334氏その2

334氏その2

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私達は風紀委員室を出た後、繁華街に向かった。
那須原さんは肩に竹刀袋をかけている。
犯人と出会った時の護身用だそうだ。

 

学校から15分ほど歩くと、この町で一番栄えているところに出る。
平日の夕方、スーツを着たOLや買い物をしている主婦、学校帰りの学生などでにぎやかだった。
しかし…
「な、なあ、小尾里。さっきから痩せた女性に一人も出会わないんだが…。」
むちむち程度の女性から100kgを超えているであろう巨漢まで、
全ての女性が太目の体形だった。
ズシズシと歩く女性陣の間を、サラリーマンのお父さんや男性が狭苦しそうに歩いている。
「どうやら犯人が大活躍しているみたいね。」
その光景を見て、私は呆れたように言う。
「そのようだな。早く犯人のアジトを見つけないと、とんでもないことになりそうだ。」
私達は町の人たちに聞き込みを開始した。

 

数時間にわたる聞き込みの末、私達は犯人のアジトの目星を付けた。
路地裏の汚い雑居ビルだ。
すでに日は暮れており、辺りには誰もいない。
街灯が心細げにちらついているだけである。
階段を登って、とある部屋のドアの前に立った。
「どうやら、ここが奴の本拠地らしいな。」
「どうする?先生に報告する?」
「いや・・・」那須原さんは手を顎に当てて少し考え込んだ。
「ここが本当にアジトなのか確証がほしい。中に入って証拠を見つけよう。」
そういって彼女はヘアピンを取り出し、ドアのカギをピッキングした。
ガチャリと音がして扉が開いた。

 

シーン
部屋には電気がついておらず、人がいる気配はない。
窓から入ってくるネオンの光で、うっすらと中の様子が分かる程度だ。
私達は極力足音を立てないように部屋の中に入った。
「(誰もいないようだな。)」
辺りを見回しながら、那須原さんがささやいた。

 

と、その時。
「誰ダ。そこにいる奴ハ!」
ざらざらとした声が聞こえたかと思うと、闇の中から何かが近づいてくる気配があった。
「しまった!奴がいたか!」
近くにいた那須原さんが竹刀を取り出して暗闇に向かっていった。
幾度か剣戟がぶつかる音がする。
しかし、それも長くは続かず、
バキッという打撃音が聞こえたかと思うと、ドサリと何かが崩れる音がした。
「フン、デブにしてハ、なかなかキレのある動きだったナ。」
闇の中の声は尊大に言った。
「だ、誰なの…?」
私はおびえた声で闇に問いかけた。
「おやおヤ、お前はいつぞやの小娘。
『豚の呪い』をかけられたにも関わらず、懲りずにまた来たナ。」
そう言って部屋の明かりがついた。
目に飛び込んできたのは、ぐったりと倒れこんでいる那須原さんと黒のスーツを着た女。

頭には角が、お尻にはしっぽが生えている。
「久しぶりだナ。小尾里。」
女は私に向けて手を伸ばした。

 

次の瞬間、私の頭の中に鮮烈な記憶が流れ込んできた。
痩せていて人気者だった私。
街で声をかけてきた中年男。
白い錠剤。
デブになった私と雑居ビルの一室。
そして、リリスと名乗った悪魔。
「あ…あんた、リリス…」
私は全てを思い出し、とぎれとぎれにつぶやいた。
「くはハ、全部思い出したカ。
ここ数か月間、お前の絶望と泥水か腐ったような精神の腐敗、まことに美味だったゾ。」
そう言って、リリスは空中から姿見を取り出し、私の目の前においた。

 

姿見に写っていたのはぶよぶよに太った私の体。
顔の中央にちょこんと座った豚の鼻。
頬は見る影もなくぶくぶくに膨れ上がり、顎には3重、4重の脂肪の層ができている。
そのせいで、首はなくなっており、マフラーのようになった顎の肉が肩に乗っかっている。
バストは餅のようにだらしなく膨らんで、どぷん、と腹の上に突き出ていて。
腹肉は辞書くらいの厚さの段が何重にも積み重なって服からはみだし、
局部を隠すほどに垂れていて。
太ももは痩せている女性の胴周りの2倍はあろうかというくらい肥大して。
柔らかそうな肉が全身にたっぷりとついたその姿は、
スライムの化け物のようなシルエットを形づくっていた。

 

