◆nTUiVpCzdQ氏による強制肥満化SS

◆nTUiVpCzdQ氏による強制肥満化SS

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06

 

――本当に美味しい。
ドーナッツを頬張りながら至福の一時を過ごすセーリュ。
実験失敗から十日後。ホースによる「食事」も続けているが、一日に一食は普通の食事になった。
普通の食事とは言え量は絶大であり、どれも炭水化物や乳製品を中心とした砂糖たっぷりで脂っこい食べ物ばかりであるが、何週間にも及ぶ強制飲食のおかげか、難なく食べられる。
おまけにアウターにいた頃には絶対買えなかったようなものばかり。
――孤児院のみんなにも分けてあげたいな。
自分だけ良い思いをしている事に罪悪感を感じつつ七つ目のドーナッツを食べ終えると、セーリュはお皿に山積みされたギトギトのフライドポテトを食べながらそれを濃厚な練乳で流し込む。
もちろん、良い思いの対価にこの体があるのだが。
先日の測定によると体重は90キロちょっと。BMIは35で肥満3度になったらしい。もう否定しようのない完全なデブである。
座ると腹の肉は溢れかえって膝に乗っかり、胸は突き出たお腹に乗っかる。
スウェットパンツはお尻がつっかえて履けなくなり、タンクトップは腹の肉に押されて胸の辺りまで登っていき、今やスポーツブラになりつつある。
ついに顔の輪郭も僅かながら丸くなり始め、元々首にぴったりくっついていた念力封じの首輪もきつく感じるようになった。
「ふぅ……」
食事を終えて終えてお腹を摩ると脂肪が波打った。
――すごいなあ、この体。
呆気に取られながらヘソを突っつくと、指は柔らかい脂肪に吸い込まれていく。

そして両手で腹の肉を持ち上げる。
――これが私の一部なんだ。
ブクブクに太ってしまったのは確かに嫌だが、それ以上に短期間でこれだけ体の形を変えられる人体の神秘に驚いていた。
お腹の肉を手放すとパチン、と言う音を立てて膝に落ちて震える。
「あれ、意外といい音かも」
再び脂肪を鷲づかみにし、もう一度膝に落とした。
パチン。
――クセになりそう。
楽しくなって何度もパチンパチンしていると、目の前に誰かがいる事に気付く。

 

「あっ、ロイドさん。おはようございます」
ロイドは呆れた表情でセーリュを見つめていた。
「おはよ、セーリュ。なんだか楽しそうだね」
「そうそう、楽しいんですよ!」
「……ごめん、今の皮肉のつもりだったんだけど」
「本当に面白いんです。ほら、ロイドさんも騙されたと思って」
セーリュはロイドの右手を引っ張り、自分のお腹に乗せた。
「えっ、ちょ――」
ロイドは反射的にセーリュの腹に指を食い込ませる。
「んっ――あっ、確かにこれは」
セーリュのブヨブヨなお腹を揉みながらロイドは頷く。
「中々……面白い」
「言ったじゃないです――ひっ」
ふと、妙な感覚がセーリュの全身を襲う。
ロイドの華奢な指がお腹の肉に沈む度に、何とも言えないほど気持ちよくなる。
――自分で揉んでいた時にはこんな事は無かったのに。

段々体が熱くなり、息も荒くなってきた。
「ねえ、ロイドさん……ちょっと……」
「ちょっと待って」
ロイドはセーリュのお腹を揉むことに完全に夢中になっており、まるで彼女の言葉を受け付けない。 
そしてついに彼の左手もセーリュの腹肉を掴み、揉みまわし始めた。
「ねえ――」
ロイドが両手でいじる腹の肉が胸にぶつかり、胸までブルンブルンと揺れだす。
「ロイドさん――」
心臓が高鳴り、体が震えだした。
「だったらここは……」
その時、ロイドはセーリュの腹を掴んだまま、親指をヘソに差し込んだ。
「はうっ!」
言葉にもならない声をあげるセーリュ。
「ね、ねえ……本当に……はあ、はあ……」
全身の熱が下半身に集中していき、自分の中の何かが猛烈に疼く。
「や、やめ――」

