令嬢・九条麗奈の献身 第六章・下
第6章下:レストランで花は咲く (3)
食事を口に運ぶ、ご飯をかきこむ、炭酸を飲む、そしてゲップをする――ただそれだけを繰り返します。汗だくになりながら口まわりを汚して食べるのは、決して望田さまに見せるためではありません。罪悪感に押しつぶされそうなこの時間を少しでも早く終わらせたいという一心で、早食いせざるをえなかったからです。
(皆さま、大変申し訳ございません……。でも私は急いでこの品々を完食しなければならないのです。はしたないのはわかっております。公衆の面前でこんな食べ方、本当はいけませんわ。でも手を止めてしまっては、もっと迷惑をかけてしまうのです……すみませんっ……。)
込み上げる罪悪感に押しつぶされないよう、私は心の中で謝罪し続けます。
しかその謝罪とは裏腹に、私が早食いをすればするだけ周囲に不快音を撒き散らしてしまいます。
モグモグ、クチャクチャ、カチャカチャ、ゴクゴク……ぐぇっぷ
(あぁ、また下品なゲップが出てしまいました! 本当に申し訳ございません! 下品で、不愉快で、お見苦しいですわよね……。どうかご自由にこの九条麗奈を罵って下さいませ。後でいくらでも謝罪は致します。だから今だけは、この九条麗奈が下品に振舞うことをお許しくださいませ……)
驚異的な速度で私は残りの料理を食べ進めていきました。5分も経たないうちに大皿に盛られたエビフライの皿が空となり、残りはオムライスとポテトだけです。しかし下品に早食いし続けた代償として、私の心の中で罪悪感と背徳感が加速度的に膨れ上がっていきました。
モグモグ、クチャクチャ、カチャカチャ、ゴクゴク……げぇぇぇっっぷ
(すみません、すみません、すみません!! 人目をはばからず何度もゲップしてしまい、大変に申し訳ございません……! ああ皆さま、もっと罵って下さいな。はしたない九条麗奈、下品な九条麗奈… …そんな私には罰を与えなければならないのです。)
そして膨張した罪悪感が引き金となり、私の中で『あの感覚』が再び湧き上がってきたのです。胸中で繰り返していたはずの謝罪が、自分への軽蔑や罵倒へと置き換わっていきます――
(ぐぇぇぇぷっ! なんと下品でしょうか……品性の欠片もございませんわ! 九条家に生まれながらこんな下品ではしたない真似、一体どうやったら出来るのでしょうか。お願いです皆さま、どうぞ私を罵って下さいませ♥)
もはや謝罪の言葉も忘れ、私は自分を罵り続けていました。
(聞いてくださいませ! 見て下さいませ! 私のとっても下品な姿……はしたない私をもっと罵って下さいな♥ 私に罰を……下品な豚には罰を与えないといけないのですっっ♥!)
*****
い、一体私は何を考えているのです……!? こんなはしたない姿を人前に晒しているのに……もしかして私は今『ドキドキ』しているのですか? そ、そんな訳ありませんわ……! 望田さまに言われて仕方なく下品に振舞っているのです……。
『俺、麗奈さんはてっきりマゾッ気があるのかと思ってたんだけど……』
わ、私がマゾだなんてそんな訳……でも……この胸のドキドキは何なのです?
「モグモグ……ゴクゴク……げぇっぷ」
いやぁぁ、また恥ずかしいゲップが出てしまいました……。きっとまたおばさま方にご迷惑をかけてしまいます。先程のウェイターの方も、もしかしたらもっと遠くの席まで――この醜い姿を晒してしまっているのかもしれませんわ……。そうしたら……もっと罵られてしまいます。これ以上恥を晒してしまっては……どうなってしまうのでしょうか……? いけませんわ……九条家の娘がそのような情けない真似をしては駄目なのに……駄目なのに……
この胸のドキドキは何なのですか?
『どうして自分の本当の欲求を否定するの? ……正直になろう、ね?』
そ、そうです……望田さま……。
私……本当は今……とってもドキドキしております……♥
いえ、初めからずっとドキドキしていたのですわ……! すみません、望田さま。私嘘をついておりました。初めて自分の中で見つけた時も、貴方に詰め寄られた時も、そして今も――私はずっと見て見ぬふりをしていたのです……この『興奮』を♥!
醜く太った私の身体♥ 豚のような下品な振舞い♥♥ そしてこの湧き上がるマゾヒズム♥♥♥
駄目です……もう理性なんかじゃ止められませんわ♥
「モグモグ……ゴクゴク……ぐぇぇぇぇっぷ♥!!」
あぁぁん♥ またお下品なゲップが出てしまいましたわ♥♥♥ どうしてかしら♥ ただ豚みたいに食べているだけなのに、どうしてこんなにドキドキするのでしょう♥ 私が私じゃないみたいです♥
いいえ、違いましたわ♥
これが本当の私なのです……♥♥♥!
