朝比奈みくるの肉塊
#涼宮ハルヒの憂鬱
次の日の朝、俺は下半身ががくがくの状態で登校する羽目になった。
いや、確かに気持ちよかったことは気持ちよかったが、体に無理はよくない。
顔は痛いわ、腰は痛いわ・・・・。
夢中になっているときは気づかなかったが、どうやら相当な重量で圧迫されたのが主原因のようだ。
「おはよ、どう? 朝はすっきりおきれた?」
ハルヒが白々しい顔で後ろから朝の挨拶。
「そりゃお前だけだ・・・」
俺に比べてハルヒの方はなにやらたまっていたものが吹っ飛んだようなすっきりした表情。
まるまる1か月分のもやもやを一気にぶっ飛ばしたんだから当たり前か。
「ところでキョン、今度の日曜日もやるわよ。SOS団休日活動」
「今度はなんだ・・・」
待ってましたとばかりに机の中からチラシを取り出し俺に突きつけるハルヒ。
『焼肉食べ放題60分1500円(税込み)』
ばっ!!
俺はとっさにそのチラシをハルヒから取り上げた。
「やめなさい」
「え〜!!! なんでよ!!! 焼肉よ!! 焼肉!!」
脳裏に朝比奈さんの無残な光景が浮かぶ。
「また妊婦みたいな腹になって帰ってくる気か?」
「当たり前よ!! 今度はお腹が破裂するまで食べまくるわ!!」
「・・・・・ハルヒ、お前が言うと冗談に聞こえないからやめろ」
放課後、俺はやはりいつも通り部室へと向かう。
毎日毎日こう青春の一ページを無駄に浪費しなくてはいけないと考えると非常に悲しくなる。
しかしこれをサボれば、さらに無駄な時間が増えることになるのだから致し方ない。
ガラガラ・・・
「ほえ・・・?」
着替え中らしい朝比奈さんの姿が・・・
「おわっ!!! 失礼っ!!!!」
俺はとっさに踵を返し、部屋を脱出しようとする。
「ちょっと!! キョンっ!!手伝ってよ!! チャックが上がらないのよ!!」
いつもの如く、朝比奈さんに可愛らしい衣装を着せて遊んでいるハルヒの声。
チャックが上がらないって、朝比奈さんに限ってそんなバカな話があるか。
ま、胸のところだけは順調に発育中みたいなので、そこだけは考えられる話ではあるが。
「まったく・・・なんの冗談だ?」
「キョンく〜ん!! お願いで〜す!! 引っ張って・・・くださ〜い・・・」
弱弱しい声で朝比奈さんが助けを求める。
うん、これは紳士として断るわけには行かないな。
俺は意気揚々、堂々と部室に入り・・・・
「おわっ!!??」
目の前に現れたのは・・・・
「まったく・・・みくるちゃん!! これじゃあせっかくそろえた衣装が台無しよ!! ほとんど着られないじゃない!!」
「そんなぁ〜・・・・だって、涼宮さんが・・・あんなに食べさせるからぁ〜」
「だってもへちまもないわ!! SOS団のマスコットがそんなんじゃイメージ台無しよ!!」
「あ・・・あ・・・そこ、そんなに引っ張らない・・・きゅ〜っ!!!!」
朝比奈さんらしい・・・・丸々とした女性がメイドさんの服を着ようと大苦戦中だった。
「キョン!! アタシがここ引っ張ってる間にチャック上に上げて!!」
ギュウぅぅぅっっ!!!!
「きゅぅ〜っ!! く、苦しい・・・・」
俺は即座に朝比奈さんの背中のチャックを引っ張り上げる。
ちきちき・・・・ちき・・・・
ブツッ!!!!
「あっ!!??」
壊れた・・・・
「この・・・バカっ!! どうすんのよっ!!! 背中半分で止まっちゃったじゃないっ!! お肉がはみ出ちゃってるわ!!」
見れば朝比奈さんの背中が無理やり締め付けられ、チャックが途中で止まったところから背中のお肉がはみ出ている。
チャックが食い込んで非常に痛々しい・・・。
「ごめん・・・朝比奈さん」
「だ・・・大丈夫です・・・。このほうがまだ苦しくないから・・・・」
「もう!! いいわ!! 後はこのエプロンを・・・・んしょっと」
ぐるり
ハルヒが朝比奈さんの腰に両腕を回し、フリフリエプロンを着せている。
・・・・・
・・・
・
ちょっと待ってくれ・・・。
今、ハルヒが朝比奈さんのエプロンを着せているシチュがなぜかお相撲さんがマワシをつけているように見えたのは眼の錯覚か?
