ成功者出たことないけど、お嬢ちゃん大丈夫?」
「ええ、どうということはありません。今の私には、どうしてもお金が必要なので。」
あまりゆとりがあるとは言えないTシャツの袖を捲り上げてカウンターの椅子にどっかと腰掛けると、その迫力からか、はたまた彼女の重量からか、ズウン、と店内が揺れたような衝撃が走った。
穏やかだった店内に緊張した空気が漂い始める。

 

「さあ、持ってきていただこうか。」
相撲取りのように、でっぷりした横腹の肉をぱぁん!と叩くと、挑戦者として店主の目を射抜く。
それは、フラフラになりながらランニングを終えたばかりの疲れを微塵も見せず、正に戦いに隣した戦士の目だ。

 

それを見た店主も何かを悟ったのだろう、奥で働く若い店員達に何か目配せを送る。

 

「へい… ギガラーメン1丁!」
そしてしばらくして、二人がかりで運び出してきたものは、
赤ん坊くらいなら風呂桶代わりに出来るような、見たこともない大きなどんぶりだった。
中には寸胴鍋を一つそのまま注ぎ込んだような量の麺とスープ、ブロックを横にスライスした巨大チャーシュー。
その他の具も全てがてんこ盛りの、まさに、ギガラーメンだ。

 

ぎらぎらと脂ぎったスープにセイバーのまんまるの顔が映りこむ。
「ほほう、これはこれは… 食べ切れば10万円というだけありますね…」
「おうよ。1杯、25人前だ。但し、食べきらなかったら罰金5万払ってもらうからな。」

 

見ると、確かに店内のチャレンジメニューの張り紙にも、
小さく『チャレンジ失敗の場合は、代金として5万円をお支払いいただきます』とあった。
これを30分で食べきる人間など、通常で考えれば先ずありえないだろう。
話題づくりのためだけに考案されたような無茶な内容であった。
しかし、気高き食いしん王はフッと不敵に笑い、割り箸をぱきりと割る。店内が再び、おおっ、とどよめいた。
「いただきます。」
それがスタートの合図だったかのように、店主がストップウォッチのスイッチを押した。

 

―――――――――――――そして。
「んむっ… ごひふぉうさま… ですっ。

 

最後のスープの1滴まで飲み込んだセイバーは、
カウンターの紙ナプキンで上品に口元をふき取ると、再びぼっこりと膨らんだ太鼓腹をさすっていた。
寸胴鍋いっぱいのラーメンを収めたはずの腹は、正にドラム缶のような体積に… なりそうなものだが、元からの寸胴体型はさておき、セイバーの肉襦袢のような肉付きのいい下腹部は、衛宮家での昼食後よりやや目立つほどにせり出した程度で、彼女の表情も余裕そのものだ。

 

「ま…、まさか… 女性にクリアされるだなんて…」
「…ふふ。私を女と思って油断してもらっては困る。この私の本気の前には、ラーメンなど飲み物に等しいのですよ。」
余裕たっぷりに勝ち台詞を吐くも、その声はどこか太くくぐもっていて、丸い体もますます重たそうに見える。

 

「……さあ、約束の物を渡していただこうか。」
「ほいよ。…完食おめでとう」

 

賞金と書かれた封筒を受け取るとゆっくりと中身を確認し、
ぴちぴちのショートパンツの尻ポケットにしまいこんだセイバーは、よいしょ、と小さく呟きながら重たそうに椅子から立ち上がった。
そのままたぷんたぷんと体を揺すりながら、向かいのドーナツ店に意気揚々と乗り込むと、
若い女性達で混み合う列に並び、店員に目的のフィギュアセットを注文した。

 

「はい、ポチャ・デ・ライオンフィギュアセット5点でのお買い上げですね〜♪」

 

ワンセット500円でドリンク1つとドーナツ2個つき。全5種類でドーナツ10個、2500円の支払いである。
いくら他に手段がなかったとはいえ、大食いの代償を払ってまで10万円もの大金を手に入れる必要はなかったが、今のセイバーにはそんな言葉は届かないだろう。
店内奥のテーブル席で胸をときめかせて待つセイバーの前に、5個のフィギュアが並べられる。

