10氏による強制肥満化SS
結果が示された後、私はピエロ面に言った。
「あの、ピエロさん。ひとつお願いがあるんですけど」
「何でしょう?」
「太ったせいで服が入らないの。何か代わりの服をもらえますか?」
「確かに私もお腹まるだしだな」「私もスーツのボタンがきついわ」「私もだよ」
他の3人も同意する。
「かしこまりました。こちらで代わりの服を準備しました。」
すると、机の上に箱が4つ現れた。
「服は箱の中に入っております。好きな服をお選びください。」
「好きな服ったって、中身が分からないよ。」私は文句を言った。
「ここは、勘で選ぶしかないようだ。」武宮さんが提案した。
「じゃ、私は一番右の箱がいい。」熊野さんが言った。
「私は左から2番目の箱にするわ。」小野月さんも箱を選んだ。
「それなら、私はこれだ。」武宮さんは一番左の箱を選んだ。
私は残った箱を選んだ。
着替えているところを見られないように、私達はそれぞれ物陰に隠れて着替えることにした。
箱を開ける。
「何これ!?」
箱の中に入っていたのは特大サイズのメイド服だった。
「これを着なきゃならないの?」
しぶしぶ私はメイド服を着た。
XLはあろうかというメイド服は、今の私の大きな体にぴったりと合った。
「きゃあ、何これ?」小野月さんの悲鳴が聞こえた。
「どうしたの?」
私は少し恥ずかしさを感じながら、物陰から出た。
そこには、牛柄のビキニに大きな体をつつんだ小野月さんが立っていた。
ご丁寧に、しっぽのアクセサリーまで付いている。
「何でこんなのが入っているのよう」
小野月さんは不満そうだ。
「ま、まあ落ちついて・・・」
私は彼女を宥めた。
そうこうするうちに、熊野さんも着替え終わって物陰から出てきた。
ごく普通のジーンズにごく普通のシャツを着ている。
「よかった、私のは当たりだったんだね。二人ともご愁傷様?」
私と小野月さんの格好を見て、彼女はクスリと笑った。
「う、うるさいわね!」
小野月さんが恥ずかしそうにいった。私の頬が赤くなった。
「そういえば、武宮さんは着替えたのかな。武宮さーん。」
私が呼ぶと、物陰から大きな影がのっそりと現れた。
ジャージを着た武宮さんだった。
「あはは、武宮さん、だっさーい。」熊野さんが容赦なく笑った。
武宮さんは顔を赤くして体をモジモジさせているだけだった。
-最後の『競技』-
ピンポンパンポーン♪
「みなさま、着替えたようなので、最後の『競技』を開始いたします。最後の『競技』はスゴロク。
ゴールに到着した順に1位〜4位を決定いたします。この『競技』の得点は、1着でゴールされた方は賭けた体重の2倍の得点が得られます。2着でゴールされた方は1.5倍、3着の方は1倍、4着の方は0.5倍の得点が得られます。」
ピエロ面が言った後、周りの部屋の風景が歪み、私達は巨大なボード盤の上に立っていた。
「それでは、賭ける体重をお決めください。それでは、平本さんからどうぞ」
(最低でも、22kgを賭けないと、1位になったとしても、優勝できないわ。)
私は覚悟を決めた。
「そ、それじゃ、私は30kg賭けるわ!」
私がそう言うと、私の体がぶくぶくと膨らんでいった。これまでよりも膨らみ方が大きい。
「あ、はぁぁぁん」
こそばゆいような感覚を覚え、思わず変な声を上げてしまった。
ちょうどいい大きさだったメイド服は、ぴちぴちになって私の体に張り付いている。
ニーソックスから太ももの肉がはみ出だしているのが分かった。
「30kgの体重増加はきついなあ・・」
「ひどい有様になったな、平本。私は5kgだけにするぞ。」と、武宮さん。
武宮さんのお腹が少し膨らんだだけで、体形の変化はほとんど分からない。
(もっとも、太りすぎて5kgの体重増加なんて目立たないだけかもしれないけど)
「あらあら、1位の人は余裕ね。このままじゃ私も負けそうだから賭けに出るわ。
