710氏による強制肥満化SS
二人は帰りのバスを待つ間にあることに気が付いた。
体がかゆくてたまらないのだ。
それもそのはず、あまりにも慌てていたためシャワーもろくに浴びずに出てきたせいだ。
「なぁ、セイバー。どうせだから温泉でも入っていかないか?風呂なら家でも入れるけどせっかくここまで来たんだし、ついでにさ。」
そういうとセイバーの沈んでいた顔が目に見えて明るくなった。
しかしその顔は「はっ」と何かに気付いたような顔つきをしたとほぼ同時に、再び暗くなった。
また先ほどのプールの一軒と同じ状況になるのではないかという考えが彼女の頭の中をよぎったのだ。
そんな彼女の思考を見越してか、士郎がにこやかな顔をして次のような言葉を続けざまに口にした。
「大丈夫だって。休日とはいえ、午前中から風呂に行ってる奴なんてそうそういないよ。」
その言葉を聞いて少しは気が安らいだのか、また数秒前のわくわくした少女のような表情が彼女の顔に戻ってきた。
それに普段は町の方などあまり来ないので新鮮だったということもあったのだろう。
彼女の心は今や大いにはずんでいた。
あわや、その真ん丸に膨れ上がったボールのような体ごとはずみだしてしまいそうな勢いでうずうずしている。
セイバーの心は、すでにこのむず痒い体を心地よい湯船に浸けることで頭がいっぱいだった。
「そうと決まれば善は急げです!行きましょう、士郎!」
そのセイバーの掛け声とともに二人は停留場を後にした。
温泉はそう遠くないところにあったので、二人並んで徒歩で歩いていくことにした。
しかし、今のセイバーにとってはそう遠くはないところ、とはいかないようであった。
プールの時ほど音は激しくないものの、段々乱れていく呼吸を止めるすべはなかった。
水の抵抗はないが、それは同時に水の浮力の助けもないことを示していた。
数十分の間、水の中で慣らしていたセイバーにとっては、足元に広がる舗装された道路がまるで重い鉄球をぶら下げた足枷のように思えた。
事実、彼女の足に重くのしかかる自重は鉄球などとは比べ物にならないほどの重みであったが、その重さ以上に彼女らの行進を阻んでいるようである。
加えて、彼女の体にまとわりついた贅肉の山は、見ていて見苦しいというほどではないにしろ、一歩進むごとに全身がくまなくフルフルと軽めに揺れるという光景もまさに壮観の一言だった。
〜数分後〜
やっとの思いで温泉についた士郎たちは、早速温泉に入ることにした。
ここに着くまでにすっかり汗だくとなり、ヘトヘトにバテてしまった騎士王は到着を大変うれしく思った。
しかしそれ以上に、これだけの距離を歩いただけで息を切らしてしまう自分が情けなく思え、とてもじゃないが素直には喜べなかった。
それと同時に絶対に痩せてやるという彼女の誇り高き意志に再び火がついた。
二人は男女別々の浴場へとそれぞれ赴いていった。
着替え終わったセイバーは浴場へと入っていった。
浴場には湯気が立ち込めていた。
士郎のいっていた通り、入浴客の数は極端に少なく、いたとしても大半が年配の女性だった。
タオルはプール用に持ってきたのを使っていて、それで前を隠してはいるがこの大きさでは彼女の豊満に育ってしまった両胸さえもまともに隠せそうにない。
風呂に浸かる前に体を洗うため、洗い場の方へと向かった。
そこで彼女は早速、頭や体を洗い始めた。
シャワーから出てくる湯は戦場での汚れを落とすかのごとく心地の良いものに感じられ、体のむず痒さが次第にひいていった。
すると突然、何かが自分の体に触れていることに気が付いた。
頭を洗っている最中の出来事だったため、目を閉じていたので見えなかった。
急ぎシャンプーを洗い流し、目を開けてみると、周りに年配の女性たちが集っている光景が鏡越しに彼女の目に映った。
何やらありがたそうに掌をこすり合わせている者もいる。
一体どこにこれだけの人数が潜んでいたというのだろうか。
「いんや〜、ずいぶん恰幅のいい娘っこだねぇ〜?私こんなかわいい子初めて見たわ〜。」
