デブは遅れてやってくる

デブは遅れてやってくる

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いつものように布団を被って震えていると、奇妙な感覚に襲われた。
全身の肉が別の生き物のように蠢き、膨張していく。
(まさか… 嫌… 来…たの?)
みるみる太くなっていく腕、前方にせり出していく胸とお腹、座っていたお尻の肉が膨張し、
少し体が浮いたような感触に襲われる。ブチブチと音を立てて下着とパジャマが破けても
膨張は止まらず、座っていたベッドがミシミシと悲鳴を上げだした。
「いやぁぁぁぁあああ!」
叫び声を上げると、まるで加工されたように太く、重くなっていく自分の声。
思わず前方へ逃げ出すが、バランスが取れずにそのまま倒れてしまう。
地震のような揺れが部屋に響く。
その振動で背中に物が落ちてきたが、あまり痛くない。
背中にも贅肉がたっぷりと付いており、クッションの役目を果たしたのだ。
立ち上がろうとするが体が重く、身動きできない。
そうしている間もお構いなく膨張し続ける視界の肌色・肌色・肌色。
もはや、見慣れた自分のシルエットは消えており、ショックで私は気を失った。

 

目が覚めると、私は病院のベッドにいた。
どうやらあのまま運び込まれたらしい。
これが夢なら良かったが、体にのしかかる重量感が私を現実に引き戻す。
何とか体を起こし、自分の体を見渡す。
巨大なキャミソールのような服が着せられており、下は特大のおむつが履かされていた。
芋虫のような太い指、太股のような太い腕。
二の腕にぶらんと垂れ下がる贅肉、牛のような異常な大きさで垂れ下がる胸。
脂肪で陥没してしまった乳首に、異常に大きくなった乳輪。
そして… 何より圧倒的な存在感で突き出たお腹。
肌は汗と油でぐっしょりと濡れており、ぬるぬるとした光を放っている。
呼吸をする度にぶるぶると全身の贅肉が揺れる。
どれも以前の私からは考えられない、とてもグロテスクなものだ。
かつての細身の身体は見る影も無く、醜い贅肉に埋め尽くされていた。
ある程度覚悟はしていたが、改めて見るとやはりショックだ。
一瞬で、おそらく女性がもっともなりたくない姿に変貌してしまった…
一人で泣いていると、ノックの音がした。

「は… はい」
声を出すとぶよぶよと顎や頬の肉が動くのが分かる。
まだ鏡を見てないが、顔もブクブクに太っているんだろうな… と思い、ますます気分が憂鬱になった。
「こんにちは、目が覚めたのね」
巨大な白衣を着た女医さんがのそりと部屋に入ってきた。
大きなお腹が服からはみ出しそうで、かなりの肥満体だ。
「担当医の太田よ、よろしくね。少し、お話しましょう?」

 

それからしばらく先生と話をした。
私が気を失って病院に運び込まれて2日間眠っていたことや、両親が変わり果てた娘の姿にかなりショックを受けていたことなど。
「知ってると思うけど、その体で何年かは過ごさないといけないわ」
「えぇ… 知ってます。あの、先生も… もしかして」
「私も先月肥大化が起こってね… お陰でこんな姿よ。前は美人女医って評判だったのよ?」
先生は100kg近く肥大化してしまったらしい。
たしかに、脂肪でぼやけているが美人だったんだと思う顔立ちだ。
同じ境遇同士、少し気が楽になったような気がした。
「あはは… お互い見る影も無くなっちゃいましたね…」
「ホントにね…」
大きな体の二人が揃って肩を落とす。
「それで本題なんだけど、里美さん… あなた、約150kg肥大化してるわ。現在201kgね」
「そんなに…」
数字で聞くと、自分の体重の異常さが改めて分かる。
「ここまで肥大化すると日常生活にも支障をきたすと思うの」
たしかに今の私は起き上がるので精一杯だ。

