FGI氏その4
―第2階層―
「ふぅ・・・階段終わりっと! 疲れたぜ〜・・・」
カレンが重い体を揺らし地面に座る。体型と鎧のせいで汗だくで、湯気すら見える。
「近辺の地質調査じゃ地下三階の小規模な遺跡なのに帰って来る人間が居ない理由って、もしかしてみんな肥りまくったんっすかねぇ・・・」
「・・・」
『歩行不可能になった』『さっきの通路に挟まった』と考えるマチスだが、カレンは違っていた。
「(だったら装備だの骨だの死体だの見付かる筈・・・ 謎だな・・・)」
「姉さん? どうしたっすか?」
「んや、何でも無いから気にすんな。・・・さて、行きますか!」
「あい。・・・しかし、出たら部屋で前には扉・・・ なんですかね?」
階段が終わって前には8畳程度の部屋、出口には洋風の扉。
これが今の状態だ。もちろん敵の反応は無い。
「扉に罠は?」
「(サーチ中・・・)いんや、無さそうっすね。この奥は大部屋っす。」
「無いな? 無いなら行くぜ!おらぁ!?」
「ちょwww 大部屋の意味を聞いてくr」
カレンは勢いを付けて扉を蹴り破ろうとしたが、腹が邪魔で足が上がらず腹で押す形になる。
扉を開けると・・・
「・・・マス目?」
「足下に『スタート』、あっちに『ゴール』の看板、そんでサイコロ・・・ どうみてもすごろく場です、本当にありがとうございました」
相当な広さの部屋で、あちこちに4畳程の広さで色が違う壁がある部屋。どうやら道は一本の様だ。
部屋には一つ一つ頑丈そうな扉があり、試しに目の前の扉を開け様としたが、ビクともしない。
「・・・ふ〜む、サイコロを振ってけってか?」
「試しに振って見たらどうっすか?」
言われてカレンはサイコロを持ち転がす。出た目は『2』だった。
サイコロの数に合わせ部屋の扉が開いた。
「2つ先か・・・ 色は『赤』だな」
1の部屋を抜け2の部屋に止まる。すると一瞬、カレンは体に違和感を感じた。
「ん? 何か変な感じ・・・」
「・・・姉さん、4K程体重が増加しました」
「・・・なるほど、『赤』は『体重増加』かね・・・」
流石に現体重が多い為、4K程度じゃ気にならないが、塵も積もれば、である。
しかもゴールは全く見えない。違和感が消えた少し後、上からサイコロが降ってくる。
カレンは再び転がし、今度は『3』が出た。とりあえず進む。
「次は『紫』だな。」
次の紫の部屋も中に物は無く、中央まで歩くとカレンはやはり体に違和感を感じた。
「!? 身長が2cm縮んだ!?」
「は!?」
体重が増えるのはまだしも、身長が縮むのはマズイ。少し焦るカレン。
そして降ってくるサイコロ。
「さっさと進むぜ!」
「姉さん! ちょっとは大きい目出さないとマズイっすよ?」
が、無情にも『1』。先の部屋は『青』。戻る扉は閉じてるので進むしかない。
「青・・・ 良いイメージだよな、なんか」
「回復とか、+3コインとか、金銭増加とか、なんか良さそうっすね♪」
楽観視する1人と1本。そしてやっぱり違和感を感じるカレン。
「お!? 体重が3K減ったっす!」
「ぃよっし!この調子で青を目指すぜ!(・・・やっぱ3K程度じゃ軽くなったなんて感じないよな・・・)」
降ってきたサイコロを蹴るカレン。サイコロは『6』を出した。「絶好調!」と叫び進むカレン。
目の前には『黒』の部屋。こちらも勢いよく開ける、と・・・。
「げ」
「ゴブリンっすね・・・ 雑魚っす。げ、って程じゃないっす」
「(いや、体型が体型だし・・・)」
目の前にはゴリラっぽい亜人系モンスター最弱の『ゴブリン』が3体。
こっちに気付き盛んに「ニク!」とわめいている。
「誰が肉だぁ!」
重い体を揺らし、抜いた両刃刀をひと振りし同時に2体の首を切り落とす。
最後の1体はわめくのを止め、遅すぎる戦闘態勢にはいる。
「流石、『ソードダンサー』の異名を持つ姉さん!剣が踊ってる様に見えるっす!」
「(普段は『剣と体が』なんだが、今は『剣とぜい肉が』踊ってるって言ったが正しいね・・・)」
そんなことを考えていると最後の一体が後ろに回りこんだ。そして持っている棍棒を・・・。
「おっと、甘いな」
そこをカレンが全体重でゴブリンを文字通り『尻で敷いた』。
叫び声も出ず、カレンの尻で圧死したゴブリンだった。
「ふぅ・・・ 疲れた」
「(ゴブリン・・・ ご愁傷さま・・・)」
ゴブリンを倒すと扉が開いた。そして上からサイコロが落ちてくる。
カレンが振って出た数字は『3』、進んだ先の部屋は『青』。
「いよっし!」
「・・・4K減少っす。そろそろ軽いって感じるんじゃないっすか?」
「・・・いんや、何も感じねぇな」
残念そうに落ちてきたサイコロを振るカレン。
出た目は『1』、先の部屋はなんと『銀』だった。
「・・・宝的な意味で銀っすかね?」
「ねぇな。腹くくって入るっきゃねぇだろ、これは・・・」
・・・はたして、部屋には和、洋、中華等々、色々な料理が並んでいた。
長期間置いてあった様な感じは無い。
それどころか美味しそうな匂いと温かそうな湯気が出ている。
「(チェック中・・・)毒は無さそうっすけど、怪し過ぎるっす、気を付けて下さ・・・?」
言い終わる前にはカレンは料理の前に行っていた。そして料理を勢い良く食べ始める。