 

「ああ… なんて可愛らしい…!!!」

 

そしててんこ盛りのドーナツとトレーいっぱいのドリンク類…それとともに、何故か一緒に小さなスクラッチカードも置いてある。
「これは…?」
「こちらも本日までの限定キャンペーンです。この銀の部分をコインでこすっていただいて、
あたりが出たら、こちらのポチャ・デ・ライオン特大ぬいぐるみと交換させていただきます。」

 

にこやかな店員が指差す先には、これまた愛くるしい、巨大なぬいぐるみが鎮座していた。
「…………!!!!!!!!!」

 

目がハートマークになろうかというほどに胸を躍らせるセイバー。慌ててスクラッチをこすってみるが…ハズレ。次もまた、ハズレ。
8枚もあったカードは、瞬く間にすべてハズレの山へと姿を変えていた。
「こ…このカード、どうすればもっともらえるんです?」
「こちら、300円で一枚差し上げております。」
一枚300円。手持ちにはまだ先ほどの賞金がほとんどそっくり残っていた。もう少しだけ注文してみれば、案外と当たる可能性もあるかもしれない。
「すみません、追加でお願いしたいのですが…」
「はい?」

 

しばらくすると、再びセイバーの席の周辺はギャラリーにすっかりと囲まれていた。

 

「もぐもぐ… んくっ、ハズレ、ハズレ… これは3等、またハズレ、これは2等か… 2つ目ですね… あむっ」
片手でドーナツをかじりながら、一心不乱に小さなカードの銀色を削る。

 

なんといっても各店舗に1点しか割り当てられない大当たりだ。
2等、3等のマグカップやタオル、ハズレのサービスである沢山の割引券も入手したが、肝心のぬいぐるみは一向に当たる気配がない。
新しいカードを削りながら、ほとんど味わいもせずにドーナツを次々口に押し込んだセイバーは、

 

「もごっ… すみまふぇん! どぉなつ、なんれもいいので、か〜ど10まいぶん! ついかでっ!」
「また追加ですか… お客さま、そろそろ体調を考えておやめになった方が…」
「むぐっ、ごくん。いえ、私は普通の人よりはずっと健啖なので… 始めに食べた分はもう消化しはじめていると思いますから、お構いなく。」

 

よく見れば、出っ腹のボリュームはもはや臨月の妊婦のようだが、更に食べてもそれ以上張り詰めることはない。
普通の人間よりは遥かに代謝の早い彼女は、久々の運動とその後の爆食で体内のエネルギー変換が活発化し、既に今食べた分の過剰なカロリーが脂肪として蓄えられ始めているのだ。

 

もちろん、セイバーがそれには気づいているわけではなく、単に消化に自信があるだけ。
そうして、ガラスケースの中にドーナツを並べるのが間に合わないほどに次々注文しては、
その全てがスルスルとブラックホールのような胃袋の中に収めつつ、
目では捉えられない速度ながら確実に少しずつ膨らんでいくセイバーの姿を、店員と野次馬はあっけに取られて見守っていたのだった。

 

 

―――――2時間後… セイバーの姿は、新都から深山を繋ぐ路線バスの中にあった。

 

バス代は、ラーメン屋の賞金の残りから出した。
ガラガラのバス内で、奥の6人がけの席の半分を占領した彼女の隣には、
巨大なライオンのぬいぐるみ。ミセドのポチャ・デ・ライオンだ。
セイバーの食べっぷりに根負けした店長が、ついに譲ってくれたのである。

 

「うーーーーー… もぉ… 食べられません…」

 

思わず、ベタなセリフを呟くセイバー。

 

