FGI氏その3
その後・・・ 5月。
「礼矢、また無駄使いか?」
「戦絆は無駄使いじゃないって」
あれから、礼矢は優希のアパートで一緒に暮らしている。いわゆる同棲状態である。
「あまりお金に余裕がある訳では無いのだから、少しは控えて貰いたい物だな」
「確かに毎日行ってるが1日1回だけだって!」
「それでも月2万に届きそうなゲーセン代は高いと思」
言い終わる前に礼矢が優希の後ろに回り、腹を掴む。
「そ・れ・に♪ 俺の給料と優希のバイト代の内3割以上はこの体に肉としてついてるんじゃないかなぁ〜?」
「むぅ・・・ 腹の肉を掴むな」
バレンタインデーで太って以来、優希の完璧超人っぷりは完全に崩壊した。
ダイエットは上手く行かず、体に付いた贅肉が運動能力を著しく下げ、やる気も削いだらしい。
今まで行っていた一流クラスの大学を辞めてアルバイトをしている。
あれから特に運動もしてない為、優希の体は前よりも太っていた。
以前の『完璧』な優希はどこへやら、今は運動×、体つきも×、ルックスも×と×だらけである。
頭は良いのだが。
「う〜ん、なんていうかさ、また太ってるねぇ・・・」
「いや、それは気のせいだ、体重はバレンタインデーから変わっていない。70後半くらいだ」
「あれ? この前風呂場で体重測ってた時に軽く叫んでたじゃん?」
「それは誤解だ。別にあれから20キロも太ってない。むしろ私は痩せようとだな・・・ あ」
「90オーバー!? そりゃあこんな事にもなるって訳だねぇ〜♪」
「ば、いや・・・ だから腹を掴むな、尻を叩くな、ほっぺたを引っ張るな!」
優希の体で遊びまくる礼矢。本人曰く90キロくらいらしい体は柔らかく、いじりがいがあった。
「細かった頃はなかなかいじる隙が無かったけど、太ってから隙だらけになったね〜。性格も体型に合わせるように丸くなったしね〜(ぶにぶに)」
「だ、だから、握るなと・・・ や、やめて、くれ・・・」
優希の顔が真っ赤になる。恥ずかしいのだろう。
「え〜い♪(ムギュッ)」
「あうぅっ!?」
おもいっきり肉を摘むと、突然優希が崩れる様に座り込んだ。
ドスン と重い音が響き、優希は股を広げる様なポーズになる。
それが災いしたらしく、限界まで延びきっていたズボンの尻の部分が破れた。
少し間があって、優希の目に涙が溜り始めた。
「・・・酷いぞ礼矢、私をおもちゃか何かと思ってないか?」
「え、あ、わ、悪い。ちょっと調子に乗った、本当ゴメン!」
「・・・じゃあ、これから戦絆を週1回にして貰おうか」
「え!? いや、それとこれとは別じゃ」
「・・・・・・グス」
「分かった、悪かった! 許して下さい! ・・・週2で。(ボソッ)」
「・・・じゃあ、ズボンが破れたから、新しいのを買って来て貰おうか?」
「ああ、分かった。・・・その・・・ サイズはどうすんだ?」
「・・・XL以上だ」
「・・・何か俺って、優希の涙に弱いなぁ・・・」
馴染みの服屋で買い物を済ませ、紙袋2つを振り回しながら一人呟く礼矢。
せっかくなのでシャツも買ったのである。
「(でも、優希見るといじりたくなるんだよな・・・ 俺、そっちに目覚めたかな?)」
考えながらとある店に向かう礼矢。親友が働く店に頼んだ物を取りに行くのだ。
「(・・・ま、こんな物を頼む時点で目覚めてるか)」
親友(変態)が働く『コスプレ喫茶』へと向かう礼矢(変態)だった・・・。
「たでぃ〜ま〜」
「おかえり、遅かったな」
部屋に入ると、テレビを見ている優希がいた。この時期になんと下着姿である。
袋菓子を食べながら、横になってテレビを見てる優希は、下着姿なのに全く違和感が無かった。
むしろ体型のせいか、似合っていた。
「貫禄があるな・・・」
「何か言ったか?」
「いえ、何でもないです・・・ はいよ、ズボンと、あとシャツもついで。外出るのに腹がはみ出してたら恥ずかしいだろ?」
「な・・・ くっ、すまない。・・・で、その紙袋は?」
「これも優希の服。というか、物?」
「?」
礼矢はそれ以上詳しくは言わず紙袋をしまった。優希はそれを気にせずに礼矢が選んだ服を確認する。
「また猫の服か。前と同じ物と、新しい物、そんなに猫が好きか?」
「だって、ぬこ可愛いじゃんぬこ。飼いたいけどここアパートだしさ」
「それ以前に、飼育めんどくさいから嫌だ」
「・・・(優希、昔はめんどくさいなんて言わなかったのにな・・・)」