こんな感じは初めてだ、このままでは何が起こるかわからない。
「ロイドさんっ!」
裏返った声でそう叫ぶと、ロイドは驚いた手を止めた。
「ご、ごめん。夢中になっちゃって」
何とか息を落ち着かせながらセーリュは言う。
「本当ですよ……こっちこそ叫んだりしてごめんなさい」
「う、うん」
そこでロイドの顔が物凄く近い事に気付き、セーリュは慌てて顔を引いた。
「で、ど、どうしたんですか?」
「あっ、あの、うん。ちょっと提案があって」
めずらしく緊張しているかのようにあたふたと喋るロイド。
「提案?」

 

ロイドは咳払いすると、いつもの冷静さを取り戻して言う。
「外に出てみないかい?」
「えっ!?」
「いや、ずっとこんな場所に閉じ込められててるのも体に悪いだろうし、君が健康に太る為にもちょくちょく外に出るべきだと思うんだ。まあ、外って言っても研究所の敷地内なんだけどね」
まさかの提案にセーリュは素早く頷いた。
「お、お願いします」
「なら決定だ。もう上からの許可も貰ってるし、これに着替えて」
ロイドから袋を渡され、中を確認すると一着のワンピースが入っていた。
「これって――」
「服がなきゃ外には出れないだろ、今着てるのはもう限界超えてるし」 
それはかつてセーリュが着ていた安い生地で作った手作りのワンピースと違い、真っ白でフリルのついた可愛らしいものだった。
とてもアウターでは手に入らないような品物である。
「こんなにいいもの貰っちゃっていいんですか?」
滑らかな生地を両手で感じながらセーリュはロイドに尋ねた。
「いいよ、君の住んでた所では珍しかったかもしれないけど、どちらかっていうと安物だし。そもそも僕給料結構いいし」
「自腹だったんですか?」

セーリュの問いにロイドは目を逸らしながら言う。
「……まあ、こういうのは研究所の経費で落とせないから」
「ありがとうございます!」
「いいから着替えて……もう」
「はい! えっと、じゃああっち向いててください」
「はいはい」
ロイドが背中を向けると、セーリュはワンピース片手に立ち上がった。
勢い良く立ち上がりすぎた為か、胸と腹が一気に揺れる。
重力に負けて垂れ下がる腹の肉と太ももの間に挟まれてパンツは殆ど見えなくなっており、タンクトップを脱ぐと殆どブラジャーに収まりきらない胸が姿を現した。
「また新しい下着が必要になりそうです」
「了解」
ワンピースに着替えながらセーリュはロイドにそう言う。ロイドはセーリュに背中を向けたまま答えた。
下着のサイズアップはこれでかれこれ三回目となる。
「もういいですよ、ロイドさん」
ロイドが振り向くと、セーリュはぐるっと回転して身につけたワンピースを見せた。
「どうです?」

「いいんじゃない?」
「反応薄いですね……」
セーリュは肩を落としてそういい、ガラスに反射する自分の姿を見た。
非常に可愛いワンピースなのだが、出来れば痩せてた頃に着たかった。
ワンピースは大きめのサイズであるにも関わらず、お腹とお尻はやっぱり突き出る。
「まあ、似合ってると思うよ。さあ、とっとと行こ」
「はい!」
セーリュは胸に喜びを膨らませながらロイドの後についていく。
ガラス張りの部屋を出ると、二人は数日前に通った廊下を歩いていった。
ただ、今回はあの悪夢のような実験が行われた部屋でを通り越し、その先にあるエレベータに乗り込む。階数のを見る限りどうやら普段セーリュが閉じ込められている部屋は地下六階のようだ。
エレベータはゆっくりと上がっていき、「1」と表記された階で停止する。
そこからはいくつもの厳重なセキュリティチェックを通り、二人は研究所のロビーと思われる場所へと出てた。
「随分と厳重に警備されてるんですね」
セーリュの言葉にロイドは頷く。
「まあ、クレイドルが極秘で行ってる研究の殆どはここに集結されてるからね」
「念力発電もその一つなんですか?」