おそらくトイレにすら行けないだろう。
「だから、しばらく入院してトレーニングをしてもらうわ。ご両親にはもう話してあるから」
「はい、お願いします… 先生、私、元の生活に戻れますかね…」
「大丈夫よ、あなたくらいなら。ある程度は不自由を感じるかも知れないけど、トレーニング頑張りましょう」

 

それから3ヶ月ほど私は入院し、日常生活のトレーニングを行った。
はじめて鏡で自分の顔を見たときはショックだった。
すっかり首は無くなっているし、顎の肉は段を作って垂れ下がっている。
首の後ろもみっともない贅肉の段差ができており、顔のパーツは肉で圧迫されていた。
まるで肉ダルマのようだ… 正直、今でも慣れない。

 

最初は満足に歩くこともできなかったが、徐々に体も慣れ、
何とか日常生活はこなせるようになった。
見舞いに来た洋子やクラスの友人も、私の姿には驚いたようだ。
もっとも、彼女達も皆肥大化し3桁級のデブなのだが、今の私から見ればまだスリムに見える。
昔は私が一番細かったのに、今ではデブになった彼女達のさらに倍程度の体重… まるで違う生き物のようだ。
「ずいぶん大きくなっちゃったね…」
「うん…」
気まずい空気が流れる。
「ほら、それにしてもすごい胸… 間違いなく学校一の巨乳じゃない?」
「…嬉しくないよぉ」

 

「里美さんはまだ運がいいわ。歩行できないくらい酷く肥大化した女性もたくさんいるもの…」
たしかに何度か病院内で見たことがある。
巨大な肉の塊になってしまい、もはや自力で移動できなくなってしまった女性は、薬の効果が切れるまで何年もベッドの上で過ごさなければならないのだ。
私が飲んだ量はそうなるに充分であった事を後に聞き、背筋が寒くなったのを思い出す。
「たぶん、大量摂取にも関わらず胸以外に効果が出なかった… 薬と相性が悪かったのがよかったのね。これから大変でしょうけど、お互い頑張りましょう。定期的に検査して、薬の効果が無くなったら頑張ってダイエットしなくちゃね」
まったく、その日が待ち遠しい。こんな醜い贅肉は一刻も早く脱ぎ捨てたいものだ。

 

こうして退院し、…久々の学校へ行く。
気は進まないが、これ以上休むと進級できないので仕方ない。

 

前の制服は当然入らないので、ジャージを着た。
男物の中でもかなり大きいサイズなのだが、それでも下腹のあたりはパンパンで、油断すると肉がはみ出そうだ。
鏡で見るとどちらかといえば立方体に近いシルエットの…
まるでぬいぐるみの上に衣服を着たような巨体が立っている。
(うわぁ…、我ながら見苦しいなぁ… 気が重いよぉ… 体も重いけど)
父が車で送ってくれたが、軽自動車はさすがに窮屈で、助手席には狭すぎて座れないので
後部座席を一人で占領する。
教室にやっとの思いで着くと、クラスメイトの視線が私に突き刺さった。
席に座ろうとすると… あれ? 椅子、こんなに小さかったっけ。
これじゃお尻がはみ出ちゃう… 机もお腹がつかえて邪魔だな… よいしょっと…
今の私には標準サイズの机や椅子は子供用のようだった。
休み時間にはわざわざ私を見に来る生徒も沢山いた。
まるで動物園の動物… いや、珍獣の気分だ。
嫌でもみんなの声が耳に入ってくる。
「うわぁ、あそこまで太るか… 凄いな…」
(…わかってます)

「アレ、浅川? 嘘だろ… 結構タイプだったのに」
(そういう事は早めに言ってよ…)
皆の視線が痛い。
学校に私以上のデブは存在しなかった。
こうして、めでたく私は学校一の巨乳の持ち主になった。
…まぁ体重もお腹もお尻も学校一なんだけど。

 

 

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