海神の島

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肥育生活が始まってから3ヶ月がたった。
「おはよう、真美ちゃん、少し涼しくなってきたわねぇ。」
南海の鳴神島にも、秋がやってきた。
「さ、今日の朝ごはんは、里芋の煮つけと、お味噌汁と、海老の天ぷらよ。んー、おいしそう。」
真美はすっかり、この生活に―望んではいないが―慣れてきた。
朝起きて、絹江がお膳いっぱいの朝食を運んでくる。
一日の大半に食事が続くので、正確には朝食と言えないかも知れないが。

 

もぐ…もぐ…もぐ…

 

次々運ばれてくる料理を口に運ぶ。
真美は、食事中は何も考えないようにした。
ただ咀嚼し、呑みこんだ。

 

「ん…トイレ…」
「はいはい…待っててね。」

 

タライでの排泄にも慣れてしまった。
こうする以外には方法がないので仕方ないが。
ああ、上流階級のお嬢様は今やタライに排泄する身になってしまったのだった。

 

もぐ…もぐ…
「はぁ…っぷ…お腹苦しい…」
だいぶ食が太くなってきた真美だが、それでも限界は訪れる。
食べるのに疲れると、昼寝が許された。
最初は、少しでも脂肪の蓄積を減らそうと、地下室で運動を試みた真美だったが、それはすぐに禁止された。
起きているときは、食事をしなければならない、それがこの地下室のルールだった。
起きていると食事を強制されるので、食べたくないときは眠くなくても横になった。
寝ていれば食事を強制されない、真美のつけた知恵だ。
結果、「食っちゃ寝」の生活パターンに陥った。
まるでフォアグラの生活だ。
真美は今まで家で食べたフォアグラに対し、妙な罪悪感を抱いた。
今では真美がフォアグラのガチョウである。
「だいぶ肥えてきたわね。ワダツミ様もきっとお喜びだわ。」
こんな生活を続ければ当然あっという間に太る。
真美の元の体重は40s後半といったところ。
それも、お抱えシェフのつくる栄養バランスに優れた食事と、毎日のテニスで引き締まった、健康的な体型だった。

それが、この地下室で変貌を遂げた。
最初の数日間で、真美は自分の体がなんとなく柔らかくなったことに気づいた。
特に腹回りやふとももに、もちろんそれは贅肉だった。
いままで太ったことのない真美には贅肉のつきゆく体がショックだった、
しかし、ショックを感じている間にも体はぷよぷよとむくんでいき、体に重みが増した。
時折、顎やわき腹を触った。

 

―たぷたぷ―
―ぷにょん―

 

今まで自分の体に存在しなかった感触。
明らかに肉がだぶついていた。
「このままじゃおデブさんになっちゃうよぅ…」
運動を試みたのもこの時期だった。
しかし、そうすると男がやってきて、竹の鞭で真美を叩いた。
「俺たちがせっかく食わせてやってるのに!コイツは!!食え!太れ!太るんだ!俺たちに祟りがあってもいいのか!!」

 

真美のささやかな抵抗は暴力に負けた。
かわりに、寝ることで、押し込まれる食料に対抗できることを知った。
しかし、寝ることは、余計に肥満化を促進するだけだった。
狭い地下室で、一日中食べるか寝るかの生活。
エネルギーの消費が低いのに、大量の食事を押し込まれる。
過剰なエネルギーは真美の体内に贅肉となって蓄積した。
「ふう…はぁ…体、重い…なんか疲れた。」
体が重くなるにつれて、動くのがおっくうとなり、ベッド上でもほとんど動かなくなった。
活発だった少女はいつのまにか食っちゃ寝の生活しかできなくなっていた。
体が重いから動かない。動かないから太る。太るから体が重い。
一ヶ月が過ぎるころには、完全にデブの生活スタイルが確立した。
そこから、真美の肥満化は加速する。
「ふぅ…ふぅ…あっつい…」
テニスで鍛え引き締まった筋肉は、みるみる衰えていって、エネルギー代謝はどんどん落ちた。
締まった肉の代わりに、ゆるゆるで、だらしのない肉が膨らんでいった。
「ふふ、よく食べるわね。」

体重の増加とともに、食事の量は少しづつ増やされていった。
毎日少しづつ、しかし確実に。
真美はそのことに気づいていない。
島民の巧みな策である。

 

ごきゅ…ごきゅ…ごくりっ…
「ぷはっ…全部…食べました…」
「偉いわよ、真美ちゃん。その調子でいっぱい食べてね。何だか最近の真美ちゃん、お食事がとても楽しそう。」
「え!?…あ、違いま…」

 