「うん、だから今回君を中庭まで連れ出すのにすら相当苦労したんだ。万が一の事があったら責任を負いきれないからね」
「そんなに重いんですね」
「うん、フェテュスの未来は君のその大きなお腹にあるかもしれないと言っても過言じゃないよ」
ワンピースの下からも存在を主張する腹部を見下ろし、セーリュは顔を顰める。
「何でお腹限定なんですか」
「最近は胸より突き出てるじゃん」
「言わないでください! ただでさえ気にしてるのに」
前までは胸が大きくなったせいで足がつま先までしか見えなかったのだが、今では胸以上に腹が出っ張り、歩いている時しか足が見えない状況にある。
「……フェテュスの未来を担う極秘研究の真相がか弱な少女を無理矢理太らせる事だなんて聞いて呆れますよ」
「現実はなんたらより奇なりとか言うじゃん」
ロビーを通り抜け自動ドアを潜ると、セーリュは思わず息を呑んだ。
今まで見たことの無いような鮮やかな緑色の芝生に、花壇に綺麗に並べられた色とりどりのお花。
空気は息を吸うたびに美味しくさえ感じてしまうほど新鮮であり、花のほのかな甘い香りが心を躍らせた。
「すっご〜い!」
思わずセーリュは駆け出すが、その途端に全身の肉が不本意に揺れてバランスを崩してしまう。
「あっ――」

気付かぬうちにセーリュは転倒し、脂肪で詰ったお腹が地面に打ち付けられた。
「いたたたた……」
よく考えてみればセーリュは太り始めて以来一度も走った事がなかった。体が新たな重みに馴れず転んでしまうのも無理はないだろう。
「まったく、気をつけてよ。怪我でもされたら飛ぶのは僕の首だからね」
ロイドはそう愚痴をこぼしながら手を伸ばし、セーリュは彼の力を借りてゆっくりと起き上がる。
息を荒げながら必死にセーリュを引っ張り上げると、ロイドは両手を膝に乗せる。
「はぁ……はぁ……まったく、なんて重いんだ」
「ロイドさんこそ少しは運動したほうがいいですよ、女の子一人を持ち上げられないなんて男としてどうかと思います」
「普通の女の子の倍の重さの子に言われてもね……」
「不可抗力です!」
「あんなに楽しそうに食べてたのに?」
「それは最近じゃないですか、それまでは無理矢理でしたもん」
そこでセーリュはある事を思いつき、ロイドに発案する。
「そうだ、せっかくの気分転換ですし、ここにいる間は私の体重について喋らない事にしましょ! でないと気分なんて晴れません」
「はいはい」
ロイドはしぶしぶ納得し、二人は研究所を囲む庭を散歩し始めた。

 

その間、二人は様々な話をした。
さすが極秘研究の現場指揮者と言うべきか、ロイドは非常に博識であり、フェテュスの構造やクレイドルの社会事情をセーリュに説明した。
それを話すロイドの横顔は非常に楽しそうで、何故か心臓の鼓動が早まった。
彼が時折見せる笑顔も、初めてあった時の作り物の表情とは違い、本当に心からのものだというのが感じられる。
よくわからないが、もっとロイドの話を聞いていたい。
もっと彼について知りたい、ずっとその横顔を見つめていたい。
だが、そんな思いとは裏腹にセーリュの体力は限界に近づいてきた。
わずか十五分ほどしか歩いていないのにセーリュはすでに息があがっていた。
丸太のような太ももは一歩進む度に擦れ合って痒くなり、膝もズキズキと痛む。
仕舞いには肩も凝り始めてきた。
「ロイドさん……ちょっと休んでもいいですか?」
「あっ、うん、別にいいけど」
近くにあったベンチに座り、セーリュは溜息を吐いた。
これが太ると言う事なのだろうか。
今まではあの狭い実験室に閉じ込められていたため実感がなかったが、明らかに体力も減少しており、動きも鈍くなっている。
おまけに動くたびに全身が鬱陶しいほど揺れてしまう。

