魔王の愉悦と、王女の…

魔王の愉悦と、王女の…

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3.パージャに課せられた試練
見敵必死の洞窟:

 

「…さて、と… ああ言っちゃったからには、さっさと脱出しないとね」

 

パージャはそう一人呟きながら、仄かに光の灯る洞窟を歩き始めた。
そこかしこから魔物の息使いが聞こえるが、それでもパージャは恐れる事なく、探索を始めていく。
並大抵の魔物なら一瞬で消し飛ばせる上に、リーンの魔術によって今のパージャは
いくらでも魔法が撃てる状態なのだ。
当然と言えば、当然だろう。
空中に魔力で地図を描きながら、パージャは迷路を書き記す様に歩き続ける。
…すると、唐突に物陰に光るものがあった。
赤く光るその目は、獲物を見つけた事による歓喜に満ちており…
物陰から、雄叫びをあげながらパージャに飛びかかって。

 

「ダーム(業炎)」

 

…パージャのその一言で、姿さえ見られる事もなく、魔物は消し炭になってしまった。
焦げたその姿をみれば、恐らくは犬面人型の魔物… コボルドだったのだろう。
パージャはそれに意も介する事もなく… しかし、小さな異変に首をかしげた。

 

「…おかしいな、何で体重が減らないんだろ… 態々上位呪文使ったのに…?」

 

そう、今のパージャは魔力さえ消費すれば、痩せる状況にある。
だがしかし、コボルドを焼き払う前と後で、体重に変動がなかったのだ。

 

「まあ… もうちょっと使ったら減るかな、うん」

 

しかしそれを意に介する事もなく、パージャは再び洞窟を練り歩き始める。
…が、焼けた臭いに誘われたのか、次第に獣の鳴き声が近くなり始めてきて。
パージャは再び魔法で焼き払おうとする、が… その瞬間、体に起きた異変に気が付いた。
ブチン、という音と共に服の脇の部分が裂けたのである。
そして、裂けたと同時にたぷん、と…裂けた場所から、肉がはみ出した。

 

「…嘘っ、何コレ!?」

 

一度裂けると服は次々に破れて行き、破れた個所から肉がはみ出していく。
…つまりは、更に太っているのだ。
慌てるパージャに迫るコボルドだが、パージャは慌てて呪文を放ち、
再びコボルドを消し炭に変える。
そして、コボルドが息絶えると同時に、パージャの身体が膨らむのは止まり…
お腹をたぷたぷと揺らしながらも、パージャは荒く息をついた。

 

「これ、まさか… 見つかっちゃ、ダメ…とか…? それとも、襲われたらダメ…?」

 

服からはみ出した肉をたぷたぷと揺らしながら、パージャは呟く。
しかし、そうこうしている間にも、パージャの元に次々とコボルドが集まっていた。
仲間の焼けた臭いは、犬面のコボルドにはすぐに届き、そして敵の存在を知らせる。
たとえ焼かずとも、その死臭が居場所を知らせてしまうだろう。
そのことを悟ったパージャは、急いでその場から離れようと、駆け出して…

 

…そして、勢いよく転んだ。

 

「あいた…っ、な、なんで… 身体が、上手く動かない…っ」

 

当然と言えば当然だろう。
如何に天才魔術師とは言えど、別に肉体的に特別優れている訳では無い。
そこに多量の肉を加えられたのだ、まともに走れるはずがなかった。
しかしパージャにはまだそれを理解できず…
そして、再びコボルド達が、パージャの元に集まった。
今度は5体。そして、彼等の視界にパージャが映った瞬間…
パージャの身体は、見る見る内に膨らみ始めたのである。

 

「い、いや…っ、ダーム、ダームッ!!」

 

ブクブクと、腹肉は前に張り出し、それだけではなく手足もみるみる内に太くなり、
だらしなくたぷたぷと波打って。顔にもあっという間に肉が付き、可愛らしかった顔は丸く、
顎はあっという間になくなり、首も肉に埋もれ。
必死になってコボルドを焼き払う物の、その度に現れるコボルドに太る速度は衰える事もなく。
地面に付いた足は次第に横に広がり、膨らんだ尻肉は座布団のように潰れ。
身体は収まる事なく膨らんで、足を閉じることさえできなくなり、服は最早ただの布切れと化して。
まるでぬいぐるみのように床に鎮座するその姿は、基の姿とはかけ離れた物になっていく。

 

…そうして、ようやく洞窟内のコボルドを全滅させた頃には… 手足を横に広げ、立ち上がる事も、自分では動くことさえままならない肥満体を晒したパージャがそこに居た。

 

「ん、ぁ… あ、ぁぁ… ひど、ぃ… ひどい、よぉ… こんな、の…」

 

