肥満ハザード

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[9月3日・夜]
―高等部寮舎、大浴場、脱衣所

 

食事を終えて満腹になった生徒たちが、入浴している。
脱衣所では、たわいのない会話が交わされている。

 

「あー、杏奈! あんたしばらく見ないうちに、また胸おっきくなったんじゃない?」
「…そんなことないって、変わらな…ひゃ、ひゃううっ!!」

 

未奈美がふざけて、杏奈の豊満な胸を揉みしだく。

 

「ほんとうに〜? Hはあるんじゃない? こいつめ、半分よこせ!」
「やあっ! だめっ! くすぐったい…」
「おやめなさい!」

 

さやかがとめてくれたお蔭で、なんとか解放された杏奈。
ひとりになって、改めて自分のバストを見てみる。

 

「(…でも、確かに、大きくなった気がする…今日は朝から胸が張っているみたいだし…下着もきつい…でも、休み明け直前に買ったばかりの新品なのに…)」

 

杏奈と未奈美が騒いでいたのとは反対側では、飛鳥が体重計に乗っていた。

 

「(…嘘!? 3s!? なんでこんなに増えてるの? …確かに昨晩は食べ過ぎちゃったと思うけど…)」
「なーにしてるのかな? 飛鳥ちゃん? 体重計とにらめっこ?」

 

友達の佳代子が抱きついてきた。

 

「むふふ〜♪ 飛鳥、夏休み中はダイエットするって言ってたもんねー? どれ? 成果の程は?」
「あっ! ちょっ! バカ!! やめ…」

 

佳代子は飛鳥のへそ周りをさするが…

 

―むにん―

 

「…って、あ〜…(うわ、お肉…つまめちゃったよ…よく見ると…パンツにお肉がのっかってるし…)」

 

佳代子はふざけて飛鳥のお腹をつまんでみたが、飛鳥のお腹の予想外の感触に、佳代子は言葉を失ってしまった。
飛鳥のウエストは丸くカーブを描き、余った肉がパンツの上にせり出していた。

 

「…飛鳥さん…あなたダイエットは…」
「〜!! うるさい! うるさい! うるさ〜いっ!! これは…これは晩ご飯食べたばっかりだからだよ!! かかか、佳代子だってー!!」
「え? でもこの柔らかさは…って、うわぁ!? 飛鳥何を!?」

 

―むにゅん―

 

「…あ…(つまめた…)」
「…え? …(私の…お肉…?)」

 

飛鳥は腹肉をつままれた腹いせに、佳代子のわき腹をつまんだ。
軽く勢いに身を任せたとっさの行動だったが、飛鳥にとっては予想外の、佳代子自身も知らなかった感触――5〜6センチほどの厚みの、柔らかい脂肪の感触――がふたりを硬直させた。
ふたりは微妙な空気に包まれ、ふたりとも無意識にお互い別々の方向にその場を離れた。

 

「っぷはー! やっぱり、風呂上りのコーヒー牛乳はおいしいね〜♪ あまあまでおいし〜♪」
「私はフルーツ牛乳にしよー…って、売り切れてるし?」

 

風呂上りの一杯が好評のようだ、もっとも、一杯ではのどの渇きを潤せない者も多いようだ。

 

―中等部寮舎、学生食堂、厨房

 

「こんばんわ。」
「(ずずずるるるる…)…んあ…おおふひへんへい(大口先生)…」

 

今日も、祐は厨房を訪れた。
今日も食堂のおばちゃんは遅い夕飯を食べていたが、今日はいつもと違う感じがする。

 

「大口先生も、仕事熱心ですねぇ…(ずずず…)」

 

今日の山野の夕飯は、インスタント・ラーメンのようだが、今日は昨日までと違って、祐の来訪にも食事を中断することはない。
ずるずると麺をすすったまま、祐の応対をする。

 

「インスタント・ラーメン…ですか…(どうしたんだろう…いつもはインスタント食品なんて食べない人なのに…)」
「(ずるずるずる…)…ん…ええ…、最近のはおいしいんですよ。」
「…そうですか…」

 

祐は昨日、一昨日と同じ質問をした。
おばちゃんの回答は昨日と同じ。
つまり、「よく食べて」、「おかわりして」、「前より食べた」である。

 

<祐の日記>
9月3日
地震で山奥に閉じ込められてから、今日で三日目。
生徒たちを観察してきて感じることがある。
それは、生徒たちの血色が、目に見えてよくなってきているということだ。
会う娘たちの顔は、皆テカテカとツヤがある。
いや、「でてきた」というのが正しいか。
ウチの湧き水には美肌効果があるという噂だが、関係あるのだろうか。
とにかく生徒たちは遭難しているとは思えないぐらい元気だ。
おそらく、その元気を支えているのは、旺盛な食欲だろう。
元気なのは結構だが、どの食堂で聞き込んでみても、食べ物の消費が驚異的に伸びている。
少し小気味悪い。
昨日から、「ものを食べている」生徒が目につくようになった。
食堂でではない。休み時間や放課後の廊下や寮でだ。
このことからも、生徒の食欲が伸びていることがわかる。
もしかして、震災のストレスで、過食気味になっているのかも知れない。

そうだとしたら、悠長にしてはいられない。
明日、花井先生に相談しよう。

 

―中等部寮舎、香織の部屋

 

香織(朝、自分の顔がむくんだように感じて困惑していた少女)は洗面台で自分の顔を鏡で見ていた。

 

「なんでぇ…一日中、顔のむくみがとれなかった…むしろ、むくみがひどくなっている? …まさかむくみじゃなくて…太っ…」
「おーい、香織ー! ノンコの部屋でパジャマパーティーするんだって! 香織も早くおいでー!」
「あ!うん、今、行く〜」

 

―中等部寮舎、如月絢子の部屋

 

「う〜、いた〜い。」

 

絢子は、ブラジャーをはずしていた。
胸には、ブラジャーのワイヤーの跡が赤くはっきりと残っていた。

 

「(…こんなことって…明らかにブラがきつくなっている…胸の大きさが朝と夜とで違うなんてことあるの!?)」

 

[9月3日・午後11時]
―高等部寮舎、飛鳥と未奈美の部屋

 

この部屋の主は、今夜も買い込んだお菓子をお腹に詰め込むのに忙しいようだ。

 

「(もぐもぐ…)…あんたさぁ…さっき…風呂場でさあ、騒いでいたけど…」
「(むしゃむしゃ…)…ああ、おいしい…(ぽりぽり…) んー? なにー?」
「聞いてなかったのか…今日の風呂場の話だよ。」
「…あ…」

 

脱衣所での出来事を思い出し、お菓子を食べる手が止まる。

 

「ねえ、未奈美ぃ? 私太ったかなぁ?」
「んー? 変わってないんじゃない?」
「…そうだよね…あ、それ頂戴。」
「ほい、…あ〜寝る前のお菓子っておいしいねぇ…」
「(むしゃむしゃ…)…ほんとうだね…なんで今まで気づかなかったんだろう…」
「(ぱくぱく…)………もうやめられないよ…」

 

ぱりぱり…もぐもぐ…むしゃむしゃ…くちゃくちゃ…ごくり…

 

寝る前のお菓子にハマってしまった飛鳥&未奈美、ダイエットに気をつけていたことなど忘れてしまったようだ。
明日は土曜日、灯りが消えないのは、この部屋だけではない。
寮の大半の部屋で、お菓子パーティーが開かれていた…

 

 

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