伝助の妄想劇場・先生編
#エイケン
『ねぇ、そういえば…… エイケンヴの人で誰か忘れていない?』
『忘れてる?』
学園の中庭でパンを食べながら男子生徒と女子生徒は話していた。
『うん、なにか忘れてる気がするんだよね』
思い出せないと言いたげな表情で女子生徒は頭を抱える。
『ゼンゼン、部員のメンバーも残り3人だけだしな……
他の人は、まあ放っておいても暴走中の彼なら勝手にやるだろ』
『3人? 2人じゃないの?』
大善寺ヒカリとキリカ、その二人しか残っていないはずなのに3人と言い切る男子生徒、
『いや……』
そう言って女子生徒に耳打ちする男子生徒。
『……うわ、そこまでやるんだ……』
『まあ、最初は全員貧乳にしてから楽しむつもりだったけど、
それも面白くなくなったから一旦解除してたしね』
そう言って空を見上げる男子生徒、
『もうすぐエイケンヴ主催のイベントがある、それがフィナーレさ』
自分の残り時間を判断しながら男子生徒はため息をはき、視線を地上へと下ろしていく。
『あ…… 一人忘れてた』
伝助は、いつものように昼食をとるために歩いている。
「あ、三船君」
声をかけられ、振り返ると、そこにはでっぷりとした女性がそこにいた。
「……え〜〜と」
伝助はじ〜〜とその女性と見つめる。
他のエイケンメンバーと比べると細い感があるが、立派なデブだ。
なんというか、全体的に少し垂れ下がった感があるだらしないデブ、しかも完全な下半身太りだ。
「ああ、先生か」
髪の毛の外はねでようやく誰か理解したのか、伝助は先生をみて納得する。
スカートはぱっつんぱっつんでというか、もうやぶれてところどころ肉が漏れでている。
「先生、何でそんなボロボロな格好してるんですか?」
一応、破れた場所の一部は補強してあるとはいえ、正直みっともない。
「え、あわわ、えーと、洗濯して縮んじゃったのか、全部きつい服しか残ってなくて……
今度、買いに行くんですけど……」
そう言って必死にお腹を隠しているが、無駄だ。
実際、伝助の無意識の妄想によっていきなり太ったから
体型とそれまでの生活設定とが噛み合わないだけだろう。
「それにしても、暑いですね」
伝助の言葉を聞いて、先生の額から汗がにじみ出る。
「ええ、暑いですね」
そう言って汗をぬぐうが、汗が止まっていない。
それどころか、本当に汗が滝のようにあふれ出る。
雫なんてレベルではなく、もはや完全に滝だ。
「のどが渇いてきましたね」
そう言って、のっそのっそと水のみ場へと歩いていく。
先生(滝沢マコ)
85(C)・54・88 → 100・120・130
歳による若干のたるみ 異常多汗症
行き着いた先は、プールだった。
「ここに…… 水があるんですか?」
『ええ、ここはあまり使われていないプールですから、好きなだけ、水を飲めますよ』
そう言って、男子生徒は先生をプールの淵まで案内する。
「でも、水が入ってませんよ?」
『今から入れるんですよ、だから、これ着て中に入っていてください』
脱水症状を起こしかけているのか、うつろな眼をした状態で、先生は手渡された水着に着替えた。
『それじゃあ、行きますよ』
プール脇にある制御装置を操作しながら男子生徒は声を上げる。
「はやく、速く水を!!!」
プールの真ん中に鎮座するスクール水着を着たデブ…… 先生が待ち遠しいように声を出す。
デブがスクール水着を着るとここまで醜さをさらしだすとは……
腹を思いっきり強調するようになっているし、完全に食い込んでいる。
「水をください!!!」
先生の姿を見ていると先生から狂ったような要求の声が上がる。
『分かりましたよ…… 好きなだけ飲んでください』
そう言ってバルブを全開にした。
勢いよく、水がプールに入り、先生の下へと水が伝っていく。
「ああ、みず〜〜〜」
うつぶせに倒れこみ、水をすすろうとするが、お腹が邪魔で口を水につけることができない。
「あ、あれ? と、届かない」
じたばたするが、届かないものは届かない。
『そんなに慌てなくても大丈夫ですよ』
男子生徒はそう言って笑っていた。
段々水がプールに溜まっていき、その体が水に浮いていく。
飲みたいのに、飲めない、体が浮いて、水面に口が届かない。
水が溜まったプールに脂の塊が浮いていた。
「あれ? のどが…… 渇かない?」
口に含んでいないのに、のどの乾きが段々と薄れていく。
まるで…… 水を飲み続けているような感じがする。
『今の先生の体なんですけどね』
混乱が生じている先生に男子生徒は独り言のように口を開く。
『口で飲まなくても水を補給できるんですよ、それも、尋常じゃない速度で』
いきなり、ボコンいう擬音が鳴りそうな勢いで、先生のお腹が膨らむ。
「うっぷ、な、なんですか? まるで、大量の水を飲んだみたいにお腹が……」
揺らすとタプンと聞こえそうなくらいに水が詰まったお腹を押さえ、先生は苦しんでいる。
『まあ、簡単に言えば、先生は水に触れ続ける限り、永遠に太っていくんですよ』
そう言って、男子生徒は水の量を一気に増やした。
「え、それって…… ぐふ」
先生の足が、一気に膨れ上がる。
『ちなみに、順番にその水分は脂肪に変換されていくんで、急がないと大変なことになりますよ』
先生の体がどんどん水分を吸収し、そして脂肪になっていく。
「い、いやです…… 早く水から…… でないと……」
先生の必死の脱出劇が始まった。
まず、立ち上がることから始まった。