自分の変わり果てた姿に涙を零し… 本来よりも若干太くなった声で泣くパージャ。
如何に天才と言えど、まだ子供であるパージャには、この現実は余りに残酷で、そして悲惨だった。
この姿では最早普通に歩く事も、日常生活を送ることさえ困難だろう。
…パージャで、無ければ。

 

「…ひっく… 戻ったら… 痩せ薬を、作って… 直ぐに、痩せてやるんだからぁ…っ」

 

ボロボロと涙を流しながら、パージャは呪文を放つと…
その巨体とも言える身体をフワリと浮かせ、体にローブを纏わせた。
そして、泣きべそをかきながら洞窟の出口を探し始めたのである。

 

 

(ステータス変化)
名前:パージャ・リリン
年齢:15歳
身長:146cm
体重:205kg
3サイズ:120・150・130
備考:若い身でありながら、時期魔術局長との呼び名の高い天才魔術師。
その実力は既に魔術局最高と噂されるほどで、本人もそれを鼻にかけている節がある。
魔術を使わなければ何も出来ない程に肥満化してしまった。
最早両足で自重を支える事も出来ないため、魔術で空中に浮かんで移動する。
本人はまだ元に戻るのを諦めてはいない模様。

 

 

4.ニーナに課せられた試練
百鍵の立方体:

 

「…さて、セフィリア様にはああ言った物の… どうするかねぇ?」

 

ニーナが送られた場所は、所謂迷宮とは程遠い、正方形の小部屋だった。
ジャンプすれば天井にも届くし、端から端までは2mと少ししかない。
そして、ニーナの目の前には… とてもシンプルな、錠があったのである。
一見すれば何の変哲もない錠だが、その横には大量の鍵が入った鍵束があり。
錠に刻まれた文字を見れば… そこには、こう刻まれていたのである。

 

『この部屋にある100のカギの内の一つが正解である』
「…これはまあ、多分… そのまんまなんだろうねぇ…」

 

錠に刻まれた文字を前に、胡坐をかいて頭を掻くニーナ。
彼女はこういった錠のやっかいさを、仕事柄良く知っていた。
眼の前にあるのは、恐らくは魔法の錠前。
正解の鍵以外では決して解く事は出来ず、それどころか何らかの魔法さえ発動してしまう、
恐ろしいマジックアイテム… の、筈だ。
100個の鍵を一つずつ試していたら、間違いなく自分が滅茶苦茶な事になってしまうだろう。
…それこそ、人間でさえなくなってしまうかもしれない。
それだけは御免だ、とニーナは背筋を震わせて、改めて鍵束を睨んだ。
ニーナはこれでも一流を自負している盗賊だ。
いざとなれば、鍛えられた勘がある。
今までも、それを頼りに生きてきたのだ… 今回も、それで乗り切るしかない。

 

「…おかしいね、どれも… 正解にゃみえないが…
 確率の高そうなのは、これとこれ、後これか…?」

 

…しかし、そのニーナの勘も今回は冴えないのか、
結局束の中から3本の鍵を選び取るまでしか行かなかった。
どれも似たような鍵だが、ニーナにとってはどれも別物に見えるらしい。

 

「兎も角、試してみないと始まらない、か… 全く、緊張するなんて何時振りかねぇ…っと」

 

そう言いながら、無造作に鍵を一本選ぶと、ニーナは錠前に鍵を差し込む。
…此処までは問題なし。
先ず鍵が合わない物を選んでしまったら、その時点で罠が発動する為、此処までは予定調和である。
ふう、と小さく息をつき… ニーナは、今度は慎重に… 割れものを扱うように、鍵を回し始めた。
その瞬間、カチリ、という音が鳴り… 錠前から溢れだした光が、ニーナを包み込んでいく。

 

「くっ、失敗か… くそ… 一体、どんな…っ!?」

 

ニーナが苦々しく呟いた瞬間、ニーナは自分の変化に目を見開いた。
身体が膨らみ、パツンパツンだった筈の服が、次第に緩くなり…
否、自分の身体が、服にうずもれる様に、小さくなり始めたのである。

 

「な、何だいこれは…っ、う、あ…っ!」

 

手足も身体に応じて短く、プクプクとしたものに変わり。
身体は縮んだものの、段腹なのは変わる事はなく…
しかし、乳房は尻は萎み、まるで子供のそれのようになっていって。
身体の変化が止まると、今度は服が変化を始めて…
まるで、子供向けのアニメのような、フリフリとしたピンクの服に変わり、
ニーナの身体を包み込んだのである。変化が終わるころには、
そこにはピンクの可愛らしい服に身を包んだ、ぽっちゃりとした子供がそこに居た。

 

