792氏その7
…2月の肥満化は期待外れもいいところだった。
増量分はたったの2kg。これだけでは、外見はほとんど変わらない。
このペースでは今年のクリスマスまでにせいぜい3桁に届く程度だろう。
こんな機会、他には無い事だし、どうせなら肉塊級とまではいかずともアメリカにいそうな巨デブ級くらいまで行って欲しいところだな…
そんな事を考えながら帰宅する俺。
今日は3月23日。3回目のメリィの肥満化を目前に控えている。
「おぉ、お帰り」
片手にポテトチップスを持ち、メリィが俺を出迎えた。
最近は菓子類にはまっているらしく、この前の休みも近所の安売り店で大量に買わされた。
それにしても、メリィと一緒に出かけるとかなりの注目を浴びてしまう。
多少太ったとはいえ、まだまだスタイル抜群のブロンド美人がペラペラの日本語で歩いていれば仕方も無いが。
だが、それもいずれは「美人だから」ではなく「デブだから」注目を浴びるようになるのかと思うと今から楽しみだ。
「今日はミックスフライ弁当買って来たぞー」
「やった! 丁度食べたいと思ってたんだ!」
無邪気に喜ぶメリィ、最近は慣れたのか最初よりも俺に対する態度も柔らかくなった。
…まったく、まるで餌付けをしているようだ。
ポテトチップスの後に揚げ物なんて胸焼けがしそうなメニューだが、メリィは難なく平らげてしまった。
「今晩は肥満化の日だから、また見せてもらうな。明日は休みだし、外食連れてってやるからさ」
「仕方ないな。じゃあ、この前行ったバイキングがいいかな♪ あんなに美味しいものが並んでてジュースも飲み放題なんて、天国かと思ったぞ。…うぅ、またあの日かぁ… 先月みたいに大した事無いといいんだが…」
「冗談じゃない。くそ、どうせなら毎月10kg増えるとかにしとけばよかったぜ。しかしそれではドキドキ感が薄れるし…」
何kg増えるか分からないスリルも楽しい物である。メ
リィの話では、毎月の増量分はランダムといっても、いきなり100kgも増える事は無いという事だ。
もっとも、こんな願いをした奴はいないので詳しくは分からないのが本音らしいが。
こちらとしても、1トン超えの人外になられてもさすがに守備範囲外だし、世話も大変だ。
何よりそんな体重ではメリィも死んでしまうだろうから、好都合というものだ。
「…まったく、キミは本当に変態だな」
浴びせられる冷ややかな視線も気にせず、俺の頭は今夜の肥満化の期待で一杯だった。
こうして午前0時、肥満化の瞬間を迎える。
3回目ともなれば、俺もメリィも慣れたものだ。
「い、いやぁッ! はうぅうん!!」
相変わらずいやらしい声を出すメリィ。
…そんなに気持ちいいのだろうか?
ぶるぶると震える身体は、少しづつ大きくなっていく。
…どうやら、先月のようなつまらない小規模な肥満化は免れたらしい。
「はぁはぁ…くそ、結構増えたな…」
肥満化が終わるとメリィは息を荒げ、自分の身体を確認した。
今回の肥満化では下半身を中心に肉が付いたらしく、はちきれそうな太股や下腹部が体重の増加を如実に現している。
その後、体重計に乗り増加分を確認した。
「…な、7kgも増えてるぅ…」
体重計の数字に驚き、情けない声を出すメリィ。
先月に比べれば上々の結果といえるだろう。
豊満といっていい体つきに変化したメリィは、何ともいえない色気を発している。
「今月は当たりだったな。よし、寝るか! 約束通り、明日はバイキング行こうな」
そう言って寝室に戻ろうとする俺をメリィが呼び止めた。
「あの、そろそろパジャマや下着がきつくなってきたんだ。…サイズが合わなくなってきたから、新しいのが欲しいんだが…」
そう言われれば、肥満化を見越してやや大きめのサイズの服を買っていたのだがそれも限界を迎え、ところどころに贅肉に食い込んでおり窮屈そうだ。
もっとも、それがたまらないといえばたまらないんだが。
さすがにみっともないので、明日の外出は俺のジャージでも貸してやろう。
「分かった。じゃあこれで適当に選んどいていいぞ。…あまり高いのはダメな」
そう言って、通販のカタログを渡した。
どうせ体重の増加で着れなくなるのは目に見ているのだから、安物で我慢してもらおう。
やれやれ、余計な出費が増えてしまうな。まぁ、こんな楽しい事の為なら安いものだが…
「じゃあ、おやすみ」
カタログを片手に別室の寝室に向かうメリィの後姿を見れば、ボリューム満点のヒップが特に目を引く。
上半身はそうでもないが下半身は既にぽっちゃりといっていい段階に達した。
これから先はデブまっしぐらだな… まだ時間はたっぷりある。
明日の休みは、食事の帰りにまた菓子でも買いだめに行くとしよう…
自分の寝室に戻ったメリィは上着を脱ぎ、改めて自分の身体を見てため息をついた。
「はぁ… ついにお腹の肉が段になってしまった… これじゃあ立派なデブだな… まだクリスマスまでかなりあるというのに」
鏡には、ぽってりと太った自分の姿。
見苦しいほど太ってはいないが、標準体型とはもはや言えない。
ぷにぷにとした弾力の自分の腹やお尻をつつくと、脂肪の厚みが嫌でも分かる。
以前の引き締まった身体はほとんど面影は無い。
わずか3ヶ月でこれなら、先が思いやられるというものだ。
「少し食べる量を減らすか… いや、どうせ毎月太るんだから、そんな事をしても無駄だな。要はクリスマスに元の体重になればいいんだ。よ〜し、夜食のお菓子でも食べながら服でも選ぼうっと」
そこはやはり女の子、新しく服を選ぶとなればなかなか楽しいものである。
下界の服はメリィの目から見ればどれもとても魅力的に見えるのだから尚更だ。
欲を言えば、サイズが合わなくなったからではなく、お洒落をする為に選びたかったがそう贅沢も言っていられない。引き出しにあらかじめ隠してあったお菓子をつつきながら、深夜まで楽しそうに洋服の物色をするメリィであった…
メリィ 167cm・62kg→71kg(2月増加分+3月増加分)
(残り9ヶ月)