水を吸収し、膨れ上がったお腹に乗っかる形だったのをムリヤリ起こすが、それでも、
一気に肥大化した足で立つこともできず、座り込む形になる。
『急がないと…… ほら』
先生の張り詰めていたお腹がいっそう膨れ上がり、そしてやわらかくなる。
スクール水着に包まれたお腹に段ができ、ダルダルにたるんだ脂肪が前へ前へとせりだす。
「で、でも、か、体が重くて……」
汗だくになって必死になるが、それでも立ち上がるが、
水が溜まったプールにしりもちをついて水柱を上げる。
そのせいでお尻に一気に水が吸収され、一気にお尻が肥大化する。
『うわ〜〜 完全な下半身太りだな〜〜』
まるでチョココルネのようになってしまった先生の姿に男子生徒は苦笑する。
もう完全に胸下まで水に漬かってしまい、浮いて足が付かない。
「うう、もう…… 泳ぐしかできない」
必死に泳ごうとしているが、肥大化した下半身が浮いてしまい、上半身が沈んでしまう。
「う、ゴフォ、お、およげない」
必死に必死に上半身を浮かし、そして沈んでいく。
まるでブタが水遊びしているようにしか見えない。
必死になってようやく壁際にたどり着いたとき、先生の姿はもうヒトと呼んでよいのか、
迷ってしまう。
泳ぐことで余計に水に触れてしまい、膨れ上がってしまった。
伸縮自在のスクール水着の限界まで伸びきり、薄くはだが見えてくる。
もうどこが太ったなんて分からない。
全身に肉が付き、ブクブクに太り、水に浮いていた。
長時間水に使っている下半身は見るも無残だ。
『推定500キロか……』
プールサイドで見下ろしている男子生徒は苦笑いだ。
「は、速ぐあ゛がら゛ない゛ど」
泳ぐときに激しく水を浴びた顔は見れたものではない。
錯乱しているかのように必死にハシゴを掴むが、体が持ち上がらず、
渾身の力を入れても水面が波打つだけだ。
もう、どのくらいに時間がたっただろうか、男子生徒はあきれていた。
『いつまで水に使ってるんですか? さっきから上がらないとっていってたくせに』
そう言ってプールの端っこにいる先生に声をかけた。
「上がれない…… お腹が、邪魔で……」
もう理性を保っているのが困難なのか、うわごとのようにつぶやく先生。
『はぁ〜〜 もうまともな精神を失ってるな…… これ以上は楽しめない』
そう言って、男子生徒はため息をはき、プールサイドに伸びる肉の塊……
いや、先生の腕を持ち上げ、プールの中に落とす。
「いや…… 上がらないと…… でも、お腹が邪魔で足元見えない……」
プールになみなみと注がれた水。
しかし、このプールの貯水量の6割ほどしか入っていないはずだ。
もはやそれはニクの塊としか言いようが無い。
推定体重…… トンは簡単に越えているだろう。
動くことすら不可能となり、今の先生の視界には肉しか写っていないのだろう。
あまりにも非現実で、ありえ無すぎる現象の副産物なのか、先生の骨格すら変異していく。
顔は脂身の中に埋もれるように存在し、その中で頭蓋骨の約3倍の体積を誇る顎がたるみ、
目や鼻、口など頬で圧迫され、ほぼ分からないだろう。
体勢的には立っている状態なのだが、あまりにも肥大化を重ねたお腹がプール底に到達しており、
脂肪が邪魔で先生は前方すら殆ど見ることはできないだろう。
完全な脂の塊ともいえる姿に耐えるために体中の骨格が太く、丈夫にとなっていく。
『……人体の神秘というべきか…… 奇跡というべきか』
もうすでに誰も使われることも無くなったプールに女子生徒は足を踏み入れた。
『……う、うわぁ〜〜〜』
男子生徒に呼ばれてきてみたはいいが、そこにあるものを見て女子生徒は引いた。
「みず…… もう、もう、いらないから…… ここから…… だして……」
プールに水の代わりに満たされている脂肪の中でかすかに先生の声が聞こえる。
『……あんた、どこまでやってんの』
『いや、機械が故障してな…… 水が止まらなくなってな……』
あまりにも……な状態に流石の男子生徒も先生を見上げながら唖然としている。
プールという型から膨れ上がったケーキのようになってしまっている先生。
プールサイドにあふれ出てしまった脂肪を突っつきながら女子生徒は苦笑いする。
『いや、あんたの力ならそのくらいの装置くらい直せるでしょ…… どうするのよこれ……』
この状況を表現するにはどうしたらいいのだろうと女子生徒は脳を活性化させる。
もうどこがお腹か、どこが足か、どこが背中なのか分からない姿。
腕だと思われるものには大きな穴が開いており、
たぶんその中に手が埋まってしまっているのだろう。
かすかに見える緑色の髪の毛からするとたぶんこちらを向いているのだろう。
でも、顔がどこなのか、目が、顎が、もうヒトとしての原型をとどめたパーツなど存在しない。
動くこともできず、このプールという型から出ることもできずにいる先生。
『まあ、たまには限界を超えてみてもいいかも〜〜 なんて思ってね』
男子生徒は悪びれもせずにそう答える。
『それに、どうせ、存在を忘れやすい人だし、このまま忘れさせたほうがいいかもな……』
そう言って指をはじく男子生徒。
『ああ、分かった』
『何が?』
『デンドロビウムね』
何か納得している風な様子でいる女子生徒に男子生徒はチョップをかました。
『マニアックな名前を出すな!!!』
先生
体重 測定不可能
スリーサイズ 測定不可能
存在抹消
『……でも、まだ水が止まってないんだよな……』
水分吸収能力…… 継続