天外アナザーストーリー
第5話〜慣れるって怖いね〜
ここから再度私、カレンの視点に戻る。
――――肥満薬の実験台として生かされている2人の存在。
――――それは、町の女性達のよりよき肥満化に貢献している。
宴の後、私たちは町に到着して車から降りようと、身体を起こしたその瞬間。
ブチ・・・・ブチ・・・・・ブチン!
私の服のボタンが上から下まではじけとんだ。
お腹のお肉がボコッと突き出る。
既にスカートのボタンを外してお腹を楽にしていたため、かなりみっともない。
おっぱいもぶるんと揺れる。
「きゃっ!?」
私は思わず、へたり込む。
ビィィィィ・・・・・・・ッ
今度はスカートの布地が悲鳴を上げてお尻のほうからビリッと穴が開く。
「きゃーーーーーー!?わーーーーー!?」
「カレンちゃん、お腹!お腹!ってか全部!」
宴の前にきていた服をパンパンにしたサラ達は慌てて、カレンを助けようとする。
が。
ビリ―――――――ッ
ブツン
バツン
ボッツン
「わーーーー!?」
「えーーーーーー!?」
「うそ!?」
みなの服がボタンがはじけとんだり、やぶけたりして全員パニックになる。
こうなればもう皆は大急ぎで家に帰るしかない。
丁度夜遅くだから外に出てる町民はあまりいない。
「あのーーーーよろしければ家の前までお送りしますが・・・・」
トラックのドライバーがさすがにかわいそうだと思い、家の前まで送ると提案する。
「「「「「「「「「「「「「おねがいしますっ!」」」」」」」」」」」」」
力強いながらも控えめな感謝の台詞が私たちの口から飛び出る。
さすがに、これじゃあ外に出れない。
明日はパパに一着1ランク上のサイズの服を買って来て貰おう・・・。
「それじゃあ、みなさんもう一度車の中にお願いします」
タハハと運転席の陰で股間を押えながら苦笑いしてドライバーはカレン達に乗車するよう促す。
私たちは、いそいそとトラックに乗り込み、家のすぐ近くまで送迎されて事なきを得た。
「た、ただいまぁ〜」
「お、おかえり・・・・・ってカレン!その姿はどうしたんだい!?」
パパが私のさらに太った姿にギョッとする。
「た、たはは・・・・・」
私は苦笑いしつつ、何度もコップに水を入れて水分補給して落ち着こうと必死になるのであった。
もう、私の中でも何かが狂ってきてる。
もう羞恥心とか太る事へのマイナスの感情が逆転してるようだ。
エース様の彼女になりたくて私と一緒に体重管理を心がけてきたサラとケーラも今ではすっかりデブだ。
パパもこの町の環境のためか、今みたいにギョッとする時もあるけれど慣れてしまったようだ。
20杯は飲んでしまっただろう。
やっと落ち着いて一回り大きくなった太鼓腹を撫でて私は自分の中の変化を実感していた。
あの時散々私を苦しめた肥満化していく自分の身体への恐怖心がなくなってきている。
自分が自分でなくなってくるかのようなこの感覚。
その代わり自分が生まれ変わるようなこの感覚。
私の手に感じられる私のお腹は柔らかて大きく、そして暖かかった。
「カレン・・・たのむからそのはしたない格好をなんとかしておくれ」
そう言われ、私は今のあられもない格好を思い出した。
うう・・・・・恥かしい・・・・・・。
あの宴からだ。
皆の美的感覚がどんどん極端になっていく。
もっとお腹の肉をつけたいとか、もう少し尻の肉を増やしたいとか。
サラとケーラもケーキを食べながらよくそんな話をより積極的にするようになった。
私も最初は遠慮気味にその話に参加していたが、日に日に遠慮がなくなっていくのがよくわかる。
自分の身体に見とれているのだ。
身体を洗うにもお腹を持ち上げたり、胸を持ち上げたり、肉と肉の谷間を開けたりする自分に惚れてしまって来ている。
狂ってきている。でももう止まらない。止められない。そしてたまらない。
かつての私が4人分はすっぽりはいるような洋服を買うのも最近となっては全く億劫ではなくなった。
女の子がブティックで買い物を楽しむかのような。
太ってるからサイズを気にしないといけないと思うのではない。
太っていないとかわいいデザインの服が選べない。
この町の服のサイズの基準ももう昔とは正反対だ。
パパみたいな痩せてる体型の町民なんて、今となっては服を買うのに遠出しないといけないのだ。
「カレンちゃんのお腹あったかいよねぇ〜♪お昼ねしちゃいたくなる位♪」
「確かにカレンのお腹を枕にしたら熟睡できそうね」
「そ、そう?」
サラとケーラにお腹を揉まれ、私は顔を赤らめて照れている。
気持ち良い。そして自分のお腹を撫でると、心地よい柔らかさが私の肉厚の掌の皮膚に伝わる。
たまにちょっとだけデブ同士じゃれあいながら食べ物を貪る。
エース様への憧れはまだ吹っ切れていないけど、これはこれで幸せだと思っている。
普通に日常生活を送りながら、週末や時間の大きく開いた時はみんなで外で外食を楽しむ。
町中はいろんなデブで一杯だ。
最近は自分の息子を可愛く太らせようと躍起になる親もいるようだ。
肉でムクムクムチムチとした太ももを揺らして野球をしている幼い男の子も別に珍しいものではない。
もはや私たちの町では、太る事で体重を調節するという事が常識になってしまったようである。
その中でも私の身体はデブ男達の視線をよく集めている。
でも、そんな事はどうでもいいんだ。
わたしは・・・・・。
わたしは、あのクッキーが食べたい。私はあのクッキーに飢えている!
日に日にあのクッキーを食べたいという欲望が私の中で膨れ上がる。
落ち着け落ち着けと自分に言い聞かせないと私の理性が崩壊しそうだ。
夢の中でもあのクッキーを食べる夢ばかり見る。
朝起きれば、股間はネットリとしたもので濡れ、口の周りは涎でベトベトだ。
身体が求めている。あのクッキーを。
でも、あれを今の私が食べたらどうなるんだろう・・・。
あのクッキーの味の後に私の身体に押し寄せたあの奇妙な感覚。
身体は火照り、水を流し込んだかのように肉が膨らみ、股間は濡れる。
でも、食べたい。食べたあとの危機感もきっとアレを見たら消えてしまうだろう。
ああ・・・・・・食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい!
#天外魔境 第四の黙示録