「あ…、違う…私の体、こんなじゃない…違う!」
違う、違うと自分に言い聞かせるようにつぶやく私をリリスが責め立てる。
「いいヤ、違わないネ。それが今のお前の醜い豚の姿ダ。
私の呪いにかかっていたとはいエ、暴飲暴食を繰り返しタ。
助けてくれたそこの娘も内心軽蔑していたダロ。そんなお前には豚の姿がお似合いダ。」
そう言ってリリスは再度私に向かって手をかざすと、
私の手が勝手に局部を触り、自慰行為を始める。
「うっ…いやあん…くはぁ」
快楽を感じ始めると腰も自然に動き出した。
だぷん、ぶるんと腹肉が揺れる。
姿見を通じて見えてしまったその姿は、サカリを迎えた家畜そのものの姿だった。

 

「あん…元の、いゃ‥‥姿に、んはぁん…戻し、て…んっ」
喘ぎながら懇願する私の姿を眺めていたリリスは、
飽きてしまったかのような表情で次の提案をした。
「ふーン…よし分かっタ。お前からは十分堕落の魔力を手に入れることができたシ、
元に戻してやろウ。」
リリスが指を鳴らすと私の体の動きが止まった。
「はぁ、はぁ、本当、はぁ、に?」
「ただし…」
リリスは倒れている那須原さんを指差しながら、とびっきりの底意地の悪い笑顔をした。
「そこの娘がお前の運命を肩代わりするのならナ。」
「え!?」

 

リリスは那須原さんの所に寄っていって、彼女を蘇生させた。
「うん…何事だ…?」
意識が戻った彼女の顎をつかみながら、リリスは話を続ける。
「つまリ、お前が痩せるのと引き換え二、この娘が太リ、醜くなリ、
周囲を恨みながら生きていくことになるのダ。」
その言葉を聞き、那須原さんの顔が引きつった。
「それは…。」
私は考え込んでしまった。
この機会を逃してしまっては元に戻るチャンスなど一生ないだろう。
つまり、一生デブスなままでいるということだ。
私は再度那須原さんの方を見た。
「嫌だ…嫌だ…デブになんてなりたくない…頼む。」
震えながら涙目で懇願する彼女。
その姿にかつての自分を見た。
今のままの姿でいるということは、周りの人間からいじめられ続けるということだ。
責められ、殴られ、嬲られる。

そんなことは二度と味わいたくなかった。

 

偽善者。
心の中でそうつぶやいてから、言葉を発した。
「決めたわ。私を……元の姿に戻してちょうだい。」
那須原が目を見開く。
「友を裏切り自己保身に走る道を選んだカ。なかなかの屑になってきたじゃないカ。」
「ご託はいいわ。早く戻してちょうだい。」
「ククク、分かっタ。」
リリスは私を指差して呪文を唱えた。緑の光が私を包んだ。

 

すると、私の体が痩せ始めた。
脂肪で覆われていた顔を小さくなり、輪郭が見えてきて。
顎に付いた肉はするすると消えていき。
だらりと垂れていたおっぱいは、縮みながらハリを取り戻して。
ぶよぶよと何重にも積み重なった腹肉は、薄くなっていくと同時に一段、
また一段と無くなっていって。
太ももも見る見るうちに細くなっていき。

 

肉圧でパンパンだった特注サイズの服は、痩せたことで支えがなくなって、バサリと床に落ちた。
しばらくして体の変化は終わり、姿見に写っていたのは元の美しい私。
鼻はもう豚鼻ではなくなり、すらりとした鼻筋が通った美人。
すっきりとした輪郭とうなじの線が色気を誘う。
おっぱいは、スイカ並みの大きさだがハリを保って胸に付いており、
その下には砂時計型にくびれた良く締ったウエスト。
お尻にはほどよく肉がついており、手足はすらりと長い。
「やった!」
私は歓喜の声を上げた。

 

「さテ、次はお前の番だナ。」
リリスは那須原に向き直った。
絶望と恐怖が入り混じった顔でガタガタと震えている彼女。
その顔に口づけをしようとリリスは唇を近づける。
那須原は抵抗しようとしたが、リリスの魔力で体を動かすことができなかった。
「くちゅ、…っ」
唇と唇が重なり合ったかと思うと、那須原の変化はすぐに起きた。

 

真ん丸の顔が脂肪で膨れ上がって行く。
太ってもなお控えめだった胸は申し訳程度に大きくなっていくだけだったが、
お腹やお尻には容赦なく贅肉がついていった。
ぽっちゃりとしながらも形を保っていたお腹には肉の段ができ始めている。
床に、ぽてんと広がっていたお尻は、横に拡大していくと同時に厚さも増していく。

