◆nTUiVpCzdQ氏による強制肥満化SS

◆nTUiVpCzdQ氏による強制肥満化SS

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05

 

セーリュが念力発電計画の実験台となってからおおよそ十日が経過した。
ホースによる強制飲食にも慣れ始め、最初の数回のような地獄ではなくなった。
もちろん相変わらず限界まで液体を腹に詰め込まれるのは多少苦しいが。
高カロリーであろう液体を流し込まれ続けてたセーリュの肉体には変化が訪れ始めていたが。
三日目あたりから液体を消化した後もお腹がペッコリ凹まない事に気づき、お尻や太ももも徐々に柔らかくなっている。
そして十日目の今……
――太ったなあ。
ガラスに映るグラマーな体を見つめ、セーリュはふとそう思う。
下腹部はポコッと突き出ており、丸く膨らんだお尻はスウェットパンツの下からもその形を主張していた。
二の腕も柔らかくなっており、ふとももに関しては足を閉じると隙間がなくなるほど太とくなっている。
だが一番育っているのは胸だろう。かつてはブラすらつける必要がないほど貧相だった胸が、定期的に注入されている薬のせいか今はメロンのような大きさに
なっている。ブラは新しいものを支給してもらった。
体のシルエットも直線的なものから、胸とヒップが強調される女性らしさを持つ曲線的なものになっていた。
それなのに顔は殆ど太らず、細かった頃と大して輪郭は変わらない。
意外と色っぽくて悪くないのだが、この体はあの非道な強制飲食の結果だと言う事を考えるととても嬉しいとは言えない。
――これからもっと太らなきゃいけないらしいし。どうしよ。 

先を心配しながらスウェットパンツに乗っかったお腹のお肉を指でつついてみる。
柔らかさと弾力を兼ね備えたそれは以外と気持ちよかった。
面白半分に体中に蓄積した脂肪を摘みながら、セーリュは思う。
少しだけ希望が見えてきたかもしれない。このまま順調に太り、念力発電計画が成功すれば自分はマルタたちの元へと帰れる可能性だってある。
楽観的すぎるかもしれないけど、前向きでいればきっとこの状況から抜け出せる。
――でも、マルタはこれ見たら驚くだろうな。
大きくなった胸を寄せて集めて遊んでいると、ガラス部屋の扉が開く。
「おはよう、実験体くん」
クリップボードを片手にロイドが部屋へと入ってきた。
彼はいつものように
「おはようございます。今日は早いんですね」
「ちょっと身体測定もしたくてね。そろそろ実験が始められそうだから」
基本的に「食事」は一日に五回、三時間おきであり、毎回ロイド自らが彼女に「食事」を施しにきていた。
本人曰く計画の現場指揮を任されている故の責任らしい。
「……身長は変化なし。じゃっ、服脱いで体重計に乗ってくれる?」
「はい」

研究員により支給されたタンクトップと脱ぐと、服に引っかかった胸との肉がブルンと揺れた。
続いてスウェットパンツを脱ぐと、白いふとももがプルプルと揺れる。 
動く度に体の肉が揺れると言うのは案外鬱陶しいものだ。
体重計に乗るとセーリュは足元で変化していく文字を見る。
肥大化した胸のせいで足元は爪先までしか見えなくなっていた。
「68.6か。開始時から22.3キロも増えてる。中々いいペースじゃないかな」
ロイドは一人でぶつぶつ言いながらクリップボードに何かを書き込み始める。
「でも、BMIを計算すると26.8か。肥満1度にはなってるんだけど、それでもまだ実験開始にはたりないかな。もうちょっと太ってもらわないとね」
「嫌でももっと太りますよ……こんな事されてたら」

 

セーリュが顔を顰めてそう言うと、ロイドは苦笑する。
「まあ、そうだよね。で、体調のほうは大丈夫?」
「心配してくれてるんですか?」
その一言にロイドは思わず笑いだした。
「なにをどう解釈すればその結論に至るかな。実験動物が病気になったら実験に支障を来たすかもしれないじゃないか。それだけ」
自分を人間として扱おうとすらしないロイドに嫌気を覚え、セーリュは吐き捨てる。
「そうですよね、こんな酷い事が出来る人が他人の心配なんてするわけ無いですよね」
するとロイドは眼鏡を人差し指で上げて言った。
「まあ、君からしたら不服かもしれない。だけどこの実験が成功すればフェテュスは大きな発展を告げる事が出来る」
あの時、兵士が言った言葉に似たような事を言うロイド。
ただ、今度はセーリュも反論した。
「でも、それって結局クレイドルだけの事ですよね」
「まあ、確かにその応報は主にクレイドルに行くよ。いつものように」
「だから嫌なんですよ。限られた人たちだけが幸せになれるなんて」
「それが古来より続く社会構造って奴だよ。支配者と支配されるもの。支配側に生まれてくる事が出来なかった連中は運が悪かっただけ。さっ、そろそろ食事の時間だから椅子に座って」
「何だか……納得行きません」