いくら無限の胃袋と言われるセイバーであっても、たっぷりの昼食とおやつから数時間後に寸胴鍋にあふれんばかりのラーメン、続けてショーウィンドーいっぱいのドーナツ。
さすがにこれは消化スピードの限界を超えていた。
実際、日々の大食暴食で鍛えられたセイバーの胃は相当に大きくなっており、これは彼女の底なしの食欲の源でもある。
しかし、いまやその巨大な胃袋も容積いっぱいに膨らみ、その上には彼女の特性とも言える体質で生み出されたエネルギーが更に贅肉として蓄積されて、セイバーの腹はもはや男物のLサイズTシャツにも収まりきらず、裾の下からはすっかりヘソが覗いていた。

 

「げふぅ…………」

 

またも大きなゲップとともに、ぶよぶよの贅肉に包まれたはちきれんばかりの腹をさする。
半年前とはすっかり輪郭の変わった満月のような顔に頬杖をつき、でっぷりとした下腹を晒したまま、彼女はぼんやりと外を見ていた。
ぱんぱんの胃を庇ってか、椅子のにのけぞるようにもたれ、手前に腹を思い切り突き出して座っているので、もとの背丈の小さなセイバーは遠目からは肉の小山のように見えるだろう。

 

――――ダイエットのためにランニングに来たはずが、ドカ食いしすぎでバスで帰る羽目になるなんて、本末転倒も度を越している。

 

目当てのぬいぐるみを手に入れ一時はホクホクとしていたものの、さて家まで歩いて帰ろうと思ったら、店中のドーナツをその身に溜め込んだ胃袋がずしんと沈み、立ち上がることにさえ難儀する始末。
店員に助けられながら起き上がり、丸々と肥え太った体と食べすぎで重苦しい巨大な腹に苦しみながらバス停までヨタヨタと歩く自分は最低に醜悪で、ようやくバスに乗れた頃には嬉しい気持ちも何だかしぼんでしまっていた。

 

サーヴァントとして力を発揮していた頃は、いくら食べてもその熱量はすぐに魔力と言う名のエネルギーに変換され、このように食べた分だけブクブク太って余計な肉を纏うことなんて一度もなかった。

 

窓の外を流れていく風景は、聖杯戦争の中、彼女のマスターと二人、夜を駆けて行った思い出の場所だ。
今となっては、あのセンタービルの屋上で死闘を繰り広げていた自分とが今の自分と同じものだったなんて、信じられないほどだが…
厳しい戦いの数々は決して「楽しい」などという言葉で片付けられるものではなかったが、あの張り詰めた日々がたまらなく懐かしく感じ、セイバーは胸を締め付けられた。

 

いつだったか、凛が「心の贅肉」とやらに気をつけろと言っていたっけ、と思い起こす。
今朝までこんな生活やこんな自分に何の疑問も抱かず、のうのうと暮らしていただなんて……
今の自分は体と共に、心までもがたるみきって、ぶよぶよに太ってしまったかのようだ。

 

これではもはや、士郎のサーヴァントなど務まるはずがない。
役立たずとなった自分が、あの家に帰る場所などあるのだろうか…

 

騎士の誇りを失って打ちひしがれたセイバーに、衛宮邸の前にある停留所に到着したとのアナウンスが入る。

 

重い体と心を抱え、巨大なポチャ・デ・ライオンとともに停留所に降り立つと、そこには、遅い帰りを心配して、士郎が家から出てきたところだった。

 

「セイバー!!!! 全く… 夕飯の時間とっくに過ぎてるのにいつまでも現れないから、すっごく心配したんだぞ!!! こんな時間に帰ってくるなんて、どこ行ってたんだ!!!」
「ふあ… す、すみません、シロウ…!!!!」

 

昼間よりも少しくぐもった声で答えたセイバーは、申し訳なさでいっぱいになるとともに、急に、この醜い体を自分の主人に見られることが恥ずかしくなり、大きなぬいぐるみで体を隠そうとしたが、隠しきれずにますます彼女の羞恥心を煽っただけだった。

 