「最近の若い子は痩せて骨と皮ばっかりだからねぇ、こん位が丁度いいんよ?」
「ぽちゃぽちゃしてて可愛らしいわぁ。血色もよさそうで、あやかりたいもんだねぇ」
「な!?やっ、ちょ、そこは・・・やめてください!・・・ハァンッ!!も、揉まないでぇ///」
予想外の襲撃にさすがのセイバーも動揺を隠せなかった。
その後も彼女の意思などは気にせずに、ひたすら拝み、触り、揉むのオンパレードだった。
高齢の老人に手を上げるわけにもいかず、微力ながらの抵抗も試みるが、されるがままの状態がしばらく続いた。
やっとのことで老人たちから解放された時には、セイバーはすでに憔悴しきっていた。
揉まれたり、触られたりしたことによるくすぐったい感覚と気持ち良さとで、目からは光が失われ、口からは甘い吐息がもれており、そこからだらしなく一筋の透明な線が顎へと伝っていた。
腰を掛けていた椅子からはとうの前から転げ落ちていて、大きな体を床に寝そべらせながら虚ろな目で天井を見上げていた。
仰向けになったため少し潰れはしたものの、胸やお尻、腹部などはほとんど張りを失わず、絶えず彼女の体にのしかかってきてその存在を誇張していた。
意識が少しずつ戻り、その重みが自分の体について離れないものであるという自覚が持てるようになってくると、その苦しさと羞恥とで吐息はさらに甘く、激しいものになった。
完全に我に返ったセイバーは、数分もしない間に何があったのかというほど疲弊していることを自覚した。
まだ恥ずかしさは完全に抜けきっていなかったが、それよりも理性が勝ってきたのである。
とりあえず何とか身を起こして体の残りを洗い終えた。
まさかの奇襲攻撃に面食らい忘れかけていたが、洗い場を後にすると当初の目的地であったサウナへと向かっていった。
まず体を洗い、それからサウナに入る。これは玄関口で彼女が新たに掲げた、目的に到達するための最初のプランだ。
まあ途中経過は惨敗に終わったが結果がすべて、要はキングさえ取ってしまえばこちらのものなのである。
彼女は桶に一掬いの冷水を頭からかけ、サウナに入っていった。
幸い、先ほどの騒乱に参加していた老人たちは別のところに行くか、すでに上がってしまったのかだれ一人として入っていなかった。
セイバー一人の貸切状態である。
彼女は何となくほっとし、胸をなでおろした。
サウナは快適そのものだった。
プールでの運動の後にここまで歩いてきたことによる疲労、さらに先ほどの一件である。
サウナの中で聞こえる音は、垂れ流しにされているテレビのニュースの音のみ。
こんな状況では不意に眠気が襲ってきても文句は言えない。
しばらくの間、頭を前後に揺らし船を漕いでいたが、次第に暗闇が深さを増し、彼女は自分でも気づかないうちに眠りに落ちてしまった。
あまりの寝苦しさにパッと目を覚ましてみると、頭はクラクラし、体全体から汗が滝のように流れ出ている。体がほてり、とても暑い。
危ないところだったが、この感じだとそんなに長くは眠っていない、おそらく数分から15分の間だろうと推測した。
ともかく一刻も早くここを出なければ、それに士郎がすでに上がり、私を待っているかもしれない。
考えるが早いか彼女の足はもう出口へと向かっていた。
サウナから出た瞬間、スカッとした心地よい風が吹いたような気がした。
とはいえここはまだ湯気立ち込める浴場の中ではあるが、サウナから出たときはだれでもそんなものだろう。
ふと、新たな欲求が彼女を襲った。
ひどくのどが渇いたように思われたのである。それは思い過ごしではなく実際にそうだった。
長時間サウナに入り、大量の汗をかいていれば当然のことだ。
彼女は体を軽く洗い流し、浴場を後にした。
そしてすぐさま入口付近にある水飲み場でガブガブと水を補給し始めた。
頭はまだ熱でぼんやりとしており、うまく働いてないようだった。
一心不乱で飲み続けている彼女のお腹は、いうまでもなく徐々に膨れていった。
「―――――ケェッフ!っぷう・・・クポッ」
