魔王の愉悦と、王女の…

魔王の愉悦と、王女の…

前へ   3/14   次へ

 

 

(1)

 

「此処が…」

 

王都から馬車に乗り数時間。
王女達は、今…迷宮と化した洞窟の前に立っていた。
洞窟からは冷たい風が吹いており、一般人ならばそれだけで逃げ出してしまうような瘴気に満ちている。
最も、王女達にはほとんど影響が無い程度ではあるのだが。

 

「…セフィリア様、私が前を歩きます。
 パージャ殿とニーナ殿と一緒に、少し離れて付いてきてください。
 二人はセフィリア様をお願いします」
「判ったわ、任せといて。
 下賤な魔物くらい、一発で消し飛ばしてやるんだから!」
「…一緒に洞窟の天井も消し飛ばさないようにね。
 アンタと生き埋めなんて御免だわ」
「あら、ドロボウ風情が生意気な口を聞くのね?
 貴女から消し飛ばしても良いのよ?」
「出来るもんならやってみな、現実知らずのオコチャマめ」

 

洞窟に入り、先陣を切って歩きだすアーリアを余所に、行き成り喧嘩を始めるパージャとニーナ。
その声は当然アーリアにも届いており、アーリアは深くため息を吐くと後ろを振り返って…

 

「止めなさい、二人とも。
 私たち同士で争っても意味はありません」

 

…アーリアが注意する前に、セフィリアが二人を一喝する。
凛とした声は洞窟内に響き、心の弱いものならそれだけで膝まづく程の威厳に満ちていた。
二人は流石に膝まづきはしないものの、途端に口を閉じ、申し訳なさそうに視線を泳がせる。

 

「…悪かったよ、セフィリア様…以後、気を付ける」
「わ、私も…次からは気をつけます…」
「…此処は既に迷宮の中と言う事をお忘れなきよう。
 此処で姿を消した冒険者は数知れずいるのですから」

 

謝る二人に微笑みながら諭す王女。
そんな三人の様子に安心したのか、アーリアは再び洞窟の奥に向かって歩きだす。
そうして数分歩き、外も見えなくなると…突然、アーリアの前の視界が開けた。
周囲を探る様に見渡し、数匹屯って居た魔物を剣で薙ぎ払うと、アーリアは3人を呼ぶ。
そこは、洞窟の中に自然にできた大穴だった。
天井は塞がれてはいるものの、人工物である為、後から補修されたのが見てとれる。

 

「随分広い空間ですね…」
「気を付けて下さい、セフィリア様。
 何時何処で狙われているか、判った物ではないのですから」

 

丁度前衛後衛に分かれるように、大穴を歩く4人。
そして、丁度4人が真ん中まで来たあたりで…突然、入ってきた場所が音を立てて閉じた。
慌てて振り返るも、そこは既に巨大な岩でふさがれており。
魔法で吹き飛ばせば入口ごと吹き飛ばしてしまう為、今の4人にはどうにもする事が出来なかった。

 

「…典型的なトラップだねぇ。
 まあ、どの道ここ以外進む道はなかったんだが…それにしても、妙だ」
「何がよ、ドロボウ」

 

呆れたように呟いた後、考え込むニーナに、パージャが問いかける。
少し眉を潜めるも…文句を言っても仕方ないと、ニーナは口を開いた。

 

「気付かなかったのかい?
此処に来るまで…ううん、此処にさえ死体の一つすらない事に」
「…そう言えば、確かに」

 

3人が部屋を見渡すと成程、確かに骨は愚か布地さえ落ちていない、綺麗すぎる程に何も無かった。
既に帰ってこない冒険者達は3ケタを超えていた筈なのだから、遺留品の一つくらいはあってもいい筈なのに。
…そして、4人が異変に気付いたのと同時に、入ってきた場所とは正反対の場所の岩が動いた。
そこから現れたのは、丸々とした身体を高貴なドレスに包んだ、ふくよかな女性。
腕は閉じる事が出来ない程に丸々としていると言うのに、なぜかその姿は醜く無く、どこか気品さえ感じさせるほどだった。

 