「あ、姉さん!?」
マチスは呼ぶが、返事は無い。そしてカレンの瞳には光が無い。
「(ヤンデr・・・ 違う! 料理には何も入って無いって事は、体重増加のせいか? それとも部屋の魔力か・・・)」
考えている間にカレンはひたすら食べている。
厚手の鎧には食べカスが飛び散り、口の回りはソースや脂が付いているが、全く気にしてない。(普段のカレンはこう言うのにうるさい)
「(我を忘れて食べてるのか?) 姉さん!!」
・・・無反応。だがカレンの体は料理の大量摂取により変化が起きはじめていた。
鎧が内側から押し出され始めたのだ。若干余裕のあるサイズの鎧だった筈なのに、だ。
「(急激に肥ってる!? マズイ! )姉さん! 姉さん!!」
やはり反応無く、ただひたすら食べる。そして、20人分はあったであろう料理を全て食い付くし、サイコロが落ちてきた辺りでようやくカレンが気付いた。
「・・・あら? 全部食っちまった?」
「・・・体重30K増加、今は鎧で分かりませんが、おそらく体がまた大変な事になってますよ・・・」
「・・・確かに鎧がキツイ。・・・とりあえず進むか・・・ よっこいしょ」
更に重くなった体のせいで屈むのが苦痛だがどうにかサイコロを拾い、投げる。
出た目は『4』。部屋は『紫』。
「っ・・・ また縮むのか・・・ 170切らないだろうな・・・」
縮んでも体重が変わることはない。つまり
「チビデブっすね!」
「言うな、ドアホ!」
そして部屋に入ってすぐに違和感を感じるカレン。
マチスが「−4cmっす」と言うのを無視し、カレンは降ってきたサイコロをキャッチし投げる。
出た目は『6』。先の部屋は・・・
「次は『青』っすね!」
「ああ、そうだな・・・ ちょっとは動き易くなって貰いたい物だが・・・」
そして部屋に入り変化が起きる。
「・・・−8K・・・ かなり痩せました・・・?」
「あ・・・ ん? あたい、には、痩せた気がしない、よ・・・?」
実際体重は減っているのに、カレンは痩せた自覚が無かった。
それどころか自分の体が重くなった気がしていた。細かくマチスがステータスを確認し、気付いた。
「あ! 筋力が低下してる!! 痩せた分は脂肪じゃなくて筋肉ですよ!? つまりすでに15K分の筋肉が無くなっている事に」
しかし返事は無く、カレンは落ちてきたサイコロを壁に叩き付ける様に投げた。
「・・・姉さん?」
「・・・今、『スタート』の位置から数えて確か26・・・ 『ゴール』は確か30だったはず・・・ 動ける間に、とっととゴールすんぞ、もう・・・」
そして出たサイコロの目は・・・ 『3』だった。先の部屋は・・・ 『金』。
カレンは無言でのそのそと歩き、金の部屋に入った。
「・・・サイコロ? 『何も無し』か? 助かった・・・」
カレンは早くゴールしたいがため、とりあえずサイコロを振った。
出た目は『6』。ゴールしたと思ったカレンを強烈な『何か』が襲う。
そして鎧の留め金が全て弾けとんだ。
残る装備は背中の剣と伸縮性のあるゴムにつけ変えたマチスのみ。
「!?」
「う・・・ もう、キツイ・・・」
地響きを立ててカレンが座り込む。その間も太り続け、更に違う『何か』がカレンを襲った。
太り続けながら身長が縮み始める。
「う・・・ 足が、短く・・・ 手も、か・・・?」
身長が縮み体重が増える。
身長が縮んでも体重は変わらない、その分が違う部位に行くだけである。
腕と体の肉が脇を閉じる事を制限し、首が無くなっていく。
体が縦に縮み横に広がり、腹が出て尻も出る。胸は横に広がりつき出た腹に乗り、尻はまるで座布団の様で、座っているため変形し潰れている。
ようやく変化が止まった頃には、そこに見慣れた『人の姿』は無かった。
「うぅ・・・ マチス、今の、ステを、頼む、ぶふぅ・・・」
「(チェック中)・・・体重は+36K、身長は−12cm、結果、現体重182K、身長158cmっす・・・」
絶望的な状態がマチスから告げられる。
カレンは荒い息をするだけになり、マチスも黙った。
・・・何時間立っただろう。
ようやく息が整ったカレンはそんな状態でもなんとか立ち上がり、開いた扉の先にある『ゴール』を目指す。
「せっかく、ここまで、きたな、ら・・・ 諦め、ずに、行くぜ・・・」
既に常人なら歩行に支障が出るか、下手したら動けない体重であるにも関わらず1歩1歩進むカレン。
座りすぎてまさしく座布団の形になって変形してしまった尻を振り、全身を揺らしながらも確実にゴールを
目指す。ようやく『ゴール』の部屋に到着し座り込むカレンの前には、これまでとは違う感じの扉があった。
「ぶふぅ、はぁ・・・ 本当に、ゴールっぽいな、なんか」
「・・・中の状況が把握出来ないっす、気を付けて下さい。多分ボスっす」
「いざって時は、潰してやるよ、アハハ・・・ ふぅ、よっこらしょ」
頑張って立ち上がり、自分の横幅と同じくらいの大きさの扉を押し開けた。
身長 178cm→158cm(−20)
体重 128K→182K(+54)
B 110→168(+58)
W 120→192(+72)
H 132→200(+68)
状態 筋力体力低下(中)、防具装備不可(体型都合)、行動制限(気合でカバー)他