*****
私の中で決定的な何かが壊れました――いえ、解き放たれたのです。
理性によって閉じ込められていた私のマゾヒズムは、最も歪んだ形で開花しました。
(皆さま、本当にごめんなさいぃぃ♥ 本当の私は九条の名を借りた変態のマゾなのです♥ しかもこんな醜いデブの身体♥ 好き放題ゲップもして♥ 恥知らずにも程がありますわよね♥ ですがこれが私の本当の姿なのです♥♥ 変態ドMの私にお似合いな……下品な豚としての第二の人生です♥♥)
ブクブクと太った身体が愛おしく、豚のような下品な振舞いが心地よく、周りからの嘲笑が性的快楽に感じてしまう――もはや私、九条麗奈はただの変態へと成り下がっておりました。
(ゲップ致します♥ お口まわり汚してがっついて食べちゃいます♥ マナーなんて知りませんわ♥ 皆さん、好きなだけ私をご覧になって♥ 哀れな豚さんを散々罵って下さいな♥ ああぁぁん♥ もっともっと見下してくださいな♥ 豚のくせに上流階級に生まれてしまった♥ みじめな私を憐れんだ目で蔑んで下さいませ♥♥ もはや九条という名前も関係ありませんわ♥ 汚らしいデブとして♥ ただの醜い豚として♥ いつでも皆さまに罵って頂けるよう、生まれ変わったのです♥ 望田さまが与えて下さった第二の人生……下品で醜い新しい私♥♥ なんて最高のプレゼントなのでしょうか♥♥♥)
モグモグ、クチャクチャ、カチャカチャ、ゴクゴク……
(あぁ……望田さま♥♥♥ 感謝してもし尽くせませんわ♥ 愛する彼の為に……お礼をしなくては♥ そうです……感謝の印として私自身を捧げて頂きます♥ 今日から私は貴方の恋人ではありません♥ 雌豚……そう『雌豚奴隷』で結構でございます♥♥♥ 下品で変態の雌豚奴隷として……精一杯ご奉仕させて頂きますわよ♥ 想像するだけで……とってもドキドキ致します♥♥♥)
モグモグ、クチャクチャ、カチャカチャ、ゴクゴク……
(ですからもっと激しく……ガツガツ♥ 下品に食べなくては……モグモグ♥♥ 貴方に喜んで頂けるように……パックン♥ せっかくですから不快な咀嚼音を出して……クチャクチャ♥ お口も脂で一杯汚しましょうか……ベチャン♥ 精一杯……カチャカチャ……醜いお化粧をして……ングング♥ 炭酸でゲップを充填しましょう……ゴクゴク♥ 愛おしいゲップ……ゴクンッ♥♥ すごいのが出ちゃいますぅぅ……♥♥♥)
ぐぇぇぇぇぇぇぇぇ〜〜〜〜っっぷ♥♥♥!!!!
今日一番となる爆音のゲップが私の口から発せられます。もはや恥ずかしいという感情など、浮かぶはずもありません。なぜならソレは、私から彼への精一杯の献身なのですから――
(望田さま……愛しております♥ ですからもっと、下品な私の姿にドキドキして下さいませ♥♥♥)
*****
私たちのショータイムもとうとう終わりの時を迎えます。
最後に皿に残った2・3切れのフライドポテトーーそれを油でベトベトの手で摘まみパクりと一口。そして名残惜しむかのように、わざと指に付いた油と塩の味をちゅぱちゅぱと堪能します。
グラスに残ったコーラを飲み干すと、豪快な音を立てて最後のゲップを鳴らしました。
ぐぇぇぇっっぷ!!
「御馳走様でした♥ はぁ……終わってしまいましたわね。」
「ほ、本当に最後までやってくれて、ありがとう……。まさかこんなにも下品に食べてくれるなんて、思っても……みなかったよ……。」
「あら。貴方が私にこんな真似をさせたのでしょう? 私がどれだけ戸惑い、思い悩んだかお分かりですか? ふふっ……でもお陰で私も新しい自分を見つけることが出来ましたわ♥ あの……望田さま。九条家の娘ではありますが私のことは今後、その……雌豚奴隷として……♥」
「れ、麗奈さん……ごめん! もう限界……トイレ!」
そう言うと彼は私の言葉を最後まで聞かずに、トイレへと駆け込んでしまいました。
(あぁ、行ってしまわれました……。きっと私の言葉なんて耳に入ってなかったでしょうね……残念ですわ。でも私は嬉しく思います♥ 以前にも同じ事がありましたが、あの時はなぜ彼が前かがみに走り去っていったのかがわかりませんでした……でも今は分かります♥ 望田さま……私の姿に興奮してくださったのでしょう?)