セーリュは言われたとおりに椅子に座り、ロイドはそれをリクラインさせる。
抵抗する事も暴れる事もなくなったので、固定用のストラップはされなくなった。
「それは君が支配される方に生まれてきたから。まあ、そのうち理解するよ」
「わかりたくもないです、そんな事」
「はいはい」
ロイドはセーリュの口を金具で固定し、ホースを差し込む。
「行くよ」
「はひ」
セーリュが頷くと、ロイドは機械を作動させた。
同時にドロドロした液体がセーリュの中へと流れ込んでくる。
セーリュのお腹はゆっくり膨らんで行き、限界までパンパンになったところでロイドはスイッチを切り、ホースを外す。
「うっぷ……はあ、はあ……」
こみ上げてくる吐き気を堪え、セーリュは口を手で押さえた。
度重なる「食事」によりセーリュの胃は拡張しており、明らかに入る量も増えてきた。
最初の頃は妊娠六ヶ月の妊婦ぐらいのだったが、最近は臨月の妊婦並みにお腹が大きくなる。
「よし、じゃあ今はここまで……」

「あの、ロイドさん――」
「どうした?」
大きなお腹に片手を乗せながら、セーリュはもう片方の手をロイドに向かって伸ばす。
「一人じゃ起き上がれないんで、ベッドまで行くの手伝ってくれます?」
「そこで寝てりゃいいじゃん」
「寝心地が悪いんです、この椅子」
セーリュの文句にロイドはため息をついた。
「そんなわがままな」
「そのぐらいのわがままは聞いてくださいよ」
ロイドは不満そうな表情をしながらも手を差し出し、セーリュはそれを掴んで身を起こそうとする。
「ううっ、重っ!」
必死に引っ張るロイドが面白く、セーリュは思わず微笑んだ。
「女の子に重いなんて言わないでください」
「うるさいな、重いものは……よしっ」
何とか起き上がる事に成功し、セーリュはロイドの肩を借りてベッドまで歩き始めた。
お腹が重いので前屈みになってしまい、一歩一歩進む度に胃に詰まった液体が掻き回され、お腹がドプンドプンと音をたてながら揺れる。

すると、ふと何か思いついたようにロイドは口を開いた。
「さっきの話の続きだけど、仮にこの研究の成果がアウターの人たちの生活を良くする為に使われるなら、君は喜んで実験体になるの?」
セーリュは立ち止まり、少しだけ考えてから答えた。
「やります。私が少し苦しむだけで大勢の困ってる人が助かるなら」
するとロイドは笑い出す。
「絵に描いたような善人だね、尊敬するよ」
「つまらない皮肉言わないでください、私は本気です」
するとロイドはセーリュの顔を覗き込み、真っ直ぐに彼女の目を見つめてから、再び笑い出した。
「――君は支配者側に生まれてこなくて良かったよ」
「どう言う事ですか?」
「いや、別に。ほら、ベッドについたよ」
セーリュはベッドに腰かけ、パンパンに張ったお腹を触りながら一息つく。
「はあ……」
「それじゃあ、また三時間後」
ロイドはそう言い、部屋を出て行った。

 

 

それからまた一週間経過した。
朝の食事の時間より少し早めに起きてしまったセーリュは、とくにやる事もないのでボーっとベッドに座りながらお腹の肉を揉んでいた。
――どんどん太ってる。
薬の投入を控えたせいか先週に比べて太るペースは明らかに遅くなっているが、今では手でガッツリつかめるほどお腹に肉がついている。
下腹部だけではなく全体的に腹が突き出るようになり、座っているときっちり二段になる。
液体でパンパンになったお腹と違い、こっちはフニフニしてて揉む分にも気持ち良いので最近は暇な時はそればかりしていた。
背中にも肉のロールが出来始めており、もはやグラマーでは済まないレベルである。
「こんなにおっきくなっちゃうなんてな〜」
人差し指でお腹を弾くと、ブルンブルンと揺れる。
「あっ、そうだ」
ある事を思いつき、セーリュは立ち上がった。
咄嗟に動く度に全身の肉が揺れるのはやっぱり鬱陶しい。
胸はタンクトップに詰めるのもそろそろギリギリであり、動くとタンクトップがヘソの辺りまで登ってきてポッコリしたお腹が見えてしまう。
セーリュはベッドの隣に置いてある小さなタンスまで向かうと、その引き出しにしまってあったボロボロのワンピースを取り出す。
元々セーリュがここに着てきた服であり、とくに今まで着る理由がなかったのだが、今の自分なら着れるのだろうかと言うふとした疑問からチャレンジしてみる事にした。
タンクトップとスウェットパンツを脱ぎ、ガラスに反射する自分の姿を見る。