急激に駄目な方向に突き進む優希だった。
夜――夕食後。
「ふぅ・・・ やはりラーメンは美味い。こんな美味しい物を今まで食べてこなかった私は世界のラーメン好きに謝らなくてはならないな」
「・・・こってりチャーシューメン特盛(5玉)にご飯まで入れてさらに餃子まで食ってたのに、なんでそんな余裕なんだよ・・・」
「ふふん。(得意気)」
「褒めてねぇよwww」
優希は食べるのに夢中で気付いて無かったが、ラーメン屋に居る間ずっと回りの人間が優希を見て
唖然としていた。中には食欲が失せる者や食後の会話を中断し帰る者がいた事を、礼矢は知っている。
今こうやって普通に歩いていても、回りの視線が気になる。
優希の隣にいるせいか、礼矢は自分が見られてる様な気分になっていた。
「? 礼矢、何を考えている?」
「ん!? いや、ちょっとな。・・・優希、頼みがある」
「なんだ、改まって?」
「アパートに帰ったら、さっき俺が持ってた紙袋を渡す。それに入ってる物を着て欲しい。着て、俺の頼みを聞いてくれたら、ケーキバイキングに連れて行こう」
「何!? 嘘じゃないな!? 良いだろう!」
「返事はやっ! 少しは考えたら・・・」
「なら早く帰るぞ!」
そう言ってドスドスと体を揺らながら速歩きをする優希。
体を揺らして歩くのは肥満体特有の歩き方だ。回りの通行人が嫌そうな顔をしている。
「(今度から路地裏通って帰っかな・・・)」
【自宅】
・・・優希に紙袋を渡して、既に20分。紙袋の中身を見て悩んでるのだろう。礼矢は事前に
「それを着て出てきたら、条件を飲んだと見なす。着なかったら、無かった事にしてくれ」
と言って置いた。
「(常人なら絶対断るだろうし。まあ、優希は今プライドか食欲かで悩んでるんだろうな・・・ しかし、あれはやっぱり駄目かn)」
「れ、礼矢・・・」
Σ( ) ゚ ゚
優希が『着替えて』出てきた。その直後、礼矢は優希以外の物がどうでもよくなった。
優希の破壊力抜群なその姿に、礼矢は崩壊した。
「(イャッホォォーィ!(゚∀゚)萌えアニメオタの皆さん、今まで萌えとか馬鹿にしてすんませんでしたー!)」
ほぼ何も着てない状態。デンと出た腹肉を隠す物は白い部分パーツだけだが、
そもそも体を隠す物では無いため、優希が呼吸をする度に突き出た腹が上下している。
太股には白いパンスト『猫靴下(偽爪あり)』が太すぎる足に押され、中からはち切れそうな状態だ。
大事な部位は申し訳程度に白い部分パーツが下着変わりに付いているだけだ。
胸も白い部分パーツで隠されているが、隠しているのは乳首だけである。
腹に乗った胸自体は衣服から解放され、動く度に揺れている。
太い腕には肘くらいまである『ネコグローブ』を付けている。
後、ほぼ丸だし状態の大きい尻には猫しっぽ。そんな優希の頭にはネコミミ(白)、横に広がっている髪は
薄め青が基本で微妙に水色の髪がまざっている、腰まであるウィッグを付けている。
ネコ手、ネコ足、ネコ耳、ネコ尻尾。今優希は『コスプレ』をしていた。
前ならいざしらず今の優希には全く似合わない、常人なら目を背けたくなる程、
肥満体を露出するコスプレだった。
「れ、礼矢、一体これは何なんだ?」
恥ずかしい上に落ち着かないのか、自分の腹を持ち上げたり、ネコ耳に触ってみたり、ちょっと飛んでみたりする優希。その動作ひとつひとつが更に礼矢をブチ壊す。
『ネコの格好をした、動く度に体が震える程太った女性』が今、礼矢の目の前に居た。
「分かる人には『フェリシア』って言えば分かる、簡単に言えば『ぬこ』だね♪ところで寒くは無い?」
「元々肉で寒くはないが、恥ずかしくて顔が熱いぞ・・・ 上着が着たい・・・」
「いやいや! かわいいよマジで! 特注して良かったよ! 上着? 絶対に許さないよ!」
恥ずかしさで真っ赤っかな優希だが、礼矢は今壊れそうなテンションになっている。
否、既に壊れている。この状態ではまともな返事は期待出来ないだろう。
「さて、じゃあ、俺の頼みを聞いて貰おうか!」
「た、頼むから、外に出るとかは止めてくれ!」
「しないしない! 俺はそんなにSで鬼畜じゃないさ!」
嘘だ!って優希が言ったのを礼矢は無視し、友人(変態)から貰った物を取り出す。
非現実的なこのアイテムで礼矢にとって最高のパーティが始まろうとしていた・・・。