ゲップといえるかどうかわからないほどの薄く小さな音と、同じところから聞こえてくる水音が彼女の胃袋の限界の警告音だったようだ。
彼女はのど元ギリギリになるまで水を飲んでいた。油断すれば今にも口からこぼれ出てきてしまいそうである。
今やそのお腹はパンパンに張りつめ、息をした時の微小な振動でさえ、中の水がチャプチャプという音に代わって周囲に聞こえてくる。
「・・・?ここは?私はいったい何を・・・グェップ!?な、なんですかこのから・・・おえっぷ!?」
熱に火照っていた頭が正常に戻り、今自分がどうなっているのかを理解しようとしたが、とてつもない苦しさと重さとで息をするのもやっとだった。
「グププ・・・うっ、うぅぷ・・・ぐ、ぐるじぃ・・・」
重さに耐えきれなくなり、たまらずその場に腰を下ろした。
今やセイバーのお腹は水風船のように張っており、もとより満月のような形をしていたものがより球体に近くなった形をしていた。
両の腕を後ろにして体を支え、残りの体の部分全体でその太鼓腹を抱えるような状態で座り込んでいる。
いっそ吐いてしまえれば楽なのだろうが、今の彼女の体には吐き出すための空気も入ってなく、食堂を動かす筋肉も水圧に負けてほとんど動かせない状態だ。
うつ伏せになろうにも、固く張りつめた重荷がそれを許してはくれない。
これほどの窮地に立たされたことはたとえ聖杯戦争中でもそうそうなかったであろう。
「だゴポッ、だれが・・・だずげで・・・ざい・・・ジロヴ・・・」
助けを求めるも、すでに昼間のピークを過ぎていたため更衣室はおろか浴場にもだれもおらず、その弱弱しい声では到底廊下までも聞こえることはなかった。
それから数十分が経過した。
すでに上がっていた士郎もさすがに不審に思い、職員に頼んで浴場を確認しに行ってもらうことにした。
職員が更衣室をのぞいてみると、肉好きのいい金髪の少女が、お産の最中であるかのような声と体勢でもだえ苦しんでいるのを発見した。
彼女はすぐに救助され、開けたロビーに置いてある長椅子に寝かせられた。
水分のほとんどはすでに彼女の体内に吸収されてしまっていたらしく、お腹の張りは大分収まっていたが、そのかわりに体中がむくみ、前よりも全体的に少しばかり大きくなっていた。
「クッ・・・不覚でした。まさか温泉がこんなにも危険に満ちたものだったとは・・・」
「いや、温泉はくつろぐための施設だぞ。それにそんな特殊なトラップに引っかかるやつはほとんどいないよ。なんにせよ、あまり無茶しちゃだめだぞ?」
「な・・・!私は、別に好き好んであのような状態になったのではありません///」
まだむくみの取れない体で、枕元に座っている士郎に弱気に反抗してみせる。
「はいはい。・・・なにはともあれ、お疲れ様。楽しみに来たはずが、返って疲れちゃったな。ごめんな?」
「いえ、決してそのようなことは・・・プールはそれなりに楽しかったですし、温泉も気持ちよかった。それにどこにもあなたに落ち度は見当たりません。返って、連れてきてくれたことを感謝したいくらいです。」
そういうと、セイバーは真ん丸の顔に微笑みを含んで士郎を見つめた。
士郎も思わず微笑み返した。
その場の何とも言えぬ空気に耐えきれなくなったのか、はたまた何か思いついたように唐突に士郎が口を開いた。
「あ、あのさ!今更なんだけど、早めにその体を治したいんだったら直接凛たちに協力してもらえばいいんじゃないか?」
今朝、無理やり電話を切られた時点で協力は得られないものと思っていたが、あの流れはむしろ遠坂邸に乗り込んで行って一悶着すべき場面だったのではないか、と今更ながらに思い立ったのである。
「では、次の目的地は凛の家・・・ということですね?」
「あぁ、そうだ!これであの飲み物についてももっと詳しいことがわかるかもしれないし、あいつのことだからもう直すための薬とか作ってるかもしれないしな。行ってみる価値はあると思うぞ。」
それからしばらく休んだ後、二人は遠坂邸へとむかっていった。
#型月,TYPE-MOON,Fate