そう、きっと望田さまは今頃トイレで私のはしたない姿を精一杯思い出しながら、ご自身のモノを慰めているのでしょう。あの方は変態ですもの……ふふっ。
(でも望田さまがそういう気分になっているのに……私の方はどうなのです? あんなにはしたない真似をして……あんなに興奮して……あんなに皆さまに罵って頂いて……♥ あぁぁん……思い出しただけでドキドキして参りましたわ♥)
(あまりこういった経験はないのですが……私も確かめてみましょうか♥)
変態であると認めた私には、もはや常識や理性などは備わっておりませんでした。
そして大胆にも、その場でスカートの下に手を伸ばしたのです。
(はひぃぃ♥ あぁ……いけませんわ♥ もう望田さまもいらっしゃらないのに、皆さまの目の届く場所ですのに……♥ こんな所で、こんな所でそんな……♥♥)
クチュッ……クチュクチュ……
(あぁぁぁん♥♥♥ やはり大事なトコロが濡れておりました♥ 淫らなことはしていませんのに……ただ下品にお食事してゲップして、皆さまに罵って頂いて♥ 淫らな気持ちになってしまいましたのぉぉ♥ ダメです、いけませんわ♥ 本当になんて……節操がないのかしら♥ これでは本当にただの……変態ではございませんか♥)
クチュクチュ……クチュクチュ……
(いえ……変態なのは先ほどから分かりきっておりましたっ♥ 変態である望田さまの恋人として♥ 私も立派に変態らしく雌豚奴隷として♥ 公共の場であろうともマスターベーションいたしますわっ♥♥ これこそ私の……『変態宣言』でございますぅぅ♥♥♥)
クチュクチュ……クチュクチュ……
(あぁぁん♥♥ 気持ち良すぎて……もう止められません♥ おま○こで一人セックス♥♥ 望田さまは隠れてトイレでしているのに♥ 下品な雌豚麗奈はこんな場所で♥ 節操もなくクチュクチュしてしまいます♥ 他の方に聞こえてしまいますのに♥ 雌豚の変態行為がバレてしまいますぅぅ♥ 皆さま、ごめん下さいませ♥ 急いでクチュクチュして♥ さっさとイきますからぁぁ♥ 変態の自慰をお許しくださいませぇぇぇ♥♥♥)
幸い(?)にも、あのおばさん達は既に帰ってしまったようで周りに人はいません。ですがここはレストラン――いつ他の客が来てもおかしくない状況です。にも関わらず私の手は止まることもなく、むしろこの状況をエサにして私の指の動きはどんどん速くなっていきました。
そんな時でした。私の瞳は一台の車がレストランの駐車場に入る姿を確かに捉えたのです。
(はひぃぃぃ♥♥♥ お、お客さまが♥ お客さまが来られてしまいました♥ 私がおま○こ弄ってるのに♥ こちらに来られてしまいます♥ 早くイかなければ♥ 見られてしまうぅ♥ 変態雌豚の痴態♥♥ 見られてしまいますわぁぁぁ♥♥)
止めるという選択肢などあるはずもなく、ただ快楽の山を早く登ろうと必死に手を動かします。見られてしまうという背徳感は今まで感じたことのない程の性的興奮を生み出し、私を高みへと運んでいきます。
クチュクチュッ……クチュクチュッ……クチュクチュ……♥
(エッチな水音♥ 一段と大きくしてしまいましたわ♥ でも時間がないのです♥ 見られたくない♥ でも見られたいぃぃ♥ なんて背徳的なのかしら♥ こんなドキドキ、初めてですのぉぉ♥♥ 九条麗奈はド変態♥ はしたない雌豚♥ おま○こ気持ちいいの♥ 弄って感じちゃうの♥ ダメっっ♥ イクッイクッ♥♥ イッちゃいますぅぅぅ♥♥♥!)
カランコロン……
「いらっしゃいませ。何名様ですか。」
「えーと、2名です。」
(イッックぅぅぅぅっっっっ♥♥♥♥♥♥!!!!!!)
ガバッッ!