だが、セーリュはこれからまだまだ太らなければいけないらしい。
これ以上大きくなってしまっては孤児院に帰れたところでまとも子供達と遊んであげる事も出来ないし、マルタの手伝いだってままならない。
そもそも帰れる保障などどこにもない。あの狭い檻の中で死ぬまで肥育される可能性だって否めないのだから。
家族も、自由も、この脂肪によって奪われる。
セーリュは腹を掴み、歯を食いしばった。
今すぐこの贅肉を千切り落としたい。この枷を外して再び元へと戻りたい。
だが、今の彼女にはどうにも出来なかった。
己の無力さに涙が溢れそうになるが、セーリュは必死に鼻を啜って堪える。
彼女の様子がおかしい事に気付いたのか、ロイドは尋ねた。
「どうしたんだい、セーリュ?」
「……もう、いやだ」
「歩きつかれたの? それだったら――」
「もう、太るのなんていやだ」
セーリュの言葉にロイドは苦笑する。
「さすがにその要望はきけないな、実験の意義がなくなっちゃう」
そう、所詮彼は研究者で自分は実験動物だ。

そう考えた途端、ついに我慢が出来なくなり、涙が一粒一粒とこぼれ始めた。
「どうしてロイドさんはそんなに優しいのに、こんなに酷い事をするんですか」
「それは……」
言葉に詰ったかのようにロイドは返事が出来なくなる。

 

「ちょっと、ロイド」
二人の間の静けさをさえぎるかのように女性の声が響いた。
手前の物陰から姿を現したのは、発電の実験が行われていた時部屋にいた、あの白衣の美女である。
「アーネ姉さん、こんなところでどうしたんです?」
どうやらこの美女はロイドの姉らしい。ちっとも似ていないが。
ロイドがそう尋ねると、アーネ呼ばれる女性は彼にこちらへと来るようジェスチャーする。
そしてロイドが近づいた瞬間、目にも留まらぬ速さでアーネは彼の頬を引っ張ったいた。
「――っ」
ロイドは特に歯向かう様子もなく、真っ赤になった頬を摩る。
「駄目じゃない、ロイド」
ついさっきロイドに手を上げたとは思えないほど優しい声でアーネは言う。
「あれほど実験動物に肩入れするなって注意したのに」
「すいません」
「ロイドは友達がいなくて寂しい事は私だって知ってるわ。でも、その為にお姉さんがいるでしょ」
アーネは白く細い腕をロイドの背中に回すと、彼を胸元へと引き寄せた。
「別にアレを散歩に連れていくのをお姉さんは怒った訳じゃないのよ。ただ、人間扱いはしちゃだめなの」

「……うん」
ロイドは半ば強制的にアーネの胸に顔を埋められがらそう呟く。
「せいぜい家畜ね。きちんと世話はしなきゃいけないけど決してペットでも友達でもない。ちゃんとけじめは守って」
「……はい」
「家畜は家畜のように扱わなきゃね」
アーネはロイドの頭をよしよしと撫で、彼を手放す。
やはり最初に会った時の直感が正しかった。セーリュはこの女が嫌いだ。
言葉にはしにくいが、人を好きなように利用できると言わんばかりの喋り方と優しさを装いながら他人を見下したような表情。とても良い人だとは思えない。
「聞こえてますよ」
セーリュの嫌味に対してふっと笑い、アーネは近寄ってくる。
「聞こえるように言ってるのよ、子豚ちゃん」
そして美女はベンチに座るセーリュの太ももを履いていたハイヒールの踵で踏みつける。
「っ!」
「――貴方にも自分の立場を理解してもらわなきゃいけないし」
迸る激痛に思わず声を上げそうになるが、ここで口を開いたら負けだと感じ、セーリュは必死に口を噤んだまま美女を睨む。
「あら、いい目。そういうの好きよ」

踵をぐりぐりとセーリュの太ももに食い込ませながらアーネは笑った。
「……壊しがいがあるもの」
痛みを我慢するのも限界に近づき、再び涙が溢れてきたところでアーネは足を下ろす。
「私は色々とやらなきゃいけない事があるから、お遊びは今日はここまでね」
セーリュに背中を向けると、彼女はロイドの肩に手を置く。
「そろそろ子豚ちゃんを檻の中に戻してね」
「うん」
アーネが去っていくと、ロイドはセーリュの前でしゃがむ。
「大丈夫、セーリュ?」
ズキズキと痛む太ももを摩りながらセーリュは彼に尋ねた。
「なんなんです、あの人」
「アーネ・アークマン。僕のお姉さん……みたいな人」
「みたいな人?」
「正確には僕はアークマン家の養子だからね。血は繋がってないんだ」
通りで兄弟の割には全く似てない訳である。
「あと、念力発電実験総括でもあるよ」