20kgの体重増加でお願い。」小野月さんが言うと、彼女の全身が2回りくらい大きくなった。
服装とも相まって、今の彼女はよく肥えた牛のようだ。
「私も武宮さんに追いつきたいな。20kgの体重を賭けるわ。」
熊野さんが言うと、彼女の体が膨らんで、ジーンズとシャツにぴっちりと張りついた。
「それでは、スゴロク開始です。4位の平本さんから順番に振ってください。」
ピエロ面に言われて、私はサイコロを振った。出た目は6。
スタートから6マス目まで50mくらいだろうか。私はよたよたと進んだ。
「ふぅ、ふぅ」
たった50m進むのに息が切れる。
(そりゃそうよね。今、私は100kg以上あるもの)
増えすぎた体重に心肺機能が追いついていないのだろう。
やっとのことで辿り着いたマスには「筋力・体力30%アップ」と書かれていた。
すると、急に息が楽になり、体が軽く感じられるようになった。
「筋肉が増えて重い体を支えられるようになったのかな?」
とりあえず、マス間の移動は簡単になったから良しとしよう。
「次は私の番ね。それっ」小野月さんがサイコロを振った。出た目は3。
「3か。ちぇっ」不服そうに大きなお尻を揺らしながら進む。
「1・2・3と。あら、テーブルの上にすごい量のごちそうが置いてあるわ。なになに、「料理を完食できれば、10マス進む」ですって。よーし、食べきってやるわ。」
そう言うと、彼女は椅子に座り、料理をがつがつと食べ始めた。
「もぐ、ごく、くちゃ、くちゃ」
スープ・サラダ・肉料理・ジュース・・・次々と口に食べ物を運ぶ、丸々とした彼女の姿は、
とても見苦しかった。
料理を平らげていくにつれ、彼女のお腹がどんどん大きくなり、椅子がぎしぎしと音を立てる。
「ゲップ、こ・・これで10マス進めるわ。げふ」
彼女は料理を間食すると、ぱんぱんになったお腹をさすりながら、10マス進んだ。
「みっともなーい。私はあんな風になりたくないわ。」ドスドスと足音を立てながら歩く小野月さんを見ながら、熊野さんはサイコロを振った。
「5が出たね。1・2・3・4・5っと。なになに?」
目的のマスに着いた彼女が、マスに書いてある文字を読もうとした瞬間、黄色いガスがマスから噴き出し、彼女の体を包み込んだ。
「きゃっ、げほげほ」
ガスはしばらく漂っていたが、次第に彼女の姿が見えてきた。
ジーンズからちょこんと飛び出たくるりとしたしっぽ。
髪から覗く垂れた耳。
そして、つぶれた大きな鼻。
「な、なによこれ。」醜く肥えたその姿は豚そのものだった。
「ぶひぃぃ!み、見ないでぇぇぇ」
彼女は、べたんと地面にへたり込んでしまった。心が折れてしまったようだ。
「おや、彼女は『競技』続行不可能のようですね。リタイアとみなします。」
ピエロ面の声がそう告げると、熊野さんの姿がスッと消えた。
最後は武宮さんの番だ。
「怖いな。あんなマスがあるのか。どうか5だけは出て欲しくないな。」
彼女は祈りながらサイコロを振った。
「良かった。2だ。」
安心して2コマ進んだ。
「えーと、「おならが止まらなくなる」。何だこれは!?」
武宮さんが言った瞬間、ぶーっ、と彼女のお尻から音がした。
「わっ、そんな、ウソ!?」
何か言葉を発するたびに、彼女のお尻から、ぶっ、ぶっ、とおならが漏れる。
「くそ、恥ずかしいが豚にされるよりましだな」
彼女は唇を噛んだ。
その後、私達3人は、最初ほど厳しい効果を持つマスに止まることなく、スゴロクを進んでいった。
もっとも「5kg体重が増える」とかいう体重増加のマスばかり止まってしまっただけだったけど。
「げーっぷ、だいぶ進んだわね。ゴールはあと少しだわ。っぷ」
盛大にゲップをしながら、小野月さんが言う。
「はふぅ、ふひぃ、そ、そうだね、最後まで頑張らないと。」
私はあえぎながら言った。
体重増加のマスに多く止まってしまったため、私の体のボリュームはさらに増加し、スゴロクの序盤でアップした心肺機能でも息が切れる。140kgはゆうに超えているかもしれない。