「…ようこそ、私とゼブル様の居城へ。
 歓迎いたしますわ、冒険者の方々に…そして、セフィリア王女」

 

口を開くと、リーンは静かに、何処か優しげな声で4人に恭しく挨拶をして見せる。
パージャとアーリアは、その気品に思わず礼を返してしまった…が、
セフィリアとニーナは構えたまま動かない。

 

「歓迎、感謝します…貴女は、魔王ですか?それとも魔王の妻ですか?」
「私はゼブル様の…一応は妻で、リーンを申します。
 私自身は使用人と思っていますが、ゼブル様の意向を無視するわけにもいきませんので」

 

リーンのその言葉に、パージャとアーリアも臨戦態勢に入る。
…否、パージャに至っては魔法陣を展開し始めた。
それに気付いたセフィリアとニーナが、慌ててパージャを押しとどめようとする。

 

「この馬鹿、何する気だい!?」
「止めなさいパージャ、攻撃しては…」

 

「―――ヌクリア(核熱)」

 

しかし、パージャは二人の言葉を遮る様に、リーンに向かって魔術を放った。
放たれた呪文は熱量ですべてを破壊する最上級呪文。
通常なら数分は要する詠唱を僅か数秒に縮めた所は流石と言うべきだろう。
だが、しかし。

 

「…聊か礼儀がなっていないようですね。
 実力はあるようですが、女性たるもの、礼義は重要ですよ?」

 

眼前に広がる熱量の塊。
それに、リーンはそっとキスをすると…途端に、熱量の塊そのものが、リーンの口に吸いこまれるように消えていってしまった。
それと同時に、リーンの身体が仄かに光り…ミチミチと、体を左右に膨らませる。
一回り程度身体を膨らませると、リーンは上品に口元をぬぐって見せた。

 

「…嘘」
「中々良質の、美味しい魔力でした…
 今のをお返しする事も出来ますが、勿体ないので止めましょう。
 代わりと言ってはなんですが、良い物を食させて頂いたお礼です。
 貴女方にプレゼントをすると致しましょう」

 

呆けるようなパージャの声に、微笑みながらリーンはそう返すと…
途端に、リーンの身体から魔力が立ち上った。
まるで触手のような魔力の塊は大穴の天井まで立ち昇り…
そして、まるで蛇のように鎌首をもたげさせる。
先程のパージャのはなった物とは比較にならない程に巨大なそれに、4人は目を奪われるも…
次の瞬間、降り注いできた魔力の触手に素早く反応し、散開した。
そんな四人の様子に、リーンは苦笑して見せると入ってきた場所へと歩き始める。

 

「そんなに逃げないでも大丈夫ですよ?
 お礼と言ったでしょうに…貴女達に害がある訳じゃないんですから」

 

徐々に、暗闇へと解けていくリーンのシルエット。
しかしそれを追う余裕すらなく、4人は魔力の塊から身を翻す。

 

「…では、ゼブル様の元でお待ちしております。
 冒険者の方々もお待ちですから、なるべく早めにお願い致しますね?」

 

4人にそう告げるのと同時に、リーンは姿を消し…そして、同時に魔力の触手は4人を捕らえた。
まるで何時でも捉える事が出来たと言わんばかりの動きに、セフィリア達はリーンに遊ばれていたことを理解する。

 

「く…っ、この、私から離れろ…っ!!」
「嘘、こんなの…この私が、こんなのって…」
「ち…何なんだい、こりゃあ…」
「…皆さん、落ち着いて下さい。
 どうやら、本当に害がある訳ではないようです」

 

必死に逃れようとする3人に、セフィリアは落ち着いた様子でそう呟いた。
セフィリアの言葉に落ち着きを取り戻したのか、3人は落ち着いた様子で身体を見渡してみる。
…確かに身体に傷は一つもなく、それどころか身体に力が満ちてきているようにすら感じていた。

 

「何だ、これは…身体に力が満ちていく…?」
「…本当にお礼だったってのかい?何だってこんな事…」
「意図は読めませんが、慌てる必要は無さそうです。
 早く彼女を追いましょう、まだ遠くには行っていない筈です」
「…補助呪文?それにしたって、この量って…まさか…」