 

変化は肥満化だけではなかった。
年齢の割に身長が高かった那須原の背丈が縮んでいく。
手足も太くなっていく胴体に吸収されるように短くなっている。
「私の手が…足がぁぁ…」
彼女は抵抗しようとしたが、バタバタと手足を振り回すだけしかできなかった。
しゅるしゅると縮んでいく様はまるで見えない誰かに押しつぶされていくようだ。

 

それでもなお、肥大化は止まらない。
首はほとんどなくなって、肉の輪っかが肩まわりにできている。
お腹はでっぷりと膨らんで床についてしまっている。
お尻は縦横とも以前の3倍以上の大きさで、那須原が手足を振り回すのに合わせてゆるゆると動く。
「ひっ、ひぃぃぃ!」
彼女は涙をこぼしながら叫んだ。
その様子を見ていたリリスが冷酷にほほ笑む。
「いイ!いい絶望と恐怖ダ。おかげで魔力がどんどん溜まル。もっとダ、もっと絶望が欲しイ…」
そう呟きながら肥大していく那須原の顔に手をやって肉をこねはじめた。
目じりを下げた後、鼻の頭を思いっきり上に引っ張り、鼻の穴を広げる。
「ははハ、滑稽な顔になったじゃないカ!」
リリスは愉快気に言い放つと、今度は那須原の下半身に手を伸ばした。
すでに巨大な肉の塊となっていた腹肉の下に手をやり、しごき始めた。
「あ、うん…いやぁぁぁん!」
那須原は快楽の声をあげたが、その声はくぐもっていた。
「ほらほラ、もっといい声を上げロ!」

さらに強くリリスが責め立てると、那須原はよだれを垂らしながら痙攣する。
「ん、あっ、んはぁっぁぁぁ!ぶ、ぶひぃぃ…んっ!」
トドのような声で思いっきり叫んだかと思うと、那須原は絶頂した。
股の間から粘り気のある液体が染み出した。

 

「うン、なかなか『美味い』堕落だっタ。」
リリスが満足げに那須原から去っていく。
後に残されたのは茫然と変わり果てた自分の姿を見下ろす彼女だけだった。
絶望が張り付いた目は目じりが下がっており、どこかおっとりとしていて。
だが、鼻は正面を向いた豚の鼻。
その顔は以前のような頼もしさは感じられず、奇妙なかわいらしさを感じされる。
体は下半身に行くほど醜くぶよぶよとした贅肉が張り付いていてまるで鏡餅のよう。
また、身長は小学生にも劣るくらい低くなっており。
力なく降ろした手は膨れ上がった太ももにも届いていなかった。
そこには、まごうことなきチビデブがちょこんと座っていた。

 

「う、うしょだ。こんなの…わたちの体がぁ…」
頬の肉で舌が上手く回らないのか、那須原は舌足らずな口調でつぶやいた。
そんな彼女に私は歩み寄って言ってやった。
「ざまぁないわね。那須原さん?」
「どうちて…仲間だと思ってたのに…」
「仲間?仲間ですって?私が太ってた時はさんざん心の中で軽蔑していたくせに!」
「しょ、しょんなことはない!わたちはただ、キミの力になりたくて…」
「ふん、何だって言えるわヨ!」
私は弁明する那須原を小突き倒した。
彼女はころんと仰向けに倒れた。
必死で起き上がろうとしていたが、短い手は床に届かずバタバタと虚空をつかむだけだった。
その姿が何とも滑稽で私は思いっきり笑っタ。

 

「その辺にしておケ。さすがの私も引ク。」
一部始終を見ていたリリスが私に話しかけた。
「それよりも服を着たらどうダ。」
そう言えば、事態に夢中になっていて自分が裸だということを忘れていた。
リリスが空中から取り出した制服(今の私にサイズがぴったりだ)を着ながら、リリスに尋ねた。
「ねえ、リリス。『豚の呪い』を使える力、私に貸してくれない?」
「まア、お前からは十分魔力を集められたシ、言い方はおかしいが世話になったからナ。
少しだけならいいガ、何に使うんダ?」
「ふふ、ちょっとね。あなたに新しい魔力の源を提供してあげるわぁ。」
不可解な顔をするリリス。
私の頭には憎らしい金髪が浮かんでいタ。

 

 

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