「――酷い人ですね」
セーリュがそう吐き捨てると、ロイドは苦笑する。
「まあ、荒っぽい人だからね」
「ロイドさんを子供みたいに扱うし、人の事は踏みつけるし……」
「本当にごめんね」
「でも、彼女の言ってた事が正しいですよね。私はただのモルモットですから」
「それは……」
セーリュの問いに上手く答えられないのか、ロイドは立ち上がる。
「そろそろ研究所に戻ろうか」
「はい」
言葉に出来ないような空しさが心の中に残る。
それ以上は何も言わずに二人は地下研究室へと戻っていった。

 

その晩、ロイドはホースによる「食事」を施しに部屋に下りてきた。
すでに手順が見に染み付いているセーリュは何も言わずに椅子に横たわり、ロイドもま無言のまま彼女の口にホースを差し込む。
ロイドがスイッチを入れると同時に不快なドロドロした液体が喉に流れ始める。
液体が徐々に胃に溜まっていくのを感じながらセーリュはロイドを見つめる。
――所詮、私は実験動物。
胃が張るのを感じ、ただでさえ大きいお腹が山のように膨らんでいく。
「よし」
ロイドは機械のスイッチを切り、セーリュの喉からホースを抜いた。
このまま何も会話を交わさず去っていくのかと思いきや、ロイドは口を開いた。
「姉さんが今朝言った事なんだけど、色々考えててさ……」
返事するとパンパンに詰った胃が逆流しかねない為、セーリュは口を硬く噤んだまま頷く。
「やっぱり僕は違うと思う。セーリュだって人間だし、単なる実験動物じゃない。
強制的とは言えこの実験の立派な協力者だ」
「ンッ!?」
驚きのあまりセーリュは声を出しそうになるが、必死に堪える。
「だから、ホースでの強制飲食は今日で終わりにする。これからは自分で食べて自分で太ってもらう事にした」

それでは根本的な解決になっていない、と言いたかったが今口を開いたら液体が飛び出してくるだろうと、セーリュは我慢する。
「残念な事に太らないって言う選択肢は与えられないけど、それでもなるべく君にとって苦痛とならない方法で実験を続けたいんだ」
「別に……いいんです」
なんとか口から液体が飛び出さないようにセーリュはそう言った。
とことん彼と言う人間が分からなくなる。割り切ってあのアーネと言う女が言う通りに家畜として扱えばいいのに、こんな中途半端な優しさを……
「そして実験が成功したらすぐにでも元の場所に帰れるように尽くしたい」
「……」
「だから、もうちょっとだけ辛抱してくれ」
「――わかりました」
どうもロイドをいがみ続ける事も出来ず、セーリュはそう言った。
「ありがとう」
珍しく笑顔を見せるロイド。何故かそれはとても素敵だった。
「それで、やっぱり君にも目指すものがあるほうがいいと思うんだ」
「どう言う……ウッ、事ですか?」
思わず口を開きすぎて中身がこぼれそうになる。まだまだ気をつけないといけないようだ。
「たとえば、今日から一週間で100キロまで太れたらごほうびとして街に連れてってあげる。今は90キロだから、あと10キロだね」

「街!?……うぷっ」
またもや口を広げすぎて液体が溢れそうになる。
「そんなの、大丈夫なんですか?」
「無理を通してみるよ、ああ見えても姉さんは僕の頼みは断れないからね」
そう、ロイドだって必死に悩んで、そして頑張ってる。以前はともかく、今は決して好きで自分をこんな目に合わせている訳ではないのだろう。
確かにこんな境遇に陥ってしまったのは不運以外のなにものでもない。
だが、嘆いていたって何も変わりはしない。
ならば今は自分の意思で太り続ける、いずれ家へと帰る為に。

 

 

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#ディストピア


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