お腹がとくに太ったが、お尻もそれなりに大きくなっているのでまだ辛うじてくびれは残っている。ただ単に尻がでかいだけかもしれないが。
早速ワンピースを着てみると、まずは胸でつっかえる。全力で引っ張ってそれを乗り越えると、今度はお腹がきつきつだった。
何とか着る事に成功したが、体の面積が増えたせいかワンピースはお尻の下あたりまでしか届かない。これじゃあ長めのシャツだ。
短期間でこれだけ体の形が変わったのは驚きであり、この先どうなるのか興味さえ興味が湧いてきた。
もちろん、一人の女の子として太るのはやっぱり嫌だが。
「なにやってるの?」
「えっ、あっ、ロイドさん!?」
慌てて振り返ると、いつのまにかロイドが部屋に入ってきていた。
同時にキツイ服で早く動きすぎたのか、ワンピースの胸の辺りが一気に破ける。
「キャッ!」
慌てて胸を隠すと、今度は尻の部分が破れた。
「もう……なんで……」
「楽しそうでなによりだけど……ちょっと体重確認していいかな」
ロイドは呆れた表情でそういい、部屋の中央にある椅子に座る。
「あっ、はい」
正直、セーリュにとっては「食事」の時間が一日で一番の楽しみだった。

別に「食事」自体は好きじゃない。むしろ苦しいので嫌だ。
だが、他の時間帯は話し相手がいないので、ロイドと話せるこの時間は非常に貴重であり、寂しさを紛らわすのにも助かる。
ロイドも淡々としていた最初の頃に比べるとよく喋るようになり、中々面白い話題になる事もある。
「って、まだ食事の時間じゃありませんよね」
「ああ、ただそろそろ実験が開始できると思ってね」
セーリュが体重計に乗ると、ロイドは椅子から降りてその数値を確認する。
「78.1キロ……うん、行けそうだ」
ロイドはクリップボードを見つめ、何かを書き込む。
そして今までに無い嬉しそうな表情を見せた。
「おめでと、実験体くん!」
普段のどこか皮肉めいた笑顔と違い、なにやら純粋に嬉しそうなものである。
「何がですか?」
「現在君のBMIは30.5、ついに肥満2に突入だよ」
「ちっとも嬉しくないんですけど……」
「これで漸く肝心の実験が始められるって事! 早速準備しないと!」
どうやら相当楽しみにしていたようである。

「じゃ、すぐ戻ってくるから服着といて」
「はい……」
駆け足で部屋を出るロイド。一体「実験」とはどのようなものなのだろうか。
こみ上げる不安と、初めてロイドの純粋な笑顔が見れた嬉しさが入り混じり、セーリュは妙な気持ちになった。
十数分後、ロイドは部屋へと戻ってきた。
さっきまでのはしゃぎっぷりが嘘かのように落ち着いていたが、それでも妙に挙動がそわそわしていた為、興奮してる事に変わりはないのだろう。
「それじゃあついてきてもらうね。手、出して」
言われた通りに手を出すと、ロイドは彼女の両手に手錠を掛けた。
「私が逃げると思うんですか?」
面白半分にそう尋ねると、ロイドはふっと笑う。
「社交辞令ってやつだよ」
「それ多分使いかた間違ってます」
そんなやり取りをしながらセーリュはロイドに連れられてガラス部屋を後にし、研究所の廊下を歩いていく。
「そういえば、部屋から出るのは初めてだったっけ」
「はい。外の空気も悪くないですね」
「嫌味かな、実験体くん?」

ロイドは苦笑しながら振り返る。
「い、いや、そんなんじゃなくて本当に狭い部屋から出られて良かったな、って思っただけで……嫌味とか言える人間じゃないし」
「確かに、言われてみればそうだよね」
そこでセーリュはふと思い、口を開いた。
「あの、私の名前、セーリュって言うんです」
ロイドは怪訝そうな表情を見せ、眉を潜める。
「それで?」
「いや、あの、名前で呼んでもらたらな、って」
するとロイドはため息を吐く。
「あのさ、君は実験動物なんだよ。何で名前なんかで――」
「……そうですよね」
「ここだよ」
廊下の途中にある灰色の扉の前でロイドは立ち止まり、壁にあるキーパッドに
番号を打ち込んだ。
すると扉が開き、二人は奥にある研究室へと入っていく。

