海神の島

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むぐ…もぐ…もぐ…

 

真美の逃走が失敗してから半年、この島に来てから約一年が経った。

 

「はぁー…はぁー…ふひーーっ…ゼェゼェ…」

 

「社長一家悲劇の遭難」と一年前はメディアで報道されたが、事件にはそれ以上のインパクトもなく、そのまま生死不明として処理された。
一年後の今では事件のことを覚えているひとはいなくなった。
真美の父親の会社は、父親の弟がすんなりと継ぎ、真美の一家の存在は一族から完全に消えた。
真美の通う学校では、真美の遭難は大きなニュースとなったが、時間の経過が記憶を風化させ、有名人だった真美は生徒や教師の記憶から消えていった。
東京での真美の存在が小さくなるにつれて、鳴神島での真美のサイズは増していった。

 

「ブフーーーッ、ブフーーーッ……はぁはぁはぁ…」
もぐもぐもぐ…もぐもぐもぐ…
「ぷはっ…おいし…はぁ…」

 

真美はあの日から精神が壊れてしまい、ものすごい勢いで食べ続けた。
体重と体積は爆発的に増えた。いや、今も肥大化は進んでいる。
等比級数的に真美の贅肉は増え続けているのだ。

 

「んああ…もっとぉ…もっとほしいよぉ…あまいの…あまいのちょうだい…」

 

食べ物の合間に医者のつくった薬が含まれており、薬の効果で真美の精神は理性を失い、尽きることのない食欲を埋めようと、腹に食べ物をめいっぱい詰め込んだ。

 

「ここまで太るとは思わなかったわ。」
絹江が地上から窓越しに真美の肉体を眺める。

 

「げええええええええっぷ…」
かつての真美だったら絶対にしないであろう、牛の鳴き声のようなげっぷが地下室に響く。
真美はどのくらい太ったのだろう?
今や真美は自力で移動することができない。
キングサイズのベッドの上で、直径2メートルほどの全裸の脂肪の塊は脚を投げ出したまま、食べ続け、もりもり太り続けている。

 

歩くことも立つこともできない脚は、極限まで肥満したふくらはぎと腿が連結したものにすぎない。
腿周り1メートルは余裕でありそうだ。
ぶよぶよよした肉の塊から、つま先だけがちょこんと飛び出している。
歩けなくなったころ、尻が最大の脂肪の蓄積箇所だった。
日に日にぶよんぶよんと尻が突き出していき、やがて垂れ下がった。
座っている今は、尻の肉が体の芯のはるか後方と左右にぶにゅんと広がってしまっている。
いや、広がったまま、さらに餅のようにふたつの肉塊は膨張している。
真美は今脂肪の座布団に座っている状況である。
いや、両脚と合わせて、脂肪のソファというべきか。
内股の脂肪がつきすぎて、脚は閉じることができない。
開きっぱなしの脚の間に、腹の肉がでんっと垂れ下がり、空いたスペースを埋めた。
歩けなくなった後からは、再びお腹が最大の脂肪の蓄積箇所になった。
ずんずんお腹は膨らみ続け、真美にはお腹がずいぶん遠くにいってしまったように感じた。
車のボンネットのような形になった腹肉の下部は、完全にベッドに接している。
度を越えて肥満した腹肉はどっしりとベッドに鎮座している。こんな腹部をもった生物が存在したであろうか?
ちなみに臍には贅肉がつかないので、まるく膨らんだ腹に深い一文字の溝となっている。

 

腕も凄まじい、腕は今なお真美の意志で動かせる唯一のパーツだ。
振袖のようになった腕の贅肉をたぷんたぷん揺らして、真美は食事を口に運ぶ。
腕を動かすたびに、肩に積もった贅肉もぶるぶる揺れる。
食事を掴む手も、野球グローブのように肥大した。
この肉のつき方では、いずれ腕を動かすこともできなくなるであろう。
背中は、段々のある肉の壁、あるいは坂だ。
後ろから真美を見ると、人間らしいパーツが見えないので、まるで脂肪の山だ。
真美が僅かに動くたびに連動してぶよぶよ動くのがなんともグロテスクだ。
ふたつの乳房は皮膚でつくった脂肪の袋だ。
さすがに球状に膨らみ続けることはなかった。
瓜のような形に鉛直方向に変形し、腹肉で左右に別けられ、はみ出た太腿に達した。
ただ若さがあるからか、乳首は張りがありピンと上向きである。
重力に垂れる力と、張りの力が絶妙に均衡し、乳房はぼろろんと溢れながら乳首を上に向け、全体としてぷるぷると揺れている。
頸は脂肪のコルセットが何重にも装着されて蛇腹状になっている。
その中心に、半分うずもれるように頭がある。
顔は、かわいらしかった顔は、もはや個人を識別できないほど肉で埋めつぶされている。

両脇にグレープフルーツ大の脂肪の塊がくっついており―つまりは頬の肉なのだが―それが目、鼻、口といった顔のパーツを圧迫していた。
両側の肉の狭間に埋もれた口に、真美はどんどん食べ物を詰め込んでいく。

 

ぶぷっ…ブビビビビィ…ムリムリ…
「…あ…うんち…でたぁ…」

 

真美は食べながら脱糞した。しかしそんなことは気にならない。
ベッドから動けないので糞尿は垂れ流すしかない。
世話係が真美の尻肉を持ち上げ、スコップで馬糞のような便を取り除く。
その間も真美は食事に夢中だ。

 

いったい体重はどのくらいだろう? 300s? 400s? もっと?
量る術がないので知りようはない。
全身がまるで、肉屋が切り落とした脂身を積み上げた山にも見える。
でろでろに肥満した、食うことしかできない肥満体。

 

学業優秀で、スポーツが好きで、かわいらしかったお嬢様の少女は、監禁され、脅され、食べ物を詰め込まれ、怪しげな薬を摂らされて、食べることしか考えられない、自力で移動することもできない、怪物級のぶよぶよの肉塊に成り果てたのだ。

 

 

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