263氏その1
『遅なってゴメンな〜。電車、痴漢おって大変やってん。』
真理が申し訳なさそうに言う。
タイトなミニスカートから伸びるむっちりとした太い脚。
真理のために設計されたのかと思うほど、隙間なくぴったりフィットしている。
もちろん、真理のためにデザインされたスカートなんかじゃない。
よく見ると、生地が延びているのが分かった。
もしかしたらこれはタイトスカートではないのかもしれない。
脚の付け根には変な横皺ができ、お尻は生地にはりついてお尻の形とパンティラインが少し分かる。
トップスはパフスリーブの白いブラウス。
胸の下辺りまでボタンを開き、黒いインナーがちらりと見える。
インナーと共に最近できたであろう胸の谷間が目に入った。
お腹はお腹で出ているのだけど、胸よりもほんの少しだけ凹んでいるためよく見ないと分からない。
腕の太さもパフスリーブでうまくごまかされている。
むせ返るほどの色気に頭がくらくらした。
色気がありすぎる。
その証拠に、街を歩く男どもが真理に熱い視線を送る。
『暑くなって、みんなおかしなってるんやろか。』
真剣に考える真理を見て、自分が悪いんだろと突っ込みたくなったが、ここは我慢。
『どうなんだろうね。大丈夫?』
真理の顔を覗き込む。
ふっくらとした丸い頬と大きな目が視界に入る。
痩せていたころよりも血色の良いつやつやの肌。
かわいい。かわいすぎる。
『前から痴漢はおったけど、最近ほんま多いわ。』
腕を組んで考え始めた真理。
腕を組むと、大きくなった胸がより強調される。
もちろん、腕の部分のお腹の肉が下がって、お腹も強調されているが。
『胸が大きくなったからじゃない??』
と、メグが口を挟んだ。
『出会った頃は全然胸なかったのに〜。何やったん? …あ〜っ、そかそか。』
にやにやしながらメグが俺を見てくる。
何を考えてるか想像はつくが… 無視しておこう。
ってか… 胸以上の猛スピードで膨らんできたお腹は無視ですか??
どこから突っ込めば良いのやら…
関西人はボケとツッコミの文化…だよな? ツッコまねば…
『そうなんやろか…良いや、とりあえずご飯!!』
真理の笑顔に、俺はツッコミを忘れた。
『『いっただきま〜す♪』』
満面の笑みで2人が手を合わせた。
4人用のテーブルいっぱいに料理が並んでいる。
ピザ、アランチーニ、ハンバーグ、パン、グラタン、リゾット、ミネストローネ…
量が多い。こんなバカみたいに注文して…
すでに何がメインなのかよく分からない。
電話がかかってきたので席を外している間にこの量を注文したらしい。
テキトーに頼んどいてとは言ったけど…
『食べへんねやったら食べてまうでっ』
料理の量に呆然とする俺に真理が言う。
気付けばお皿の量が減っていた。
まさかこいつら皿まで食ったのか??
……さすがにそれはないか…
猛スピードでお皿がテーブルの端に重ねられていく。
そんなに急いで食べる必要があるんだろうか。
『めっちゃおいしいね。』
そう言って幸せそうに笑う真理を見ると、幸せになる。
料理にがっつく2人に周りの視線を感じるけど、そんなの気にならないぐらい幸せを感じる。
幸せに浸って、ぼーっとしていたため、フォークを落としてしまった。
『何してるん〜? フォーク落としたで。』
いけないいけない。
慌てて屈み込み、机の下のフォークを拾う。
拾おうとしたとき、真理のお腹が視界に入った。
こいつ、いつの間にホック外したんだよ…
真理のスカートはホックが外され、ファスナーもお腹に押し下げられている。
絶対閉まらないだろ… 帰りどうするんだ?
パンパンに迫り出したお腹は、どう考えてもスカートの中におさまりきらない。
『ぼーっと考え込んでどないしたん? コレ、おいしいで〜』
…ま、どうにかするんだろ。
真理の笑顔で、他のことはどうでもよくなった。
『めっちゃおいしかったなぁ〜♪』
昼食をとって、映画を見て、買い物をして。軽く夕食をとってから…
もちろん、俺は軽く、真理はがっつり食べている。
それから、ゆっくりと帰宅した。どうやってあのスカートを止めたのか俺には想像もできない。
『夕飯のお店、あんまり好きじゃなかった? 全然食べてなかったやん』
いやいや… 昼食にあれだけ食べれば食欲もなくなるよ…。
というか、夕飯もあれだけ食べてどうやってスカートが止まってるんだ??
『真理…』
『何??』
俺の呼び掛けに真理が近づいてくる。近づいてきた真理の白いブラウスを、俺は捲り上げた。
『やっ…』
真理の艶やかな声に、俺の身体が反応する。
でも、まだ理性を保った頭が、冷静にスカートの状態を見極める。
スカートの上にはでっぷりと脂肪がのり、スカートは脂肪に隠されてどこにファスナーがあるのか分からない。
ファスナーがあるはずの位置をよく見ると、上がりきらないファスナーの途中で安全ピンが止められている。
俺は、安全ピンに触れた。
『あっ… 今日、食べ過ぎたみたいで…』
安全ピンに触れる俺の手を制し、恥ずかしそうに言い訳をする真理。
思わず抱きしめる。すごく、やわらかい。
『やっ… 恥ずかしい。』
抱きしめた俺を真理が押し返した。前かがみになった真理の腹部から、何かが飛ぶ。
一瞬何が飛んだか分からなかったが、すぐに理解した。安全ピンだ。
スカートは少しずれたが、真理の大きくなったお尻に引っかかって、スカートの役割をしっかりと果たしている。
真っ赤になった真理が、慌てて安全ピンを拾った。
『おかしいな… 小さ目に作られてたんかな…』
俺に背を向けているので、顔はわからないが、真っ赤になっているんだろう。
丸くなった背中を、我慢できずに抱きしめ、無理やりに身体をこっちに向かせる。
理性って何? 完全に我を忘れて、俺は真理の口をふさいだ。
『んっ…』
口の中に舌をつっこむ。
口の中にも脂肪はつくようで、今までよりも少し口腔内が狭くなっているような気がする。
舌を絡ませると、真理もそれに答えてくれた。
その返答を合図に、俺は真理のブラウスに手を突っ込む。
『お願い… 電気、消して?』
『あ、ごめん。』
俺は電気を消して、枕もとのスタンドの明かりをつけた。これが、いつもの夜の明るさだ。
明かりを調節している間に、真理がベッドに移動してきた。
『もうちょっと暗くしてほしいねん… 太ってもたから… 見られたくない。』
真理が、スタンドの電気も消した。
月明かりだけのいつもより暗い部屋の中で、俺はもう一度真理の唇に自分の唇を重ねた。