間一髪――ベルの音と同時に絶頂を迎えるも、とっさの判断で上半身をテーブルにうつ伏せました。ギリギリのところでしたが、バレていないようです。何事もないかのように、2人組のカップルは私から少し離れた禁煙席へと案内されます。
(あぁぁぁ……♥ あひぃぃ……♥♥ よだれを垂らしてしまいますぅぅ♥ このはしたない表情、見られて……ませんわよね♥ ふぅ……とっさに顔を隠してしまった自分に嬉しいような残念なような、不思議な気分です。ですが本当に私が……こんな所で自慰をしてしまうなんて……本当に変態ですわね♥ ふふっ♥)
もう私は一生普通のお嬢様には戻れないのでしょう――この快感を知ってしまったのですから。
ですが一切の後悔はありません。むしろ変態である望田さまの理想の彼女になれた気がして、『変態』という響きさえも褒め言葉のように愛おしく思えてしまいますの。
(望田さまも今頃……マスターベーションされているのかしら♥ だとしたらまるで間接セックスですわね♥ でもいつかは本当の交わりを……望田さまと……♥ あぁぁん……また興奮してきましたわ♥ でも今は我慢しなければ……ご主人様の帰りを待つのも雌豚奴隷の使命ですから♥)
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ちなみにその頃、その御主人様はというと……
シコシコシコシコ……
「麗奈さん、エロすぎ……! お嬢さまのくせしてあんな下品に食うなんて、もう反則すぎるっっ!! ああ、もう一生オカズには困らねぇレベルだぜ!! イックぅぅぅ!!!!」
時同じくして、俺は自身の性器を慰めていた。ただ今の姿を見る限り、先ほど彼女との駆け引きに勝利した知性など見る影もなく、ただの間抜けな雄でしかなかっただろう……。
「二回戦いっちゃうぅぅ! シコシコ止まらねぇ!!!!!!」
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「麗奈さん、ほんっとにごめん! 調子乗りすぎた!!」
「あら、急にどうされたのですか? 突然謝るだなんて……。」
「いやぁ、その……トイレで落ち着いたら急に罪悪感が出てきてさ……流石にさっきは色々とやりすぎた
かなっていう……。」
レストランを出たやいなや、俺はすぐさま彼女に謝る。
すっかり賢者モードの俺は、自分がした事の重大さにようやく気付いたのである。
「あ、頭をあげてくださいな……。私はもう、怒ってなどおりませんわよ。」
「ほ、本当に!? 許してくれるの!?」
「当たり前ですわ……私は貴方の彼女でございますから。ただ、そうですわね……1つお願いがございます。」
「許してくれるなら何でもする! 勉強でもデートでも、君の為なら頑張るから!」
もはや先ほどと立場が逆転している俺と麗奈さん。
そこで麗奈さんは、先程俺に遮られてしまった言葉をもう一度伝えた。
「私を……貴方専用の……雌豚奴隷にしてくださいませ……♥♥♥」
「あqwせdrftgyふじこlp;@!?!?!?!?!?」
俺は口をパクパクして彼女の顔を見る。麗奈さんは恥ずかしそうに頬に手を当てモジモジしており、その振舞いはまさに女子高生といったところか。だが彼女から発せられる言葉は、あまりに過激で変態的であった。
「人目をはばからず豪快にゲップすること、目も当てられないほど下品に振舞うこと、そして人から容赦なく罵られ蔑まれること――九条家に生まれた私には、どれもこれも耐えがたい屈辱でしたわ。ですが、望田さまのお陰で私は気付いたのです♥ 本当の私はド変態のマゾヒストで、そんな惨めな屈辱こそ私が望んでいた事なのだと――♥♥♥ 醜い贅肉の塊のこの身体も、下品な食べっぷりも、ずっと隠してきたマゾヒズムも、今は心の底から愛おしく思います♥ 全ては望田さまのお陰ですわ♥♥♥ 感謝してもしきないくらいです♥ だから貴方に……私の全てを捧げさせて下さいませ♥」
「あ、あの……麗奈さん? 頭でもぶつけたんじゃないのかな??」
「何を仰いますか……!? 貴方様のお陰で本当の私を見つけられたのです♥ それとも……私では雌豚奴隷としては不十分でしょうか♥? そうですわ……♥ では変態らしく、この場で2回目のマスターベションを……」
「ストォォッップ!! 道端でなんて発言してるの!? ってか、今2回目って言った? 一体全体、何がどうなってるんだよぉぉぉぉ!?!?!?」
彼女の心の変わりように、俺はひたすら困惑するばかり。
こうして麗奈さんは、俺の彼女から変態雌豚奴隷に格下げされることになった。
だけどしばらくして気付いたんだ――これこそが俺の望んでいた事なんだって。
そしてこの日を境に二人はより互いの事を知るようになり、時には身体で愛し合いながら、その歪んだ愛は育んでいくことになるのである……。
〜途中経過〜
九条麗奈:157 cm / 104 kg (30週目) ⇒ 157cm / 131 kg (44週目)
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