いや、そうだ・・・。そうに違いない。
そうであってくれ・・・。
「んもうっ!! エプロンまでオーバーだわ!! キョン!! あんたそっち!! アタシこっち引っ張るから!!」
ハルヒが俺にエプロンの片方の紐を渡し、朝比奈さんを中央にして二人クロスする。
おいおい・・・・大丈夫か?
「せ〜のっ!!」
ぎゅぅぅぅぅぅっっ!!!!
「ぴィィィィィっっ!!!!!」
甲高く可愛らしい悲鳴をあげ朝比奈さんがわめく。
そりゃそうだ。なにせこのお腹を二人がかりで締め上げたのだから。
「んしょっ!! これでよし!!」
ハルヒがそのまま後ろで縛り、出来上がったリボンをぽんと叩く。
「はい、出来上がり!!」
がらがらがら・・・・
朝比奈さんの衣装変えが終わると同時にタイミングよく古泉がやってくる。
「おや、朝比奈さん。ちょっとぽっちゃりしましたね? 可愛らしいです」
な、なんだおい・・・そのコメントは?
「そうなのよ・・・まったく。休んで次の日にどうなる事かと思ったら・・・こんなにまん丸に・・・・」
とりあえずお着替えが終わり、俺もようやく朝比奈さんの体をまじまじと観察する事ができる。
それにしても・・・・
ハルヒの超常的なスピードの肥満に比べればかわいいものの、やはり1日や2日でこう太ってしまうとはやはりおかしい。
細身であの清楚な笑顔を作り出す小さな顔は、まあるくなってさらに朝比奈さんが子供っぽく見えてしまう。
その童顔に不釣合いだった巨乳も、まあもともとでかかったから違和感が無いといえば無いが今のハルヒといい勝負。
そして最大の変化は・・・・
そのぼってりとしたお腹とスカートを捲り上げそうに突き出たお尻だ。
巨大な乳が腹の上に申し訳なさそうに乗っかっているのを見ると、なんだか悲しくなってくる・・・・。
「みくるちゃん、今日はあんまり動かなくていいわ!! っていうか動かないで。それ以上メイド服が破けると困るから」
「そ・・・・そんな・・・・」
いやハルヒがそんなことを言えた立場ではないはずだ。
人の顔の前にケツを突き出してわざとブルマを破るような女が言えた言葉ではないぞ。
「それにしても涼宮さんまで、みごとなナイスバディに変身されて・・・」
古泉がようやくハルヒに話題を振る。
っていうか今頃振るな。
「でしょ〜!! 見てよ、この超巨乳!! みくるちゃんなんて目じゃないんだから!! ま、今ではみくるちゃんもぽっちゃりしちゃってアタシに近づいてきたけど、まだまだアタシの敵じゃないわね」
「敵になんかなりたくないです・・・・」
「こうなると長門さんももしや・・・」
ふと古泉が長門を探し始める。
そういえば今日は長門を見た気がしない。
「なに・・・」
とハルヒの背後から長門のか細い声が聞こえてくる。
「あ、いたのか。長門、お前もこいつらになんか言ってやってくれ。ぼんぼんぱんぱんと膨れ上がりやがってまったく・・・」
「・・・・・・」
長門は俺の投げかけた問いかけをことごとく無視する。
とりあえず、これで分かった事は長門はいつも通り。
ぶくぶくと膨張したりしていないということだ。
ま、宇宙人だかなんだか分からんから膨らみようも無いか・・・。
「ということで団員全員そろったところで・・・・今度の日曜日!! 再度SOS団は休日活動を行いま〜っす!! 今度は会費一人1500円!! 場所は『焼肉の豊満園』よっ!! 午後1時集合!! 遅れたら全員分の会費負担!!」
今朝俺に見せ付けてきたチラシを高々と掲げ、ハルヒが告知を行う。
「却下!! 今後食べ放題は一切禁止!! 死者が出る」
またハルヒが朝比奈さんに危険極まりない拷問をやりかねないからな。
「だ・・・大丈夫です!! 今度は私も頑張ります!!」
「えっ!!??」
朝比奈さんが突然、素っ頓狂な声で宣誓した。
「こ、今度のお腹は丈夫です!! これだけ大きくなれば結構入ると思います!!」
いや・・・そんなことはないと・・・・
「はははは、そうですね。これだけ立派なお腹になれば朝比奈さんも涼宮さんに負けないくらいいっぱい食べてくれるでしょうね」
古泉・・・お前もか・・・・。
「ということで多数決で決定よ!!」
「ちょっと待て、長門の意見はどうなる?」
みんなが一斉に長門に注目する。
「わたし・・・・肉は嫌い・・・・」
「だそうよ!! というわけで4人で行くわ!!」
結局、俺の意見を無視し強行採決でSOS団は再び魔の『焼肉食べ放題』に行く事になった。
この調子だとお年玉が食べ物に消えていきそうだ・・・。