「…く…っ、こ、こんなかっこう…っ! それに、この、こえ…
 わかがえっちまったってのかい…?」

 

羞恥に耳まで赤くしながら、子供の可愛らしい声で苦々しく呟くパージャ。
その姿は、どこから見ても盗賊では無く…何処にでもいるような、ぽっちゃりとした子供だった。
しかし羞恥に赤らめていた顔も、すぐに元の表情に戻ると、今度はもう一つの鍵を手に取り、
もう一度鍵穴に通して。

 

「ためらったってしかたないんだ… いっきに、やるしか…!」

 

自分で自分を鼓舞するようにそう言うと、勢いよく回し… そして、再び… 今度は、錠前から、
リーンが繰り出したような触手が伸びると、ニーナの口を目がけて飛び込んできた。
余りにも突然の事に、ニーナは抵抗する事も叶わずに… 口の中に、喉の奥に、
体の中に入り込んでくる触手を受け入れてしまう。

 

「むぐぅっ!? んぐっ、んううぅぅ…っ!!」

 

触手が潜り込む度に、ニーナの身体はプクプクと膨らんでいく。
手足にも、まるで球体関節が出来るかのように肉がたっぷりとつき、
腹に至っては座ったら床につくのではないかという程で。
フリフリの服をパツンパツンにさせているその姿は、最早滑稽とさえいえるほどであり。
服を破くか破かないかのギリギリまで身体が膨らむと、
ようやく触手はツルン、とニーナの身体の中にもぐりこみ…そして、膨らむのが止まった。

 

「んぶ…っ、ぁ… く、くそ… ったれ… ぜったい、あのまおー… ぶっとばして、やる…っ!!」

 

最早自分の事などお構いなしなのか、最後に残った鍵を手に取り、
そして錠前に挿すと、無造作に回す。
きっともう解けるはず、と油断していたのだろうが… しかし、現実は違った。
再び錠前から光が溢れだし…そして、ニーナの身体を包み込んだのである。

 

「え… そ、そんなばかな、もうかぎは…っ!?」

 

ニーナのそんな言葉もむなしく、ニーナの身体が再び縮み始める。
今度は子供から幼児へ… しかし、体重は変わる事はなく。
ぶくぶくと、縦に縮んだ分は横にはみ出し、フリフリの服はあっという間に破れてしまい。
ニーナは裸同然の姿になりながら…
手足も縮んだ、ぶくぶくと膨らんだ肥満児になってしまったのである。
それだけではない、破れたフリフリの服は、今度はニーナの身体に纏わりついたかと思うと、
幼児が着るような子供っぽいデザインの服に代わり… そして、更には幼児にしては巨大な尻を、
大きく動物のプリントがされたオムツで包み込んだのである。

 

「あ… あ、ぁ…っ、そんな… そんな、だってもうかぎなんて、ないのにぃ…っ!?」

 

自分のミスで、更に自分が変化してしまった事にショックを受けたのか、ニーナは茫然自失として… そして、ある事に気が付いた。
…本当に、この鍵の束は100本あったのか、という事。

 

「ま、まさか…そんな、事…」

 

そんな事がある筈がない、と…服が変わっても、なぜか手元にある細い棒が幾つも繋がったような…長年使ってきた、ピッキングツールを錠前に差し込む。
そして… 錠前は、呆気なく外れると、床に落ちた。

 

「は…はは、は…うそ、だぁ…こん、な…」

 

余りにも単純で、そして明快な答えに… ニーナは、その場に崩れ落ちる。
たぷん、と揺れる身体に小さく声を漏らしながら、茫然自失となって笑い始めた。
要は、初めから自分の勘は当たっていたのである。
あの鍵のなかに正解など一つもなく、残った『自分の鍵』が正解。
自分の勘に従ってさえいなければ、こんな無様な姿にならなかったのだ、と思うと、
ニーナの目から大粒の涙が零れていく。

 

「…っ、ないてる、ばあいじゃないだろ、わたし… しっかりしろ…っ、
 さいかいするって、やくそくしたじゃ、ないか…」

 

ボロボロ泣きながら、ニーナはそう言うと、空いた扉から外へ出て…
無様な姿を晒す事を恐れる事なく、一歩ずつ、歩き始めた。

 

 

(ステータス変化)

 

名前:ニーナ・ヴァルナ
年齢:6歳
身長:87cm
体重:118kg
3サイズ:98・130・113
備考:外せない鍵は存在しないと言われている女盗賊。
錠前の効果によって、幼児になってしまう。
錠前を解く実力は変わっていない物の、戦闘力は皆無。
スモックとオムツに身を包んだその姿は、最早誰も彼女だと解らないだろう… 3人以外は。

 

 

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