 

そこにはすでに何人もの研究者がおり、部屋の中央にはガラスの筒の中に妙な装置がある。
殆どの研究者は眼鏡を掛けた初老〜老人の男性だったが、その中で異様な存在感を放つ白衣の女性がいた。
彼女は長身かつ細く、それでいて出るべきところは出ていると言うモデルの様な体系の若い美女であり、背が低くぽっちゃりしたセーリュとは対照的だった。
長い黒髪を指でクルクルと回しながら、その美女はセーリュの事を見ていた。
いや、見下していたと言うべきか。
軽蔑と嘲笑がこめられたその視線が怖くなり、セーリュは目を伏せた。
そして中央にある装置まで連れて行かれ、装置の入った筒の中に入れられる。
そして全身に幾多もの吸盤のついたケーブルをつけられる。それらのケーブルは自分の真上にある装置に繋がっており、何か不吉な予感がセーリュを襲った。
「それじゃあ、頑張って」
ロイドは人差し指で眼鏡を上げると、ガラスの筒から出て扉を閉める。
一人閉鎖的な空間に閉じ込められ、不安を感じながら辺りを見回していると、ロイドと例の美女が喋っていた。
ガラス越しに何を言っているのかは分からないが、実験が始まるのだろうか。
そしてロイドは何かパネルらしきものに向かうと、何かの動作を行う。
――ひぎっ!
突如、激痛がセーリュの全身を襲った。
全身の肉が小刻みに震え始め、目を見開く。

全身が痺れ、骨の髄まで搾り取られるような痛み。
涙が流れ始め、ついに我慢できずにセーリュは叫んでしまう。
「いやああああああああああああああああああああああ!!!」
ガラスの向こう側の研究者たちには聞こえていないのだろうか、彼らは淡々と
セーリュの醜態を観察しながら手に持ったクリップボードに書き込んでいた。
美女に至っては非常に愉快そうな表情をしている。
その中で一人だけ恐怖で凍り付いている青年がいた。まるでさっきまでの陽気
さが嘘のように、ただ棒立ちになっていた。
――ロイド、なんで……
全てが真っ白になった。

 

 

 

 

 

目を開くと、セーリュはガラス部屋のベッドに横たわっていた。
「目が覚めたんだ」
聞き覚えのある声に体を起こすと、ベッドの麓で床に座るロイドがいた。
真っ白な髪はいつもよりボサボサに荒れており、白衣もいつも以上にしわくちゃなような気がする。
ロイドは完全に生気のないため息を吐く。
「失敗だよ、実験は」
「――発電出来なかったんですか?」
「いや、発電はできた。だが電球一個を数十秒程度光らせる程度の電力しか生めなかった。だから失敗も同様さ」
「私が、気絶しちゃったから――」
俯いたまま首を振るロイド。
「ううん、本来ならあそこまで君を苦しめるはずでもなかった。すまない」
ロイドの口から意外な言葉を聞き、セーリュは思わず微笑んでしまった。
「……実験動物に謝るなんて変ですね」
一瞬驚いたような表情を見せるとロイドは皮肉めいた笑いを上げる。
「本当だ、なに言ってるんだろ僕は」
そしてふらふらしながら立ち上がると、ゆっくりと部屋の扉に向かっていく。

今にも倒れそうに弱々しく歩く彼を見つめながら、セーリュは尋ねる。
「私って何時間ぐらい気絶してたんですか?」
「二日寝てたよ」
もしかしてその間ロイドはずっとベッドの隣に座っていたのだろうか。
「僕はそろそろ研究に戻るよ。あの装置は相当な調整が必要だし、いつまでも部下に投げっぱなしにする訳にもいかない」
大きく欠伸をすると、ロイドはセーリュを見つめる。
「脂肪が少なすぎたのも問題だったかもしれないから、君がもっと肥えるまで実験はお預けだ。それまでにコンバータ装置のチューニングも済ませる」
相変わらず勝手な事ばかり言うロイド。
でも、自分をこんな酷い目に合わせている人間なのに、セーリュは何故か彼が憎めなかった。寧ろ今は――
「よろしく頼むよ、セーリュ」
「えっ……」
思わず返答が遅れ、その間にロイドは部屋を去っていった。

 

 

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