 

ほっとしたような表情を浮かべるセフィリア達とは対称的に、顔を青くするパージャ。

 

「ま、待って!セフィリア様、急いで対抗魔術を!!」
「どうしたのです、パージャ…そんなに、あわ、てて…っ?」

 

パージャの言葉に不思議そうに首を傾げるセフィリア。
…しかし、それと同時に自身に起きた異変に、漸く気がつき始めたのである。
その異変はセフィリアだけでは無く、アーリア、ニーナ…そしてパージャにまで、起き始めていた。

 

「ふ、服が急にきつく…一体これは…?」
「肥ってるんです!この魔術は身体に強引に魔力を与える魔術なんですよ!!
 早く対抗呪文を使わないと、私達…っ!!」
「ちょ…っ、さ、さっきの女みたいになるっての!?じょ、冗談じゃ…」
「う、ぐ…よ、鎧が…食い込んで…」

 

プクプクと、与えられた魔力の分、加速度的に膨らみ始めるセフィリア達。
服はパツンパツンに張り付き始めて、それだけでは無く顔にはプクプクとした肉がつき。
露出の多い服を着ていたニーナは、段腹が目立ち始めて。
アーリアに至っては、鎧の間から肉がはみ出し始めていて…
このままでは、鎧を弾き飛ばしてしまうのは時間の問題だった。

 

「あ…アンチマジック(対抗呪文)!!」

 

そこでようやく魔法陣の展開が終わったのか、セフィリアは呪文を解き放ち…
それと同時に、彼女達に纏わりついていた魔力は薄く、霧散していった。
…だが、既に彼女達の身体は此処に入る前とは変わり果ててしまっていたのである。

 

「く…こ、こんな屈辱…!!」
「…ガキンチョ…じゃない、パージャ、これを治す方法は…?」
「多分…魔力を使いきれば、元に戻ると思う…
 …その、多分最上級呪文10発分、くらい…」

 

動きには問題ない物の、女性としては決してなりたくはない姿になってしまった4人は、パージャの言葉にうなだれた。
特に、アーリアとニーナに至っては簡単な魔術しか行使できない為…
元に戻る為の苦労を考えて、更に深くため息をついたのである。

 

 

(PTステータス(全員女性です)

 

名前:セフィリア・ローラン
年齢:25歳
身長:156cm
体重:73kg
3サイズ:80・75・98
備考:魔術と僧術を使える王女。
どうやら魔王を倒す秘策を携えているようだが…?
因みに魔術局長を凌駕するほどの実力者。
今回の事には冷静さを保っている物の、凄まじいショックを受けている。

 

名前:アーリア・ケイロン
年齢:22歳
身長:180cm
体重:102kg
3サイズ:100・88・97
備考:騎士団でも有数の実力者である、長身の女性。
両手剣を片手で扱える程の腕力を持ち、その一撃は甲冑すらも両断する。
実は長身である事と怪力である事にコンプレックスを抱いており、
小柄で可愛い女性には憧れを抱いている。
肥えた影響で、鎧が身体に食い込み動きが制限されている。

 

名前:パージャ・リリン
年齢:15歳
身長:146cm
体重:67kg
3サイズ:78・84・80
備考:若い身でありながら、時期魔術局長との呼び名の高い天才魔術師。
その実力は既に魔術局最高と噂されるほどで、本人もそれを鼻にかけている節がある。
甘いものに目が無く、ポシェットにはチョココロネが常備されている。
いざとなれば魔法連打で元に戻る為、意外と楽観的。

 

名前:ニーナ・ヴァルナ
年齢:28歳
身長:167cm
体重:88kg
3サイズ:87・78・89
備考:外せない鍵は存在しないと言われている女盗賊。
短刀の扱いも卓越しており、一時期は暗殺者上がりと誤解されていた程。
気に入らない者には辛辣だが、王女は気に入っているらしい。
服の露出が多いため、段腹や弛んだ腕を晒してしまっている。

 

 

前へ   3/14   次へ


トップページ 肥満化SS Gallery(個別なし) Gallery(個別あり) Database