792氏その7
「ただいまー、メリィ。今日はチキン買ってきたぞー。お前サンタなんだから好きだろ」
「モグモグ、うん、相変わらず美味しいなぁ。クリスマスに好んで食される事は知っていたがこんなに美味しいとは知らなかった… ってコラー!」
ノリつっこみまでできるようになるとはコイツもなかなか成長したな。
「ど、どうしてこんなカロリーの高そうな食べ物ばかり買って来るんだ! こんなのばかり食べてたらますます太るじゃないか!」
「…いや、10本中6本食べてから言われてもな… おまけに俺の分のポテトまで食べやがって」
「あ、そうだったか。すまない。ゴクゴク、プハァーッ」
「締めにコーラって… また太るぞ」
「ハッ! 目の前にあったから… この脂っこい口の中を炭酸で洗い流すのが快感で…」
「…お前、痩せる気ないだろ」
あれから、メリィは口では食べる量を減らす減らすとは言っているものの一向に実行に移す事はなく、毎日こんな調子だ。はじめは俺も少しは協力してやろうかと低カロリーなものを買ったりしていたが、明らかに不満そうな顔をするので今は以前と変わらない食事を買って来ている。
身も心もデブらしくなってきた。制服を着ると身が引き締まる思いがする、とよく聞くが、どうやらメリィにとって身体に纏った脂肪はそれと逆の作用をするらしい。
「ところで一つ聞きたいんだが」
残りのチキンを俺が食べ、ウーロン茶で喉を潤しているとメリィが真剣な顔で尋ねてくる。
「最近、外でよく男子中学生とかが私を見て、こそこそと「ピザ、ピザ」と言ってるんだが、一体どういう意味なんだろうか?」
「ぶっwwww」
…思わず飲み物を吹き出しそうになった。
たしかに、5月の肥満化も順調に6kg増え、さらにその後の食事による肥満化で既に体重は90kg近い。
おまけに、初夏を迎え半袖からはぶっとい腕が見えるし、薄手のシャツからはこんもりと膨れる贅肉に食い込むブラの線も目立つ。
白人特有の太り方なのかケツは既にパンパンで大き目のジーンズが張り裂けんばかりだ。
俺から見ればまだまだなんだが、一般的に見れば十分すぎるデブだろう。
なるべくソフトに、オブラードに包んでメリィに説明してやる。
「…う、うぇええん、キ、キミがいけないんだぞ! また今日も体重増えちゃうしっ! もう嫌だぁっ!!」
さすがにショックだったのか、べそをかきながらそのまま部屋に篭ってしまった。
「おーい、何て言ったらいいかわからんが、元気出せよ」
一応、心配なので、しばらくしてから壁越しに声を掛ける。
「…ヒック、グスン、一人にしてくれ」
相当落ち込んでるな…
つい数ヶ月前までは本人はあまり気付いてなかったとはいえ、キンパツ美人で羨望のまなざしで見られていたというのに、短期間でここまで落ちぶれては無理もないが。
今日は6月23日の6回目の肥満化の日なんだが、これでは鑑賞は無理そうだな。
早めに機嫌が直るといいんだが…そんな事を考えながら、俺も床に着く事にした。
「ひ、ひやぁああああっ!」
布団に入り、うとうととしていると、大声でハッと目が覚めた。
時計を見ると、時刻的に肥満化が起こったらしいがあんな大声、ただ事ではない。
…これは一応、様子を見る必要があるな!
「どうした! 大丈夫かっメリィ(棒読み)」
そう言ってドアを開ける。
部屋に入ると、メリィが赤い顔でへたりこんでいた。着ていた部屋着のスウェットは既に限界で、大きなお腹が盛大にはみ出ている。今まではあまり顔に肉が付いていなかったが、ついに完璧な二重顎も形成され、頬にもむっちりと肉が付きだしていた。
さっき見た時よりも、ひと目で分かるほどに身体が大きくなっている…
これは確実に100kgは突破しているな。
どうやら、今回の肥満化は大幅に体重が増えたらしい…
この目で見れなくて実に残念だ。
「ど、どうしよう… こんなに太るなんて…」
自分の身体、といってもお腹や腕くらいのものだが、ざっと見たメリィは痛感した。
『自分はついに100kgを突破してしまった』と。
体重が3桁に突入するなんて、若い女性にとっては未知の領域だといっていいだろう。
90kgも100kgもデブという点ではそんなに変わらないのかもしれないが、気持ちの問題で2桁に留まっているのと3桁に突入するのでは大きく違うというものだ。まして、ついこの前までスリムだった自分にとっては。まるで自分の身体ではないような錯覚すら起こしてしまう。
…これが着ぐるみのように脱ぐことができたら、どれだけ幸せか。
そう思うと、自然に涙も止まらなくなった。
「うえぇええん、ヒック、ヒック」
肩を震わせながら人目もはばからずに泣くメリィを見ていると、普段の気丈な姿とのギャップもあいまって、さすがに罪悪感を感じてくる。
…正直、それ以上に興奮も感じるが、話がこじれるのでそれは隠しておこう。
「何かゴメンな。俺の適当な願いのせいで。まぁ、どうせいずれ元の姿に戻れるんだから、あんまり気にせずにこっちでの生活を楽しめばいいんじゃないかな。俺も協力するから」
そう言って、むき出しのお腹に布団をそっとかけて、ここは大人しく立ち去る事にした。
時間を置けば気持ちも落ち着くだろう。
1年に渡る肥満化も折り返し地点を迎え、メリィの体重は約2倍になったというわけか。
これからどこまで太るかに期待しながらも、泣きじゃくるメリィを思い出すと、少しだけ良心が痛む夜だった…
メリィ 167cm・82kg→103kg(残り6ヶ月)