「ん? なんだそれ… セイバーが好きなあのライオンのぬいぐるみか。こんな大きいの、どうしたんだ?」
「あ、いえその、ミセドのカードのくじを拾ったら、あたりが出て…」

 

「そうか。そりゃラッキーだったな。」
「は、はい……」
手に入れたいきさつが情けなさ過ぎて、思わず嘘を答えてしまう。
門限を破ったばかりか、マスターに嘘をつくだなんて、何たる不忠…――――

 

だが、士郎はそんなセイバーの心中など知る由もなく、にっこりと微笑んで彼女の頭を優しくなでた。
「怒ったりしてゴメンな。夕飯あっためなおしてやるから、早くおいで。 おなか空いたろ。」
「えっ…」
思いがけない主人の優しさに、セイバーはきゅんと胸を打たれた。

 

「あれ、もしかしてシロウもご飯待っててくれたんですか」
テーブルには、二人分の箸と茶碗が用意してある。

 

「そうだけど… あ… そうだ、もしかして、外でなんか食べてきてたか? なんだったら、あとにしようか。」
「はい… 少し。」
今度は正直に答えるセイバー。

 

「じゃあ俺、部屋にいるから、しばらくしたら…―――」
「でも、やっぱり今食べます。私、帰ってきたら急におなかが空いてしまって」

 

ちょっぴりはにかみながら、丸い腹をぽふぽふとさすってみせると、弾力のある腹肉が、ぼよんと波打つ。
確かに、士郎の作った料理が並んだとたん、あれだけ苦しかったはずの胃袋が、また食欲を盛り返してきたのだ。
好きなものは別腹とは、よく言ったものである。

 

「ほんとかよ… セイバーは本当に食いしん坊だなあ」
嬉しそうに笑う士郎に、セイバーはふっと心が軽くなるのを感じた。

 

「「いただきます。」」
二人で手を合わせて挨拶する。

 

「あの… シロウ…」
「ん?」
「私、最近ちょっと… ふ 太りすぎでしょうか…」
二人きりの夕食をつつきながら、セイバーは思い切って尋ねてみた。

 

「え? ああ、そうだなあ…」
士郎はまるで初めて気づいたように、半年前の倍に膨らんだセイバーの体をまじまじと見る。
その視線に耐えかねて、セイバーは真っ赤になりながらごはんをかきこむが、さすがにこれは味を感じられなかった。

 

「うん、確かにちょっと太ったかもな。前の服入らなくなっちゃったし、今日買ってきたTシャツも丁度いいかと思ったけど、ちょっと小さかったかも。」
シャツの下からはみ出したままの出っ腹を指摘されて、セイバーはますます体を硬くする。
「でも、別に可愛いと思うけど… 俺」
「へっ…?」

 

「会ったばっかりの頃の張り詰めたセイバーより、いまのお前の方が自由で楽しそうでずっといいよ。今まで辛いこと、厳しいことばかりの人生だったんだから。俺といる間くらいこの世界の楽しさに浸って、ちょっと緩んだっていいじゃないか。」
士郎はテーブルに並ぶ大皿のおかずを取り分けながら、しれっとそう言った。

 

「し、シロウ…」
マスターのさりげない優しさに、目頭が熱くなる。

 

「それに、あれから桜に相談してみたら、通販のカタログで、前のセイバーの服に似た大きいサイズのやつ売ってるって教えてもらったから。11Lまであるらしいから、まだまだ太っても大丈夫だぞ?」
士郎はイタズラっぽく微笑むと、テレビの上においてあるカタログを指差した。

 

「ありがとうございます… シロウはやっぱり、私の大切なマスターです…」
勝手に1人で思い悩んで、一方的に主従にふさわしくないなどとしり込みしていた自分を恥じた。
聖杯戦争が終わった今、自分のするべきことは、信頼する士郎の下で、思い切りこの毎日を楽しみ、味わうこと…
それが愛するマスターの望みだと理解したセイバーは、巨大なドンブリを差し出すと、
士郎は笑って、てんこ盛りのお代わりをよそうのだった。

 

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