334氏その8

334氏その8

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コン太の店を飛び出した私はただひたすら走り続けた。
「こんなの嘘よぅ、こんな……こんな大デブに私がぁ!」
一歩一歩踏み出すごとに体が膨らみ、体中から汗が吹き出し、足取りは重くなる。
「私……私、こんな、豚に……んごっ!」
石に躓き、前のめりにつんのめった。
バルーン大に膨れた腹のおかげで痛くはなかったが、私の足や胸、腹はすごい速さで肥大していく。
「な、なによ……これ、こんな……ブヒッ!? ブモッ、ンゴッ!?』
口から出た叫びは濁った豚の鳴声になって――
顔に手を当ててみると、顔の中央には立派な豚の鼻がついていた。
『ンゴッ……ブヒィ!?』
嫌だ! 嫌だ! 私、このまま豚になっちゃうの!?
膨れていく体に四苦八苦していると女の声が聞こえた。

 

「おやおヤ、久し振りに魔界から神界に遊びに来てみたラ、
『魔神堕ち』しかけている人間がいるじゃないカ」
私の顎に細くて茶色の手が差し伸べられる。
次の瞬間、私の体の膨張が止まった。
『ンゴッ……あ、ちゃんと喋れるようになった!」
目を上げると、痩せたお姉さんが私を見下ろしていた。
肌の色は日焼けしたように小麦色で、ビキニのような衣装を身にまとっている。
「た、助けてくれてありがとうございます! 本当になんとお礼を言って良いか」
「まったク、迂闊な娘だナ。おそらく神界の食べ物でも食べたのだろウ。
ここの食べ物を食べると人間は魔神になってしまうからナ」
「魔神? ……って何?」
「魔神とは神の成りそこないだナ。お前の場合、食欲が肥大して豚の魔神になりかけていタ。
大方、どこかの店でドカ食いでもしていたんだろウ?」
にやけた笑みを浮かべる女の鋭い問いかけに私は俯いて黙り込むしかなかった。
その通りなのだから恥ずかしい限りである。
「まア、完全に魔神に成り果ててしまう前にこの私――

魔王リリス様に見つけてもらったのは幸運だったナ。感謝するがいイ」
ふんぞり返るリリスに私はぺこりとお辞儀をした。
大きくなりすぎたお腹が邪魔で、リリスから見れば前傾姿勢をとっただけに
見えたのかもしれないけれど。
「ふーム、しかし未然に防いだとはいエ、幾分か魔神化はすすんでしまったようダ。
今のお前は人間と豚の魔神のハーフというところだナ」
リリスは私の豚鼻を指でなぞった。
「んがっ……あの、くすぐったいです……。 
それより、完全に人間に戻ることはできないんですか?」
「まア――私の力ならお前を人間に戻せなくもないガ……私も魔王だから何か対価が必要だなァ」
嗜虐的にほほ笑むリリス。
「対価って何よ? 私の魂でも要求するつもり?」
「いいヤ、そこまでのものを要求するつもりはないサ。
たダ、見返りに私のために少し働いてもらおうカ」
「何をすればいいの?」
「私の力を強化するためニ、人間共の絶望を集めてくるのダ。

半豚魔神となった際にお前に身に付いた能力を持ってすれば簡単なことだろウ?」
きょとんと首(というか体全体)を傾げる私をリリスは指差した。
「豚魔神の能力は『食欲を操る程度の能力』。
つまリ、お前は人の食欲を自由に操作することができル」
「そ……そんな能力が私にあるの!?」
「そうダ。その能力を使っテ、ある人間達を堕落させ絶望のエネルギーを集めてもらおウ。
それがお前を人間に戻すための条件ダ!」

 

真琴

 

小宮真琴
175cm 182kg
B:132 W:160 H:149
備考:半豚魔神化したことにより他人の食欲を操ることができる。
能力を応用することによりある程度なら相手の精神も変容させることも可能。
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