真美は何も考えずに黙々と食べていた。
それは考えても今の理不尽な状況は変わらないからである。
が、娯楽のない監禁生活。気づけば最近では、食事が唯一の楽しみになってきていた。
食事を強要される地獄のような生活。しかし、食べないと暴行される。
いつのまにか真美の脳は倒錯し、食事が苦難ではなくなっていた。
しかも、島民が用意する料理は味だけなら、かなりおいしい料理なのだった。
太りたくないと真美は拒絶するが、食事が運ばれてくるたびに、胃の底から食欲がわきあがってくる。
食欲と、肥満への恐怖の間で葛藤しながら、結局いつも食事を口に運ぶ。

 

「それじゃ、お菓子でもつまんで休憩してて、お昼ごはん用意するから。」
お菓子とジュース飲料は常に地下室に用意されている。
絹江は階段を上がっていった。
外の鉄筋のビルに、真美の食事をつくる厨房があるらしい。

 

「ふう…お腹…くるし…どうして、あんなに食べちゃったんだろ…」
重苦しいお腹をさする。
そのお腹は今ではぶよぶよと厚い脂肪が覆っている。

 

「だいぶ、太っちゃったなぁ…前量った時は…68sだって…信じられない…3ヶ月で20sも太ったんだ……でも、今はもっと太ってるよね…きっと…」
丸いカーブを描くお腹をさすりながら、真美は独り言をつぶやく。

 

「よいしょ…」
立ち上がり、自分の体を触ってみる。
今は絹江が持ってきたキャミソールと短パンを身につけていたが、もちろんパンパンで、生地が破けそうだ。
短パンのチャックが閉まらずに、臍がぽてんと顔を出してしまっている。
両方の腿にたっぷりついた脂肪が、むにむにお互いに押し合い、両脚の間に隙間は無い。
お尻もだいぶ大きくなった。
中から空気を入れたように、膨れ上がっている。中身は脂肪だが。
お腹を両手で抱えてみる。ずっしりとした感覚。
重い、だいぶ体の中心線から突き出ているのがわかる。
胸は少女にとっては気になる部位だが、これもぽよんぽよんとしっかり膨張していた。
しかし、全体の肥満化から見れば、ちっとも嬉しくない。
真美にしてみれば、ハンドボール大の巨乳もただの脂肪の塊だ。
二の腕を触る、もちろんたぷたぷである。
以前、女友達の間では、二の腕がたるむことに恐怖していたが、全体が肥満した今となってはショックも薄れてしまった。
顎のラインに指を這わすと、脂肪が引っかかる。
二重顎になりつつある。もうなっているかもしれないが。

頬をなでれば、ぷるんとした感触。下膨れだ。
昔、小顔でかわいいと言われたことがある。
今は下膨れでその小顔もふた周りほど膨れてしまった。

 

「うぅ…完全におデブさんだよぅ…」
真美は変わり果てた己の姿に涙した。
肥満体の真美は、元がよいせいか、ぽちゃぽちゃむっちりとしていて、これはこれでかわいらしいのだが、もし誰かデブ専が真美を褒めたところで、真美は絶対に喜ばないだろう。
13歳の少女にとって、肥満ほど醜い姿はないのだから。

 

「も、もう何も食べない…」
絶望の中で、少女は小さな誓いを立てた。
そして数十分後。
「さぁ、真美ちゃん、お昼ご飯よ。おいしくピザが焼けたわよ。それとデザートもあるわ。」
「…あ…」
さっき朝食を済ませたばかりだというのに、もう昼食が運ばれてきた。
ピザの香ばしい香りが真美の胃袋を刺激する。
「はい♪あーーんして。」
「ん…」
真美がピザを少しかじったとたん、絹江はピザを真美の口に押し込んだ。
「んー!んんー!!」
チーズが、アンチョビが、サラミにマッシュルームが口の中に押し込まれる。
トマトソースの匂いが口腔を満たし、鼻に突き抜ける。
もぐもぐもぐ…
「(…あ…おいし…)」
気づけば、真美はピザを貪り食っていた。

実はここのところいつもこんな感じなのである。
食事が終わり、絶食の誓いを立てる、すると次の食事を絹江が運んできて、誘惑に負けて食べてしまう。
少しだけといいつつも、気づけば全部をたいらげる。
完全に、島民のペースに乗っている真美。

 

もぐもぐ…むぐ、ごくん…ぷあっ…ぱく、もぐもぐ…
「(やだよ…食べると太っちゃう…でもおいしい…あと少しでやめ…ああ、おいし…)」

 

精神まで豚に近づいていく真美。
しかし、彼女の肥満化はまだ始まったばかりだ。

 

 

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