こんなデブなメイド、世界中探してもいないだろう。
「あと、6マスだ。頑張るぞ。」
ぶーっ、というリバーブ音とともに、完全に丸顔になって二重アゴができた武宮さんが意気込んだ。
現在、小野月さんがゴールまで残り8マスでトップを走っている。
その後ろに武宮さんが続き、武宮さんの1マス後ろに私がいる。
「げぷ、私の番ね。」小野月さんがサイコロを振った。
「5マス、進む、と」彼女は、もはやクジラサイズともいえる体をよたよたとよろめかせながら進んだ。彼女が一歩踏み出すのに合わせて、全身の贅肉がふるふると震える。
「えっと、「30kg体重が増える」ですって!?」
小野月さんの体が一気に膨れた。彼女は重さに耐え切れずに床にへたりこんだ。開いた股の間が腹肉で隠れている。
「う、くそ、立てないわ。」
彼女は懸命に立ち上がろうとするが、自分の体が重すぎて立つことができなかった。
すると、ピエロ面の声が聞こえた。
「彼女も『競技』続行不可ですね。リタイアとみなします。」
そして、小野月さんの姿がスッと消えた。
次にサイコロを振るのは武宮さんの番だ。
「あと、6を出せば私はゴールできる。6が出てくれ!」
サイコロを振った。結果は5。
「5か。くそっ。」彼女は5マス進んだ。
止まったマスには・・・「過去のトラウマを体験する」と書かれていた。
急に辺りの景色が歪み、私はどこかの中学校の教室にいた。
数人の男子生徒が太った武宮さんを囲んでいる。
「おい、くせーんだよこのデブ!屁をこくなや!」
どうやらこれは武宮さんの過去の記憶らしい。
「ち、違う!今の私はデブじゃない。私はお前らを見返してやろうと高校に入って頑張ったんだぁ」
武宮さんは必死で叫んでいる。
彼女の言動から察するに、彼女は中学のころ、太っていたことでいじめられていたらしい。
現在の才色兼備な彼女は、高校に入ってダイエットを頑張ったからだったのか・・。
「うるさいわよ!太っているくらいでいじめてるんじゃないわよ!」
私は耐え切れなくなって彼女のそばに寄った。
「武宮さん、周りの人が全部あなたをいじめても、私はあなたの友達だからね!」
「うぅ、平本ぉー」武宮さんの目からぽろぽろと涙が零れた。
もしかして、武宮さんがこの『ゲーム』で手に入れたかったものとは、「仲の良い友達」だったのかもしれない。
再び、周りの景色が歪み、私達はスゴロクのボード盤の上に立っていた。
マスの効果が切れたのだろう。しかし、武宮さんは放心したままぴくりとも動かない。
ピエロ面の声がする。
「彼女もリタイアですね。必然的に、残った平本様が最後の『競技』の勝者です。」
空中に結果が表示された。
-最終『競技』終了時点-
1位:平本 みちる
獲得得点:60点(30kg×2倍=60点)
現在の総得点:67.5点
現在の身体データ:163cm 134kg B110 W100 H104
-位:武宮 誠
獲得得点:リタイアのため、獲得得点なし
現在の総得点:50点
現在の身体データ:170cm 98kg B103 W98 H101
-位:熊野 明美
獲得得点:リタイアのため、獲得得点無し
現在の得点:25点
現在の身体データ:160cm 86kg B85 W80 H83
-位:小野月 麗子
獲得得点:リタイアのため、獲得得点なし
現在の得点:20.5点
現在の身体データ:173cm 139kg B125 W105 H108
気が付くと私は元のマンションの部屋に戻っていた。
周りには誰もいない。
「『ゲーム』の最終結果を発表いたします。優勝は67.5点を獲得した平本様です。平本様、どんな願いを叶えて欲しいですか?」ピエロ面が私に尋ねる。
快活な熊野さんの笑顔やきれいな小野月さんの顔、泣いていた武宮さんの顔が脳裏によぎった。
私の願いは決まっていた。